2020/09/25 のログ
ご案内:「禁書庫」にアリスさんが現れました。
ご案内:「禁書庫」にクロロさんが現れました。
アリス >  
うん。図書室にいたはずなのに。
いるね……これは…禁書庫に………

前にも迷い込んで魔導書に喰われかけたことがある。
その時を思えば、余裕余裕。

とはいえ、今回は助けが入るとは限らない。
というわけで禁書庫を彷徨うことになったわけで。
この本、全部封印された書物なの……?
書海にて思う。本も別にこんなところに封印されるために書かれたわけでもないだろうに。

うろついていると、何かに左腕を引っ張られた。
ギギギ、と音を立てるように振り返ると。
『ソウル・デセプション』と表紙に書かれた本の影が。
どういうわけか子供のように細い指の形となり、私の手を引っ張っていた。

クロロ >  
『────深き海底<Deep blue>』

『────千の顔を持つ月<Hydra>』

二節詠唱が宵闇に響いた。凛然とした男の声だ。
恐らく聞きなれないであろう言葉。
人ならざる者の名を呼び、力を借りる魔術。
声の他にも、わざとらしいほど大きな足音がアリスへと近づいてくる。
煌々と輝く金色が、暗闇の中に浮かび上がる。
その正体は、一人の青年だった。迷彩柄のジャケットを着こみ
不機嫌そうに眉間に皺を寄せた青年。

「何してンだ、お前?」

気だるそうに、アリスへと青年、クロロは問いかける。
その手を退く、か細い異形の手を一瞥すれば
面倒くさそうに眉を顰めた。

「ソイツか……」

怪異と成り得た、禁書『ソウル・デセプション』
アリスに縋るように掴まれた指先へと、徐にクロロの手が伸ばされた。

「────失せろ」

威圧の一言と同時に、本の影を握りつぶそうとする。
人の形をしていようが、この身は魔力を宿す炎の体。
怪異の影を断ち切るには十分な、不浄を払う握撃だ。

アリス >  
響く声は、男性の。
どこか凛として、どこか闇に馴染む声音。
震えたままそちらを向けば、青年がいた。

とても背の高い。
不思議な緑の髪をした。
上から私に向けられた視線は、刃のように鋭利で。

「た…………っ」

助けて? 何してんだ、って言葉に対するアンサーとして正しいの?
何をしてるんだっていうか………
ピンチなんだけど!?

か細い声は緊張に震える喉から振り絞るように。
え、今の私の声!?

彼が失せろと言うと、握り潰されるように影は潰えて。
そのまま影は書物に潜むように戻ってそれきり。

「た、助かった………」
「ありがとう、ちょっと迷い込んじゃって……」

言ってから、周囲の本を見渡す。
どれもこれも、近づきたくないもののように感じられた。

「あなたは? あ、私……名前…アリス・アンダーソン。名前…私の…」

本に捕まえられた恐怖がまだ抜けきっていなかった。
あー! 情けない!!

クロロ >  
千の顔を持つ月、その名を持つものの力を借り
今やこの体は人並みの体温と相違ない。
しかしまぁ、致し方ないとは一部解除してしまった。
おかげで、この"右手"はもう使えない。
"戻ってしまった"。今日は暫く、片腕で禁書庫ライフだな。
ハァ、と深いため息が漏れた。

「おう。別に好き好ンで助けたワケじゃねェ。
 オレ様の目の前で、ウザかッたから潰しただけだ。
 そう言う本だろうと、ガキに手ェ出すのは"スジ"が通らン」

単純に気に入らないだけだ。
此処には確かに迷子は多いらしいが
どうなろうと自己責任。目の前でアリスがどうなろうと、知った事ではない。

「…………」

面倒くさそうに、後頭部を掻いた。
気だるそうに伸びた左手が、徐にアリスの手を掴もうとする。
まだ、魔術は効いている。人の体温と相違ないはずだ。

「────落ち着け」

まずは、少女を落ち着かせることにした。
こういう時に、人の体温と言うのは落ち着くらしい。
見た目とは裏腹の穏やかな声。
頭を掴まれていれば、わしゃわしゃと大雑把に頭を撫でられる事になる。

