2019/02/08 のログ
ご案内:「図書館」にジャムさんが現れました。
ジャム > 明日から試験である。
……繰り返す、明日から試験である。

その残忍な事実を認めようとひとり、図書館の机に向かう異邦人の生徒が一匹。ここならファミレスのように回りの談笑とご飯につられず、かりかりとルーズリーフにペンの音が走る音に囲まれて勉強が捗ると踏んで。

「明日からテスト……明日からテスト……」

勉強は苦手だった。ハンバーグにそえられたトマトどころじゃないぐらい苦手だ。うわごとのように呟いて教科書開き、覚えるべき場所に下線を引き。

「明日からテスト……てすと……てすとー……てすーとぅ……」

早速集中力が切れて。片手のペンを指先でくるくる回し始め。

ご案内:「図書館」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 迫る期末試験と学術大会。
といっても、やるべきことは大体済ませている。学術大会の方は原稿を煮詰める必要があるが、試験については凡そ問題無いだろう。
という訳で、試験勉強に励む生徒達を横目に悠々と資料を集めて席を探していたが――

「……集中できないなら、いっそ諦めた方が得だと思うが。今更勉強したところで付け焼刃も良いところだろう」

何の気なしに座ろうとした席の隣で、うわごとの様な言葉を呟きながらペンを回す少女の姿。
呆れた様に小さく溜息を吐き出すと、異世界人らしき小柄な少女に声をかけた。

特段気に掛ける必要も無かったかもしれないが、何せ自分が仕上げている原稿は異世界学会にて発表するもの。
異世界人の少女が少し気になった、というのも正直な思いであった。

ジャム > 遠方から送られ、列車から降りたユダヤ人を強制労働させるか毒ガスシャワー室へ送るかと言わんばかりの糊のきいた軍服を思わせるデザインを纏う少年の声がする。
座学に励もうとしてのめりこめない半獣の異邦人は瞬きをすると振り返り。ため息つく彼へ、ペロ、と舌を突き出してみせ。

「何もしない赤点よりもー、一応は頑張ってみた結果の赤点のほうが価値があるんだよー、きっと!
こうして教科書ひろげていれば、そのうちやる気が出るかもしれないしー」

等といいながら、覚えるべき単語をペンで四角く囲んでみたり。

「それに、勉強してたからこうしてキミに声かけてもらうきっかけになったし。……キミは試験、余裕そうだねー?」

どことなく余裕のある雰囲気纏う彼を見上げつつ。
自分の隣の席がひとつ分空席な事に気づいたら、なんとはなしにそれを目線で勧める。

神代理央 > 「そのうち出る予定のやる気とやらが、明日の試験にまでに間に合うと良いがな」

舌を突き出す少女にやれやれと言わんばかりに小さく肩を竦める。
此方を見上げる少女の顔立ちを改めてみれば、声をかける前から気になっていた所謂ケモ耳に僅かに視線を移した後、直ぐに少女と視線を合わせる様に顔を動かして――

「普段から勉強していれば、今更焦る必要も無いだろう。日々の積み重ね、というやつだな」

フン、と皮肉と自信が入り混じった様な笑みを返すが、少女の黒い瞳が隣への着席を促す様な目線を送っている事に気付けば、少し考えた様な素振りの後静かに腰掛けた。
手に持っていた本を机の上に置いた後、何となしに少女の方へ視線を向けた。

ジャム > 「あはっ!言ってくれるなあ。よおっしー、見ててよ。
今からここのエイゴっていう単語、100コ覚えちゃうから」

からりと笑うと、まずは単純な暗記力がものを言う分野から手を付け始める。ルーズリーフに単語を描き、意味を描く。それを10コ単位で繰り返し、覚えたかどうか復習するのを繰り返し。そうしながらも彼との会話を続け。
相手の視線を受けた獣耳が、ふぁさ、風を少しそよぎ。

「もともとこの世界に居た人達ってすごく勉強するもんね。
それにキミはとっても頭が良さそう。
僕らは勉強するより野で兎追いかけたり、林檎のなる木の根本で昼寝っていう生活だったから。試験の時はちょっと大変だよ。この緊張感がちょっと楽しかったりもするけどさ。
――僕は1年のジャムだよ。キミの名前、教えてもらっていい?」

