2020/06/29 のログ
ご案内:「大時計塔」に神樹椎苗さんが現れました。
神樹椎苗 >  
 大時計塔、ここは学園の決まりとして立ち入り禁止となっている。

「まー、鍵もなけりゃ監視もいねーですし。
 何があっても自己責任の見逃し放題ってとこですかね」

 今日もいつものように時計塔を登り、階段の一番上に腰を下ろした。
 扉の向こうは常世島を一望できる時計塔の頂上になるわけだが、高さがあるため風も強いし本を読むのには向かない。
 その点、扉の内側であるこの場所は、風がない分蒸し暑さは感じるものの、強風で煽られる心配がない。

(ついでに、うっかり死んじまう事も減りそうですしね)

 と、いう理屈で先日もここで試験勉強のようなものをしていたのだが。
 タイミングが悪く風紀委員の見回りとかち合ってしまったのだ。
 その時しっかりと注意はされたものの、他に騒がしくなく人目にあまりつかない場所という、都合のいい場所が見つからないのだから仕方ない。
 階段を上って開いた傷口をむず痒く感じながら、赤い色が滲んだ脚の包帯を擦った。

神樹椎苗 >  
 一段下に足を下ろして、バッグから図書室で見つけたそれほど面白くなさそうな問題集を取り出す。
 問題集の内容は特に難しい事もなく、ただ勉強が苦手な人、成績が悪い人向けに編集されているため、頻出問題や、間違うことの多い内容を集中してまとめられているのだ。
 こう言った問題集の頻出するという部分だけを正答するようにして、誤答が多いと言われる部分を間違えるようにすれば、自然と点数的には『ふつー』の結果に落ち着くのではないかという想定での、適度に間違えるための勉強中だった。

「はー、こんなところ間違えるもんなんですね。
 ここは覚えておかねーと間違えそうです」

 間違えることを、間違えそうな内容が想像よりも多い。
 不自然なくわざと間違える、というのも案外難しいようだ。

(データがあればいーんですけどね。
 一年目の初テストじゃ、どれくらいが『ふつー』なのかわかんねーですし)

 それでもおそらく60~70点程度の点数に収めれば、ほどほどに『ふつー』だとは思われたが。
 試験の後を考えれば、間違え方も典型的な『ふつー』の形にしておきたいのだ。

ご案内:「大時計塔」にさんが現れました。
> 「んしょ、んしょ、たかい、なあ」
時計塔に興味本位で登って来た幼女が一人

「あれ、おねーさんあぶないよー?」

時計塔に興味本位で登って来た幼女の台詞ではない

神樹椎苗 >  
 問題集を眺めていると、階段を上ってくる椎苗と似たような背丈の少女に気づく。
 一生懸命登ってきた少女をゴール直前の扉前で迎えると、椎苗は問題集を閉じた。

「ここはまだ、別に危なくもねーですよ。
 ただ、外に出るとお前みたいなちっこいのは風に飛ばされるかもしれねーです」

 時計塔最上部の外は、当然、そこを憩いの場にする事は前提とされていない作りだ。
 椎苗自身もそうだが、うっかりしていると強風に体を流される事もある。

「あと、しいはおねーさんってほどでもねーです。
 歳は知らねーですけど、たぶん同学年ですね。
 見た覚えがある顔ですよ」

 一度見た相手であれば、椎苗はめったなことでは忘れない。
 忘れたくても忘れられない、が正しいが、なんにせよ。
 自分の行動範囲を考えれば、見おぼえがあるというのなら同じ学生である可能性が一番高いだろう。

> 「ん、あ、えーと、ごめんね、のぞみ、とこよにきたばかりで、かぜ?、わわ、おちたらたいへんだよ?」

首から下げた水筒をくぴくぴ飲みながら、子供らしく答える

「のぞみはー、あいは、じゃない、ただののぞみ、じゅっさい」

ぺこりと頭を下げた、子供らしい子供、と言う感じである

神樹椎苗 >  
「そうですか、お前は来たばっかりですか。
 しいは、しいですよ。
 かみきしいな、好きに呼ぶといーです」

 目の前の相手を眺めながら、そう歳は離れていないだろうに随分と幼く感じるなと印象を持った。
 いや、むしろ『ふつー』はこんなものなんだろうか。

「それで、お前はこんなところに何しにきやがったですか?
 ここは観光地でもなんでもねーですけど、一応、外に出ると島が一望出来ていい景色です。
 ただ落ちたら即死間違いねーですし、おすすめはしないですが」