アリス >  
「そ、そう………」
「でも助けられたことに違いはないわね……」

気に入らないからそうした。
自分がそうしたいと思うからそうした。
なんだか、追影さんみたいな人。

「お……ち、つ…………」

手を掴まれて、次に髪をワシャワシャと。
そういえばさっき、ガキって言った……?
ガキって。ガキって。確かに背は伸びてないけど。

「……私、16歳なんだけど…」

不満げに唇を尖らせて。
不機嫌になるついでに、落ち着いたのも確かで。

「……不思議な髪のヒト、感謝するわ」
「感謝ついでに安全にここを抜ける通路を教えてもらえると助かるわ」

いつまで手を握っているんだろう。
ジワッと温もりが伝わってくる。
ってか、私の手汗だ。

クロロ >  
「そーだな、感謝しろよ。ガキ」

それは間違いない。
フン、と鼻を鳴らしふんぞり返っている。
何処となく馬鹿っぽい。

「じゅーりょくだからどーした。オレ様からすりゃガキだ」

身長もそうだが、ガキと言われてる拗ねる様は
クロロから見れば立派なガキだ。
手を離せな両腕を組んで、今度は鼻で笑い飛ばされた。
馬鹿っぽさが加速する。実際馬鹿だった。

「オレ様は不思議な髪じゃねェ、クロロだ。
 ま、そンだけ言えりゃァ十分落ち着いたろ?アリス」

「出口?オレ様は此処に用があるから知らンぞ。お前、もしかして迷子か?」

アリス >  
「ガキじゃないってば!」

名前! 名乗ったのに!! なんてヒトなの!!
助けてくれたのには感謝するけど!! 失礼!!

「それは失礼しましたね」

ムッとする。子供扱いされて黙っていられるほど大人ではない。
あれ、ってことは私は子供?
んん? まぁいいか。私はレディー!!

「迷子とか子供扱いされてまであなたを頼る気はないわよ!!」
「ありがとう、それじゃさようならクロロ!!」

肩を怒らせて適当な方向に歩き出す。
秋だから、外はもう暗くなっていて。
採光も不十分な禁書庫は歩き辛い。

ふと、足元に大穴が空いて。
私は際限なく落ちていった。

落ちて、落ちて?
私は元いた場所に落下した。

「ふぎゃっ」

顔から落ちて。顔を上げると目の前にはクロロがまだ同じ場所にいた。
その辺の大気成分からハンカチを錬成して顔を拭う。

「また会ったわね」

クロロ >  
「一々ウルセーなァ、ギャーギャー吠えンな。ブスになるぞ」

クロロは不機嫌そうに眉を顰めた。
生憎、此の無法者にデリカシーと言うものは存在しない。
口の悪さも折り紙付きだ。面倒くさそうに後頭部を掻いている。

「急に怒鳴ンなよ、メンドクセェな。好きにすりゃいいが、ソッチは……アー……」

遅かった。言う前に、アリスの小さな体は"落ちていった"。
そう言う場所だ。何が起きても不思議ではない場所。
目の前に落ちてきたアリスを見下ろせば、また深いため息が漏れた。

「おう。大丈夫か?」

とりあえず、心配はする。
結構いい感じな角度で落ちた気がする。

「イーイ感じに顔からイッたな。割と美人なのに、運がねーな。
 で、怪我とかはねーのか?オラ、良く見せろ」

その場にしゃがみ込んで視線を合わせれば、まじまじと顔を覗き込んだ。

アリス >  
「大丈夫………」

鼻血が出ている。全くもって年頃の女の子らしくない。
慌てて顔を拭いまくる。
ああもう! 恥ずかしい!!

「レディーの顔を覗き込まないの」
「ってか、美人とか簡単に言わない!!」

ムキーッと両手を上げて吠える。
顔も赤いし、鼻血は出てるし!!

