2020/08/01 のログ
ご案内:「大時計塔」にフレイヤさんが現れました。
フレイヤ >  
「っはぁ、なんでこんなに、高いのよ……」

時計塔最上階。
ここまで階段で登ってきたが、流石にキツイ。
近くの壁に手を付き、ぺたんとへたり込む。
探せばエレベーターくらいあったのかもしれないが、一応潜り込んでいる身としては見つかりそうなことはやめておいた。
登るのをやめておけばよかったかもしれない。

「ふー……でも、景色は良いわね……」

座り込んだままでも景色は見える。
島を一望出来ると聞いてここまで登ってきたが、なるほど苦労しただけの甲斐はありそうだ。
座ったまま気持ちいい風と夕日に照らされる景色を見てぼんやり。

ご案内:「大時計塔」に日下 葵さんが現れました。
日下 葵 > 「ふいー。さすがにこうも何度も上らされると慣れてきますね。
 って、おやおや、やっぱり居るんですねえ。
 ダメだって書いてあるのに上っちゃう人」

この塔に上らされるのは何度目だろう。
もはや仕事に誠意さがないことがばれて、
半ば懲罰的にシフトが組まれているのではないかと思うほどだ。

上りきったところには何とも可愛らしい見た目の女の子がいた。
ここは人気スポットなのだろうか、毎度毎度誰かしらがいる。

「立ち入り禁止ですから、降りてくださいね。
 ここから落ちて怪我したりしても風紀委員は責任取れませんから」

もはや報告書に書くことすら面倒なのか、
柱に身体を預けて煙草を一服し始める始末である>

フレイヤ >  
「あら」

床にぺたんと座りこんで景色を眺めていれば、後ろから声を掛けられた。
振り向けば何やらやる気のなさそうな女性。

「嫌よ、さっき上がってきたばかりなんだから。疲れるし」

聞く耳持たず。
どこまで行ってもマイペースなお嬢様であった。

「心配しなくても落ちないわ。その内降りるからちゃんと降りるから」

日下 葵 > 「それじゃあ困るんですよ。報告書を書かなきゃいけない。
 そうなるとあなたに身分証明書やらなにやら見せてもらう必要があります。
 それはそれであなたも嫌でしょう?」

おとなしく言うことを聞いてくれれば見逃してやろうと言っているわけである。
本来なら上っているのを見つけた時点で報告書モノなのだが、
そんなことを真面目にやったところで誰も得などしない。
仕事は増えるし、風紀に目をつけられるし。

「それに私がいるのに落ちて何かあったらそれはそれで私が責任を問われるわけですしねぇ」

仕事はするが面倒は嫌いだ。
だから何か起こる前に引いてもらいたい。>

フレイヤ >  
「ふうん」

風紀委員にも色々いるようだ。
彼女はあまり真面目な方ではないらしい。

「――じゃあこれで見逃してくれる?」

スマホを取り出し画面を操作。
その画面を彼女へ見せる。
表示されているのは、送金アプリ。
現金として引き出せば縦に立つくらいの金額が表示されている。

「それとも、足りないかしら」

金の力にものを言わせるろくでなしお嬢様。
マネーイズパワー。

日下 葵 > 「……どういうつもりか知りませんが世間一般にそれは買収ってやつですよ?」

おもむろにスマホを操作し始めるのを眺めて何事だろうと思うが、
画面を見て飽きれたようだった。

「足りる足りないの話じゃないんですよ。
 面倒か面倒じゃないかです。
 あなたがお金を支払ったとして、
 私の面倒が直接的にでも、間接的にでもなくなることはありませんから」

受け取らないしさっさと降りろ。
そう言って半分ほど燃えた煙草の灰を落とす>

フレイヤ >  
「えぇ」

通用しなかった。
残念そうな顔。

「でも私今上がってきたばかりなのよ? 疲れちゃって今すぐは無理よ」

貧弱な十二歳なのだ。
この高さまで階段を上ってすぐ降りろと言われても。

「――そうだ! じゃあ私が歩けるようになるまで貴女もここでお話ししましょう?」

名案、とでも言うように両手をぱちんと合わせる。
何もよくない。

日下 葵 > 「……ふむ。
 それは悪くない提案です」

乗った。
余分な金は面倒の元だが、ここで少々駄弁るくらいならトラブルもあるまい。
長時間いなければいい話だし、ここはそもそも自分しか見回りに来ない。
なら乗らない理由も特にないだろう。

