2020/07/22 のログ
神樹椎苗 >  
 静かにしていれば、聞こえてくるのはゆっくりとした足音。
 久しぶりに静かなお気に入りの場所で、うっかり微睡んでいたからか気づくのに遅れた。
 声が掛けられてやっと、視線を持ち上げて扉を見やる。

「――はあ、また来やがったのですか」

 昨日の今日で、少しばかり気が乗らないのだろう。
 それに今しがた、『送る』事を考えていたばかりの相手だ。
 吐き出す吐息も、重たくなるというモノだろう。

 そして、そんなだから、首に掛けたロープの事も忘れているのだ。

> 「ん?」
やれやれ、と近づいて

「しーいーなーちーゃーん!?」

首、首ー!?と縄を指差し

神樹椎苗 >  
「――ん、なに騒いでんです、か」

 と、首に触れて気づく。
 そういえば、こうして準備しているのも久しぶりだった、とか。
 なぜ久しぶりなのかと言えば、少女が頻繁に現れるからだった、とか。

「――ああ」

 一度遠くへと視線を飛ばし。
 気の抜けた声を漏らして、再び自分の首元を見て。
 ふい、と視線が逃げる。

「これは、そう。
 うっかり落ちないように命綱ですよ。
 ほら、今ちょっと寝ちまってましたからね」

 くるしい いいわけ だ!

> 「そっかー」

大丈夫ー?

と、ててとちかづいて

神樹椎苗 >  
 いいわけ が つうじた !

「あー、まあ、そうですね。
 大丈夫じゃねーですか、多分」

 歯切れが悪い!

> 「で、ほんとはなにがあったの?」
じーってジト目で

神樹椎苗 >  
 つうじてなかった!

「いや、別になにもねーですよ。
 しいはいつもどーりです。
 変なとこなんかないのです」

 疑いの目を向けてくる少女に、あくまで普段通りだと伝えてみる。
 そう、実際普段通りなのだ。
 少女に見せてこなかっただけで。

> 「大変だったの?」

「疲れちゃった?

「いぢめられた?」

近づいてじーと

神樹椎苗 >  
 近づかれてのぞき込まれても、出てくるものは変わらない。
 困ったことに、椎苗にとっては本当に特別な事でもないわけなのだ。

「まあ多少大変な事があるのは否定しないですけどね。
 本当になんでもねーですよ。
 しいはいつも通りのしいです」

 そう、のぞき込んでくる瞳を見返して。

> 【なら、しんじる」

じーってみつめながら

ご案内:「大時計塔」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にさんが現れました。
ご案内:「大時計塔」に神樹椎苗さんが現れました。
神樹椎苗 >  
 信じると、少女はそう口にした。
 そしてその瞳には、一切の翳りがない。
 本当に迷いなく、椎苗を信じるというつもりなのだろう。

 ――それは、どうして。

「信じるって、何を信じるんですか。
 お前は、しいの何を信じられるというのですか」

 気づけば、そう口にしていた。
 

> 「ん、んー、しーなちゃんをしんじてる、私をしんじてる?」

内心で感じた事を言えばこうかえるのだろう

「しーなちゃんはまちがえないことをー、わたしがしんじてる、かなあ」

無垢なる信頼が、そこにはあった

神樹椎苗 >  
 ――間違えない?
 誰が、なにを?

「――しいが、本当に間違えないと思ってるんですか?
 お前は、しいが、道を外さないと思ってるんですか?」

 椎苗の言葉に、普段はない感情の色が乗る。
 それは、目の前の少女に向けるには、あまりに薄暗い、負の感情。

「勝手な期待を押し付けるんじゃねーです。
 しいは、お前の思うような存在じゃねーのですよ」

 その瞳に浮かぶのは、明確な拒絶の心。
 少女に出会って初めて、椎苗は本当の意味で少女を拒絶した。

> 「え?」
明確な拒絶に固まってしまい
「だってしーなちゃんはかしこいし、わたしよりあたまもいいでしょ?」

首を捻る

「しーなちゃんも、わたしが、いらない?」

無感情に告げる、最後の一言

神樹椎苗 >  
 突然、電源が落ちるかのように抜け落ちる、少女の感情の色。
 その無感情な一言と、その意味に、椎苗ははっきりと苛立ちを自覚させられる。

「要るとか、要らないとかの話じゃねーのです!
 たしかにお前がしいをどう思おうが、それはお前の勝手です。
 でも、それをしいに押し付けるな!
 勝手に信頼して、期待して、しいを都合よく使うんじゃねーです!」

