2021/10/11 のログ
ご案内:「禁書庫」にレヴァーリア・M・レイフィールドさんが現れました。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > どさりと崩れた本の束。その一冊がぱらぱらと捲れれば、ぱちりぱちりと紫色の雷が周囲を照らし、ホコリまみれの書庫を彩る。
瘴気とも呼べる匂いが周辺を満たしていけば、開かれた本の真上に蛍光グリーンの大きな方陣が一つ、二つ。
紫と緑の明かりが部屋をギラリと照らしながら、方陣二つがクルクルと宙を回転して、ゆっくりと重なり合えば。
「ああ、ああ。久しぶりに外に出られましたね。」
にゅい、と顔を覗かせるのは赤毛の女。
ひやぁ、なんてゆるい声をあげながら、方陣からずるりと身体を引っ張り出すように抜け出して、どしゃりとその場に倒れ伏す。
「ああもう、空気が悪いったらないですねぇ。」
こほん、こほんと二つ咳払いをしながら起き上がる長身の女。衣服を一つも身に着けていない全裸の女は、その見事なプロポーションをそのままに。指を鳴らして本を閉じる。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「………まあ、"私"が入っていたわけですから、ここらへんの本は危険なんでしょうね?」
口でそう言いながらも、背表紙を眺めて、一冊二冊。
背表紙を撫でて、中身を読み取る。………一冊目は危険を感じて指を離し、二冊目を手に取る。
その二冊目に手を当てれば、じっくりと中身だけを"読む"。
「どうやら、元々居た場所からは遠く遠く離れてしまったようで。」
肩を竦める。特に悲しいとか寂しいとか、そんな感情は無い。
むしろ、唇の端を吊り上げる。神や悪魔が遠い存在になっているのならば、むしろ仕事がやりやすいというものだ。
指を鳴らせば、暗闇が周囲を包み込んで。
そして、その闇が晴れていく。
その中から現れた女は、しっかりと衣服を着込んでメガネも身に着けて。
くるりとその場で一度回転して、にへら、と笑い。
「こんな感じですかね?」
適応力抜群の悪魔である。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「後はまあ、一人くらい哀れな犠牲者がいれば言うこと無しなんですが。流石に本だけでは、この世界の情報は足りませんし。何より私自身が動くためのエネルギーが足りないですし。」
んぅ、と唸る。
とはいえ、ここは間違いなく封鎖された場所であろう。人の気配もほとんど無い。
「………だからこそ、ワルイコトをするのには都合がいい場所ではありそうですけど。………ちょっとばかりいつものを使ってみましょうか。」
そいや、と目を赤く光らせれば、周囲にふわりとした桃色の匂いが立ち込める。
魅了………の亜種とでも言おうか。
気配や雰囲気の一種でもある。この匂いを感じると、"気になる"のだ。
それが扉の向こう側から感じられるなら、なんとなく扉を開けたくなる衝動に。
壁の向こうから感じられるのなら、その奥の部屋のなかを見たくなる。
たったそれだけ。
でも、悪魔の誘惑としてはそれだけで十分。 その匂いをふわふわと漂わせながら、外への扉を探す。
自分で扉を見つけるなら良し。誰かに開けてもらえるならば、尚良し、ということだ。
ご案内:「禁書庫」に藤白 真夜さんが現れました。
■藤白 真夜 >
「う~……もしかして私、祭祀局員じゃなくて禁書庫の雑用と勘違いされているのでは……」
とぼとぼ。
両手に抱えた比較的危険度の無い"おとなしい"本を書棚に置く。
一度この場所に遣われて以来、なぜか禁書庫担当の人から呼ばれることが何度か。
やることは全部、整理整頓、掃除、在庫処理。
「……?」
そんな中、ふと何か気になるものを感じた。勘……というには流せない、なにか。
そっと、覗き込んでしまった。この場所の危険度を考えれば、ありえないほどの軽率さで。
(……人。)
視線のすぐそこに映るのは若い女性。
それだけなら、なんてことはないのだけれど。……この場所に居るということ自体が、もうおかしかった。
禁書庫に入るには、許可が要る。警備も厳重で、そうそう入れるものじゃない。
何より、幾度も魔の者と渡り合った躰が告げている。……こいつは、やばい。
(……あ~~~。な~んでこんなことしちゃったんだろ……!本部に連絡入れてもいいくらいの案件なんですけど!?
