2020/06/10 のログ
A.昼 >  
 広場でもそうだったように、時計塔の周囲に軋むような音が鳴り始める。

「昼だよ」

 不定期に声はコンテナから響き続ける。

「昼だよ」

 コンテナにはなにも変化はないが、ただ、中から声だけが響き渡るのだ。
 そして声が響くたび、ミシ、ミシ、と至る所から鳴る鈍い音が増えていった。

A.昼 >  
「昼だよ」

 [時間]が徐々に歪んでいく。
 今が朝だったのか、夜だったのか……それとも声が示す通り、昼だったのか。
 声を聴いているうちに認識できなくなっていく。

「昼だよ」

 時計塔の大きな針が、ぐるぐると回り始める。
 短針も長針も秒針も、無秩序に動き出し、空の色は明るくなり、暗くなり、再び明るくなれば、赤く染まり、次の瞬間には青空になる。

「昼だよ」

 空間が軋みを上げていく。
 その場に人がいれば、誰もが呆けたように空を見上げているだろう。

「昼だよ」

 空が晴れ渡り、頭上には太陽が煌めいている。
 時計塔を中心に異常な空間が広がり、時間を歪めて、真昼になっていた。

「昼だよ」

 そして再び声が聞こえたとき、水泡が弾けるような音が連鎖的に響く。

「昼だよ」

 次の瞬間には、時計塔は戻っていた。
 同時に、コンテナも時計塔から消え失せている。
 周囲には人の気配はおろか、生き物の気配が一切なくなっているだろう。

「昼だよ」

 静寂を取り戻した時計塔に、最後に一度だけまた声が響いた。

ご案内:「大時計塔」からA.昼さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に鞘師華奈さんが現れました。
鞘師華奈 > 生徒は基本的に立ち入り禁止――とは言うが、警備がザルどころではないので入り込むのは容易い。
実際、自分のような者でも割と簡単に進入できるのだから…まぁ、気紛れで一服ついでに来てみたはいいが。

「……天辺まで行くのはとても面倒だな」

と、何時もの怠惰癖というか面倒臭がりが顔を覗かせる。
それでも、ゆっくりダルそうに階段を上って…到着、と。

「…あぁ、うん。確かに話に聞いてた通り、眺めは悪くないかもね。」

ぽつり、と呟きながらゴソゴソとスーツの懐を漁って黒いパッケージの煙草の箱を取り出す。
スーツ姿?単にこういう格好が好きなだけだ…つまり私服だ、分かれ。

鞘師華奈 > 昨日は、ちょっとマイペースなのに裏が読めなさそうなタイプのダブりなか…コホン、同級生に気付かれてしまった。
が、喫煙を止める気は特に無いので、箱をトントンと指で叩いて一本抜き出すやり方。
その飛び出た1本を口の端に咥えて…あぁ、カッコよくジッポライターでもあればいいのだが…残念、100円ライターだ。
ともあれ、煙草の先端へと点火してゆっくりと一服開始…一度、盛大に宙へと煙を吐き出しながら。

「……あーそういえば、能力補習もあったような…サボりたいな」

と、面倒臭そうな表情で呟く。女の子らしい表情?他所を当たるべきだと私は思う。

ご案内:「大時計塔」に夢莉さんが現れました。
夢莉 > 「―――ん」

そうしていると同じように階段を上ってきた人物が一人。
高所のせいか少し強い風でブロンドの髪をなびかせるその人物は、赤い目で先んじて煙草を吸っていた少女の方に気が付く。
端正な顔立ちをしたその人物は口元に、少女と同じように煙草のようなものを咥えているだろう。
少々、似合わない。
とはいえ同じ目的で来たのは、直ぐに察せられる

「あっ…ちゃー。先客いやがった…、って…なんだ同じ目的か
 
 隣、いい?」

中性的で少女に同席していいか問うだろう。
学園都市で学生が煙草を吸うのは、多少場所を選ぶ必要がある。

鞘師華奈 > 「……悪かったね。まさかこんな時間帯に私以外にここを上ってくる物好きが居るとは思わなくて。」

階段を上ってくる足音。…マズい、タバコの証拠隠滅をするべきか?と、一瞬思考を巡らせるが…。
今更、取り繕うのも面倒臭くなってきたし、折角のリラックスタイムを棒に振りたくない。
なので、堂々と喫煙姿を晒しながら登って来た二人目の人物を赤い瞳で見遣り。