「良いでしょう。
 ただし長居は禁物、常識的な休憩時間を取ったら降りること。いいですね?」>

フレイヤ >  
「やったぁ。あなた優しいのね」

にこにこと笑顔で喜ぶ。
いそいそと横にずれ、彼女が座るスペース――そもそも空いている場所などいくらでもあるのだが――を作り、彼女が座るのを待つ。

「貴女、お名前は? 私はフレイヤ、アースガルズ家長女のフレイヤよ」

そのまま無邪気に名前を聞こう。

日下 葵 > 「優しいかどうかは知りませんが、堅物ではないと自負してますよ」

そう言っているうちに煙草を吸い終わってしまった。
根元に残った火だねを握りこんで消せばポケット灰皿に吸殻を収める。

そんなことをしていると、彼女が隣に座れといわんばかりに移動した。
はて、座る場所ならいくらでもあるしそもそも座る必要はないが……
せっかく場所を開けてくれたのだ。彼女の隣に腰を落ちつかせた。

「一応あなたは注意される立場の人間ですから、
 こういう時は馬鹿正直に名前は言わないほうがいいですよ。
 せっかく私が見逃すといっているんです。わざわざ名乗ることもないでしょう。
 私は日下葵。”あおい”と書いて”まもる”です」

私は風紀委員なので名前を聞かれたら応えなきゃですけど。
そう言って自己紹介をする>

フレイヤ >  
「でも、見逃してくれるんでしょう?」

ならば名前を名乗っても問題はないはずだ。
それに彼女の名前を知りたかったし、人に名前を尋ねる時は自分も名乗るのが礼儀だし。

「アオイ……マモル……?」

漢字に詳しくないお嬢様はぴよりと首を捻る。
よくわからないが、

「――とにかくマモルって呼べばいいのね」

そう結論付けて笑う。

日下 葵 > 「おやおや、私が狡猾にも嘘をついていることだってありえます。
 あまり人を信用しないほうがいいですよ。
 特にあなた――フレイヤさん、でしたっけ?
 あなたみたいにお金をたくさん持ってたりする人は」

そう。私がいい人間であるという保証は今のところの彼女にはない。
仕事中じゃなかったら他人にどんなひどいことをするか知れたものではない。

「漢字は苦手ですか。
 まぁ、読み方さえあってればいいんですよ。
 まもると呼んでくれればそれでいいです」>

フレイヤ >  
「あら、私が嘘を吐いている可能性だってあるわよ?」

くす、と笑う。
真偽が不明なのはお互い様だ。
それにお金はいくらでもある。
さっき見せた金額が端金だと思うくらいには。

「形も難しいし沢山あるし、読み方も多いんだもの。よくこんな文字で生活出来るわね」

聞けば自分くらいの年までに千もの漢字を学ぶらしい。
よくもまぁそこまで作ったものだと感心するし、それを覚えるなんて考えられない。

日下 葵 > 「貴女が嘘を吐く分には、吐かせる方法はいくらでもありますから私は特に困りませんね。
 むしろ私を相手に嘘を通せる人間がいるんだとしたら、それはおよそ死人に近しいですし」

そう、人間が相手なら。
フレイヤというこの少女が人間なのかどうか、どんな力を持っているのかは知らないが、
人間であるならおよそ問題ない。
もちろん、彼女のようないたいけな少女を相手に”痛めつけ”なんて心が痛んで仕方がないが。
個人的には、私は金に興味はないがそのほかなら好奇心旺盛な性格だ。

「一文字一文字を別々に見るから多いんですよ。
 部首とかつくりとか、パーツごとに意味があるので実際にはそこまで覚えることはありません。
 何より毎日使っていれば嫌でも覚えますし」>

フレイヤ >  
「まぁこわい」

くすくすと笑う。
まるで本気にしていない。
自分は痛みには強いし、異能があるから怪我で死ぬこともない。
それ故の油断と幼さ故の無知である。

「みんなそう言うのよね。でも難しい文字を使って生活するのが普通になってるから、わからないのよ」

むすっとして立てた膝に鼻から下を埋める。
知り合いに家庭教師をしてもらっているが、いまだに漢字は覚えられない。

日下 葵 > 「本気にしていませんね?
 よほど自分の力に自信があるか、世の中を知らないか……
 ぜひ前者であってほしいものです」

恐らく両方だろう。幼い時にそれなりの力を手に入れると大抵の人間は油断しがちである。
その点、私は”よく訓練してもらった”ものである。
訓練の内容を両親が知ったら泣いてその場に崩れる姿が目に浮かぶ。
果たして目の前の彼女はその域まで訓練しているだろうか。