……まあ、いいや。相手がその気なら、もう殺されてるレベルな気がするし。
異邦人なら、戸惑っているはず。不安は説いてあげないと……。
……悪意があったら、……、……その時は、その時ね……)
「あ、あの~……?
どうか、されましたか?ここ、一応立ち入り禁止区域なのですけど~……」
ちょっと恥ずかしそうに、何処か申し訳無さそうに、女性に声をかけた。
人馴れしていない、図書委員のような、面持ちで。
……内心は、半ば――命を一つ捨てるような気持ちで。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > ♪
「人の声を久々に聞けました!
ああ、もう、この場所に引き寄せられて、本当に困っていたんです。」
声をかけてもらえれば、ぱぁ、っと顔を輝かせて振り向いた。
ふわふわとした赤毛の女性は、見るからに"普通"で、だからこそ違和感は拭えないだろう。
ああ、おそらくこの世界の学生なのだな、と分かれば、にっこりと笑顔を向けて。
「……ああ、申し遅れました。
私、レヴァーリア・M・レイフィールド。 こちらの本のどれかに閉じ込められていた悪魔の眷属です。」
相手が気恥ずかしそうに、おずおずと声をかけてくる様子に大仰に喜んで。
その上で………はっきりと、くっきりと自分の名前と種を名乗る。
「立入禁止、いやまあ、そりゃそうでしょうねえ。
私も逆の立場なら人の立ち入らぬ場所に置きますし。
あ、お嬢さんのお名前を伺ってもよろしいでしょうか。
あと、私のカッコ、変じゃないです?」
表情をころころ変えながら、目の前でくるりと回って見せて。
■藤白 真夜 >
……ほっ。
内心、胸をなでおろす。すごい勢いで。少なくとも話は通じそう……。
ものすごい普通な人だ――、……ふつう……?
いや、いや。ソレは良い。
どうなったとしても、この人は本当に異邦人なはず。
流れついてしまったのであるならば、どうあれこの場所を説明するのが、この島、この世界に住む人間の責務のはず。
堂々と悪魔の眷属と言われたら、流石にちょっと困った顔になるんですけど。
「あ、あ~……それは、大変でしたね……」
……本当に出てきて大丈夫な方だったんですか?とは流石に聞けなかったから、困り笑いで誤魔化して。
「あ、失礼しました。私は、藤白 真夜と言います。祭祀局に努めて――と学園の話はわからないでしょうか……?
とりあえず、ここからの出方と、ご希望ならこの島への移住手続きとか、色々出来ますけれど……、」
はて、どこからお世話をすればいいのだろうか、と異邦人(?)との接触が少なかったから少し手間取って。
……人懐っこそうな笑顔を浮かべる彼女に、静かな微笑で返すだろう――
「――はい。とってもお似合いですよ」
私より背は高いけれど、明るそうな人だと、少し眩しげに瞳を細めて。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「なるほどなるほど。
祭祀、祭祀………。 学園に、島、ですか。」
どうやらこの学園はこの手の相手に慣れているらしい。
思ったより面倒な場所かもしれない。顎を少しだけ撫でて目を細め。
その上でにぱ、っと笑顔を向ける。
おとなしそうな少女がそれなりに怯えずこちらに言葉をかけてくる。その幸運な状況に素直な笑顔。
「はい、ありがとうございます、真夜さん。
私の名前はレヴァーリア……長ければ、レヴァで構いません。
………なるほど。
この場所での過ごし方を教えて頂ける、と。
では、真夜さんに何をお返しすればよいでしょう?」
首を傾げる。親切にされるということは、つまるところ貸しと借り。
相手の言葉に頷きながら、真顔でそんなことを返す。
■藤白 真夜 >
「……ふぅ」
こっそり、安堵のため息。
禁書庫でエンカウントする緊張感から、見知らぬ人を案内するタイプの緊張感へとすり替わっていく。
……実際のところ人とお話するのもそう得意でもないですし。
とはいえ、なぜかこのひとが気掛かりになってしまう何かの、せいかもしれなかったけれど。
「い、いえいえっ。これくらい、学生なら皆出来ることだと思いますから。
……では、レヴァーリアさんと」
……笑顔が上手なひとだ。
そう思った。人当たりが良いから、どこか気になってしまうのかとも、思ったけれど。
「ああ、お気になさらないでくださいっ。
レヴァーリアさんも、何もわからず困っていらっしゃったのでしょう?