その場に座り込んでため息をついた。

「禁書庫……パないわね………」

ため息は足元に転がっていった。早く帰りたい。

クロロ >  
「何処が大丈夫なンだよ。鼻血出てンじゃねェか」

アーアー、とうんざりした様子で声を上げた。
半ばヤケクソと言わんばかりだ。
思ったよりも情緒が安定しないのがまさに"子どもらしい"と言うか。
困ったように眉を顰めれば、パチン、と指を鳴らした。

「怪我してる奴に、レディーもクソもあるか。
 オレ様が美人と思ッたから口にしただけだ。
 ンな所で吠えて腐ッても、しょうがねェぞ?とりあえず、ジッとしてろ」

掲げた右腕が、円を描く。
風も吹かぬ暗闇に、ふわりと柔らかな風が吹いた。

『夢見の世界<Dream Land>』

『猫の女神<Bast>』

クロロの呼び声に応じるようにぴょん、と暗闇から何かが飛び出た。


\ニャア/


それは、一匹の猫だ。
但し、子猫のようにかわいくは無い。
何処となくふとましく、ふてぶてしさを感じる図太い白猫。
女神より賜りし神秘の猫だ。


\フゴ…/


なんだか可愛くない声を上げてアリスを一瞥すると
転がるアリスの隣で丸くなった。
すると、どうだろうか。不思議な事に、顔の痛みも傷を癒えていく。
女神の施し、クロロが覚える数少ない癒しの魔術。

「とりあえず、ソイツから離れンなよ。
 ……まァ、なンだ。とりあえず、オレ様も言い過ぎた。
 この辺はその内帰れるようになるし、とりあえず暫くはジッとしてる方が安全だぜ?」

巡り巡ってそれが自分のせいならば、謝罪するのが"スジ"と言うもの。
ほんの少し、歯切れ悪く謝ればドカッとその場に胡坐を掻いた。

「で、お前なンだ?本とか好きなンか?」

アリス >  
「鼻血が出るのは生きてるからよ!」

もう滅茶苦茶。自分で何を言ってるのかわからない。
鼻血って全くカワイくないから嫌い。

眉を顰めて指を鳴らすクロロに、小首を傾げて。

「な、なにを………」

右腕が円を描くと、風が髪を靡かせた。
こんな室内の、書庫に。風……?

すると、不思議。暗闇から白猫が出てきた。
じゃがいもみたいな顔をしている。

猫が隣で丸くなると、痛みが消えていくし、鼻血も気づけば止まっていた。
ああ、こういう……魔術、なのかな…

「あ、うん……私こそ、ごめんクロロ…さん」

頬を掻いて、猫とクロロに交互に視線を彷徨わせた。
相手に気遣わせて会話まで任せていれば世話はない。

「本、好きよ。一人でも成立する趣味だったし…」
「あなたも本、好きなの?」

ああ、こんな鸚鵡返しみたいな会話のキャッチボールしかできないの!!
アリス・アンダーソン!! お前に人生は重荷ッ!!

クロロ >  
「さンはいらン、呼び捨てでいい。こそばゆくてしょうがねェ」

礼節を知らないわけではないが、そう呼ばれる程大層な人間でもない。
所謂"思春期"ッてのは、こう言う子どもの事を言うのか。
色々と面倒ごとが多そうだな、と胸中で独り言ち。

「オレ様は魔術師だからな。知識が詰まッてるモンに本が多いッてだけだ。
 本自体にこだわりはねェ。本が好きッつーよりは、ベンキョーが好きッてだけだ」

この世界の媒体が本であるからこそ、本を読む。
禁書庫に至ってもそうだ。知識とは、如何にも"本"に刻まれるものらしい。
今じゃ"ネット"と言うものにもあるそうだが
クロロの求めるような場所は本にしかなかった。
顔に似合わず知的な事を言ったせいか、白猫は豚のように鼻で笑い飛ばした。

