2019/03/12 のログ
ご案内:「大時計塔」にツクヨミさんが現れました。
■ツクヨミ > 大時計塔、その屋上の物陰から周囲を警戒するように一人の女学生が現れる。
胸に紙袋を持ち、それを大事そうに抱えながら、
誰かの視線を気にするようにそそくさと階段へ下りていった。
その直後、同じ物陰から男子学生服を乱したツクヨミがうつろな表情でゆっくりと現れる。
先程の女学生は組織と取引した普通の学生、ただツクヨミと『異能』を強化するような交わりを持った子だった。
取引は無事成立したのだから、すぐにこの場を去るべきであったかもしれないが
特に落第街に帰った所でやることのないツクヨミはぼんやりベンチに座っている。
ここからだと常世島が一望できる、思えばじっくりと景観を眺めたりはしたことがなかった。
ご案内:「大時計塔」にアキラさんが現れました。
■アキラ > (階段を降りていく音が途切れて暫くした後、階段を登ってくる足音が聞こえる。以前石段を叩いた時と同じような金属で杖で地面をつく音を立てながら女は屋上へと登ってきた。屋上に出た所で風に吹かれると思わず足を止めてから「寒ィ」と呟いた女は、以前と同じようにベンチに座っている彼が視線に入った。)
___よォ、どうしたんだこんな所で。
(何か前もこんな話し方をしたような気がするが。じっくりと景観を眺めるという行為には正反対とも言える性質を持つ女はそんな事かまう様子も無く声をかけようとして。)
■ツクヨミ > コツコツと、誰かが階段を何か硬質な音を伴って上がってくる気配がする。
そちらに振り向くと以前出会ったときと同じように男物のスーツを纏った隻眼の女教師が立っていて
ツクヨミに相変わらず声をかけてきてくれる。
ハタハタと乱れた学生服を直しもせず、また眺望を見下ろして風に消えるような声音で
「別に、何も……」
そう呟いて返事する。
「……、あなたは、どうしてここに……?」
特にこんな所に用がないように思えるのはお互い様。
特に大時計塔は生徒なら入るのを禁止されているはず。
まさか見回りの先生だったのだろうか、叱られてしまうのかな、などと考える。
■アキラ > ふーん……なんか前見た時も黄昏れてたが。今日はお前さんこんな所で強盗か台風にでもあったのか?
(消えそうな声だが確かに聞き取れた__気がする。女は乱れた学生服が気になった為に少し深掘りをするように質問を投げ続ける。そんなに強い風も不審者も見かけなかった気がするが、と思いつつ遠くの景色を一度眺めて)
あたいかい?たまーにしんどくなるとここの景色が見たくなるのさ。見回りで来たとしても小言を言うのはあたいの仕事じゃねェ。
(また教師としては言うべき言葉じゃない事を返答をして。実際の所見回り当番では無かったのだが、もし見回りに来ていたとしても立場上そうしなければならない場合を除けば言う気は無かった。)
■ツクヨミ > 「強盗……?台風……?」
自身の乱れた衣服を気にもしていないのか、何の話だと言わんばかりに首を傾げる。
実際は不純異性交遊の後だったりするのだが、それを他人の前でおいそれと告白できるわけもない。
「……先生にも、しんどいこと、あるの?」
首を傾げたまま、次なる質問を投げかける。
このサバサバした女教師が、何かしら悩み事を持っているようには思えなかったからだ。
小さな悩みなど、彼女なら笑って蹴飛ばしてしまいそうな雰囲気がある。
確か煙草を吸っている理由も、似たようなことじゃなかっただろうか。
案外、人には言えぬ悩みなども有るのだろうか。
■アキラ > 違うならそれで良いのさ。お前さんが他人の力を借りる必要がある程困ってる訳じゃないのならそれでいい。
(そういえば前は女学生の制服だった気がしたのだが。言葉とは裏腹にふと疑念を含んだ視線を隻眼の女は一度飛ばしてしまうが今は尋ねるべき事でも無いだろうと思ったし、何よりも言いたくない事の一つや二つもある年頃だろうと考えると深追いしすぎるのは良くない風に感じた為に言わなかった。)
あるさ、あるに決まってる。まァ…お前さんに言った所でしょうがねェが、心あるヤツがいっぱい集まってそこで皆が協力するっつーのは結構苦労する事が多いのさ。
(彼に愚痴を言った所でどうしようもない事だが、女は人付き合いがうまいタイプの烏では無い。故に時々衝突したりする事もあるのだが、その事を癖のように少しぼやかしたような表現の言葉で返しただろう。ため息をついてから言葉を続ける。)
お前さんはどうなんだ?言いたくなければ言わなくてもいいが、あたいはお前さんくらいの歳の頃は……やんちゃしてたなァ。
(悩む事も言えないような事もいっぱいあった、って言いたかった筈なのに。)
■ツクヨミ > 困っている、という概念がないツクヨミには女教師の言うことが
遠い国の言葉のように聞こえてよく分からなかった。
疑念の視線を受けて、自分の姿を確認するように見て、そこでやっと衣服の乱れに気づく。
