2020/07/17 のログ
■武楽夢 十架 >
「話合いの後で、手伝うとしたら、と言ったけど
―――俺は君を手伝えない。 伝えるのが遅くなったのはごめん」
あかねの顔を見て、首のチョーカーをみて、時計台(ここ)から外(しま)を見た。
「それに女の子の過去を調べるっていうのは少し悪いことをしたと思ってる」
色々と調べた。
足りない情報はあるけど、大まかな内容は知った。
それで少女にどんな感情があったかなんて想像できやしない。
共感なんてしやしない。
青年だったらされたくはない。
改めて、あかねの黒い瞳を見た。
「君があの街の人たちをまとめあげるだけなら、よかった」
それだけでないから、青年は今更にはなったけど、伝えようと考えた。
「君の期待に俺は応えられない。
だから、俺の聞きたいことっていうのは君に答えてもらわなくてもいい。
それは同年だとしても友達としてもフェアじゃない」
「ここに来た時ぼやいてたのは、そういうこと」
色々勝手に探った手前、許せなんて言えないしと困った顔をして笑った。
■日ノ岡 あかね > 「残念、まぁでも……色々調べたなら仕方ないわよね」
あかねのやろうとしている事。
やった事。
これからやる事。
調べたなら、ある程度は知られているだろう。
この島でした事
『トゥルーサイト』でした事
『トゥルーバイツ』でやろうとしている事。
挑む先。
真理。
其処に踏み込む意味。
その今までの行い全てとは言わずとも、断片を調べ上げた十架に対して。
あかねは、緩やかに微笑み。
「でも、それって私に興味があるからしてくれた事でしょ? 私は嬉しいわよ。だって、私を知ろうとしてくれるって……『考えてくれてる』ってことじゃない」
頭を下げた。
「ありがと……私を知ろうとしてくれて。それは少なくとも私にとっては凄く嬉しい事だから、こうさせてね?」
とても、嬉しそうに。
そして、すぐに頭をあげて……また顔を見る。
じっと、目を向ける。
「じゃあ、聞きたいことどうぞ。出来る限り答えるわ」
■武楽夢 十架 >
「ははは……罵声を幾らか貰う覚悟ではあったんだけどね」
女の子の秘密は相手が教えてくれるまでは勝手に調べるな、だったか。
昔に聞いた言葉だったか、よく覚えちゃいないが。
過去の『トゥルーサイト』の事は記録を閲覧した。
現在の『トゥルーバイツ』のやろうとしていることを調べて教わった。
目標に向かって全力になれるその姿は憧れる部分はあるし、応援もしたくはなる。
それでも、譲れない。
「あかねさんの、自分のために行う『話』に興味が出たっていうのもあったし、
自分が好きなものに興味を持ってくれた相手をちゃんと見ないのはちょっと俺のマナーに反するからね」
あの朝に思惑とかなんにせよ、作ってるものに興味を抱いてもらえた礼をしたかったのがはじまりだ。
じゃあ、と続いた言葉に思わずため息をついた。
「……あのな、じゃあってなんだ。
聞かないって言ったばっかりだろ!
聞いて俺が邪魔しに動いたらどうするんだよ」
「それともなんだ、実は聞いてほしくて仕方ないってワケか?!