> 「えと、しーなちゃんでいい?」
ちょっと確かめるように聞いてみる、少し、怯えの色が見えた
人と触れ合いに気を使っている、らしい、幼いなりに

「えと、たかいからのぼってみたくなってー、それでそれで、えーと、みたかったの」

つまり子供らしい理由である

神樹椎苗 >  
「いーですよ。
 そんなにおびえなくていーです。
 子供が他人に気を遣うよ―じゃおしまいです。
 特にしいもお前も子供です。
 子供同士でなに、よけーな気を使ってやがるんですかってやつです」

 自分の隣、放り出していたバッグを引き寄せてスペースを開けると、床を叩いて隣にくるよう促した。

「そうですか。
 まー、わからないでもないです。
 しいも高いところ好きですからね。
 だから大体、いつもここにいるわけですし」

 その理由は死にやすいから、だったが。
 静かで人気の少ないところと言うのも嫌いではないので、嘘ではない。

「それで、せっかく登ったわけですし、やっぱり外に出てみてーですか?」

> 「しーなちゃん、えと、ありがと」

退けてくれたスペースに座り、えへへと、嬉しそうに笑う

「えと、ふだん、おとなばっかりだからつい、その、えと」

子供の身である彼女が異能を持つ、と言うのはつまりはそう言う事だろう、日常から切り離されたのだ、彼女も

「ひとりでも、がんばれるってみせたくて、あるいてるの」

むん、と元気いっぱいのポーズ

「うん、かえりたい、ぱぱ、ままと、くらしたい」

素直な感情の吐露

「でも、ちからうまくつかえなくて、のぞみ」

それでも笑うのは、彼女の中にまだ、信じているものがあるからか

神樹椎苗 >  
「子供が一人で頑張る必要なんてねーですよ。
 甘えて寄りかかって、手を引いてもらって、周りに頼って生きてりゃいいんです、『ふつー』は」

 そう、『ふつー』なら。
 椎苗も、この少女もまた、すでに『ふつー』ではないのだ。
 自然と椎苗の包帯に包まれた手は、少女の頭に伸ばされていた。

「そうですか。
 安心しやがるといーです。
 会いたいって相手がいるなら、お前は大丈夫ですよ。
 今は会えねえかもしれないですけど、もう少し大人になって、力を扱えるようになれば帰れねーこともないです。
 お前の場合、成長すればそのうち問題なくなってくにちげえねーですよ」

 少女の異能は、そういうタイプの異能だ。
 『解析』した結果わかったのは、致命的に欠陥があるわけでも、制御が不可能なものでもない事。
 子供特有の起伏の激しい精神状態では難しいかもしれないが、成長して落ち着けば方法はいずれ見つかるだろう。

「どーしても、その力が嫌だっていうなら、治療なんか試してもいーですけどね。
 世の中には異能は病気だって言って、治そうとしてる人間もいるみてーですから。
 この学園にもそういう人間がいるって話です。
 先生にでも頼んで、探してもらうのもありかもしれないですよ」

> 「ん、ありがとう、しーなちゃん」

撫でられてふにゃりと笑う、そう、子供は笑うのが仕事だ

「ん、がんばる、しーなちゃんは、大丈夫?」

じーと見つめて、手の包帯やらを気にして

「えとね、がんばったら、またいっしょにくらせるの、だからがんばる」

そう、言われたのだろう、大人の嘘で、子供はいつだって傷ついていく

神樹椎苗 >  
「しいのこれは気にしなくていーです。
 古い傷ですからね」

 少女が笑うと、椎苗もうっすらと満足そうな表情になるだろう。

「そうですね、頑張ればきっと、そんな事もあるかもしれねーです。
 でも、お前にはいくらでも未来ってやつがあるのです。
 この学園は、お前みたいなやつが、自分の未来を見つけるのにはいいところです。
 学校で勉強して、練習して、お前が一番幸せになれる方法をみつけるのですよ」

 優しく頭を撫で、そっと手を放す。
 自分の言葉がどの程度伝わっているのか、それはわからなかったが。
 目の前の少女は純粋で、椎苗のように感受性が鈍化してるでもない。
 多少なり、思う気持ちは伝わるだろうと、言葉を弄するしか知らない『子供』は幾つも繰り返し紡ぐのだ。