襟元を正し、よれたシャツやベストを直してボタンをとめる。いやに艶を含んだ後始末だった。
ため息をつきながら言葉を漏らすアキラに、ぼんやりとした視線を投げて
「ふぅん……、先生にも、そういうこと、あるんだ……」
なんて呟いた。彼女のほんとうの意味での辛いことはわからないが
心が有るものが一杯集って苦労するというのは、何となく分かる気がする。
ツクヨミの組織だって、上級学生たちの心が一つではないし諍いは多いほうだ。
昨日正しかったことが、今日も正しいとは限らないことがいつもある。
「……こころなんて、みんななくなっちゃえばいいのにね……」
アキラに向けて言ったわけではないが、そう独り言めいて呟いた。
心が無ければ皆自分に『異能』を求めたりしないし、
自分も心がなければこうやって思い煩ったり、辛かったり、苦しかったりすることもないのに、と。
■アキラ > (衣服の乱れを直す様を、女は黙って見ていただろう。その仕草を見て一瞬脳裏に過った可能性を考えたのだが、その可能性を思考の隅へと追いやった。もしそうだとしても今何かできる事は無いが、学生のご身分だったらなぁと心の片隅では少し思ったりはした。)
こう見えても考えて生きてるつもりだからな…。波風を立てないようにとか、我慢できない事だってあるさ。
(何となく理解はしてくれたのだろう。そう思うと女は普段のストレスと言うよりは様々な事象が浮かんでは言葉にこそ出さないものの少し苦味を含んだ笑みを浮かべただろう。多分彼だって悩む事の一つや二つくらいはあると思うのだが__続く言葉を聞いた女は笑みが消えて、少しキョトンとして)
そうか?あたいは心があったほうが面白いと思うが…。からかった時に反応があったほうが楽しいし、悩み事ばっかりでも平坦で退屈な人生よりはマシだとあたいは思う。
(正反対とも言えるような言葉を返したのは、歳を重ねたからそう感じたという所もあるだろう。彼が何故そう感じたのかはわからなかったが、少なくともそういう事を考えた事が無い訳ではないし無駄だとも考えた事もあったが。また一度広がる景観の方に顔を向けて)
まぁうまく言葉にゃ言えねェが、見えない所で無いと困る事もあるだろうさ。そもそも心が無いと社会が成り立たないしな…。
■ツクヨミ > キョトンとしたアキラの顔に、少し珍しい表情を見たような気がして
ツクヨミは同じようにキョトンとした。
続くアキラの言葉の意味も、ツクヨミには分からなかった。
からかったことも、からかわれたこともないし、悩み事が有る方が退屈じゃないなんて思いもしなかった。
「先生の……、言ってること、よく、わかんない……」
生徒としては落第点だろう、そんな言葉を出してかくんと首を傾げた。
心がないと社会が成り立たないってどういうことだろう?
見えない所で困るってなんだろう?
アキラの投げかけた言葉は確かにツクヨミに考えさせる波風を立たせたが
そこでいつも思考にモヤがかかって、考えることを諦めてしまう。
結局ツクヨミは軽く頭を振って、彼女の言葉を努めて自分の中から追い出してしまった。
「……そろそろ、帰る。……先生、さよなら……」
ベンチから立ち上がり、ぺこりとアキラに向けて頭を下げると階段へと向かって下りていく。
思考しようとすればするだけ、今の自分の立たされている状況に苦しめられてしまうような気がしたから
ツクヨミは考えることを止めてしまった。
それがアキラに伝わることは無いだろうけれども、この日起こった小さなさざなみが
もしかしたらいつかツクヨミに本当の意味での考えることをさせるかもしれない。
ご案内:「大時計塔」からツクヨミさんが去りました。
■アキラ > まァなんだ。あたいもよくわかってねェが…わかんなかったら自分が疑問に思った事を悩んでみな、自分の疑問に悩んで自分が望む答えを探せば良い。例え答えが間違ってても…人を殺せばいいとか、そういう事に至らなけりゃ問題無ェだろ。
(よくある反応だ、何分自分ですら余りよくわかってないし。そう考えると答えの無い問いかけを茶化すように答えてしまった自分が滑稽に見えて微かに笑みを浮かべた。それからどう彼が感じたかはわからないが、頭を下げられると杖を持っていない左手をあげて軽く手を振った。)
あァ、またな若人。
(階段を降りていく姿を眺め見送った後に女はため息を一つ付いた。それは彼に対するものではなく自分に対するものであり___)
しかしまァ…もうちょっとマシな答えは無かったのかねっていうのと……あたいがもし学生だったらヤバかったな。
(思い返したのは先程の問いかけに対する返事の言葉と、彼の制服を直す仕草だった。最近のオナゴ…では無く男の子かもしれないが、スミに置けないよなとか何とか思いながら、暫くの間女は景色を眺めながら煙草をいつものようにフカしている筈だ。)
ご案内:「大時計塔」からアキラさんが去りました。