機密情報だ何だと調べるの大変だったんだぞ!情報だって一部潰されてるし!」
「そこんところどうなんだよ!」
ぜぇぜぇ、と思わず声を荒げてキレた。
逆ギレだ。
■日ノ岡 あかね > 「あはははは!! 『それ』がトカ君なんだ、最高!」
嬉しそうに笑う。
お腹を抱えてそれはもう嬉しそうに。楽しそうに。
ぜぇぜぇと息があがっている十架の様子も、あかねからすればとても『喜ばしい』ものらしい。
「聞いてほしいわよ。だって、言わなかったら『また』調べるかもしれないじゃないトカ君」
実際、言わなくても彼は調べた。
自分の力だけで『此処』まで来た。
なら、此処で何も語らなかったところで。
「なら、此処である程度白黒ハッキリさせたほうが『私が楽』だわ。それに私……自分語りってそんな嫌いじゃないしね?」
目を細めて、両手を合わせる。
とてもとても、楽しそうに。
「……此処にいる人って、みんなそういうところあると思わない?」
小首を傾げた。
■武楽夢 十架 >
あかねの笑い声で額に手を当てた。
「あ~~、もう調子狂う……」
こういう奴いる。ほんと一人は学年に居たりする。いや、ダブってなきゃ実際居たわけだ。
もういい、こういう手合は一度そういう行為で痛い目でもみなきゃ……ああ、いや『昔の学校』でいたやつは何度怒られてもそのままだったよ。
そう、そういう手合。
「もういい、遠慮しないからな……ったく。
……あー、ま、久しぶりに肩の力抜けたっていうか」
こういうのが、もう好きにしてというか、精神的なまな板の上の鯉という気分だ。
ムードメーカーではなくトラブルメーカーな訳だが。
"いいじゃん。白黒つけるの。俺黒な"なんてヤケな思考になってきたと自笑して少し、深呼吸した。
「みんな、自分語りが好きって……?」
それを農業活動とか以外ぼっちの俺に聞くか?と自傷しながら、考えた。
「うーん、あるかも知れないか……?」
少ない出会いではあるが、そういうのを言われればそうかも知れない……か。
■日ノ岡 あかね > 「遠慮ない方が嬉しいわよ。変に遠慮されたり、変に敬遠されたり、変に腫物扱いされる方が……人って傷つくものよ?」
馴れ馴れしく近付きながら、十架の目を見てあかねは楽しそうに笑う。
真っ黒な目を相変わらず猫のように細めながら、ニコニコと。
「誰だって自分の事を知ってほしい。自分の事を理解してほしい。自分の事を大事にして欲しい……みんなそう思ってるわ。ただ、いちいち全部取説付けても誰も読まないし、そういう取説だらけの人間は煙たがられるから『誰にでもやらない』だけ。そういうものでしょ」
だから、少しずつ距離を測る。
少しずつお互いに知っていく。
少しずつお互いに伝え合う。
あかねはそれを……尊く思う。
「というわけで、改めてどうぞ。聞いてくれるなら私も喜んで答えられる限りは答えるので」
大仰に会釈して見せて、あかねは笑う。
日ノ岡あかね取扱説明書その一。
日ノ岡あかねは聞かれれば答えられる限りは答える。いつでも。
■武楽夢 十架 >
「言ったな?何でも聞くからな?
最初からそんな遠慮なんてあんましてなかったし、男友達相手みたいに雑にするのは流石にって思ってたのはある……」
腫れ物扱いっていうのはちょっと分かるが。
彼女の過去としちゃ、農業する体力もなくて憐れまれてたのと同等に語るのは桁が違うか。
「確かに一理あるかも知れないが、知って欲しい受け容れて欲しい認めて欲しいなんて言うのは仕方ないし、
取説だらけの人ってのがいたらまあ……ちょっと嫌厭するが、人だっていうなら読んでやるのも付き合い……」
なんか言ってて悲しくなってくるなと自分の付き合いの狭さに一瞬目を背けたくなった。
いや待て。
「それで言ったら君は『取り扱い注意』とか貼られてそうだ」
少ししてやったりという風に笑い返してようやく余裕を持ってその顔を見て、
「先ず俺が知ったことを先に言えば、風紀にある君の記録色々と風紀で君を識る人の意見の一つかな」
指を計二本立てた。この二つだと言って続ける。
「それで、一番知りたくなるのは君の《異能》についてだ。
耳にした《真理》だ目にした《窓》って単語も気になりはするけどね。
――がっつく男は嫌われると、昔怒られたので、そこを一つ」
虫食いなんて気になる状態だったものが一番。