私はただ此処に居ただけですから、お返しだなんてとても!」
それに、出来るのは案内くらいですから、と言葉を続けて。
……ああ、でも。
良いことが出来るのは、うれしいな。
お返しを断るその顔は、先程よりも嬉しそうな笑顔になっているでしょう。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「あら。あらあら。
無条件に助けて頂けるんでしょうか。」
ああ、なるほど。この世界はそこそこ平和なのだろう。
悪魔という種を知らぬか、知っていても手を差し伸べる温厚さか。
どちらにしても、なんて都合がいい場所だろう。
穏やかに微笑む少女に微笑みを返しながら、己の幸運に感謝する。
「……それであれば、是非お願いいたします。
ただまあ、いろいろと教えていただければそれだけで。
それより、もう一つお願いしても構いませんか。
恥ずかしながら、その………、お腹が空いておりまして。」
頬を少しばかり朱に染めながら、掌で己の頬を抑えて。
「………少しばかり、元気を分けてもらうことなどはできないでしょうか?」
目を細めて、じ、っと赤い瞳で見つめる。
無条件で助けるというのであれば、どこまで無条件で引き出せるか。
相手の善意にたっぷりとつけ込んで。
■藤白 真夜 >
「……あっ。そ、そうですよね!やっぱり、ひとまず此処から出てしまいしょうか。
もう突き当りが出口で――、」
お腹。その点までは考えが及びませんでした。
こちらに来たばかりなら、移住手続きとかよりもまずレストランにでも――、
そう考えて出口まで、と言った矢先。
「……げ、元気、ですか……?」
元気。分ける。また困った顔になった。
これは、まさか私に応援して元気を分けてもらおうとか、そういう話では、ないはず。
ああ……別世界の人間と価値観と認識が違うことを考えるのが、おそすぎた。
……でも、これは都合が良い。
仮に、この見た目はすごい普通だけど悪魔の眷属を名乗る女性が、人に害為す者だとしても。
……私の犠牲なら、無価値に抑え込める。
「あ、あの~……。
それは、もしかして、命とか~、魂とか、そういう……?」
おそるおそる、聞いてみる。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「出口出口、そうそう、出られなかったらどうしましょう、って思っていたんですよ。この部屋そのものが厳重に封をされていたら干からびちゃいますからねー。」
ころころと笑う。
笑いながらも、相手の顔が少しばかり悩ましげになるのなら、どうやらこの提案は彼女にとって警戒心を灯すことになったことを悟る。
とはいえ、悲鳴を上げたり、怯えたり、敵意を見せることはない。
ならば、もう少し粘ってみましょうか、なんて。
「いえいえ。まあ、大げさに広げればそうかもしれませんが。
ただ、それを無条件にください、なんて言って聞いてもらえるなんて思っておりません。
例えば日常的に一日を過ごすと、それなりに疲れたりしますよね。
それの積み重ねが命であると考えるなら、疲れてしまうということは命を削っているわけです。
同じく魂も精神力だと考えれば、気を遣うということだけでも、魂を削っていると言えますね。
私がほしいのはその削り屑程度で大丈夫。ちょっと走ったとか、少し神経を使う作業をしたとか、それだけで。
ええ、もちろん、もう少し頂けるのであればそれはそれ、嬉しいことですが。」
さらさらさら、と言葉が舌から流れ落ちて、駄目です?なんて首を傾げて相手をじっと見つめて。
■藤白 真夜 >
(う、う~ん。やっぱりこのひと、出口教えないほうがよかったかなぁ~……。
とはいえ、ここまで知能があって独立してるのを、異邦人と捉えないのも――、)
どこか、このひとには気を使ってしまう。
そう思いながら続けていた気遣いが、彼女の言葉で途絶えた。いや、気付かされたというべきか。
「――成程。
あなたにとって、命はそう見えているのですね。
そうだとしたら、私はもう死んでいるのでしょうね」
あなたを見る目付きが変わる。
どこか気弱で、柔和なそれが。あなたを真っ向から見つめる意志の籠められた瞳になるだろう。……どこか、悲痛な。
「では、あなたの流儀に合わせて条件を付けましょう。
ひとつ。私の精神に干渉はしないこと。
ふたつ。私に魅了、その他全ての術式、生命と魔力を吸う以外に私に不利益を与えないこと。
みっつ。……今後、同意がある場合とあなたの活動の存続に危険がある場合を除き、人を害さないこと。
……守れないのであれば、」
その表情はいまだ弱々しい。この表面上の言葉に意味など無いことも。
それでも、あなたを見る暗く赤い瞳は、真っ直ぐにあなたを見つめている。
「……あなたはここで干からびることになるでしょう」
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 相手の瞳の雰囲気が変わる。
それでも、彼女は変わらずニコニコと微笑んだまま。
「ほう、条件。 ありがとうございます。
私は貸し借りはどうしても苦手なものですから。……そういったものがあった方が嬉しいですね。」
ウィンクぱちり、相手の言葉に頷きながら、相手の意図を考える。
どうやら彼女もまた、ちょっと彼女の知る人間とは少しだけ違う様子。
とはいえ、だからといってやることは変わらない。
「………ご安心ください。
その3つ、どれも私は侵すつもりのないことばかり。
古くから私の種は契約を重んじておりますので。
簡素に騙し、力に任せて何かを食らうような生き物とは違います。」
胸の前に手を置いて、微笑み。
自信満々に言葉を放つ赤い悪魔。
「………ただ、ただただ、少しだけ気になるのは。
ここで干からびると言うことですが、どのように?
