2021/04/17 のログ
ご案内:「図書館 閲覧室」に藤白 真夜さんが現れました。
■藤白 真夜 >
図書館では静かに、と言いますけれど……、
ひっそり、隠れるように。静かに、目的の本をかきあつめて。
(……別に、恥ずかしがることは、無いはずなんですけれど。
どこか、後ろめたいのかもしれませんね)
自ら断ち切った夢に。
けれど、夢を諦めることと、足掻くのをやめることは同じ意味ではなく。
私はまだ、魔術を諦めてはいないのでした。
……とはいえ、少し目指す方向性は変わっていて……その証拠に。
「……よいしょ」
すみっこのテーブルに積み上げられた本のタイトルは、
『魔術不適合者の苦悩』
『体質的魔術不全について』
『健康!魔力の通うマッサージ!』
『破魔の術法』
『誰にでもわかる対抗呪文』
……などなど。
……そもそも、私などがいっぱしの夢を抱くことが、生意気で。
もっと、下のほうから積み上げていく。それこそが、私だったはずですから。
静かに、虱潰しをかけるように、関係があるかもわからない書物に、目を通していく。
「……原因は私にあるのは間違いないはずですから、ちょっとずつ限定していけば……」
夢とまでいかなくとも。
どうしようもないことを切り拓くために魔を求めるのは、間違えていないはずですから。
■藤白 真夜 >
「……。
わかっていたはいたつもりなんですけど、こう、気が滅入りますね……」
……思わず、ひっそりとした図書館で一人で呟くくらいには。
本の種別のせいでしょうけれど、私と同じように、魔術を求め、そして拒絶された人たちの苦悩が、見えてきます。
(……とはいえ、私の場合、体質の問題というか、先天的なモノじゃないような……。
はちゃめちゃに才能が無い――とかではないと思いたいですし)
ぱたむ。
参考になるかと思って持ってきた先駆者の本は、もはや愚痴と絶望を詰め込んで煮込んだようなモノに成り果てているのでした。
「う、う~ん……こ、これもなんだか違う気がします……」
魔力は人体に通わせるもの。
ならば、マッサージでなんとかかんとかを刺激して健康になるとともに魔力がどうたらこうたら……。
手元にある指南書の通り、お腹をむにむにと揉みほぐしながら、これもどうにもなんだか違う気がしていました。
……というか、これはただの減量マッサージでは……?
と思いつつも、やってしまうのですが。
仕方有りません。それはそれで気になるので……!
「……。
……はっ!い、いけません、なんだか邪念が……!
ちゃ、ちゃんと勉強すると決めたのですから、……こほん」
別に誰に見られているわけでもないのですけど、咳払いをひとつ。
……知識で駄目なら、モノに頼ればいいのです。
「……ふっふっふ。今日は、色々持ってきましたからね……!」
ごそごそ。
ごとん、と次こそはとテーブルに広げられたのは……、
青い宝石のついた指輪。
古ぼけた蓄音機。
おもちゃじみたデザインのステッキ。
真っ黒な長手袋。
そう――この私が近頃のアルバイト代を全てつぎ込んだ秘密道具の数々なのです……!
■藤白 真夜 >
「まずはこれ……!」
青く静かに輝く宝石の付いた指輪!
