2019/02/14 のログ
■上総 掠二 > 「……、あ、ああ。
それならばよかった。改めて俺の勧め、と言われると、気恥ずかしいものはあるが」
堂々たる彼の仕草に、僅かに口元が弧を描く。
自分が何が好きで何を魅力に感じているかということを人に伝えることには慣れていないようだった。
そうして、彼から返ってきた返答を耳にすれば、納得したように頷く。
「気にするな。そういった出自は、この学園であれば少なくない話。
それで、その認識で概ね合っている。この図書館のヒーター。
あれがどういった動きをしてこの部屋を温めているかということがわかるようになる。
魔術学と似たようなものだよ。仕組みを解き明かすものが、魔術か機械かの違いだ。
まだまだ、幾ら常世学園と言えども機械に頼っている部分は少なくない。
だから、色々なものを修理したり、元に戻したり……といったことができるようになる」
このご時世に、旧時代のように油に塗れるのも、悪いものではないんだ。
そう語る彼の表情は幾分か柔らかくなりながら。
神経質じみた外見の男は、嬉しそうに自分の「好きなもの」の話をしていた。
■レンタロウ > 「ふむ…ヒーターか。
使い方はなんとなく知っているが、中がどうなっているのかとか原理がどうというのまでは知らないな。
まぁ、魔術というのも一体全体何が何やらという点では、機械と同じ位置にあるが…
だが、そういうものが理解の範疇に入れられるようになるというのは実にそそられる話だな。」
機械も魔術も、今の自分からあすればどちらもひとしく理解が及ばないもの。
しかし、男性の言う学問を学ぶことで理解できるようになるというのならば、それはそれで一興というもの。
口元に笑みを浮かべて、納得したように頷き
「うむ。しかと理解できた。
学んでみる価値のありそうな学問だということが良く理解できたとも。」
有意義な話を聞けたと嬉しそうに笑いながら、そう言葉を口にした。
■上総 掠二 > 「ここの学生はみな、魔術や異能で直してしまえたりするからな。
君がもし、そういう便利なものを持っていないのであれば……勧められる。
自信を持ってな。代わりになるのさ。知識で補える部分が殆どである故に。
わかると案外面白いんだ。パズルのピースみたいなものだからな。組み上がれば、当然勿論気分がいい」
この超常ばかりの学園で、彼のようにどちらも何が何やら、という生徒は彼にとって珍しかった。
目を丸くしたあとに、ひときわ嬉しそうな顔をして、偉そうにそう言った。
彼の「価値がありそう」という言葉にも安心したように頷いて。
「ああ。とても価値がある。そうだとも。
……だからこそ、君が興味のある講義を受けられるのが俺にとっては幸いだ。
この学校の講義は面白くてね。異能と魔術が関係ない、それこそ芸術科目なんかは面白いと評判だ。
……すまない。俺ばかりぺらぺらと喋ってしまった。何かやっていたところだったら、邪魔をした」
視線を伏せて、苦笑いを浮かべながらそう言う。聞いてくれてありがとう、と付け足して。
■レンタロウ > 「うむ、安心するといい。そんな便利なものは持っていないからな。
そういう便利なものの代わりになるというのは、俺のような人間には有難い話だな。」
異能はあるけれど、男性の言う何かの修復には到底使えない。
知識で補うことが可能であるというのであれば、自分のような人間には有って損は無いものだ。
「………芸術、か。
芸術もそうか…面白いのか、そうか…ふぅむ…まぁ、そちらも考慮には入れておこう。
いやなに、実に良い話が聞けた。
本を読んでいたつもりだったが、考え事のおかげで殆どページをめくるだけだったからな。
気にする必要はないぞ。」
苦笑いをする男性に言葉を返しながら、内容をまるで覚えていない本を閉じる。
それと持って席を立つと、男性へと笑みを見せて
「決めるまでには少し時間がかかる。他の学問も見ておきたいからな。
だが、貴殿の言う学問が良いものだということは理解ができた。ありがとう。
すまないが、明日に備えて休まなくてはならなくてな。先に失礼する。
俺はレンタロウと言う。また今度会えた時、貴殿の名前を教えてほしい。
ではな。」
話しを聞かせてくれたお礼と、自分の名前を告げてから頭を下げる。
そして、手に持った本を棚へ戻してから一足先に図書館を後にするのだった。
ご案内:「図書館」からレンタロウさんが去りました。
■上総 掠二 > 「そう言ってもらえるのであれば、俺も嬉しいよ」
甘ったるいコーヒー飲料のキャップを開けて、一気に傾ける。
そして、世間話で読書の時間を潰してしまったと聞けば、また律儀に詫びて。
図書館から去っていく彼の後ろ姿に右手を軽く持ち上げて振って。
「ああ、こちらこそ。時間を頂いてしまってすまない。
思う存分、君が学問を楽しめることを俺も願っているよ」
そう呟いて、レンタロウ、と手帳の隅に書き留める。自分が名乗っていないこと。
妙に几帳面な男は、そういう部分を忘れてしまわないよう、と彼のことをいくらか書き留めた。
そして、しばらくして。手帳を閉じれば、また自分も片付けるべきレポートと向かい合うのだった。
ご案内:「図書館」から上総 掠二さんが去りました。