私の安易な行動を抑止するためにも、それを一つ、伺ってもよろしいでしょうか?」
半分は純粋な興味。半分は計算。
変わらぬ笑顔のまま、ねえねえ、教えて下さいよー、なんて気安い雰囲気で尋ねてくる。
■藤白 真夜 >
……ちょっと、失礼な扱いをしてしまった気がする。
もっと悪辣な魔族かと思ったけれど、この反応はもっと高尚な何かかもしれない。
……けれど、相容れないことは事実だった。
「……、……」
禁書庫には、強力な魔術結界が貼ってある。それも、内側向きの。
私の預かってきた認証鍵がないと、開けられない。……はず。
このひとが、とんでもない魔力の持ち主なら話は別だけれど。
「……私を殺したら、出られなくなりますよ」
短く、そう答える。安易な行動なんて言われて出てくるものは、それしかない。
「貴女に敵うなんて、思っていませんから。実力差くらい解ります。
……貴女じゃ、私は殺せませんけどね」
……けど、このひとの言葉は私の矜持と噛み合わない。どうしても。
だから、少しだけ歯向かう。……震える指を握りしめて。
「簡単ではありませんか?
貴女は目の前の獲物にありついて、私と一緒にここを出る。
そのあとは、この島に残るなり、あなたの思うがままにすればいい。」
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「なるほど、なるほど。 安心してください。
私は決して善性ではありません。 ですが、野生の獣とも、又違います。
島の生き物を全て食べ尽くし、それで飢えるような。
阿呆な真似はいたしません。
それはまあ、私のプライドに素手で触るようなものであれば別ですが。」
ころころ、と笑いながら、ウィンクパチリ。
この場で殺してやる、とでも言い出していたら、ちょっとばかり対応は変わったけれど。
度胸のある人間は嫌いではない。
「ええ、とても。
その条件、承りました。
この私、レヴァーリア・M・レイフィールド。
真夜さんとのお約束を守ることを誓いましょう。」
そっとお辞儀をしながら目を閉じて。片膝をついて胸に手を当てる。
「………守れるなら、どの程度頂いてもよいんです?」
ウキウキ、みたいな表情で顔を上げる悪魔。
瞳キラキラ。
■藤白 真夜 >
「……はぁぁ~……」
思わず、ため息。
安心と、呆れのふたつ。
……このひと、私をからかってたとかでなくて素がこれなのかな……。
「……あなたがお話のわかる方で良かったと思います。
でも、覚えていてくださいね。あなたがそのプライドを捨てる時。
……私はあなたを倒すでしょう。」
……まずもって、ムリだろうけれど。
戦いは、勝つためのものではないから。
「……ホントに、守りますよね?」
何その目……。
緊張しきったさっきより不安になってきた気がする。
「……あなたの程度がわからないので少し不安ですけど、……信じられませんけど、信じます。
8割ほど、持っていってください。」
意識したせいか、もしかしたら魔力の質は見えるかもしれない。
細身の躰に、歪なほどに詰まった魔力が。
「――ああ、忘れていましたね。とても、不味いかもしれませんから、少し多めに。
……私、どうせ"戻って"くるので」
赤く、濁った血液のような色合いのそれが、あなたの瞳には映るかもしれない。
……それが美味しく見えるか不味く見えるのかは、あなた次第だけれど。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「それを捨てるのならば、それはもう私ではありませんから、好きにしてもらって構いません。
人が死んでゾンビとして蘇ったからとて、大事にして欲しいと口にする人はいないでしょう。」
契約は彼女の美学であると彼女は口にした。
それを捨てた自分は自分ではないと。
相手にその力があるかないかは関係なく、ただ、相手の言葉にかぶせるように。
「まあ、信用できないでしょうねえ。
分かります、分かります。
だからこそ、そんな私を信じて約束してくれた方を裏切って得られる利益とは何でしょう?