視線向けられたら、暗記の手をちょっと止めて。
にこにこ笑顔綻ばせながらの自己紹介。
彼への興味を示すようにぴこぴこ獣耳が揺れ、挨拶代わりに黒い尻尾を相手の顔の前で左右にゆらゆら踊らせた後、相手の名前を強請り。

神代理央 > 真面目に勉強に励む姿を見れば、呆れた様な視線は少し和らぐ。
最初の様子からてっきり勉強には興味が無い類かと思っていたのだが、思ったよりも真面目な性格の様だ。
等と、風にそよぐ獣耳を眺めながら考えていたが――

「…ふむ。まあ、違う世界から来るというのは色々苦労もあるだろう。しかし、それに馴染もうと努力しているのは良い事だ。此方から見れば、其方の生活も楽しそうではあるがな。
名前?…ああ、すまないな。名も名乗らずにずけずけと。私は神代理央。お前と同じ一年生だ。宜しくな」

何と言うか、裏表の無い子供の様な少女だな、と呑気な感想を抱きながら此方も名乗り返す。
しかしその視線は、眼前で踊る尻尾に興味津々、といった具合かもしれない。

ジャム > ルビー思わせる大きな紅い彼の瞳が自分の耳を眺めている事に気づくと、その視線を誘導させようとふさふさの耳を色々動かした。片方だけ伸ばしたり、へにゃりと伏せったり。聞き耳たてるように尖らせたりして遊び。

「僕の世界での暮らしは楽しいよ!果物のなる木はいっぱい生えてるし、食べられる木の実もたくさん!その分モンスターも多いけどさ。あはは!
でもー。この世界はもっと面白いよ。難しい事は多いけど、こんなきれいな制服、前の世界じゃ無かったし。ファミレスだって、カフェだって!美味しいケーキもお菓子もいっぱい!
……神代理央。うん、覚えた。よろしく!理央!」

身振り手振りも大きく、異世界とこの近未来世界の違いを表現して。特に甘いものに関しては両腕いっぱい広げて異文化における感動を示し。
名前告げられると、早速呼び捨てにする無礼さであった。

「この尻尾気になる?えへー。僕の自慢の黒尻尾さ。
触ったらきっと幸運がついてくるよー。
ほらほらー、ほらほらー」

制服のスカート、そのお尻の付け根にある孔から伸びた尻尾を調子づいて動かし。適当な事言って長いサラサラの毛先で彼の身体をくすぐろうとし。

神代理央 > 少女の思惑は見事に成功し、己の視線はふわふわと獣耳を眺めたまま。どんなに堅苦しい言葉遣いだろうと、やれ偉そうな物言いと態度だろうと、所詮は15歳の少年。目の前でぴこぴこと動く獣耳に興味を示すなという方が難しい注文であった。
尤も、数秒の後に己の醜態に気が付くと、幾分気まずげな咳払いと共に視線を黒曜石の様な少女の瞳に合わせる。

「…大体の感想が食い物の事しか無い様に思えるが。確かに、此の島の甘味は質が良い。異世界から来たお前が夢中になるのも致し方ないだろうがな。
……ん。宜しくな、ジャム。同じ学年なんだ。何か困った事があれば、相談くらいは乗ってやろう。有料で」

呼び捨てにされるのは大して気にしていない様子だが、此方は少女の名前をどう呼ぼうか暫し悩み――結局、名前で呼ぶ事にした。度々お前とかいう代名詞が入るのは、高慢さと気恥ずかしさが混じっているからかもしれない。

「……ほう?それは良い事を聞いた。試験は兎も角、此方も願掛けしたい事柄くらいはあるでな。幸運の欠片程度は欲しいものだが」

元より、己はどちらかと言えば高慢傲慢の意地の悪い性格をしている。そんな己の眼前で、調子の良い事を言いながら尻尾を動かされれば、内心で頭を擡げるのは実に意地の悪いモノかもしれない。
ニコリ、と不気味なまでに朗らかな笑みを浮かべると、何の遠慮も無く少女の尻尾に触れようと腕を伸ばすが――