「……さて、この後お前はどーするのですか。
 ここは登るのも大変なら下りるのも大変ですよ」

> 「いたいのいたいの、とんでいけー」

ニコッと微笑む

「うん、がんばる、しーなちゃんもありがと」

多分理解は出来ていないだろうが、優しさは伝わっているだろう、笑みを浮かべて

「あ」
考えてなかった、ちょっと怖いかも、と感情が表情に出て

神樹椎苗 >  
「まったく、お前はいーやつですね。
 お前はその優しさを大事にして生きるといいです」

 椎苗はバッグを肩に掛けると、徐に立ち上がる。

「仕方ねーです。
 下まで着いていってやりますよ。
 転ばれでもしたら、怪我じゃすまないかもしれねーですし」

 そう言って、包帯で白い手を少女に差し伸べる。

「ほら、さっさと行きますよ、違法ロリ。
 暗くなる前に寮に帰らないと、怒られるかもしれないですよ」

> 「しーなちゃんも、いいこだよ?」

伸ばされた手を取り、立ち上がって
 
「だって、やさしいもん、しーなちゃん」

にこーと、無垢な笑みを浮かべて

「い、いほーろり?むう、しーなちゃんのことばはむずかしいよ、あ、おこられちゃうのはいやだから、かえろ?」

神樹椎苗 >  
「……しいは、いい子にはなれねーですよ。
 お前もきっと、大人になればわかります」

 椎苗がどれだけ『ふつー』ではなく、『いい子』ではないか。
 少女の手を引きながら歩き出し、この純粋さがちゃんと守られていくといいと願う。

「難しくねーです、お前の勉強が足りないだけです。
 怒られると言えば、ここは『立ち入り禁止』だから、いい子は来たらいけねーですよ」

 そう階段を下りながら、一応とはいえ注意はした。
 この調子でまたやってきて、怪我でもされてはかなわなかったからだ。
 別に少女の心配ではなく、万一封鎖でもされれば椎苗にとっても不都合だから。
 理由はそれだけ、優しさとかそういうものではないと言い訳を浮かべながら。

> 「しーなちゃん、わたしをたすけてくれたもん」

不満そうに呟きながら手を引かれて歩き

「でも、しーなちゃん、ここにいるんでしょ?えと、ね、のぞみ、ふーきあづかりのおてつだい、してるからへいきだもん」

むふー、と胸を張ってえへん、と

神樹椎苗 >  
「助けてねーです」

 そっぽを向きながら、そっけなく答えた。

「違法ロリのくせに風紀預かりですか。
 ならなおさら、風紀破ったらだめじゃねーですか。
 別にここでなくても、しいは寮にも学校にもいるからわざわざ来なくていーです。
 また下りれなくなってもしらねーですよ」

> 「むー、しーなちゃんのいじっぱり」

すなおじゃないなあ、とか言いながら

「えと、おしゃべりしたりしてくれる?」
わくわくと見つめて、期待のこもった眼差しで

神樹椎苗 >  
「意地なんて張ってねーです。
 話したければ話せばいーんですよ。
 いちいち、しいに確認なんてしねーで話に来ればいいじゃねーですか」

 不満げに答えながらも、手は繋いで歩みもゆっくりと。
 期待を込められた視線からは、少し逃げるように背中を向ける。

> 「わあい!おともだちだね、しーなちゃん」

なんともまあ子供らしい解釈だ、可愛らしいとも言える

「えへへ、ここにきて、さいしょのおともだちだ」

向こうでも、友達は居たが、別れ別れになってしまったから、というわけではないが、つい、そのような言葉を

神樹椎苗 >  
「……しいにはもったいねえですよ」

 少女に顔を向けないまま、口の中だけで小さく呟く。

「お前ならすぐに友達もできるんじゃねーですかね。
 しい以外にも、気になる人には話しかけてみればいいです」

> 「えへへ」

嬉しそうに歩幅を詰めて横に並ぶ

「そうかなあ、でも、さいしょのおともだちはしーなちゃん」

嬉しそうに並ぶ影は重なって

神樹椎苗 >  
「はいはい、好きにすればいーです。
 ああもう、あまりくっついたら歩きにくいじゃねーですか」

 そう言いながらも突き放すようなことはせず。
 そのまま時計塔を下り、手を繋いだまま寮まで帰っていくことだろう。

ご案内:「大時計塔」からさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から神樹椎苗さんが去りました。