とはいえ、本物の宝石の類ではないようで。
実は、魔力をこめられた人口の結晶のようなものなのだそうです。
いわゆる、外部魔力貯蔵具。
これを身につければ、魔力の弱く少ない人でも魔術を行使できるのだとか。(本で読みました。)
ちなみに、お高いです。
(私自信の魔力に問題があるのだとしても、あとから付け加えれば……、)
そんな、単純な考え方で試してみようと、思ったのですが――
「……あ~~~っ!?」
指に通した途端。
ふっ、と電源を切ったかのように輝きを失い真っ黒になる指輪の宝石。
「……うっ、ううっ……わ、私の、お財布が……」
もはや、アイデアが駄目だったとかそういうのではなく。どことなく予想していたのも、ありますけれど。
純粋に、経済的損失が気になってしまう、虚無っぷり。
「……はあ。
魔道具って、お高いんですよね。
魔術師の方たちって、金銭感覚が狂っているというか……」
魔術という浪漫に命をかける方たちですから、わからなくもないですし、当然といえば当然なのですけれど……。
次なる道具も、その典型だったり。
「つ、次……!」
す、と手を伸ばす前にちょっと、深呼吸。
また即死されては私の心臓が持ちません。
それは、おもちゃのようにも見える、ステッキ。
ご案内:「図書館 閲覧室」に照月奏詩さんが現れました。
■照月奏詩 >
2年生。学年が上がれば必然的に勉強の内容も変化する。簡単に言えば難易度が上がる。
1年の間は正直予習などせずとも簡単にできたが、2年からはそうもいかない。
色々と異能の本や歴史の本などを手に抱えて人の少ない場所を探す。
と、そんなことをしていると知り合いの姿。何やってんだと思い声をかけようとするも。
「……」
机の上に置いてある物を見てしばし黙る。魔術の本、そこまではいい。だが問題はそれ以外。
魔法の道具と思われる代物がいくつも置かれている。自分は魔法には明るいわけではないが対策としては勉強している。
品質の優劣はともかくとして。使った指輪が目に入れば。
「……演習場か外でやった方がよくないか?」
そう声が漏れてしまう。
そう、例えアレが最低品質であったとしてもだ。魔法というのはどんな形で作用するかわからない。例えばだがライター程度の火を起こす魔法でも暴走すれば数mの火柱になる事だってあり得るのだ。
仮にその道具が最高品質であったなら……こんな部屋簡単に消し炭になる。
だから防御施設も何もないここでやるのはまずくないか? と思わず声が出てしまった。
■藤白 真夜 >
おもちゃじみた、ステッキ。
全体として杖の造り自体はおもちゃめいているものの、先端の二色に混じり合った輝きを放つ宝石がそれを否定しています。
これ、実際におもちゃとして開発されたものでした。
何がすごいかというと、本気で魔術が仕込まれているところ。
子供向けとして開発されたはずなのに、大人ならぬ魔術師が本気を出してしまったとか。
(……まあ、魔術を俗に扱いすぎだとか、厳しい意見のほうが多いご時世にこんなものを作ったせいで、
ものすごいバッシングを受けたそうですけれど……)
結果、実物はあんまり売れずに残らなかったのだとか。
プレミアがついているとか聞いたこともあったのですけど、祭祀局のとあるなんでも溜め込む部門のおかげで、買い取れました。
……すごくお安いとのお話でしたけど、私にとってはやはりお高い買い物だったのですが……。
このステッキのすごいところは、宝石の内部に魔法陣が仕込まれていて、それを振るうだけで意味のある軌跡を描くところ。
もはや変態的な魔術師の業としか言いようが無いのですが……。
そして、ここからが重要なのですが、つまり、ステッキに仕込まれた魔力を使うだけで、私の魔力に依存しないのです。
これで機能しないのであれば――、
「……えいっ!」
そっと手に取ったステッキを振るってみる、ものの。
……しーん。
やはり、何もおきず。
「……う、う~ん。やっぱりお約束の秘密の呪文的合言葉が必要なのでしょうか……」
なんて、的外れな悩みを真剣に考えつつ、うんともすんとも言わないステッキを眺めていたら、
■藤白 真夜 >
「のひゃーっ!?」
なぜか、ちょっと恥ずかしいところを見られた気がして赤面しながら飛び上がる、私。
い、いえ、別にステッキを振り回す子供じみた遊びに興じていたわけでは……!
「はっ、て、照月さん!