「ええ、その通りです。
 慣れというのは恐ろしいですよ。
 傍から見れば気が狂っているようなものでも、当人にとっては当たり前になるんですから」>

フレイヤ >  
「失礼ね、私これでも結構強いのよ?」

む、と頬を膨らませて。
強い、と言うのはあくまで主観。
本当の強者に会ったことが無いだけである。
彼女の思いなど知らず、ある意味無邪気なものである。

「――漢字を使う人は気が狂ってる、って言うの? マモルが言っていいことなのかしら?」

こてん、と首を傾げて。
確かに漢字を使って生活出来ているここの人たちは気が狂っていると思わなくもないが、それを漢字を使って生活している当人の彼女が言うのはどうなのだろうか。

日下 葵 > 「おやおや、ではぜひその強さというモノを見せていただきたいものですね」

頬を膨らませる彼女の様子は大変に微笑ましい。
……心の内に邪な感情が芽生えるくらいには。

「漢字を使わない人から見れば、そのように見えても不思議ではない、って意味ですよ。
 相手の価値観によってはそう思えるものです」

無論、私は漢字を使うのは日常ですから、狂っているなんて思いませんけど。
そう言って笑って見せる>

フレイヤ >  
「えっ……え、っと、……ま、魔術、使えるもん」

強さを見せろ、と言われて途端に狼狽える。
まさかそう返されるとは思っておらず、悪い人には見えない彼女をいきなり鞭でしばくのもはばかられ。
結局出てきた言葉は年相応の言葉になった。

「ふうん……よくわからないけど。私もマモルたちからそう思われてる、ってことなのかしら」

確かに母国語はそれを使わない人にはわからないから、そうなのかもしれない。
なんだかよくわからないしそんな自覚もないけれど。

日下 葵 > 「……ぷふっ、あはははハハッ、いいですね。年相応でとてもいい。
 そこでいきなり本気を出されたらそうしようかと。
 いやぁ、可愛げがあってとてもいいですね」

こちらの言葉に一瞬狼狽する様子をみて、思わず笑いがこみあげてしまった。
ひとしきり腹を抱えて笑うと、やはり彼女は幼さゆえに無知であると理解した。
だというのに、彼女の持つステータスはいささか危険が過ぎる。

「私みたいなよくわからないやつにはね、
 ハッタリでもいいからビビらせるくらいじゃないとダメだ」

腹を抱えて空を見上げ、声を上げていた姿勢から、
グッと顔を寄せて囁くとホルスターから銃を抜いた。
安全装置を外してスライドを引けばいつでも打てる状態になる。それを、彼女に渡した。

「私は貴方にこれを渡して無抵抗でいられる。
 何なら太ももに収めているナイフも預けてもいい。
 私がこれらの道具をあなたに本当に使おうとしたとき、
 フレイヤ、貴女は抵抗できるか?」

金も聖書も経本もコーランも弾丸を止めてはくれないぞ?
そういって、拳銃の銃口を自分に向けたまま、グリップで彼女の胸元をトントンと叩く

「私から見たらあなたは相当常識の範疇ですよ。
 収まりすぎてて気が触れてると思えるくらいに」>

フレイヤ > 「な、なによ! 魔術も使えるし、異能だってあるんだから!」

焦りながら怒る。
確かに強がりみたいになってしまったけれど、本当のことなのだ。
本気だと立ち上がろうとしたら、銃を渡された。

「えっ」

ずしりと来る銃の重み。
それを見て、彼女を見る。

「も、もちろんよ。私、怪我とかしないもの。い、痛いけど、我慢出来るもの」

胸を張る。
実際銃で撃たれたことはないし、ナイフで斬られたことはない。
誰かを鞭で打った肩代わりの痛みか、両親に叱られたときに頬を打たれた痛みぐらいの経験しかない。
それでも、ここで主導権を取られてはこれ以降も取られっぱなしだと本能的に察する。

日下 葵 > 「違う違う、どれだけ力を持っているかとか、どれだけ金を持っているかとか、
 そういう話をしているんじゃない。
 ”お前は正しく使えるのか?”ってきいている」

彼女のペースにはさせない。ペースを握っているのは私だ。
言葉にはしないが、目がそう言っている。

「ここで起きたことは一切報告書に書かない。これは約束しよう。
 だから好きにしていい。誰も見ていないし、見に来ない。
 フレイヤ、貴女がこの銃やナイフ、はたまた自分の異能や魔術で私を好きにしていい。
 逆に私もあなたを好きにできる訳だが。
 ここは敢えて―――――」

銃口を咥えて、引き金を引こうとする>

フレイヤ >  
「ただ、しく……?」

正しく使う、とはどういうことだろうか。
自分は異能を使えている。
今まで暴走させたこともない。
「肩代わり」の配分を間違えたこともない。
それは正しく使えている、と言えるのだろうか。

