2022/11/09 のログ
ご案内:「図書館 閲覧室」に黛 薫さんが現れました。
黛 薫 >  
図書館、閲覧室。冬季休暇前に小テストや宿題を
設ける講義も少なくないこの時期、自習スペースは
それなりに利用者が多い。学園祭の出し物のための
資料貸し出しも増えるし、期末試験の直前に次いで
図書館の需要が高まる時期と言えよう。

その中で比較的需要の薄い総記の書架の程近く、
分厚い年表のページを捲る女子学生の姿があった。
といっても、読書目当てで此処にいる訳ではない。

(仕事……してるよーには見ぇねーよなぁ)

彼女、黛薫はこの度正式に図書委員に配属された。
基本的な業務は図書館内の清掃、及び私服警備員。
不可視化出来るスライム状の使い魔を有するため、
開館時間内でも清掃を行えるのが大きな強み。

また、使い魔との感覚共有により本人が動かずとも
巡回を兼ねられる。極論本人がこの場に居なくとも
仕事は出来るのだが、イレギュラーに対応するため
念のため待機している。

黛 薫 >  
業務内容はむしろ生活委員会美化保全課に近く、
其方とも連携を取っている。図書委員会の業務
範囲外ではあるものの、アルバイトという形で
図書館外の清掃も斡旋するとの談。

特に違反学生上がりで落第街の地理に明るいため、
落第街の清掃も打診されている。落第街に戻る気は
更々無いが、身を案じる相手がちらほら居るのも
事実。提案としては悪くない。

あくまで生活委員会ではなく図書委員会所属という
肩書きは、魔術知識を見込まれてのこと。将来的に
魔術書庫管理や博物館が所蔵するアーティファクト
管理業務へのキャリアを見越しての配属。

禁書管理委員としての業務も面談で話題に上ったが、
禁書庫無断侵入の前科があるからと固辞している。
違反歴を鑑みてなお信が置ける程度の実績を積んで、
胸を張って引き受けられるようになってから改めて
検討したいと伝えておいた。

黛 薫 >  
そういう訳で、現在は歴としたお仕事中。
片手間に本を読むのは警備と悟られないための
カモフラージュ。下手に興味を惹かれる本を
手に取ると仕事が疎かになるので面白くもない
年表の頁を捲っているだけ。

(退屈過ぎて眠くなんのも困るけぉ……)

いっそ使い魔と真逆の区画を巡回して2人分の
仕事をこなそうかとも考えたが、マルチタスクは
消耗が激しい。ただでさえ精神不安定な自分が
余計なことをすると逆に迷惑をかけてしまいそう。

視覚を触覚で受け取る異能『視界過敏』のお陰で
普通の職場では心労で倒れたり、発狂しかけたり。
誰も彼もが本と書架に注目する図書館だからこそ
まともに働けていると言っても過言ではない。

勤務時間も他の人より短く、早退許可の簡易化や
体調次第で裏に引っ込める勤務形態など、福祉に
支えられている。異能疾患と精神障害が併さって
障がい者雇用に近い扱い。

黛 薫 >  
読書の体裁を整えるために時折ページだけ捲りつつ、
意識は別の区画にいる使い魔『ジェリー』に向く。

不可視化したスライム系の使い魔は粘体ではあれど
液体ではなく、意図して操作しない限り紙や布には
浸透しない。いちいち本を抜き取ったりせずとも
汚損の心配なく書架を清掃出来るのが大きな強み。
ついでに本の消毒、手垢などの除去も並行できる。

基本的には床掃除を兼ねて広がり、這いずって移動。
未清掃の書架付近で待機し、利用者がいない折を
見計らって書架を覆い包んで清掃。

うっかり利用者に触れると驚かせてしまうので、
周囲に人影があれば無理せず退避。仕事ながら
ちょっとしたステルスアクションゲーム気分。

黛 薫 >  
さて、この館の清掃は概ね終えたが、1番手強い
書架が残っている。入口に程近い特設コーナー。
今月の人気作や新刊が並べられた区画である。

他の書架と比べても群を抜いて利用者が多い上、
入口に近いお陰で全く興味のない来館者も頻繁に
通りすがる。立ち読みに興じる人も珍しくなく、
とにかく清掃出来るタイミングが少なく短い。

書架自体も表紙を見せるための特殊なレイアウトで、
他の書架にある "棚の上" という空間が存在しない。
つまり利用者が訪れたときの咄嗟の退避も難易度が
高くなっている。

従ってこの区画を掃除するならそもそも利用者が
少ない時間を狙うのがベターなのだが、その時間は
新書の入れ替え業務など、他にやるべきことも多い。

だからこそ来館者の妨げにならないように清掃を
行えればそれだけで業務が円滑に進むようになる。
利用者が比較的多い今の時期なら尚更。

黛 薫 >  
(……今ならイケそ)

入口付近、貸し出しカウンターの下でじっと機を
伺っていたスライムが書架を覆い包む。不可視化を
施しているため、見た目の変化は殆ど見られない。

もしじっくり見る余裕があれば僅かに本が浮いて
隙間が出来ていること、汚れがじんわりと溶け、
薄らいで消えていることが分かるかもしれない。

もっとも、注視しようとすれば来館者の邪魔に
ならないようにさっさと退避してしまうので、
気付ける者はまずいないだろうけれど。

「……よーっし」

滞りなく清掃完了。終わり側に女子学生が新刊の
ファッション誌に惹かれて来たため、素早く書架の
下へと使い魔を退避させる。

黛 薫 >  
と、業務自体は滞りなく終了したのだが。
良くも悪くも仕事以外に目を向けていなかったと
気付いてしまう小さな "失敗" がひとつだけ。

「……床掃除、するもんなぁ……そっかぁ……」

特設コーナーを降り、清掃の成果をチェックすべく
使い魔の視界で後方を確認した。してしまった。
床に張り付いたスライムの視界は見上げるアングル。
丁度立ち寄った女子学生はスカートを履いていた。

悪気はなかったとはいえ、黛薫も女の子。
とりわけ "見られる" ことに過敏な彼女ゆえ、
対策考えておかないとな、と悩むのであった。

ご案内:「図書館 閲覧室」から黛 薫さんが去りました。