「ア?」

クロロは猫を睨む。
そう、この猫は飽く迄女神の使徒。
クロロのものでは無い。当然、仲はあまり良くない。
白猫はじゃがいもを洗うように、自分の顔を撫でる。

「上等だクソ猫!!オレ様がわからせてやる!!」

……そして、沸点も低かった。
今、猫とクロロの戦いが火ぶたを切る──────。

クロロ >  
 
             ~~~5分後~~~
 
 

クロロ >  
「…………」\ちーん/


\なーぅ/


何と言う事でしょう。
あれだけ啖呵を切ったというのに
白い煙でボコボコ喧嘩していたと思えば
まるで止まらない状態で寝そべって負けているではありませんか。
クロロの上で勝利宣言かのように、じゃがったドヤ顔で野太い鳴き声が禁書庫に響いた……。

「……お前一人ッて、ダチとかいねェの?」

そしてこの状態で会話を続けようとする。
無駄に胆力だけはあるらしい……。

アリス >  
「そう? じゃあクロロ!」

にっこり笑って血のついたハンカチを分解する。
自分で作ったものだから自分で消せるのはわかるんだけど。
なんで自分の血まで分解できるんだろう。不思議。

「へえー、勉強が好きなのね? 私、好きでも得意でもないからそういう人すごいと思うわ」
「というか、イギリス人なのに日本に来て日本語で勉強してるだけでノーベル頑張ったで賞ほしい」
「むしろ、生きてるだけで褒められたい」

言ってる間に猫がクロロを笑って。
クロロが猫に突っかかって。
5分でクロロは猫に畳まれてしまった。

「……だ、大丈夫…?」

恐る恐る聞く。猫に負けて倒れていいのだろうか。
良い悪いの問題じゃないというのは、直感でわかる。

「友達、今はいるけど……昔はいなかったから、いじめられてて」
「なんてー! 昔の話とか…楽しくは、ないんだけど…」

マッハでキョドった。我ながら表情がコロコロ変わる。

クロロ >  
腐っても女神の使徒だ。強いぞブサイク猫。
ぴょん、とクロロの上から飛び退いた白猫は
再びアリスの下へと戻って丸まった。如何にも気に入ったらしい。

「…………」

「……だ、大丈夫だ。オレ様無敵だからな……」

その割にはもうブレッブレッで声が震えている。
猫は剣より強し。ちょっと生まれたての小鹿みたいになりながら
何とかその場に胡坐を掻いて一息吐いた。
まだ猫を睨んでいるが、白猫は歯牙にもかけない。
カーストが決まってしまったらしい……哀れ……。

「凄いッつーよりも、ただの趣味だ。褒められる事じゃねェ。
 ……お前思ッたよりもこう、意外と褒められたがりと言うか……」

その理由は、続く言葉で何となく察する。
神妙な強面で眉を顰めた。
細くなる金色が、アリスの目を見据える。

「別にお前の過去をどーのこーの言う気はねェ。
 喋りたくなきゃ、喋らなくてもいい。今は元気そーだけど……」

「お前、"大丈夫"なのか?」

"大丈夫なのか"。
その一言には、多くの意味が込められていた。
有無を言わさず、嘘を許さず、静かに見据える金は煌々と光っている

アリス >  
「無敵って猫に負けてもノーカウントなんだ……」

魔法猫? なのはわかる。
だってこんな背の高い男性に勝つんだもの。
でもそれを加味しても負けた直後に無敵発言は肝が太い。

「趣味ね……良いんじゃない? 趣味は人格形成の一助よ」
「私、趣味がないのが趣味ですって言う人を無傷で帰さないのが趣味だし」

冗談を言いながら座り直して猫を呼ぶ。
近くに来た彼?を優しく撫でた。

「だいじょーぶ」
「親友ができたの。二人よ。だから……もういいってわけじゃないけど…“大丈夫”」

穏やかに笑って。
ちょっと喋りすぎた。
コミュ障極まってて人と話すの下手すぎていけない。

初手に人に過去を語るガールとか彼氏もできないぞ。猛省せよ。