2020/10/20 のログ
ご案内:「図書館 閲覧室」にレイチェルさんが現れました。
■レイチェル >
黒いチョーカーをつけた少女が去ってから、数刻の後。
自習用の机の上に両腕を組むようにして乗せて、
レイチェルは溜息をついていた。
机の上には、積み上がった本の山。
その内の一冊の頁をぺらりと捲った後に、
ぐっ、と伸びをして、彼女は物思いに耽る。
―――
――
―
華霧の血を吸った、あの日の翌朝。
目覚めた時に、既に華霧は部屋に居なかった。
……ちょっとだけ、寂しい気がした。
もしかしたら、一緒に居てくれるんじゃないかという
期待を込めて、あの時目を開けたから。
そこに白のシーツしかなかった時には、
望みすぎていたと分かっていても、
それでもほんの少しだけ残念だった。
――やっぱり、無理させちまってたよな。
求め過ぎるのは、絶対にだめだ。
それはきっと、あいつを傷つけてしまう。
そして。
再び溜息を漏らすと同時に、思い出す。
それは、夢の中で確かに聞いた音。
今では手の内から零れ落ちる砂のように落ちて、
何処かに紛れてしまった。
だから、ぼんやりとした輪郭しか覚えていないけれど。
それでも夢の中で聞いたあれは、
微かに華霧の声だった……と、思う。
その言葉や意味は、はっきりとは覚えていないけれど。
あれは、なんだか――。
■レイチェル >
――何だかすごく、心を揺さぶられた、ような。
それは、既に霧の向こう側で。
追っても仕方のないことだった。
だから、目の前の本に集中する。
頁を捲って、捲って、捲って。
吸血鬼の呪縛《こい》を何とかする方法、
そのヒントが何処かに転がっていやしないかと、
藁をも掴む思いで、あれやこれやと本を捲っているのだが。
今日も成果はなかった。
それでも明日も、また本を漁ろう。
呪縛そのものを何とかする方法が見つからなくても、
何かしら、得るものがあるかもしれない。
華霧への負担を減らす、何かが。
それこそ、求めているものだ。
あいつに無理をさせるなんて、耐えられない。
あいつは、園刃 華霧は受け入れてくれる。
そういう言葉を、贈ってくれる。
けれど。それでも。
そこに甘えてしまっては。
考えることをやめてしまっては。
『あいつ自身』が。
だから、諦めずに本を捲る。
だから、諦めずに向き合い続ける。
きっと、何か光が見えると信じて。
ご案内:「図書館 閲覧室」からレイチェルさんが去りました。