2021/04/06 のログ
ご案内:「図書館 閲覧室」に藤白 真夜さんが現れました。
■藤白 真夜 >
「よい、しょ。……んしょ。……ふう」
夕方の図書館。
両手に抱えた山盛りの本をゆっくり、返却棚に降ろして。ソファーに座り込めば、ひといき。
汗はかかないほうなのですが、やっぱり力仕事はあまり得手ではなく。
……別に図書委員や司書さんというわけでもなく。
近頃お世話になっていた図書室に、ほんの少しでもお手伝いしようと勝手に思い立っただけで。
返されずにほっぽりだされていた本を返却棚に並べるだけでもお手伝いしようとしていたのでした。
……私も熱中するとよくやるので。
(……また錬金術の勉強もしなきゃ……。異能の特訓もだし、祭祀局の任務も――)
少し休憩を、なんて考えると、すぐにやらなきゃいけないことで埋め尽くされる、私の頭の中。
たまーに憂鬱に沈み込んだり、かと思えばやる気に溢れたりするのが、私なのですけれど……、
最近は、少しだけ。
「……えへへへ……」
ソファーの上に、ちょっとお行儀が悪いですが、靴を脱いで。脚を抱え込んで、ぎゅー。
膝の上に頬をすりつけて、……にまにま。
つい、思い出して笑ってしまうのです。
自分の頑張りが、少しだけでも認められたことに。
「……はっ!
い、いけないいけない。また変な人になってしまいます……!」
かと思いきや、すちゃっとソファーの上で正座に座り変えて。
……独り言の時点で大分変な人では、あるのですが。
■藤白 真夜 >
(……とは言っても。
人前で変でない振る舞いとか、どういうのか、あんまり……。
と、というか、人とお話すると、緊張したり色々ですぐ変な人になってしまうというか……)
思わず、顔つきが険しくなります。
……そう。
別に会話が上手なわけではないのに、最近感情が乱高下していたので、人前で醜態を晒しまくりで反省しているのです……!
(う~ん……。
せめて、もう少し友達とかができていれば……。
お話とか、相談とかするうち、自然と慣れるものな、気はするのですけど……)
……しかし、やっぱりその反省の正座もあんまり長くは保たないのでした。
ずもも、と沈みゆく気持ちとともに、またソファーの上で脚を抱え込んで、ひとり。
(……友達、いませんし)
ぐにゃー、と膝の上に頬を投げ出して、でろり。
……ある意味、当然なのです。
人付き合いが広いほうでもなく。
すぐ緊張しますし。
一人で本を読んでいるほうが落ち着いて。
何より、……私に友を作る資格があるのだろうかと。考えてしまうからでした。
(……せめて、もーちょっと落ち着いてお話が出来るように……)
■藤白 真夜 >
……友に救われることは、きっとあるのでしょう。
私の好きな小説の中の世界では、いつもそうでした。
落ち込んだ主人公を友が励まして、
竹馬の友と力を合わせて困難を乗り越えて――。
私も、きっとそうだったはずなのです。
知らぬ間に、友となど口が裂けても呼べなくとも、自分の預かり知らぬところで救われ、助けられ、拾い上げられて。
……そうやって、生きてきた、はずなのです。
だから、私も、友達を作っていい。
……そう、思えるはず、なのですが。
(本当に、そうでしょうか?)
……私は、信じられませんでした。
恩義のある人たちが、ではなく。
私自信の在り様が信じられないからこそ。
私は、独りで在らなくてはならない。
身勝手にも、空想の友が私の隣に座るところを想像する。
それだけで。
ぞわり、と。
暗く、重い罪悪感が、背中にのしかかるのを感じるのです。
お前に、そんなことをしている余裕は無いと。
■藤白 真夜 >
そして、その罪悪感こそが、私の糧でもありました。
(……思い出して)
変に思われてもいい。
小さな、けれど確かに。
私の中に光を灯した言葉と。
重く厳しく私を苛む暗い想いと共に。
「……よしっ!」
心中は、波打ったまま。
明るい気持ちと、暗い淀みが入り混じったまま。
矛盾した不安定さこそが、私の奮起の証。
「……がんばるぞっ……!」
自らに言い聞かせるように、言葉を零して。
立ち上がれば、祭祀局へ向かおうと駆け出していくのでした。
……図書館ではお静かに!と声が飛んできて、すぐにぺこぺこと頭を下げることになるのですけれど。
ご案内:「図書館 閲覧室」から藤白 真夜さんが去りました。