2020/07/18 のログ
ラヴェータ > なんだかこうしてやけに真剣な感じで受け止められると少し罪悪感が湧いてくるな、なんて。
別にそれで自己を改める様なことはしないが...

「まあ貴様が気にせんと言うのなら。それはそれでかまわんのではないか?
貴様がそうしたいのであればそうすればいいさ」

それが本人の望みならば、そうすればいいと。そう畏まらずに、しかし適当でもなく。普通にそう伝える。
別に幼子一人が困ったり悩んだりした所で何も変わりはしない。
自分が満足するまで、納得するだけ、そうすればいいと。
なに、別にそう深い話でもない。当たり前の話だ。

「それとそうだな。自分のことか。長く悩めばいい。知恵を持つ生き物は、随分とややこしいからな
時間をかけて知ればいい。むしろ時間をかけろ
そうしなければ私の様になるぞ」

自分を、長い人生のごく僅かな部分で定めてしまったがために。今こうして感情を押さえつけ、監視を受けながら生活している自分を指差しながら。
妙に説得力がある様な、経験から語られる言葉。

227番 > 「……うん。でも、ありがとう」

ニーナを名乗れ、と言ってくれた人も居る。その時も断ったが。
ともあれ、相手の意図がどうであれ、少女は気にしてくれたと感じたので、礼を言った。

「うん、ゆっくり……。
 ……?どういう、こと?」

時間をかけろ、ということはわかる。慌てても仕方がない、それは理解している。
確かにと頷かされるような感じはあるが……
相手の素性をよく知らない故に、"私の様に"がよくわからない。
見た目だけで言えば、そんなに年上にも見えないのに、不思議と納得してしまいそうになる。

すでに何度もかしげた首を、またかしげた。

ラヴェータ > 「そうだな、ここはひとつ語ってやろうか。
なに、つまらん小狐の失敗談さ」

この幼子は何度首を傾げるのだろうか。
メトロノームの様だな。
さて、私の昔話は幼子相手に語る様なものでもない気もするが、きっとこの227であれば刺激が強すぎるなんてこともないだろうし、何より恐らく詳しいことはわからないだろう。

つまらないことだ、なんて言うのとは裏腹に、その声の調子は低くなる。
狐にとってもそう良い過去ではない。

「昔、とある異世界に狐がいた。その狐は人が喜んだり悲しんだり、楽しんだり苦しんだりする様子を見るのが大好きだった。
しかし、その狐は物足りなさを感じていた。
同族と話しても、人の姿を得て人々と話しても、どこか満足出来ずにいた」

その言葉はどこか重く、悲しいお話を話す語り手の様な。
文字通りとある狐のお話を語る白い狐。
その表情はどこか重く、暗く。ずっと纏っていた余裕ありげな調子など消え失せていた。

「とある時、狐は戦争をいうものを見た。そして知った。
戦場に近い丘の上から。木々の上から。岩の影から。そして、死体の山から。
戦場を見て、聞いて、感じた。
そしてその狐は感動したのだ。『これこそ私の追い求めていた物だ』とな。
そしてその狐は戦場に身を投じる様になった。新たな力と共にな」

物語を語るのだ。語り手は物語の場面に合わせて調子を変えるのが筋、という物だ。
この狐とて、それは理解している、が。どうしてもその声には暗いものが混ざる。
深い後悔、深海よりも闇よりも影よりも深く暗い後悔。

「そうすること100年、狐は身を置く戦場を失った。結果、異世界へと飛ばされてしまったとさ。」

...

「貴様も聞いたことはないか?三年前、スラムや落第街で起きた事件を。
多くが死に、多くが破壊されたあの事件を」

そう、227に問いかける。
気づかないうちに垂れ下がり、足元を見つめていた視線を227へと向け直し、そう問いかける。
そう、自身が監視対象となった原因の最初の出来事を。
その世界の住民であったかも知れないこの幼子なら。知っているかも知れない。

227番 > 「……わかった」

語ると言われれば、それを出来る限り理解できるように身構える。
きっと知らない言葉もあるだろうが、それは頭を使ってなんとか予測しようと。
語るそのさまをじっと見つめている。
言葉の交流が得意ではない少女は、心を読み取るなどといった技術こそないものの、
相手の表情の変化には非常に敏感である。

