2019/03/14 のログ
ご案内:「禁書庫」にアリスさんが現れました。
■アリス >
私、アリス・アンダーソン!
常世学園に通っていて、今年の四月から二年生!
今日は素行調査の聞き取りがあったので学校に来ていて。
異能を使って暴れた過去があるから仕方ないんだけど。
そしてふっつーに学校を歩いていたら、気がついたら図書室?
みたいなところだった。
ナンデ?
そしてなんだかどれも触れがたい雰囲気が見て取れて。
読めないしそもそも見たことの無い言語の背表紙が目立つ。
妙な静けさがちょっと怖い。
■アリス >
恐る恐る出口を探して図書室みたいなところを彷徨う。
なかなかどうして広い。
こんなところ、常世学園にあったんだね。
不思議だね。
ふと、気がつくと。
目の前に女の子が立っていた。
その女の子は金髪碧眼で、少女趣味な服の上から白衣を着てて。
リボンが……あ、あれ?
あれ、私じゃない?
「ええー……どういうこと…? あなた、私?」
また妙なことに巻き込まれてるのかな。
おっかなびっくり話しかける。
ご案内:「禁書庫」にニコラスさんが現れました。
■ニコラス >
(オッス、オラニコラス――じゃなくて。
とある教師から禁書庫にある魔導書をいくつかとってきて欲しいと言われた。
図書委員でもない生徒が入っていいのかと思ったのだが、そこそこ魔術の知識があってそれなりにトラブル耐性がある暇な生徒が今自分しかいなかったらしい。
スーパーのタイムセールいかなきゃいけないから暇ではないんだけどな。)
えー、次はっと……。
(とは言え君しか頼る人がいないんだよ、なんて頼み方をされては断れない。
多少のバイト代に釣られてまんまと禁書庫をうろつく。
最後の一冊を探して角を曲がれば、)
――お、アリス。
ひさし、ぶり……?
(知り合いがいた。
二人。
二人を交互に見比べる。)
――双子?
■アリス >
音がして心臓が口から飛び出す勢いで跳ねる。
声がしたほうに振り返る。
「あ、ニコラス。久しぶりね、この間のメールの話をしたいところだけど…」
肩を竦めると、もう一人の私は口の端を持ち上げて笑う。
「私、一人っ子よ。私をここに連れてきた理由でもあるのかしら? もう一人の私?」
そう話しかけると、もう一人の私は口を開く。
『ねぇ、あなた……パパとママに迷惑をかけながら生きるの、楽しい?』
ウワー!!
いきなりトップスピードで口が悪いもう一人の私!!
たじろぎながらニコラスに助けを求める視線を巡らせる。
「えーと………私、子供だから…親に頼らなきゃ生きていけないのは普通でしょ?」
「ニコラス、こういうの禁書庫ではよくあることなの?」
呆れた様子で、でもあくまで事態を打開するために。
■ニコラス >
だよなぁ。
(どうやらアリスは一人っ子らしい。
となると他人の空似ということになる。
しかもこのアリスはこっちのアリスが連れてきたアリス――ええいまどろっこしい。)
こっちがアリスで、こっちがアリス・オルタ、でいいのか?
(禁書庫のどこかにある魔導書か何かの仕業だろう。
自分が自覚していない内なる自分と向き合うとか何とかいう修行的な。)
俺もここ入るの初めてだから……。
漫画とかだと自分の心の闇を受け入れれば消えたりするけど。
(残念ながら現実である。
そうしたところで消える保証もない。)
■アリス >
作り笑いを浮かべて目の前の私に同意を求める視線を送り。
「そうしましょう。とりあえずあなたはオルタね、アリス・オルタ」
ニコラスもどうやら対処法がわからないらしく。
自分の心の闇、かー。
「私、心の闇とかないパーフェクトなリア充だから……」
「友達がなんと5人もいるのよ」
ない胸を張ってドヤ顔をしていると、オルタが口を開く。
『嘘吐きね、アリス・アンダーソン……』
『あなたはちっとも充実していない』
『満足なんかしていない』
ぐむぅ。口が悪いなぁ、オルタ。
訳知り顔で初対面の人の内面を探るのもマイナスポイント。
『あなたは親や友達になんか頼らなくても生きていけるわ』
『製薬会社から卒業後に見学に来ないかって言われているでしょう?』
『今すぐにでも行くと言えばあなたの異能で高い地位は約束される』
『あなたに必要なのは、ちょっとした刺激よ、アリス…?』
……色々知りすぎてるなぁ。
ちょっと黙ってもらおうかな。
拳銃を錬成してオルタにつきつける。
ビビれー、ビビれー。
「ニコラス、出口を教えてちょうだい、この子とおしゃべりするのちょっと嫌なの」
そう。嫌。私の大切なものを否定する人は。誰であろうと。
■ニコラス >
(とりあえず抱えている本を床に置く。
持って歩くならともかく、立ったまま持っているのは意外と疲れる。)
アリス……。
(ともだちごにん。
思わず生暖かい目をアリスの方へ向けてしまう。)
あー、なんか色々作れるんだっけか。
(確かそういう異能を持ってるとか何とか。
本人から聞いたのか、そういう噂を聞いたのかは、ちょっと思い出せない。)