……い、いえ、はい、おっしゃるとおりです……!」
とりあえず、取り繕うようにぺこぺこと頭をさげて、ぽつり。
「……ど、どうせ、何も起こせないかなと、思ってしまって。
わ、私が諦めてちゃいけないん、ですけど。
……危ないものは、無いんです。
これも、可愛い光が出るくらいの、はずなんですけど」
……ぶん。と振ってみても、やっぱり何も起こらない、それ。
■照月奏詩 >
「しー! しっー!!」
悲鳴を上げれば周りが何事とこっちを見てきたのでシーッとジェスチャーしてからすみませんすみませんと回りに平謝り。
ふぅと少し息を吐きだすととりあえず自分の本を隣の机に。
「ああ、おもちゃなのかそれ……ホントの魔法の道具かと思ってた」
光が出るだけと聞けばそれならいいのかと納得する。
それから杖や使用した後の指輪を見る。
「……人口魔力結晶に魔法を仕込んだおもちゃか……他にもなんか色々用意してあるな」
さっきは使ってあるかないか程度しかわからなかったがよく見れば大体どんな道具かは理解できた。
使用した後の指輪を手に取って。
「にしてもこれ何に使ったんだ? 色がなくなるって……中の魔力が尽きたかもしくは変な魔法使ったかだと思うんだが」
指輪は色を失っている。詳しいわけではないが色が消えているという事はそういう事ではないかと勝手に仮設を打ち立てていた。
もちろん他に可能性はいくつかあるが1番しっくりくるのが魔力を使い切ったという可能性だった。
■藤白 真夜 >
「あ、あはは……。よく出来たおもちゃというか、なんというか……、
さすがにこういうところに本物の発動器を持ち込んだらまずいですからね」
なんだか何回かやっている気がするのですが、やっぱりぺこぺこといろんな方面に頭を下げつつ。
「……あ。でもこれはちょっと危ないかもしれません。
音の代わりに魔力を吸い込む呪いの蓄音機という触れ込みでして……!
あ、でも特定のワードが無いと発動しなかったりで危険だけど安全と言われていまして、」
呪いの品だとなぜかちょっとテンションが上がりながら説明しそうになるのを、こほんと咳払いしてなんとか落ち着けば。
「あっ……そ、それは、その、私が駄目にしてしまったというかっ。
……私、どうにも魔力を吸い上げる体質のようなので……、体質なのかも、まだよくわからないんですけど。
それを探っていた、最中だったのです。
……魔術は好きなのですけど、あんまり向いていないみたいで」
あはは、とごまかすように笑って見せます、けれど。
■照月奏詩 >
「さすがに本物持ち込んでたら先生に通報してるっての」
と苦笑いを浮かべた。実際はそんなことできる立場ではないが。
そして説明を受ける呪いの蓄音機を見る。
「……それはたしかに危険だな。ためすぎて爆発しそうだ」
まぁ流石にそこまで行くまでに機能停止するか吐き出すのだろうが。確かに1番危険な代物かもしれない。
指輪をクルクルと触っていたが、そういわれれば少しそっちに視線を移す。
「魔力を吸い上げるねぇ……好きってことは魔術は使いたいけどその体質のせいで使えないと」
それでこういう道具に頼っているのかなんて思いながら道具に目線を移す。
それから……蓄音機を手元に引き寄せる。
「これ、試してみれば?」
パリパリと自身の能力を発動させる。触れていれば少なくとも自分のいる方向には影響は出ない。はずだ。
「俺も魔術に詳しいわけじゃないけどさ。魔術ってのは基本は魔力を変換、放出って流れだ。だけどその体質のせいでおそらく変換しきる前に取り込んじまう、もしくは放出した直後に吸い取っちまう……って事なんだと思う」
とその呪いの蓄音機の吸い取り口を彼女の方に向ける。
「で、こいつの出番。だったらお前が取り込んじまう前にこいつに吸い取らせる事ができるなら言い換えれば似たような道具。つまり持ち主の魔力を吸収して変換放出してくれる。それこそ本格的なマジックワンドとかなら魔法が使える可能性が残るって事だろ?」
まぁ即席の理論だけどさと述べてから色々とその蓄音機を見る。性能とか許容量とか色々と。
■藤白 真夜 >
「ふふふそれがですね!この蓄音機、ネジ巻きも電源も、何も動力がついていないんです!
