2022/02/10 のログ
風間 奈緒 > 「…気分転換でもしよ。元素魔術の本、もう一つあったかな?」

基礎が詰め込まれた分厚い本を一旦閉じ、立ち上がって棚に向かう。
ちょっとしたヒントが欲しい。使い手による魔導書とか、手記の類があれば…


………あれ?

「えーと、えーと…待って?」

それっぽい塊を見つけたけど、困ったことに…いや整理した人何も悪くないよ?
棚の…上の方だ。私の背が足りない!

「いや、ちょっ…と、コレは…」

絶妙に…絶妙に足りない。背伸びしてギリ届かない。
何が困るってギリ過ぎてこの程度にハシゴをお願いするのは…その、なんだ。
静かな図書館と色々作業してる司書さんに流石に悪いというか…

「んぐ、ぐぐぐぐ…!」

風間 奈緒 >  
「…うう、あの優しい視線が嫌じゃないけど恥ずかしい…」

結局司書さんにお願いしてハシゴを…ではなく取ってもらうことになった。
私より多少背が高い人ならあっさり取れる、そういう場所だったし…

…別にもっと背が高ければーとか思わないけどさ。いや負け惜しみでもなく。
そんなのは年齢的に成長の余地があるとか、別の所で小柄なのが役に立つとか
思いつく理由なんていくらでもあるから文句は出ない。出るわけない。
私は私で、そんな無いものねだりもくだらない言い訳も…
あの程度のことで頼み込むのもそもそも…



「…はぁ、まただ」


すーぐこれだ。些細なことで落ち込んでるんじゃないよ、私。
どうしてシンプルな結論で終わらないんだよ。

頭を振って、無駄な自己擁護の思考の渦を振り払う。
どうにも私は、失敗を経験に変える前にクッションが要る。
些細な失敗くらい忘れたっていいのに…後でいちいち思い出すから。


「ただ、まぁ…
 もっと単純に生きれたら、とも思わないんだけどね」

どーせそっちは後で後悔とかするんだ。

風間 奈緒 >  
ひとまず、見つけた手記はなかなか参考になった。
元素の循環、保持するにしても動きを持たせた方が安定しやすいとか。

そこから"輪"のイメージが生まれた。
グルグルと輪を成して回転する元素の塊を解き放ったり、混合して変化させる。
突然回転を止めた瞬間の不安定な状態も色々使えるそう。
元素の爆発的反応、あるいは霧のように散らす使い方か。


「良い収穫になったかな。また今度練習に行かなくちゃ」

たくさんアイデアが浮かぶ今の状態は結構嬉しいものだ。
やっぱり楽しいし、夢中になれてる間は不安から解放される。
良いね、進んでるって感じ。


ふと、また一つ思いつく。

「輪か…頭の上に浮かべたら天使みたくなるかな?」

こう、天使っぽくなって如何にも当たり前のように飛んでそうに見えたら。
もしかしたら、私の異能が空を飛べるようにしてくれるかもしれない。

「それもまた…夢とロマンのある話だな、っと」


本を戻して、司書さんにお礼を言ってから図書館を出る。
今日は1回気分が沈んだけど、帰りの足取りは軽い。
こんな悪くない日もちゃんと、ある。

今日は上手くいった。良いことだ。

ご案内:「図書館 閲覧室」から風間 奈緒さんが去りました。