そりゃまあ、貴方が世界で唯一の人間であるなら考えますが。
少なくとも貴方の存在が"ある"方が私にとって好都合。
そういった「理」で説明するほうが、納得、しやすくないです?」
ころりころりと舌はよく回る女。
首を少しだけ傾げて、相手を見つめ。ああ、なるほどなるほど。
「戻って来るのだから多めに差し出すと。
なるほど、なるほど。 どのように頂いてもいいのでしょう?
粘膜接触が一番都合がいいのですが、駄目であれば素肌の接触でも。」
相手のその自己犠牲とも少しだけ違う精神性に、頬を緩ませる。
彼女はそういった人間が好きだった。悪ではあるが、敵ではない。
さあさあ、なんて両腕を広げて。
■藤白 真夜 >
「……いいえ。
理解は、出来ます。
でも、納得は出来ない」
きっと、"命"の測り方自体が、嫌だったのだろう。
私よりよほど現実的なことを告げる悪魔の眷属とやらに、頷けはする。
彼女の矜持も、美しく感じる。
それでもやはり、何処か拒絶しているのだった。
……そんなことを考えていたから、なにを言っているのか、ちょっとわからなかった。
「……ね、ねんまく?……や、やわはだ!?」
――くっ。もしかして、そ、そういうタイプ?
なまじ嫌いな性質だと思ってしまった以上、どこか嫌な気がしてしまう。
別に、……いや唇ですよね……唇を惜しいと思うような人間じゃない。
このひとは、自らの誇りを語ってくれた。
なら、私もそれに従うべきだ。……自らの摩耗は、惜しまない。
「……わ、わかりました。
差し出すと言った以上、どうでもいいことです。
……お、お好きにどうぞ……」
どことない抵抗から、頬を染める。……そういうものは、もう捨てたと思ったのに。
僅かな羞恥心と共に、目を閉じて唇を差し出すでしょう。……すごい眉が寄ってますけど。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「それもまた。生き方が違うのですから当然のことですね。
でも、理解をしていただけるだけ十分です。」
相手の言葉に頷きながら、気分を害した様子もない。
相手の声がちょっとばかり上ずるのを聞けば、ころころ、と優しく笑って。
「これは。
こればかりは、この扉を開けていただいた借りを返すために伝えますが。
悪魔相手に、お好きに、なんて言わない方がきっとよろしいかと。
精神に作用する魔術と害を為すこと以外、私は何も禁じられておりません。
ええ、ええ。 粘膜は人はたくさんございます。
本当に、どこから吸ってもよいので?」
相手が目を閉じれば、ぞくぞく、と背筋が震えるのを抑える。
ええ、ええ。相手が誠意を見せているのです。
一流の悪魔たるもの、顧客の勘違いで利を得るわけにはいきません。
「目も、鼻も、口も。
下半身にもございます。
本当に
お好きに
しても?」
ころころと笑いながらも、そっと頭を撫でて、じわりとエネルギーを吸い上げる。
それは気を抜いていれば、心地よい脱力感にも似たもの。気を張っている彼女からすれば、心地よさを感じるかどうかは微妙なところであるが。
■藤白 真夜 >
「……っ!」
こ、言葉を間違えた……っ。
しょうがないでしょう、そういう言葉、慣れてないんだもの……!
言葉尻を捉えるとか、ほんっと悪魔っ。
むしろ、目を閉じてこの羞恥を堪える時間を作られたほうが辛いんですけど!
……ささくれ立った心情の中で、やはり撫でられて良い気はしなかった。
人外に魔力を吸われたことは、よくある。けど、このタイプははじめてだったから。
むしろ、わずかに心地よいからこそ、悔しさにも似た感情がよぎった。
この人は背が高い。目を開けば、わずかに見上げながら……どうしても目付きが悪くなった。
「……ご忠告、ありがとうございます。
悪魔というのは、本当に、性格が悪くて、意気地が悪くて、性根も悪くて、最低ですね」
……ひとを罵る語彙があんまり無かったけれど。
言葉とは裏腹に、顔を真っ赤にして、至近距離から睨みつける。
「……、……キスで、してください」
言い切った後、何か間違えていないか、何処か不安そうに、上目遣いで見つめる。
……張り切った緊張の糸は途切れ、自信もなく、瞳は揺れた。
……私に、その価値はあるのだろうかと。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > あらあら。
恥ずかしがる顔が見れただけ良しとしましょう。ええ。ちょっぴり惜しいとか思ってませんよ?