――とりあえずアリス。
それしまえ。
危ない。
(拳銃を構える彼女の腕をやんわりと押さえる。
正体がわからないとは言え、気軽に人?に向けていいものではない。)
■アリス >
ニコラスに腕を押さえられ、拳銃を下ろす。
そして拳銃を無害な大気成分に分解して。
『そうよ、ニコラス。空論の獣(ジャバウォック)。物質創造系の異能』
『それだけの力を持っていても、本当のことを言われたら苛立つのね』
本当のことじゃないし。
オルタが適当言ってるだけだし。
今にも噛み付かんばかりに睨みつけて。
『でも、撃ったほうがよかったのに』
そう言うと、オルタはダブっとした白衣の裾を持ち上げるかのように。
ゆっくりと手を振り上げると、腕を本棚の角に叩き付けた。
大きな音が鳴り、同時に私の腕にも痛みが走った。
「い、痛………い?」
それはまるで、自分の腕を本棚に叩き付けたような。
衝撃までそのまま伝わってくる。
ゾッとした。
目の前のオルタを撃っていたら、同じ痛みを自分も受けていたことになる。
オルタを睨みつけると、彼女は愉快そうに笑い出す。
『私はあなたよ、アリス・アンダーソン……あなたの中にいるもう一人の私』
『あなたはもうこの禁書庫から出られない』
『私があなたの代わりにアリス・アンダーソンを続けてあげるわ』
ど、どうしよう!?
「ど、どうしよう!?」
思ってることがそのまま口に出た。
ニコラスに目を向ける。
■ニコラス >
アリス!?
大丈夫か?
(アリス・オルタが本棚に腕をぶつけた瞬間、アリスの方も声を上げる。
オルタが受けた感覚をアリスも受ける仕組みらしい。)
――精神攻撃で弱らせて、その人物に成り替わる的なアレか。
(地味に面倒なタイプだ。
対処としては、確か本体を叩くか、本人が乗り越えるか、逃げるかのどれか。)
とりあえず、一番手っ取り早く逃げてみるか。
出口はこっちのはずだけど。
(見たくないものは見ないに限る。
さっき置いた本を持ち上げ、アリスの腕を取って出口の方へ歩いてみる。
そう遠くないはずだ。)
■アリス >
「ちょ、ちょっと痛くて痺れたかな…?」
服の上からその部分を触ると、鈍い痛みがある。
内出血してたら恨むよ、オルタ!
「う、うん」
彼に腕を引かれながら出口まで。
この段階まできて、ようやくここが噂の禁書庫だと理解して。
『逃げるの? 無駄よ、あなたはこの闇を照らすだけの光を持っていないもの』
出口が見えて、そこに足を踏み入れる。
「うぁ痛っ!」
全くカワイクない悲鳴を上げて額を手で押さえる。
見えない壁がある……?
ニコラスは出口をもう越えているのに。
私だけが出られない……ような…?
オルタが追いかけるように悠然と歩いてくる。
『闇とは無関係を装って生きているあなたの中はとっても居心地がいいの…』
『いいでしょ? アリス……認めなさい、私を…』
慄然としている私に後ろから抱き着いてくるオルタ。
そのおぞましさに息が詰まる。
「あーあー……わ、私…双子だったら姉妹仲良くできてなかったタイプかもね…」
ニコラスの手前、強がってみるけど。
どうすればいいのかわからない。
心の中で魔導書、『死者の指』の中に閉じ込められた時のことを思い出していた。
■ニコラス >
――やっぱりか。
(声に振り向く。
自分は自由に出入り出来るのだが、アリスはそうではないらしい。
とりあえず、自分も禁書庫へ戻る。)
大丈夫。
絶対なんとかなるから。
(アリスに抱き着くオルタを引きはがす。
頭を押さえて、ぐいと押しのけるように。)
だから心配すんな。
絶対出れる。
俺が着いてる。
(正直何をどうすれば良いのかわからないけれど。
だからと言って、友達を見捨てることは絶対に出来ないから。
アリスを守るように、オルタとの間に立ちふさがる。)
■アリス >
禁書庫に戻ってきてくれるニコラスに、心の底から安堵しながらも。
ここからどうすればいいのかがわからないままでいて。
オルタが引き剥がされると、自分に感覚のフィードバックはなかった。
これくらいなら触覚も共有されないらしい。
『ありがとう、ニコラス………』
友達の温かい言葉。
それは諦めを踏み砕く勇気をくれる。
『何をしても無駄だよ、ニコラス……』
『私はアリス……彼女そのものなんだから、攻撃も対処もできない…』
オルタのその言葉にふと、ひらめいた。
「ニコラス、私を信じてくれる?」
次の瞬間、拳銃を再び手の中に収めて。
「私が今から何をしても、信じてくれる……?」
彼の大きな背中にそう言葉をかけて。
■ニコラス >
(とは言ったものの、どうするべきか。
攻撃は出来ない。
かと言って本体がどれかもわからない。
解決策を持つ誰かが来るまで粘るにしても、いつまでかかるか。)
――お前もアリスだって言うんなら、友達の気持ちぐらい汲んでほしいんだけどな。
(軽口を叩いて見せるも、額から汗が流れてくるのがわかる。
自分に出来ることと言えば、アリスがオルタに捕まらないように逃げ回ることだけだ。)
アリス……?