そこをどうやって動いているのかが、自ら溜め込んだ魔力を使っているのではないかとですね――、」
呪いの品と聞いて引かれるかと思いきや、ちゃんと話を聞いてくださる照月先輩にまたしてもテンションがあがりそうになるものの。
ちゃんと、私の実験に付き合ってくれるその姿と、すぐにお話の要点を理解していらっしゃるところに、むしろ私のほうが置いていかれて、一瞬ぽかーん。
「……はっ、そ、そうなんです。私の躰から魔力が切り離せるなら、話が変わってきますから。
そう思って、持ってきたのですけど、……よくわかりましたね」
魔術に詳しく無いとは言うけれど、理解するのが早い方なのかなと、やっぱり先輩を見る瞳になってしまうのです、が。
「とはいえ、ちょっといわくつきの品といいますか、出てきた場所が場所というか……。
……無いとは思いますけど、変なことになったら、逃げて先生を呼んでくださいね。
私は、大丈夫なので」
しっかりと、付き合ってくれる優しいひとを見つめて、言う。
優しいからこそ、巻き込むのだけは絶対避けなくては。
「――音食み、歌食み。
魔呑みが良い。
叫喚の声。
……召し上がれ」
蓄音機へ向けて、そっと……囁くように。
決められた言葉を、言い切れば。
かちゃり。……かたかたかたかた。
静かに、何も入っていないはずの匣から、何かの駆動音が聞こえて。
……次の瞬間、
――何も起きない。
「……あ、あれ……?こ、これであってるはずなんですけどっ」
かたかたかたかたかたかたかた。
事実、駆動音は響いている。それどころか、どこか強まっているような……。
照月さんが居るから、なんてことは無いはずですし。
なにかを覗き込むかのように、蓄音機についているラッパに顔を近づければ――、
(……あれ?何か、……引っ張られるような、)
些細な違和感に、身を引こうとした瞬間。
ぼふーっ!
真っ黒な煤のようなものが、顔面に、ぽふり。
「んなーっ!こほ、ごほっ!けほ、けほっ……。
……あ、あの。
ど、どうなっていますか?……私」
……。
顔面を埃で真っ黒にして、所在なさげに佇む、私。
■照月奏詩 >
「はっはーん? なるほど、魔力で動く蓄音機、そしてその魔力は外部からか。たしかに呪いだなそりゃ」
楽しそうに語り始める彼女を見て少しだけ笑っていたが。
それから少しだけ不適に笑う。
「異能でもなんでもそうなんだが。とりあえず切り離して考えてみるって思考は結構大事でな。順番に考えれば解決につながる事も多いんだよ」
とはいってもそれでも解決しないケースは往々にある。つまりは一般論でしかないわけでその一般論の外にあるのが異能や魔術なのだ。
今回もその例に当てはまる可能性は十分にあった。
彼女の警告には少し笑って。
「バカ言え。変に逃げるより封じ込める方が安全だっての。防御特化異能なめんなよ」
そして始まる実験。
音はしている。つまりさっきの説があっているなら魔力は確かに吸い取っている。
そして吸い取り口の反対側は自分が能力でふさいでいる。つまり今魔力を吸われているのは彼女だけだ。
「んー? なんか嫌な予感してきたぞ」
だが大きくなる音。能力を強める。そして……黒煙。
「ぬおっ!? ……す、すみませんホントすみません!」
と回りから向けられる視線にもう一度平謝り。
そして彼女に呼ばれて向きなおれば。
「ハハハ! お前、顔真っ黒だぞ。タコにでもやられたみたいになってる」
ハハハと笑っていた。失礼にもほどがある。
ひとしきり笑ってから。一息。
「でもおめでとうさん。可能性あるって事だな……少なくとも稼働音がしていたってことは魔力か類似する何かをこの蓄音機は吸い取った」
と煙を吐いた蓄音機に触れる。
「そして反対側は俺がガードしてた。つまりこれを動かしたのは正真正銘お前の魔力だ……まぁ何が起きたかに関しては専門外だからわからないけどさ」
それは専門の先生にでも聞いてくれと肩をすくめた。
「で、煙に関しては……吸いすぎじゃねぇ? だってさっきの会話の通りならずっと魔力を吸い取るだけで放出してなかったわけだろ。つまりとんでもない量の魔力が体の中にあったわけだし。それこそほら、蓄音機見たときに俺が言った事……”吸いすぎて爆発する”って。ホントに爆発したろ蓄音機」