 ――まるで、玩具のように。
 ――まるで、人形のように。

 思ったように、やりたいように、幻想を押し付けるのか。
 この少女までもが。

「しいはかしこくも、頭がよくもなりたくなんてなかった!
 ただ、しいは、しいは――ふつうでいたかったのです!」

 もはや、絶対に叶う事のない願望。
 この体も、この力も、この知識も、全て。
 椎苗が望んだものは、何一つとしてないのだ。

 椎苗は悲鳴のように言葉を荒げる。
 ――きっと期待してしまっていたのだ、椎苗もまた。
 この少女の存在に、未来を見てしまったから。

> 「わたし?ダメなこ、だね」
しーなちゃんを傷つけた

「勝手に決めて、勝手に思い込んで、勝手に、しーなちゃんを利用してた、の?」

感情が、抜け落ちていく。
そう、思われてしまったことに
そう、思わせてしまったことに


「ごめんなさい、いらないこで
いれば、よかった」

蒼い、光が、異能制御用の、バレッタが、くだけた

神樹椎苗 >  
「――――っ!」

 無感情な声、言葉。
 それは、決して『感情が無くなった』結果ではない。

 急速に血の気が引いて、頭が冷える。
 少女が思ったことは、間違いではない。
 そして椎苗も『違う』という事は出来ない。

 けれど、それを真っ向から言うべきではなかったのだ。
 自分を殺して、いつものように一歩引いて。
 感情を動かさないまま、適切に対応すべきだった。

(ああ――どうしてこう。
 ――お前はしいを狂わせるのですか)

 蒼い光が溢れ、力を抑えていたバレッタが砕ける。
 それは、少女にとって致命的にもなりえる暴走。

 眠らせれば止まるか――?
 加減はできるのか――?
 一瞬に演算されはじき出される答えは一つ。

 祈る時間もない。
 唱える暇もない。
 ならば願い一つで、神を呼ぶ。

 どのような代償も、厭わず。

 椎苗の右手が少女へと伸びる。
 その腕は瞬時に肉を失い、血を失う。
 ミイラのように乾いた腕で、少女に触れた。

『――今は眠れ、幼子よ。
 優しき夢に、安寧を知るがよい。
 『現実』を知るには――まだ早い』

 静かで、厳かな声が、少女に語り掛けるだろう。
 それと共に、少女の意識は揺り籠の夢へ、送られる。
 少女が微睡に落ちたのなら、椎苗は身体と左腕で受け止めるだろう。

> 「なら全部、なくしち」
光が、あふれる前に

黒い優しい光が、希を包み、意識を断つ。

致命的な事態は、避けられた、のだが

神樹椎苗 >  
 ――間一髪、だっただろうか。

 死へ誘うはずの権能は、もはや眠りに誘う程度の力しか残っていない。
 しかし、それがこの時は幸いしたと言えるだろう。
 制御もなにもあったものではない、強引な召喚儀式。