他は正直、情報の捕捉だった。
資料の文面的にそれで過去に色々あったとしても遠慮するななんて言ったのは相手だと青年は開き直って言葉にする。
■日ノ岡 あかね > 「順番に答えるわね。まず、私の『異能』については秘密。今は封じられているとはいえ、首輪が無ければ私の武器でもあるから……私はそれについては答えない」
一度そう区切ってから、あかねは続ける。
「正直……自分の異能についてベラベラ喋ったり見せびらかす人達の事全然わかんないの私。少なくとも落第街に長くいた私からすれば、自殺行為どころかそれ以上の危険を侵す事……異能戦は情報戦よ。見せれば見せるだけ、聞かせれば聞かせるだけ『不利』になる。それはそれだけ『命が脅かされる危険が増す』ということ……出来る限りは隠すに限るわ。だからこそ、風紀委員会も私の『異能』は伏せてくれていたんじゃないかしら? 今は風紀委員だしね、私。まぁ、高い情報権限を持つ人ならそれでもバレてると思うけどね。昔、暴走もしてるし」
クスクスとあかねは笑う。
実際、あらゆる戦いにおいて『知られる事』は大きなリスクを抱えている。
知らせることがメリットになる事も当然あるが、大体において武器の性能は『知られない』方が有利に働く。
命の取り合いになるような場合ではそれこそ……致命の差となる。
元違反部活生であるからこそ、あかねはそれをよく知っていた。
「次に『真理』と『窓』について。これは隠す事でもないから答えるわ。まず、『真理』は全ての答えよ。この世界のあらゆる問題に答えてくれるもの……まぁ、テストの答案覗くようなものよ。ただ、この世界には残念ながらそんなものは存在していない」
この世界の遍く問題に答える何か。そんなものは存在していない。
世界の英知と技術の全てを集めても、それは叶わない。
だからこそ、人は悩み、苦しみ、考え続ける。
しかし、それは。
「この世界にないだけ」
つまりは、そういうこと。
「……だから、『それを知る異世界の存在』に尋ねるの。これが私たちの言う『真理』の正体。『窓』はその異世界の存在に語り掛けるためのポータルよ……小型の『門』ってところ。普通の『門』を開くだけのリソースなんて準備出来ないからね……前はそれを使って『真理の声』だけは何とか聞けたの」
それが、『トゥルーサイト』の行った事。
それが、日ノ岡あかねがかつて挑んだ『真理』の正体。
しかし。
「まぁ、失敗したけどね。私以外はみんな死んじゃったわ。やっぱり、『真理』が相手となると、『前の方法』じゃどうにもならなかったわね」
そう、失敗した。敗北した。取りこぼした。
故に。
……方法をアップデートして、また挑む。
それだけの話。
■武楽夢 十架 >
黙って話を聞いた。
黙って聞いて、
「……ほ、ほんとに全部答えるやつがあるか!」
条件反射的に左手でデコピンを仕掛ける。なんの変哲もないただのデコピンだ。
動きがわかれば、素人だって躱せる。
この距離で躱しきれるかは、意思次第な感もある。
「あー…うん。『異能』についてはそう。そうだね。俺でもそう思うよ。
でも律儀に答えてくれるってお人好しとか言われない? ちょっと色々通り越して少し不安になった」
ほんとにこの子、取り扱い注意って間違ってないんじゃないか。 『真理』に頼るまでもないんじゃないか、その認識は。
「で、イメージしづらかった二つの《モノ》に対しての捕捉としちゃあ完璧だね」
何を指して『真理』というのか。 これが不明瞭だったのは確かだ。
言われた内容をはい、なるほどそうなんですねと飲み込むのも、疑うのも簡単な状況ではあるが、説得力がこれまでの情報と今の話にはある。
こう聞いてしまうと更に疑問は出てくるわけだが、要点だけ。
大事なことだけ明確にしよう。
「……嫌われてもいいから最後にもう一つ……二つだけがっついていい?」
■日ノ岡 あかね > 「いったぁ!! 女の子にデコピンとかする奴おるぅ~? いたわー、あははは! トカ君のそういうところ、好きよ。お人よしって言われたのは今初めてかもしれないのでとても新鮮な気持ちね」
避けもしないでデコピンを普通に受けて、あかねは笑う。
とても楽しそうに。
「嫌うかどうかはわからないけど、割と私、トカ君の事は好きだからがっつかれるのは大歓迎よ。さぁ、どうぞどうぞ」
両手を広げてニコニコ笑う。
