2021/12/09 のログ
ご案内:「図書館 閲覧室」に松葉 牡丹さんが現れました。
松葉 牡丹 >  
図書館ではお静かに。
実際利用者は方々とても静かに各々の時間を過ごしている。
邪魔にならないようにはしたいが、如何にもここだとこの駆動音は結構響く。
そこまで大きい音では本来ないけど、こうまで静かだと余計に。

「ご、ごめんなさぁ~い……」

ちょっとか細い消え入りそうな声で平謝り。
聞こえているかいないのか。幸い此方を見る人が余りいない事。
とりあえず、目的の本を探してしまおうか。
左手でレバーを動かせば静かに車椅子はタイヤを均す。

松葉 牡丹 >  
とはいっても、そんな大したものは探してるわけじゃない。
ちょっとした誰でも知っているような御伽噺。
そんな物語の夢話を探していた。

「えっと……」

どれにしようかな。
目的のコーナーで車椅子を止めれば、胡乱な瞳が右往左往。
そういえば、どれにするかなんて決めてなかった。

ご案内:「図書館 閲覧室」に『調香師』さんが現れました。
『調香師』 > 誰にも記憶されない、そんな少女の歩み
自分が誰にも気を留めなければ、完全に成立するはずだった図書館へのこそこそ来館

その目は何処かへ留まってしまった。その車椅子の姿へと
友人が丁度、車椅子の生活へとなってしまったからか、
自分の興味までは、抑える事が出来なかった様だ

(でも、こっそりと帰らないと...)

少女、不法侵入中
記録をされない事を良い事に、『生徒』の立場ではない自身が図書館に出入りしている
その事を迂闊に周囲に悟られたくはない。でも近付いてみたい
本を両手に抱えながら、暫く立ち往生...


やがて、考えに至る。普段持ち歩いているポイントカード
翼のスタンプ、残り2つの空欄。その表には、『お店』の住所が描かれる
もしもお店に来てくれたのなら気兼ねなく。可能性、淡い期待

それに加えて。彼女は借りたペンをカードの上に走らせる

ポイントカード > 『あなたの事、気になるね。だから私、誘ってみるね
 Wing's Tickle あなたの為の香りのお店
 このポイントカードは今日のサービス、持ってきたらいい事あるかも?

 わたしの名前は調香師。この香りに気付いてくれますように』

『調香師』 > よし、と頷いた彼女。この時点での怪しさは考慮に入れず
最後に、印象付けとして香りを遺そうと
ポイントカードに口付け。彼女の吐息は芳香の吐息

歓楽街に踏み入った時に貴女を誘ってくれる導として、
きちんと仕事をして欲しいな。貴女の元へと記憶のされない歩みは近付き

ふわりと漂う芳香と共に、カードを膝元にそっと添える


「またねだといいな。ふひ」

聞こえる筈のない笑う声。そうして少女はそそくさとその場を後にする事だろう

松葉 牡丹 >  
「んー……」

背表紙を眺めて、人差し指を口元に当てて思案。
どれにしよう。何にしよう。
泡となってしまう悲恋の物語。
目覚めはしない眠り姫の話。
なんてことない、夢物語は悲劇で終わる。
お話だから、悲劇に終わる。
私はこういう話が好きだった。

「今日は……」

だって、そんなお話と自分を比べて"優越感"に浸れる。
『貴方達はそんな体をしているのに』なんて、仄暗い優越感。
そんなどうしようもない事に気をかけて、背表紙に指を掛けた時。

「……?」

指を止めてしまったのは、鼻腔を擽る匂いからだ。
嗅いだ事の無い芳香の匂い。ふと身をよじり、辺りを見渡しても誰もいない。

「あ……」

気づけば何も感じない膝元には、見知らぬカードが添えられていた。
背表紙から手を離し、カードを手に取った。
身に覚えのないカードだ。このカードから匂いがする。
鼻腔を擽る不思議な香り。目を丸くしつつ、綴られた文字に目を滑らせた。

「『Wing's Tickle』……聞いた事ないなぁ」

まるで誘うかのようにご丁寧に住所まで記載されていた。
誰かの悪戯にしては手が込んでいる。
でも、せっかくわざわざ"こんな自分"をご使命と言うのなら、誘われてみよう。
クスリと微笑んだ口元をカードで隠し、車椅子は図書館の外へと車輪を回したのだった。

ご案内:「図書館 閲覧室」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「図書館 閲覧室」から松葉 牡丹さんが去りました。