 ――その代償は、知れたこと。

「これじゃ――時間稼ぎでしか、ねーですね」

 腕の中に落ちた少女を、意外なほど重く感じながら。
 自分の右腕を見下ろした。

 血肉を失い、木乃伊となった右腕。
 椎苗の身体は、すでに人ではないとは言え、かつて神子と祀られていたもの。
 神を呼ぶ供物としては、十分以上に機能する。

 しかし、『端末』としての機能に支障がない以上、死んだとしても再生されるか定かですらない。
 それでも――少女を助ける代償であるなら、損な取引ではなかった。

「――誰か、よばねーといけませんね」

 己の不手際から引き起こした、想定外の事態。
 その収拾を付けるには、椎苗の手では足りない。

 少女を押し付けられ、制御装置を与えた担当がいるはずだ。
 少女の重みを感じながら、蓄積された情報からその人物の居場所と所属を検索する。

> 少女は夢を見る、そうだ、わたしも、こんなちから、いらなかった、

なら彼女も、いらなかった

だから

「しーなちゃ、ごめん、なさい」

寝言が、漏れた

ご案内:「大時計塔」にソフィア=リベルタスさんが現れました。
ソフィア=リベルタス > 「様子見をしていればぁ、随分と派手にやるじゃないか。
 ガキが大人ぶった台詞ばっかりはいてるからそうなるのさ。」

椎苗が居場所を検索するまでもなく、黒髪をなびかせて鋭い目つきで少女たちを見据える、『化け物』が一匹。
椎苗達の背後からぬるり、と姿を現して、椎苗の肩を叩く。

「とりあえず、その体何とかしな。 この子が寝てる間にね。」

何があってもいいようにと念のために持っていた同一規格のバレッタを希に取り付け。
椎苗から取り上げるように抱きかかえると膝の上に寝転ばせた。

神樹椎苗 >  
 背後に現れた気配に、肩を叩かれた。
 見上げれば、見た覚えのある大人に見えない大人。
 魔術教師の妖怪だ。

 少女を抱きかかえ、寝かせるのを見届ければ。
 緊張が途切れたように、ぐったりと柱にもたれかかった。

「――見てるくらいなら、さっさと出て来やがれってんです」

 今の瞬間は、かなり危うかっただろう。
 それこそ、椎苗をガキと言うのなら、子供に手の負える事態ではなくなっていた。

「そう簡単にどうにかできるもんじゃねーんですよ。
 まあごまかすくらいなら、やりようはありますが」

 そう、骨と皮になった腕から解け落ちた包帯を拾いあげ、再び巻き直す。
 もともと細い腕だからか、包帯の上からであれば、そう不審に見えるものではない。
 さらに荷物から予備の包帯を取り出して、首から提げるように吊るした。

「それで、そいつは何とかなるんですか。
 しいの事よりも、今はそっちの方が火急でしょう」

 そう、少女の『保護者』役でもある教師に言う。

> バレッタをつければ、光は収まるものの、呻いていて、目を覚ます様子はない、ただ、ごめんなさい、と呟いて、つらそうに夢を、見ている
ソフィア=リベルタス > 「とりあえず制御装置は付けた。 でもこいつはあくまでリミッターだよ。
 君ならわかってると思うけど、本質的な問題はこの子の能力の制御じゃない。
 心の問題だ、拠り所を失ったと思い込んでる。
 だれも自分を必要としてないなら、自分もそのほかも要らないとでもいう様にね。
 まぁ、子供の癇癪の様なものだ。 すぐに収まるよ。 表面的にはね。」

そのうち目を覚ますだろう、いや、全てを拒絶して眠り続ける可能性もなくはないが。

「なんとかしたいのかい? 何とかなってほしいと思うのかい?
 いま、お前がまさに全てをぶち壊したのに。
 随分都合の良いことを言うじゃないかお嬢ちゃん。
 人を都合の良いように使ってたのは、どっちなんだろうねぇ。
 神樹椎苗、気づいていないわけじゃないんだろう?」

希が接触している対象のことは一応はしらべてはいた。
必要以上はプライバシーにかかわると思い踏み込んではいなかったが。
陰から見る限り、死に焦がれ続けながら死ねない少女。

希が椎苗を友達として扱っていたのならまた、この少女も。

「希、お前も甘えているんじゃないよ。 いつまで寝てるつもりだい、引きこもっても何も解決しないのは、わかってるだろうに。
 言ったろ? すべては円だ、途切れさせたら持続しないよ。」