まるで、教室の隅でクラスメイトにそうしているかのように。
■武楽夢 十架 >
全くほんとただのクラスメイトだったらよかった。
バカなノリやってアホなはなしするような同級生だったら。
つられて笑った。
友人として相談乗って彼女に彼氏が居たら勘違いされて襟首掴まれるのも在り得たかもしれないなぁ。
どうぞどうぞ、という彼女言葉にそんなたらとかればな妄想は蹴り捨てた。
ふぅ、と息を吐いて そんな僅かな……そうだったらそれは面白かったなぁって夢から醒めていく。
"前に失敗した時、日ノ岡あかね以外は死亡した。"
では―――、
笑みは浮かべない。
赤い瞳は煌めかない。
「『真理』を手に入れることに成功した場合と
失敗した場合に『予想される状況』について聞いておきたい。
この二つについて聞きたい」
■日ノ岡 あかね > 「成功したら、成功した人は生き残る。『真理』から『実行可能な願いの叶え方』を聞ける。それだけ」
『真理』には尋ねるだけだ。
成功したところで『式と答え』を聞けるだけ。
仮に……存在しなければ『解なし』と言われるだけ。
それも含めて、分のいい博打ではない。
「失敗したら、失敗した人は死ぬ。元々、人間……いいえ、たかがこの世界で生きられる知性体が相手するには過ぎる相手。こっちの方が高確率ね。今回も『真理に挑む99%の人』はこうなると思うわ。前みたいにね……シンプルでしょ?」
あかねは笑う。小首を傾げいつも通りに。
■武楽夢 十架 >
「分かった」
わかった。
成功すれば、それはハッピーエンドかも知れない。
しかし、どちらにせよそんなもの。
『埒外の存在』から得られる解答など碌なものであるはずがない。
解っていた。《真理》がどういうものか聞いた時に。
しかし、少しは夢もみたかったんだ。
少女の前から数歩離れる。
「なら」
失敗すれば出鱈目な解答すら得られず死ぬだけ。
じゃあ、その規模は本当に前回と同じで済むのか。
「俺は」
そんな馬鹿げた話で人を消失(ころ)させられるかよ。
「君の敵だ」
笑みもなく、赤い瞳でそう宣言する。
認められないなら止めるしかない。
■日ノ岡 あかね > 「そう、残念ね」
言葉とは裏腹に、あかねはとても嬉しそうに笑う。とても楽しそうに笑う。
一歩離れた十架の顔をずっと見ながら……あかねは笑う。
「でも、なんで? 私は誰にも強要はしていない。『トゥルーバイツ』は全員志願者。全員『トゥルーサイト』の末路も知っているし、トカ君に話した以上に何度も成功率が低く、恐らく十中八九死ぬだけであることも説明してある……死ぬのもその志願者一同だけ。しかも大半は元違反部活生か二級学生。全員どん詰まりよ」
実際、誰もがこんなことは馬鹿げていると知っている。
それを理解した上で挑んでいる。それを承知の上で実行している。
狂った集団自殺と言われれば、実際その通りではある。
だが……他の代案がないのだ。なら、例えそれが一縷の望みであったとしても。
「……『真理』に頼るしかない私達と、どうして敵対する理由があるの?」
それに縋るしかない。
それが……『トゥルーバイツ』という集団。
真理に噛み付くほか無い者達。
それと、武楽夢十架が対立する理由。
それを……日ノ岡あかねは知りたい。
■武楽夢 十架 >
「なんでか……」
その問い掛けに、ははっと声が漏れた。
「―――志願者だとは資料や話に聞いて知ってる。どういう人たちが集まってるのかも知ってる」
知らないわけがない。
自分とて見てきている。 あの街の住人を。
あそこに住んで、あそこに堕ちたわけじゃない。けれど。
「『真理』と言えば、聞こえがいい」
死にたいというのならビルから落ちればいい。それこそ何人も居るんだそれぞれの手足を拘束して繋いで前のやつをそれこそこの時計塔からでも落とせばいい。
ただの集団自殺なら、自分に止める気はない。
そういう相手に声をかけて全員を救える力は青年にはない。
だから人に迷惑をかけない程度に勝手にしろとせめて見捨ててあげることしか出来ない。
「『異世界の化け物』に幻想を抱くような事は認められない」
本人たちがそうなってもいいとか言おうが。
起こることで起きる最悪があるというなら。
彼ら、君に恨まれようと構いやしない。
「君等が勝手にそうするように、俺がそうするっていう我儘だよ」