「…って、そっちも一服目的かい?ならお仲間だね…あぁ、別に構わないよ。」

そも、身の回りに喫煙者が殆ど居ないのもあり――年齢?それは野暮な質問だ。
兎も角、あっさりと同席を許可しながら煙草の紫煙を燻らせて。
しかし…男?女?どちらか分からない。見た目は普通に女の子だが…。

夢莉 > 「ありがて」

言いながら隣に座り煙草に火をつける。
二つ分の紫煙が空へとただよっていく……

「ここで一服すんのが好きでさ。まさか先約いるなんて思わなくてな。
 景色、いいだろ?」

ここからなら島が一望できる。
上から下を見下ろす景色というのは、何処か優越感というか、特別感というか
兎も角見ていて心地がよくなる。

鞘師華奈 > 「…ああ、私も最初は来るつもりなんて全然無かったよ…ここ、高いし階段上るのかったるいしね。
でも、まぁ…確かにここからの景色は悪くないと思うよ。…こうして一服出来るのもポイントが高いね。」

見た目は女の子なのに口調は男の子のそれ。だが、自分もどちらかといえば女子力捨ててるし、そういうのに違和感は然程感じない。
お隣さんと違い、優越感やら特別感は特に無いが…単純に景色が良い、という一点だけは納得だ。

「…しかし、まぁお忍びで時計塔来た物好き二人がどっちも喫煙者というのも変な偶然だね、まったく」

景色から一度お隣さんへと視線を向けつつ、緩く肩を竦めて苦笑を浮かべる。

夢莉 > 「煙が好きなんだ。高いとこが好きでもおかしかないだろ」

上へと登る煙を見ながらそんなもんだろとばかりに言い切る。
もっといえば未成年の喫煙。ルール違反には慣れてる訳で。
立ち入り禁止の場所にルール違反者同士揃うのは、ある意味当然かもしれない。

「でそっちは…サボりかなんか?
 不良だねぇ」

同じ生徒ならこちらもサボりだし未成年喫煙だしで全く人の事は言えないのだが、そんな事はおかまいなしだ。

鞘師華奈 > 「それはアレかい?馬鹿と何とかは高い所が好き、みたいな話かい?…ま、馬鹿なのは否定しないさ。」

ルール違反はお互い様で、そもそも学生が時計塔への立ち入りは基本禁止されている時点でアレだ。
この時点で見事にツーアウト。スリーアウト?さぁ、その時になってみないと分からない。

「サボりじゃなくてただの気紛れだよ。まぁ、ここまで来るのは面倒だったけどさ。
…あーー不良でもいいけど、私は喧嘩とかなんてからっきしだし、面倒だからルールは”基本は”守ってるよ。」

ルール逸脱しまくりも、それはそれで変に目を付けられて面倒な事にしかならない訳で。
まぁ、それは兎も角…だ。ゆるく肩を竦める動作を止めれば、そちらを改めて眺めつつ。

「で、”不良同士”折角なら自己紹介でもしておかないか?…私は鞘師華奈。一応2年…ま、ダブりだけどね?」

夢莉 > 「それじゃオレまで馬鹿って事になんじゃねーか」

じとっ。

「ふーん。ま、ほどほどに不良って訳だ。同じだな
 ん……」

ダブりの二年。
別に学園の生徒の年齢などバラバラなのだが

「ダブリの二年ってーと……もしかしたらタメの可能性ありか?
 あぁ、三年の夢莉(ユウリ)。18だよ」

鞘師華奈 > 「…あぁ、まぁそうなるかもしれないね。けど、馬鹿っていうのも案外悪くないと私は思うけどね」

ただのいい子ちゃんになるくらいなら、私は救いようの無い馬鹿で構わない。
まぁ、そもそも良い子ちゃんにするのは面倒臭い、という生来の怠惰さもあるのだが。

「程々、かどうかは私自身はよく分からないけど…あーーそれはタメで間違いないね。」

自分はちょっと不本意な留年をかましてしまったが、本来なら3年生でお隣さんと同級生。
勿論、現在は二度目の2年生な訳で…年齢的には少なくともタメである。

「…ま、これも何かの…んーー煙草の縁って事で。まー適当によろしく頼むよユウリ」

そう、改めて挨拶をしながらニヤッとした微笑を浮かべる。女の子らしい笑顔なんて私には無縁だ。

夢莉 > 「あいよ」

少しニィ、として返事をする。
馬鹿も案外悪くない。成程嫌いじゃないなと思いつつ。


「しっかし…」

と紫煙を漂わせながら少女の方を見る。
気だるげな顔。自分と似たような赤い目。
ボーイッシュな服装に…自分よりも高い背。


「なんつーか真逆な」ボソリ