魔術の講義のように、希に語り掛ける。
希の施したのはちょっとした回復魔術、疲労を軽減する程度のもの。
それは、親が子を抱きしめるような感覚を希に与えるだろうか。
 

> 「あ、う、まま、じゃない、ソフィアせんせ?」目を覚まして、わたし、友達に酷いことを言って、私は

「じい"な'ぢゃ"ん"にぎら"わ'れ"だぁ」

ボロボロ、感情を剥き出しにして、涙を、流して、泣いた

ソフィア=リベルタス > 「あー、はいはい。 ソフィア先生ですよ。
 まったくお前は世話の焼ける生徒だね。
 嫌われたかどうかは本人に聞きな、勝手に自分で決めつけるんじゃないよ。
 それと。」

泣きじゃくる希を慰めるようなことはせずに、デコピンをして。

「お前、椎苗を殺したかったのかい?」

静かに冷えた目で見た、逃げるなというかのように。
何時までも子供だからと言って逃げていいものじゃない。
何時までも見せなければいいというものじゃない。
子供はいつだって成長していかなければならない、ならその機会は今に置いてないだろう。

> 「ち、ちがうの、わたしがいらないこで、わたしがいなくなっちゃいたくて、しーなちゃんを、巻き込みたくなかった、の
に、あたま、まっしろにな、って」
泣きじゃくる、自分のやりかけた事に、恐ろしくて震える、こんななら、一人ぼっちのほうが、良かった

神樹椎苗 >  
「――返す言葉もねーですね。
 本当に、無様にやっちまいましたよ。
 今更――子供みたいに」

 ――気を許してしまっていたのだ。
 だから、気が緩んでしまっていた。
 だから、少女の言葉に感情を揺さぶられてしまった。

「しいは、しいにないものをそいつに見ていたのです。
 勝手に期待していたのは、しいの方でしょうね」

 太ももから小さな剣を抜いて、首に掛けていたロープを切り落とす。
 そして立ち上がると、少女や教師に目を向ける事もなく、ふらふらと扉へ向かう。
 目を覚ました少女にも、その泣き声にも、無関心を装って。

「――元より、好きでも嫌いでもねーですから、何も変わりませんね。
 後は、お前の役目でしょう『保護者』の化け猫教師」

 そう言いながら、左手で扉に手をかけようとする。

> 「ひ、しーなちゃん!待って、『置いてかないで』」
それは彼女を縛る鎖で、見捨てられたら、どうしていいか、わからない、から手を伸ばして

ソフィア=リベルタス > 「……。」

パンッ……と乾いた音が響いた。

それは希の頬を赤く染める、ソフィアの右手が希を叩いていた。

「誰が要らない子なんて言ったんだ。 考えるのを放棄するんじゃない。
 私は少なくともそんな風に思っちゃいないね。
 良く椎苗の言葉を思い出してごらん、思い出せないなら直接聞きな。
 希、私は先生だからね、甘やかしてはあげられないよ。
 居場所にはなれない、お前に教えられるのはその作り方だけだ。」

真っすぐ見据えて言葉を並べる。
難しいかもしれない、今の彼女には。
それでも、今教えないときっとこの子は後悔するだろう。

自分が、人間であることを否定したがるあの子供もまた。

「おっと、逃げるんじゃないよ。 まだ話は終わってない。」

ちょいちょい、と指で引く様に。
異能と魔術によるポルターガイスト、サイコキネシスに近い現象で椎苗を無理やり近づけた。
逃げられないように、どっしり座らせる。

「後は子供同士で解決しな、傍で見ててやるから。」

そう言って、少しだけ二人から距離を取った。

> 「ごめんなさい」頬を打たれて
落ち着いたようで
「ありがとう、ソフィアせんせ
、ちゃんとあやまる」

向き合って、頭を下げる

「ごめんなさい、しーなちゃんも、嫌なのに頼っちゃって、甘えて」

> 「わたしも、そうなのに、しーなちゃんも、そうじゃないって、大人だって、頼って、すがって、甘え、てごめんなさい」
上着と長い袖の服を脱いで、背中を見せた、夥しい刃物と、焼けた鉄を押し付けた、痛みの証
少女の、少女らしい、慟哭