冷めた赤い瞳で大仰な理由なんてないと笑って言った。
「君たちの『真理』は認められない」
■日ノ岡 あかね > 「……」
全部、それこそ全部聞き終えて。
あかねは押し黙り、暫し……十架の目を見つめたのち。
「あははははははははははは!!」
笑った。
とても、とても。
……楽しそうに。
「いいじゃない、大好きよ、そういうの」
満面の笑みで。
微かに頬を朱にすら染めて。
あかねは笑った。
「私も幻想を見ていないとはいえないわ。たかが異界の自分より多分頭が良いであろう怪物に話を聞くだけ……実際、これは本当に分が悪い博打。出来れば私もこんなことはしたくない……だけど、他の手段がないからそうするだけ。そういう意味じゃあ、末期症状の患者が怪しげな民間療法を訝しみながらも実行しようとしているのとこれは同じ……トカ君に関わらず、普通の人達ならそう思って然るべき。だから、アナタのワガママは正当。私は好ましいと思うわ」
十架の言い分を全面的に認める。
それは全て正しい。全て間違っていない。
だからこそ。
「白黒ついて嬉しいわ。最高の敵になってくれそうね、トカ君」
大仰に会釈をする。
スカートの端をつまんで、大袈裟に礼をする。
ダンスの相手にそうするように、敬意を示して。
「『楽しみ』にしてるわ、アナタのワガママ」
その言葉を最後に、あかねは屋上を去っていく。
音もなく、その場から消える様に。
螺旋階段を踏みしめる足音は……しなかった。
ご案内:「大時計塔」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
■武楽夢 十架 >
「……はぁ……」
ドッと疲れた。
思わず、姿が見えなくなって床に腰を下ろした。
ここに来てからの発言は、全て本心だ。
最初から最後まで。
最後の彼女の声は、笑い声とも泣き声とも俺には判別できなかったが。
「……ああ『意味』は変わったが期待には応えるさ」
きっと、彼女よりも今の俺は弱い。
島全体で見てもきっと最弱の部類だ。
「だけど、否定して恨まれてやるよ」
そう、今は呟いて横なった。
ご案内:「大時計塔」から武楽夢 十架さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にラヴェータさんが現れました。
ご案内:「大時計塔」に227番さんが現れました。
■ラヴェータ > 「入っては行けない、と言われている場所程に入りたくなるのはどういった心理なのだろうな。」
時計台内部で螺旋を描く階段の終着点で座る黒い軍服を纏う少女が、特に深い意味もない言葉を宙に投げかける。
ダメと言われれば言われる程したくなる、なんて。
幼い思考だな、なんて思いながらその上半身を階段の終着点に倒して少し遠い天井を眺めて。
端から見れば行き倒れにも見えるだろうか。
■227番 > 道を覚えようと毎日町中を歩いて数日。
どれぐらい道を覚えられたのか少し気になって。
確認する方法として思いついたのがこの大時計塔だった。
"入ってはいけない"と言われては居るものの、
他の方法も思いつかずにこっそり登ることにした……のだが。
「……?」
声が聞こえた。しまった……誰か居るのか。
誰も居ないと思っていたので、ここまで足音も隠していなかった。
どうしよう。とは言え……今更戻っても仕方ないか。
怒られるなら、おとなしく怒られよう。
カツンカツンと足音が上がってくる。
■ラヴェータ > 「ほう、来客か?」
階段を登ってくる足音が聞こえる。
私と同じような不法侵入者か、はたまた風紀や教師の巡回か。
どちらでも構わない。
その面を一眼見てみようと上半身を起こす。
喋る死体から不法侵入者へと変化した少女がその耳を小刻みに動かしながら上がってくる足跡を目で追えばー
「ほう、探偵ごっこか?幼子」
少女にも満たない幼女が探偵風な服装を纏っている事を目の当たりにすれば、目を細めてそう尋ねて。
■227番 > 後数歩で上がりきるというところで、人影に会う。
それは半身をゆらりと起こすと……なにやら変わった格好の人だった。
少なくとも、町中であまり見るものではない……自分のものもそうなのだが。
「……たんてい……?」
自分の格好の意匠がそれであるどころか、探偵というものさえ知らず、