(背後でアリスの気配が変わった。
目はそちらへ向けられないが、何かを思いついたらしい、と言うことは分かった。)
――わかった、信じる。
■アリス >
「……ありがとう」
オルタは言った。
私そのものだって。私の中にいるって。
だったら、こうするだけ。
「オルタ、あなたには参ったわ……降参する」
「攻撃できない、逃げられない」
「あなた今まで見てきたトラブルの中でも無敵に近い存在だわ」
オルタが何かに気付いた様子で表情を歪める。
「だから、こうするわ」
私はこめかみに拳銃の銃口を押し当てる。
『や、やめろォォォォォォォォォォ!!!』
引き金にかかった指に力が入った瞬間、私の体から黒い靄のようなものが出て行く。
オルタの中に逃げ込んだそれは、紙……
いや、本の頁でできた人間のような塊に変化する。
「ニコラス、それを逃がさないで!!」
■ニコラス >
(後ろで何が起きているのかはわからない。
けれど、何となくこうだろうな、と言うのは分かった。
心臓を鷲掴みにされるような感覚。)
アリ――ッ。
(振り向きそうになるのを耐え、ほぼ同時に視界の端で捉えた黒い影。
それがオルタに入り込んで――紙の、いや、本の化け物?)
逃がすな、っつったって……!
(今は弓もナイフも持っていない。
とりあえず踏み込んで思い切り殴ることにした。
効くのか、物理?)
■アリス >
殴りつけられた本の化け物はもんどり打って倒れこむ。
『ブベッ』
私の声で呻いたそれはすぐに一冊の本になる。
表紙にはRequiem for the Devilと記されていた。
「本当に私の中にいたってことね……」
「いつ私に憑いたのかしら? 魔導書さん?」
本はカタカタと震えて、今度は小男を想像させる甲高い声で喋り始めた。
『ち、ちくしょう………僕をハメたな』
拳銃を床に落ちた本の上に放り投げ。
「もちろん、銃弾は装填されていないわ」
すぐに拳銃は強靭なゴムの拘束具に変わって本を縛り付ける。
本当にヤバい敵だった。
けど、こうなればおしまい。
『クソッ、クソッ……こんなところに閉じ込められたらお腹くらい空くだろ』
『な、なーんて……ほんのジョークのつもりだったんだよ、僕は君を食べようなんてしてないよ?』
『あ、あああぁ! ごめんなざーい!! 僕が悪かったよォー!!』
目まぐるしく声音を変える魔導書を指差して。
「アンタは司書さんに報告して焚書よ!!」
泣き声と喚き声を上げる本を前に。
長い髪をさらっと手で靡かせて。
「ありがとう、ニコラス。私を守って、それと私を信じてくれて」
■ニコラス >
(効いた。
やはり最終的にはレベルを上げて物理で殴ればいいのか。)
悪魔の鎮魂歌……?
大層な名前のわりに……。
(なんというか、みっともない。
まぁ精神攻撃に特化している奴は、いざ相対すればそうでもないと相場が決まっているということだろうか。
遠隔操作型は近接パワー型に接近されたら負けなのだ。)
と、とりあえず簡単に封印しておくか。
(本職ではないけれど、力を持った文字の魔術は得意な方だ。
ただゴムで縛っただけでは逃げられるかもしれないので、簡単な結界の文字魔術を拘束具に記しておく。)
ん、ああ。
何か考えがあったんだろうな、って思ったからさ。
正直俺も手詰まりではあったし。
■アリス >
本がジタバタと動いて抗弁を始める。
『なんだよォー、僕は300年を生きる最高の魔導書なんだぞ!』
『それをC級魔導書なんて勝手にカテゴリ分けしてこんなところに押し込めたのはお前らだろ!』
『ああ、ウソですウソ、無害な喋る本です……』
『さっきのはただのお茶目、お茶目なんですよぉー』
結界が張られると、今度こそ本は活動を休止させた。
もう喋ることすらしない。
「接触されたままだったら銃弾が入ってない拳銃の錬成すら難しかっただろうし」
「そもそも精神的に追い詰められてただろうしね?」
んん!と大きく伸びをして。
「司書さんにこの本を渡したらご飯食べに行こっか!」
「私、お腹空いちゃったわ」
そう言うと笑って見えない壁がなくなった禁書庫を後にしていった。
ご案内:「禁書庫」からアリスさんが去りました。