神樹椎苗 >  
 立ち去ろうとしたところを、強引に引き戻される。
 そのうえで、抵抗も許されず床に押し付けらえた。
 ――抵抗する気力もなかったが。

「――厄介な教師ですね」

 一つ舌打ちして、動かされるまま、少女の前に座らされた。
 しかし、これからどうしろというのか。
 椎苗の存在そのものが、すでに少女への過剰な刺激となっている。

 そう渋々その場にとどまれば、少女から発せられるのは素直な『ごめんなさい』。

「別に――頼るのも、甘えるのも、お前の勝手です。
 それをやめろなんて言うつもりはねーですよ。
 ただ――」

 その背中を見る。
 少女が何をされてきたは知っていた。
 それを、不愉快に思う気持ちも、椎苗にはあった。

「――しいはお前が思っているように、間違えない正しいものじゃねーのです。
 信じるのも期待するのも好きにすればいい。
 ですが、しいはそれには応えてやる事はできねーのですよ」

 言葉を選びながら、探るように線を引いていく。
 少女の背中を見ながらも、必要以上に触れず、触れさせずに。

> 「しーなちゃんは、わたしのこと、邪魔?」

ぐずぐずと泣きながら

「しーなちゃんと文句言われながら勉強したいし」

「しーなちゃんとあまいもの食べたいし」

「遊んでくれなくてもいいから
、嫌わないで」

神樹椎苗 >  
 泣きながら、幼い願望を告げる少女にどう答えるか。
 一時だけ考え、ため息と共に諦めた。

「――邪魔、ですね」

 嘘をついて、誤魔化す事は簡単だろう。
 少女は相手の思惑を見抜けるほど、賢くはない。
 けれど、それはこの場において、意味のない事だった。

「付きまとわれるのも、じゃれつかれるのも、迷惑です。
 しいにとって、しいを縛ろうとするものは、邪魔でしかねーのです。
 しいは何も要らない、これ以上何もなくていい」

 椎苗は心から、『死にたい』と願っている。
 けれどそれは、『誰か』と関われば関わるほど、その『誰か』に阻まれかねない願い。
 椎苗を縛るものは、『死にたい』と願う椎苗を『死なせない』ように働く。

「――でも、不愉快じゃなかったです」

 だから少女は、椎苗の願いにとっては邪魔な存在だった。
 だから本当は、もっと早く突き放すべきだったのだろう。

「しいは、お前を好きにはなりません。
 けど、嫌いにもなりません。
 だから、嫌わないで欲しいっていうのなら、わざわざ嫌う事なんかねーです」

 少女とふれあっている間、まるで自分が『普通』の人間のように感じられた。
 そんなはずはないというのに、その錯覚の居心地の良さに、甘えていた。

「――それでも敢えて言う必要があるとしたら。
 お前は、しいから離れるべきです。
 お前は、しいみたいなモノと、関わるべきじゃねーのですよ」

 少女を刺激すること、傷つける事。
 それを中途半端に恐れ、そのせいで余計に傷つけてしまった。
 ならば今度こそ、今だから、本当に突き放すべきだと。

> 「やだ、しーなちゃんに、甘えて縋ってめーわくかけます!」

「しーなちゃん、そうしないと消えちゃいそうだもん!」

「わたしに、しーなちゃんと、いっしょに、いさせてよ!」
き、と、少女のうちのなかで、最大のわがままを、くちに、した

神樹椎苗 >  
 少女はやはり、直観で本質を見抜いていた。
 椎苗の願いも、心のどこかで感じ取っているのだろう。

「ああ、だからしいはお前が邪魔なんです」

 少女はいずれ、椎苗を縛り付ける最も大きな鎖になる。
 まだ少女に椎苗の障害になるだけの力はない。
 けれどいつか――遅くても数年後には。

「何度も言いますが。
 お前がそうしたいなら、好きにしやがればいいです。
 だけどしいは――」

 少女はまた一歩成長し、心からのわがままを言った。
 嫌われて、拒絶されることを恐れるあまり、子供らしいわがまますら言えなかった少女が。
 それならもう、言葉を選ぶ必要はない。