思わず聞き返してしまった。
■ラヴェータ > 「ほう、自分の装いがどう言ったものかすら理解しておらんとはな
本当に幼いな、貴様は」
探偵という言葉に疑問を呈した幼子の様子に、その幼さ、無知さに僅かに驚愕し、目を細めてニヤリ、と笑って。
先日、自分でも至らない相手に色々と教えられたところだ。
私も誰かに教えるという行為をしてみようか。
「探偵というのはだな、事件や事故を調査したり行方不明者を探したりする職業、もしくは人々のことだ」
得意げには語らない。いや、幼子相手に得意げに語るほど惨めではない。
教師が生徒に教えるように、高圧的にならないように、同じ目線になるように語りかけながら立ち上がり、幼子の場所まで階段を降りていき、幼子の少し前で階段に座る。
これで目線はほぼ同じぐらいになるだろうか。
■227番 > 「貰った服、だから」
実際のところは、気にしたこともなかった、が正確ではある。
ちゃんとした服自体、そんなに着たことがなかったからだ。
「じけん、じこ……ゆくえふめい……」
聞いたことはある言葉だ。どれもマイナスイメージが付きまとう。
そして、それらに対処する人たち。
少女の知識の中には、思い当たるのが2つある。
「ふーきとか、こうあん、とは、違う?」
最初からそこまで警戒はしていなかったものの、
目線をあわせられれば怖じ気は殆どなくなった。
猫のような青い瞳……明るければ細い瞳孔が、
暗ければ丸い瞳孔があなたをじっと見ているだろう。
■ラヴェータ > 「ふむ、確かにこの島ではその辺りが担当していそうではあるな。」
風紀と公安は知っているのか、なんて思いつつ。
一人でこんなところに来て、妙に落ち着いてまともに喋れているあたり...
いや、昨日のようなこともあるし存外この幼子も見た目に合わない年月を生きているのかもしれないが。
まあ、見た目だけで考えれば妙に落ち着いてしっかりしている。
親がそう育てているのかもしれないが、そうしていなければ生きて来れなかったのか。
まあどちらでもいい。
「奴らは無償、特段依頼を受けんでも動く奴らだが。探偵は違う
探偵は依頼を受け、金銭を受け取って動くのだ。」
■227番 > 興味本位で、言葉に帽子の中の耳を傾ける。
落ち着きもあるが、それよりも未知に対しての興味が強いのかも知れない。
「いらい、むしょう……」
この黒い格好の人は、難しい言葉を使う。出るたびに小さく首を捻る。
どういうことだろう、と思っていると、金銭と言う言葉が出てきた。
お金のことだ。お金を要求するということは。
「ふーき、こうあんに、お願い、できないこと、とか、する人?」
その手合いは、落第街でも見たことがある。
路地裏で誰かとやり取りをしていたり、こそこそと人を追いかけているのも見たことがある。
どれも関わらないほうが良さそうだと思って距離は取っていたが。
■ラヴェータ > 「まあ、そのような事もしているな
風紀や公安には頼めないような事や、奴らにはこなせない事...悪いことをを頼む相手だ。」
探偵に対する熱い風評被害を、脅すような調子で、身を乗り出し顔を近づけてそう語る狐。
何、本気で脅そうなんて思っていない。
この平静を保ち続けている幼子の調子を少し崩してみたいなんて、興味本位で思っただけだ。
まあこの幼子が本当にスラムや落第街から来たのであれば、何度か見た事があるかもしれないだろう。
「つまり探偵というのは怖い奴らだな。風紀や公安が調べないようなところまで調べあげる奴らだ
私も何度かそのような手合いについて来られた事がある」
第一級監視対象であるからだろう。私を監視する知らない目を時折見かける。
影に入ってしまえば容易に撒けるが為に、大して気にしてはいない。
報告書に書き加えていただけだ。
■227番 > 軽く迫られて、少し目を見開き、思わず片足が1段下がった。
ここは螺旋階段のかなり上の方。手すりはしっかり掴んでいるが、若干危なっかしい。
「悪いことも、する人」
風紀や公安と違い、手段を選ばない、ということでもある。
やはり近寄らないようにしたのは正解であったか。
知り合いにそういうことをしている人は……居ないはずだ。知っている限りでは。
「……あなたも、調べられてる?」
言葉は難しいしちょっと脅かされたけど、今のところは悪い人にも、追われるような人にも見えない。