「せんそう……」

知らない言葉だが。知らないはずの言葉だが。聞き覚えがある。
恐ろしいものであるということは、何故かわかる。

生き甲斐を戦いに見出した狐の話をじっと聞く。
正直、あまり理解出来てないのだが。

「戦いは、相手が、居ないと、できない……」

……?自分は、なにを……?
知らない。知らないはず。困惑していると、何か問いかけられた。


「さんねん、まえ?」

227に時間の感覚はまだ身についていない。"来週"の概念をやっと覚えられたぐらいだ。
3年前と指定されても、何もピンとは来ない。しかし。

「人、あまり、居なかった日、あったと思う。
 道も、たしか、変わってた」

それは、先日行われた風紀主催の会合の比ではない。

ラヴェータ > 「恐らくそれだ。原因となったのが。私だ。
私は風紀委員会第一級監視対象。この島へと飛ばされた異世界の兵士で、大罪人で。
この世界でも戦争しようとして勝手に殺して、壊して、絶望した。それが私だ。」

本当にそうかはわからないが、そういうことにしておこう。
ここは、もっと明るく、冗談の様に語れるはずだろう?ラヴェータ。
何故首を垂れてそんな暗い声を出している?

「と、まあそんなところだ。つまらん失敗談だ。
まあなんだ。あまりに早計に自分を定めると何年も、それこそ死ぬまで悩むことになるかも知れないぞ?」

私は少なくとも三年は悩んでいる。そして解決の糸口も何も見つかっていない。
無理やり頭を起こし、普段の余裕がある様な調子に強制的に脳味噌を働かせる。
...無理が見て取れるが、パッと見た限り幼子相手に多くを語る狐の調子だ。
ただ、目の前の幼子には見抜かれてしまうだろうが。

227番 > 「あれを……一人で?」

落第街であったことの大半は不要なものとして忘れている。
しかし、不自然な人減りや、道が変わるような破壊は、身の危険に関わるため、必要な情報としてうっすら覚えていた。
それを、目の前の人がやったとは、にわかに信じられない。
破壊など自体は相手がやったものもあるだろうが、もとを辿れば一人。

まぁ、最近更地になったスラムの一角も一人の仕業ではあるのだが、それは少女は知らない。

「……うん。気をつける」

無理に作った調子を意に介さず、真剣な面持ちで、目を合わせて頷く。
道を踏み外すとはこのことだろう。それは道を自分で選んだ227にも起こりうることで。
となれば、慎重になって損はない。そう思った。

ラヴェータ > 「ああ気をつけろ。私の話は極端ではあるが、似た様なことは誰にでも起き得るさ」

目の前の幼子が真剣そうに頷く様子を確認すれば、どこかほっと一安心。
きっとこの幼子は他の誰かとも、なんなら多くの人々と関わってきている様な気がする。
私の話なぞ聞かなくても、きっと道は踏み外さないだろう。
だが、それでも。幼子が肯いてくれたというだけで。それだけで、安心できる。
どこかぎこちなかったその表情のぎこちなさが消えて行く。

「さて、私はそろそろ去るとしようか
つまらん話をして悪かったな、227」

その頭にポンと手を乗せて...

「ほう、貴様...私と同じ様な耳が生えているのか。なるほど。
次会うときは見せてくれ。では、また会おう」

手に触れた感触、それは自分と同じ獣の耳の三角の感覚。
思わず驚いた表情をわずかに見せ。
その頭をぽんぽんと。
手を引けば、半無理をしながら話した昔話をしっかり聴いてくれた幼子への感謝と、無駄にならなかった安心の表情を浮かべ、安らかに逝く様な表情で。
時計塔内部の影へと、その姿を消した。
残されたのは、彼女が座っていた階段に残った体温のみ。
それも直に冷めてしまうだろう...

227番 > 道を選ぶことがどういうことなのか、少し考えが深まった。
ここに来た目的とは違うものの、これは収穫だと思う。

「ううん、大事な話、だと、思う」

だから、つまらん話と言われれば、それを否定する。

頭をぽんぽんとされると、身体を揺する。嫌ではないようだ。

「耳?」

そういえば、相手の耳も人間のとは違う。
変わった格好に気を取られて、見落としていたようだ。

「わかった。また、今度」

なれば、隠す意味もない。次会うときまで、覚えておこう。

いつもなら手を振って見送る所だが、ふつと相手は消えてしまった。
ちょっと驚きもしたが、なんだかすごい人だったので、納得もできた。

ご案内:「大時計塔」からラヴェータさんが去りました。
227番 > 「っと」

帰ろうとして、当初の目的を果たしていないことに気づいた。
足元を見ないように気を付けながら、学生通りの方を見下ろす。
記憶している案内図と比べてみる。

自分が歩いたのはまだまだごく一部のようだった。
まだまだ、先は長い。明日も頑張っていこう。決心した。

目的を終えた少女は、新しく得た教えを胸に、螺旋階段をゆっくりと降りていく。

ご案内:「大時計塔」から227番さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に飛鷹与一さんが現れました。
ご案内:「大時計塔」にレナードさんが現れました。
ご案内:「大時計塔」から飛鷹与一さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」からレナードさんが去りました。