「お前を邪魔だと言い続けます。
 しいには要らない、必要ないと言いますよ。
 お前がしいにつき纏う限り、何度でも」

 それは椎苗のためであり、少女のためでもあった。
 椎苗が少女に近くなりすぎれば、少女の可能性を、未来を狭めてしまうのはわかり切っていたから。
 はっきりと、嫌悪ではない、ただの拒絶を少女に告げる。

> 「それでもいい!」
ニコッと笑い

「そーじゃないとしーなちゃんじゃないもん」

「だからわたしは、しーなちゃん、あそぼ?って言う!」

手を、いつものように、伸ばす

神樹椎苗 >  
「――本当に馬鹿ですね、お前は」

 たった今、その手を取らないと告げたばかりだというのに。
 少女と繋いでいた手も、枯れたというのに。
 それでもと、最速で、最短で、一直線に。

「――遊ばねーです」

 伸ばしてきた手を、取ることはない。
 淡白に、無感動に、視線を背けて。
 呆れたように言葉を吐いた。

> 「もー、しーなちゃんはすなおじゃないなー」

今度は体ごと、抱きつくように

神樹椎苗 >  
 突き放しても、目を背けても、少女は飛び込んでくる。
 付き合っていられないと、疲れたように息を吐いて。

「これでもかってくらい、正直に言ったんですけどね。
 やっぱりなにもわかってねーじゃないですか」

 そんなことはない。
 少女も幼いなりに、何かを理解したことだろう。
 それでも、その上で、わがままになると決めたのだ。

 ならそれはきっと――祝福されるべき事なのだ。
 椎苗には歩めない、未来へ進むための成長なのだから。

ソフィア=リベルタス > 「んっふっふ、まぁおおむね予想通り。 お前の負けだね神樹椎苗。
 子供ってのは我儘なもんだ。 どんなに拒絶してもそいつはお前を離さないし見つけ出すだろう。」

にししと意地が悪そうにわらうと、希と椎苗の髪をそっと撫でる。

「椎苗、君は人間をちょっと甘く見すぎてるね。
 君自身をとも言えるかもしれないが、10歳そこそこの子供が、ちょっと知識に富んでいるからって達観するもんじゃない。
 たとえどんな過去があろうとも、お前は世界の本質を知っちゃぁいない。
 それを知るには君はまだまだ若すぎる。
 希は可能性の塊だ、そして、お前の予想を覆す驚くような力がある。
 もう、わかってるんだろう?」

少女2人に与えていた魔術を解くと、ケロリとした顔で。

「何も知らない大人が、と君は思うかもしれないけれどね。
 大人のいう事も少しは耳に入れたっていいもんさ。
 さ、じゃぁ私はもう行くからね、後は二人で好きにするといいよ。」

教師と名乗った化け物は、黒猫に姿を変えてどこかへ走り去ってしまう。
返す言葉も聞いているのかいないのか。

 

ご案内:「大時計塔」からソフィア=リベルタスさんが去りました。
> 「ん、またねせんせー」手をブンブンと
神樹椎苗 >  
「誰も、勝負なんかしてねーでしょうに」

 教師の言葉にもまた、呆れたように呟く。

「知らないくせに、なんて思わねーですよ。
 世界に計算できない事が多すぎるのも、解っていますしね」

 事実、どれだけ情報を蓄積しても、神木は数多のエラーを返す。
 そして計算した結果も、常に一定ではないのだ、事、人間に関しては。

 ただ一つ、教師の勘違いがあるとすれば。

(しいは人間を甘く見たことなんてねーですよ)

 むしろ、その反対だということくらいだろう。

「――はあ。
 しい達も帰りますよ、直情ロリ」

 そう言って、動かない右腕を持ち上げかけて、改めて左手で少女を押し返しながら立ち上がる。

> 「うん、しーなちゃん」
えへへと笑いながら、痛めた腕を庇うような位置どりでついていき

ご案内:「大時計塔」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」からさんが去りました。