不思議におもい、どうして、と言わんばかりに目を覗きこむように見る。
■ラヴェータ > 「ああそうだ、奴らは悪い奴らだ」
一歩引いた少女が転落しないか、動くべきか一瞬視線を巡らせるが特に何もせず。
大丈夫と判断した為だが、一瞬思惑が全て途切れた様子が見受けられる。
大丈夫と判断した以上、続けるが。
探偵に後を着けられた事があるため、別に恨みはないのだが、少々意趣返しの意もこめて風評被害を広めてやろう、なんてしょうもない冗談に近い思考。
「ああそうだとも。私も少し用あり、って奴でな。
何、今は何もしていないとも。今はな。」
乗り出した身を引きながら。
まるで昔は何かしていたとでも、悪い事をしていたとでも言いたげな調子で、わざとらしく意味がありそうに。
その疑問が浮かぶ瞳を、白い髪で隠れていない方の瞳で、奥まで見透かす様に見つめる。
「そうだ、名乗っていなかったな。私の名前はラヴェータ。ラヴェータ=ワーフェンダー=クリークラーク。異邦人だ」
貴様も名乗れ、と付け足して。
■227番 > 「たんていは、わるい……」
自分の格好を見る。
今の自分は、悪い人の格好なのだろうか。少し不安になった。
純粋な少女は若干真に受けているように見える。
「そう、なんだ……」
ある"ともだち"もそういう人であると聞いた。
意外と多いんだろうか?前悪くても、今はいい人?どういうことだろう?
"変わった"ということだろうか?
見つめられた青い瞳は、少し困惑の色が見える。
「らべ……ラヴェータ。いほう、じん?」
知らない言葉。異邦人の知り合いは複数いるが、どれもそれを意識したことはない。
「わたしの、名前は、これ。にーにーなな。にーなとか、ななって呼ばれる」
名乗れと言われれば、ケープのタグを引っ張り、この3文字の数字がそうだと言う。
■ラヴェータ > 「ああそうだ。探偵は悪い奴らが"多い"な」
自分の格好を気にしている様子の幼子。それを見て全員が悪いわけではないぞ、と。
少々この幼子は純粋すぎるのではないだろうか?
「227?なんだ?貴様の名前は番号なのか?」
タグを見せられれば、眉を潜めて尋ねる。
実験生物に番号をつける様なものだろうか?もしかするとこの幼子は研究所出身なのかもしれない、などと思いながら首を傾げて。
この狐としては番号が名前と言うのは少々異常らしく。
■227番 > 「多い……違う人も、いる」
そっか、と少し、しかしわかりやすく安心した様子。
今いるのも落第街ではなく、表の街の、しかも中心。
であれば、あまり気にする必要もないのかも、と考えた。
名乗った後の反応を見れば、少し目を伏せる。
「うん。これしか、知らない。……番号って、言う人も、居る」
数字の羅列。顔をしかめるのも、困惑されるのも慣れている故、淡々と肯定する。
自分が名前だと認識できるのは今の所これだけだ。
■ラヴェータ > 「そうだ。それに貴様は探偵の格好をしているだけだろう?
ならばそう気にする必要もない。悪い奴らの格好をしているからと言っていいやつになっては行けないなんてことはない」
幼子を慰める様に、そしていいやつになれと。
そう本気では言っていない。あくまでも無責任に、話の流れで。
「ふむ、そうか。何、貴様は番号ではなくにーなやななとも呼ばれているのだろう?
それは番号ではない。そちらを名乗ればいいさ」
番号を名乗っていては、先ほどの私の様な感情を向けられることも、番号であることを指摘する輩も出るだろう。
何、少し考えなしに申し訳ないことをしたかもしれないと、そうならない様、どうすれば良いか適当なアドバイスを添えて。
■227番 > 「……格好、してる、だけ。
いいやつ?は、わからない、けど、大丈夫、わかった」
無責任に言われても、しっかりと噛み砕いて受け止める。
教えてくれる人の言葉は、受け流さない。
「うん、分かってる…でも」
番号を名乗るから、そう思われる。言われる。その通りである。
しかし227自身にとっては、ニーナ、ナナも、全部愛称でしか無い。
いつか自分のことを知って、手放していいと思えるまでは、これが自分の名前。
それを説明出来るほどの会話技能はないが、
「まだ、これしか、自分のこと、知らない、から」
少女ははっきりと心に決めていた。