2020/07/01 のログ
ソフィア=リベルタス > 「うん? あぁ、さっきのかい? 
それは少し間違いだね。 これは異能というわけではない。
うぅん、そうだね。
戸田燐、君は唐突に自分の目の前に、自分そっくりな人物が現れても大丈夫かな?」

質問に答えながら、指をついついっと、宙をなぞるように動かす。
先ほどまで瘴気を放っていた不気味な魔導書は、
近くにあった赤いリボンで封をされ、戸棚の奥に押し込まれて見えなくなる。

一仕事終えた、という風に彼女は頷くと、腰の後ろで手を組んで
少女の周りをにやにやと笑いながら、ゆっくりと歩く、悪戯を企んでいる子供のように。

戸田 燐 >  
「大丈夫……って………ちょっとわからないですが…」
「多分、平気……?」

それはソフィア先生に害意がないと感じているからで。
赤いリボンでプレゼント用の包装でもされるかのように封印された魔導書は。
不可視の力で戸棚の奥へと埋もれていった。

自分の周りを時計回りにゆっくりと歩く、先生に。
一応、頷いて見せた。

ソフィア=リベルタス > 「では、僭越ながら。」

言うな否や、ソフィアはもう一度、漫画のような音を立て、今度は燐を鏡映し、いいや、左右逆ではないのだから
まるで本人が生き写しがなったかのように姿を変える。

「ではもう一度自己紹介をしよう、戸田燐。
わたしは、ソフィア。 ソフィア=リベルタス。
人は私を、妖怪、怪異、化け物などと呼ぶ。
あぁ、猫又という種族がこの世界には概念には存在するらしいが、
それとはまた少し違うから間違えてはいけないよ?
そう、私は化け物であって猫ではないのだからね。」

燐が普段しないであろう、何処かおどろおどろしい、気味の悪い笑みを浮かべ、彼女は再び自己を証明する。
にやりと笑みを浮かべた口が裂けるような錯覚を与えるものの、
それも一瞬。
瞬きをする次の瞬間には、煙も上げずにもとに戻っていた。

「そう、これは化け物としての私の存在としての力。
後発的に発現する異能とは全く性質を異とするものだ。
ここでは、特殊な能力、とでも言っておくべきかな?」

授業を教える教師のように、ゆっくりとした口調で説明しながら
少し離れた場所にある机に彼女は腰を下ろし。
こっちへおいで、と燐を誘う。

戸田 燐 >  
「!?」

自分自身が、そこにいた。
有史以来、鏡写し以外の自分の姿を自らの目で見た者はマイノリティであろう。
さすがに驚いて目を見張る。

「妖怪の……先生………?」

さすが常世学園。なんでもあり。
私の姿になったソフィア先生は。
口の端を持ち上げ、いかにもドッペルゲンガーがそうであるような歪んだ笑顔を見せてから。
元の姿に戻った。

「な、なるほど………特殊能力…」

机に座った先生に、惹かれるように歩を進めて。
いざなわれるがままに近づいていった。

ソフィア=リベルタス > 「ははは、怖がる必要はないよ。 なにも君を取って食おうってわけじゃぁないんだ。
本棚、もとい、魔導書に近寄りすぎるのは少々危険だからね。
距離を取っておいて損はない、気分が悪かったりは、しないかな?」

ソフィアの隣にあった椅子が、彼女が手を取るでもなく、
燐がそのまま腰を落とせば座れるような位置に
すぅっと床をする音を立て、移動する。
どうぞお座りくださいとでもいうように。

戸田 燐 >  
「は、はぁ………禁書庫に来るのが初めてで、緊張はしています…」
「ソフィア先生が怖いとか、そういうのは全然なくて…」
「むしろ綺麗な人だなとは思うんですが…何言ってんだろ私……」