「いきなり押し倒さないだけ紳士淑女の方面だと思いますけどー。
まあ、それを的外れとは言いません。
その御蔭でこんなおねだりを耳にできたわけですし?」
相手にじとりと見上げられれば、こちらは変わらぬ穏やかな笑顔。
ああ、ああ、今日は運が良い。
「可愛らしいお言葉、頂戴しました。
では少々失礼して。 ええ、ご安心くださいな。
何の精神作用もありませんが、悪魔として、相手を心地よくさせることは長けておりますので。
あ、もっとストレートに言いましょうか?」
相手を自分と壁の間に挟むようにして、壁に手をついて相手を閉じ込め。
「私、キスは得意なんですよ。
ええ、とっても♪」
その言葉を最後に、腕の影で顔を重ねて。
誰も来ない禁書庫の、更に物陰で一つになる二人の影。
一瞬でも吸い上げることは可能だけれども、あえてとっぷりと、時間を使って。
ええ、できるだけ早くとか言われてないですしね?
■藤白 真夜 >
「……え。
――んぅっ……!?」
……やっぱり、さいあくだ。
羞恥と、悔しさと、……絶対信じたくない感覚が混じり合う。
「ん、……ぅ、……ん、……、っ」
この後に及んで、抵抗するなんてことはしない。
遅々として引き抜かれていく魔力の感覚、彼女は約束を守るだろう。
約束を守ると言った以上、その約束に穴があった私が悪いだけのこと。
……ああ。そういえば、なぜ羞恥心が残っているのか、わかった。
女の人とキスするのは、はじめてだったから。
「んぅっ、……、……ちゅぅ……」
無抵抗に、なかば従順に、力を抜く。
ただくちびるを差し出すだけのそれが、ほんの少しだけ、受け入れるようにカタチを崩した。
けれど、そこから態度が軟化することは、無い。
堪えることには慣れていると言わんばかりに。
カタチだけ、あなたに躰を預けることでしょう。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > キッチリ八割。
それが終われば、唇を離して、目を細める。
ほんの僅かも狂いのない、完璧な仕事である。己の唇を舐めて、力を感じ取る。
血の匂いが僅かにするが、それはそれ。血でも構わず吸ってしまう悪魔なのだから、気にする様子もなく。
「……ありがとうございました。では、約束通り。
出口はこちらでしたね? この島の情報をいただければ、私は後はお申し出の通り、好きにさせていただきますので。
ええ、もちろん、契約の範囲内で。」
悪魔が『好きにする』というと相手に不安を与えるのも、しっかりと承知の上で。
「真夜さん、それでは参りましょう。
久しぶりに空が見られるのですから、気持ちが昂ぶってしまいますね。」
子供のようにはしゃぎながら、相手の手を取るだろう。
外に出れば島の話をしっかりと聞いて、それで背中を向けるだろうか。
悪魔は悪魔らしく、約束は守るようで。
■藤白 真夜 >
……どのくらい、かかっただろう。
それすら、ぼんやりした頭で何も考えられない。
……躰は、どうということはない、はず。
くちびるを奪われることくらい、経験はある。
もっとすごいことも、したはず。
相当量の魔力が抜けたのは、一番些末なことだった。
でも、何処か夢見心地で、彼女に手を引かれながら、付き添うことしか、できない。
抜けた魔力を補填しようと赤い細かな霧がぽつぽつと躰を纏っていたけれど、魔力切れの問題でもない。
……全部、茹で上がった私の頭のせい。
あんなに、相手のことを思いやる口付けは、一度もしたことがなかったから。
気がついたら、書庫の外で道案内まで終えていた、らしい。
案内するどころか、彼女の腕にもたれていたのを、慌てて体を離す。
「……次にお会いすることがあったら、二度と、好きにはさせませんからねーっ!」
……飄々と去りゆくその背中に、罵声を浴びせるでしょう。
多少は、あのさぞや大食らいであろうあの悪魔の足しになればいいのだけれど……と思いながら。
ご案内:「禁書庫」から藤白 真夜さんが去りました。
ご案内:「禁書庫」からレヴァーリア・M・レイフィールドさんが去りました。