自動的に動いた椅子。もう驚く心が麻痺してきている。
自然体に座って、膝の上で手を組んだ。

「魔術、釣り関係以外はさっぱりで……魔術抵抗も全然で…」
「本当に助かりました、ありがとうございます」

ソフィア=リベルタス > 「君は礼を言ってばかりだねぇ。 まぁ、いきなり命の危機だと言われれば、そうもなるか。」

よしよし、と。 母親が子供の頭をなでる様に、柔らかに髪をなでる。

「とりあえず深呼吸だ、緊張をほぐすにはそれが手っ取り早い。
私が近くにいるからね、もう安心していいよ。」

やわらかく微笑みながら、燐の後ろに立って背中をゆっくりさする。
時々、ぽんぽんと柔らかなリズムで小気味よく叩きながら。

「怖かったね、もう心配いらないよ。」

こんなにも小さいはずの彼女が、大人びて居るでもなく、柔らかな雰囲気を感じさせてゆく。

戸田 燐 >  
「……普通、命を救われたら地面が割れんばかりの勢いで頭を下げると思うんですが…」

ふと、髪を撫でられる。
自分が家族から仲間はずれになった象徴。
大嫌いだった蒼い髪。それなのに、撫でられると落ち着く。

背中をさすられると、ふわりといい匂いがした。
随分と昔。お母さんにそうしてもらったみたいだと思った。

「…………」

しばらく、そうしていたけど。
少ししてから離れて。

「もう大丈夫です……私、ダメデスナー」
「異能方面だとこう…バリバリなんですが」

照れくさそうに笑って。

ソフィア=リベルタス > 「なに、だれにでも得意、不得意はあるものだよ。
私も実は、異能というものにいや、まったく縁がなくてね。
え? 人間じゃないから当たり前じゃないかって?
ハハハ。 いや、そうともいうかもしれないけど。」

自分でボケながら自分で突っ込み、ニシシと可笑しそうに、愉しそうに笑う。
まるでおどけた道化師の様に、彼女はクルクルと表情を変えるのだ。

「魔術ができないからダメ、などという決まりなないのだよ、燐。
よく覚えておきたまえ。 生物には役割があるのだ、私にも、もちろん君にもだ。
たまたま君には、魔術という役割が与えられなかっただけの事。
代わりに誰かがやってくれているのだ、できないならば甘えてしまえばよかろうよ。」

そういいながら、彼女はポケットから小さな和式のお守りを燐に手渡した。

「魔術、というわけではないがね。 お守りだ。 きっと君を守ってくれるだろう。
いや、物理的な効果があるわけではないから、自動車事故にあったからと恨まれても困るんだが。
持っておくといい。」

安全祈願、お守りにはそう書かれている。
何処かほつれたそのお守りは、古いというよりは、作ったものが不器用なようで。

戸田 燐 >  
「異能、便利ですよ」

掌に氷を一欠片作って見せて。

「暑い時期に重宝します」

そう言って片目を瞑って笑ってみせた。
本来なら、学内での異能の発動はいけないことなのだけど。
守っている人はあんまりいない。

「役割………ですか」
「私が魔術的非覚醒者であることも……異能に目覚めたことも」
「役割、なのかなぁ」

ぼんやりと答えた。実感がない。
相手の言葉に説得力がないとかではないのだけれど。
魔術も異能も、なんでもできる人に憧れがないわけではなかった。

「お守り…ですか?」

ポケットから出したお守りを両手で受け取り。
どうやら手作りのようで。その優しさに、微笑んで。

「ありがとうござ…」

そこまで言って耳まで赤くなった。

「またお礼」

嗚呼、ワンパターン!!

ソフィア=リベルタス > 「ではこんど、一緒に釣りでも行こうか、私もこれでも趣味が釣りでね?
ぜひその異能を役立ててほしいところだ、疲れたところで冷たい飲み物を乞う、一杯ね。」

くいっとおちょこで一杯飲むような手ぶりをして、冗談とでも言うように笑いながら。

「あっはっは、君は本当に律儀だねぇ。
さ、もう遅い。 住んでいる場所まで送っていこう、この町は物騒なところがあるからね。
私のエスコートが不安でなければだが。」

パチッ、と可愛らしくウィンクをして、少女に手を差し伸べる。
初老の男性が、可憐な少女をエスコートするように。

戸田 燐 >  
「そうなんですか? 私も釣り大好きです…」
「大好きというか、人生賭けてるというか……」

我ながら趣味に対する感情が重い。

「はい、氷なんていくらでも出しますよ! 今度一緒に、釣りに行きましょう!」

おー。と右手を上げて喜ぶ。ああ、素晴らしきかな同じ趣味の人。
人じゃないけどそんなことは些細。

「はい、お願いします先生!」

その手を取って歩き出す。
帰ったらルームメイトの彩子に先生に手を引かれて帰ってきたことを驚かれました。

ソフィア=リベルタス > 「では、行きましょうかお嬢さん。」

化け物は嬉しそうに微笑んで、彼女の手を取って禁書庫を、図書館を後にする。
足取りは軽く、ステップを踏む様に、しかし柔らかに、隣の少女に歩調を合わせながら。

ご案内:「禁書庫」からソフィア=リベルタスさんが去りました。
ご案内:「禁書庫」から戸田 燐さんが去りました。