「好き、に……?」

訳も分からぬまま銃を握らされ、その銃を彼女が咥えている。
銃を撃ったことはないが、引き金を引けば弾が出る、と言うことぐらいは知っている。
それで人を撃てば人は死ぬ――どこを撃てば死ぬかまでの知識はないが、この状態で撃てば間違いなく死ぬ、と言うことは知っている。

「ぁ……」

そして。
人が死ぬほどの痛みとはどのぐらいの痛みなのだろうか。
それを知りたい、人が死ぬ痛みを経験したいと思ってしまった。

フレイヤ > だから、彼女が引き金を引く前に自分で引き金を引き、
フレイヤ >  
「―――――――――!!!!!!」

「全て」を肩代わりしたその痛みに、無言の叫び声を上げ、ぐるんと目を裏返して仰け反り、ごとんと倒れた。

日下 葵 > 乾いた音が鳴った。
およそ近くで聞くには大きすぎる音が、高所の風と共に反響もなく溶けていく。
そして少し遅れて上半身が倒れるのだが……
その音は二回だった。
どちらの音が先だったのかは分からないが、確かに二回だった。
”いつもは一回だけなのに”

「……いやー、驚いた。あなたが引き金を引くなんて。
 って、なんで倒れてるんですか。
 私のこと殺しといて気分悪くなって倒れるとかわがままが……フレイヤ?」

何かがおかしい。
いくら痛みに鈍くなっているとはいえ、何も感じないわけがない。
なぜ痛みを感じなかったのだろう。
なぜ彼女は倒れているのだろう。

「フレイヤ!」

理解した瞬間に彼女の肩を叩いた。
ひとまず横向きにして、脈と息を確認する>

フレイヤ >  
「――ぁ、――ひ、ぃ――♡」

びくん、びくんと痙攣。
撃たれた――撃った弾丸が彼女の頭を貫き、その軌道に沿って痛みが走る。
今まで感じた痛みの数倍、数十倍――いや、どのぐらい大きい痛みかもわからないほどの痛みが一瞬で脳を焼き切ったような。

「ァ――は――す、ご――ひァ――♡」

蕩けた眼で何度も痙攣を繰り返しながら、――絶頂。
脚をこすり合わせるたびにぬるっとする。
失禁まではしていないが、どちらにせよ下着はもう用を成していないだろう。

日下 葵 > 呼吸を確認しようとしたとき、彼女が動いた。
生きてはいる。が、小刻みな呼吸を確認すると、死戦期呼吸の可能性を考えた。

「心肺蘇生、の前に応援の要請……ん?」

端末を取り出して応援を呼ぼうとしたとき、異変に気付いた。

「……フレイヤ?
 まさかあなた……イッた……?」

そのまさかだった。>

フレイヤ >  
「ぁ、は――――あは、あははは……!」

笑う。
虚ろな目で、無邪気に笑う。

「すごい、すごいわ。死ぬってこうなのね。死ぬときの痛みってこうなのね……!!」

焦点の合っていないどこを見ているのかわからない目で虚空を見つめながら感動に打ち震える。
鞭で打たれた痛みとは違う。
頬を叩かれた痛みとは違う。
そんなものとは比べ物にならない、文字通りの死ぬほどの痛み。

「マモル、すごい、すごいよ。死ぬのって、すごく、痛いの……!」

近くにいるであろう彼女にそう笑いながら言い、まだ手に持っていた拳銃を自分の胸に押し当て、

「――ッ、ひィ、あァ……!」

引き金を引く。
引き金を引く。
引き金を引く。
何度も、何度も。
その度に身体が跳ね、嬌声が上がる。

日下 葵 > 「なに当たり前のこと言って……ってオイッ!
 フレイアお前、馬鹿やめろ!
 喘ぐなこの変態!あたしの銃を”そういう”ことに使うな!」

彼女がどういう能力を持っているのか察した。
察したし、彼女がどういう人間なのかも察した。
同族嫌悪とでもいうのだろうか。
私も彼女のことをとやかく言える質ではないが、ここまで露骨ではない。
……いや、自身がない。

「そんなに痛いのが好きなら後でいくらでも痛めつけてやる!
 弾だってただじゃないんだ。無駄撃ちするな!
 服が破れないように咥えたのに、そんなに身体を打ち抜いたら帰るに帰れないだろう!」

とかく、打ち尽くされてしまってはたまったものではない。
スライドを握って装填を止めれば、彼女を正気に戻すために一喝する>

フレイヤ >  
「あ……」

銃を握られ、それ以上の自傷行為を止められる。
寂しそうな顔。

「なんで……? 何をやっても、良いって……」

彼女は「彼女を」好きにしていい、と言ったのだ。
自分を好きにしろとは言っていない。
しかし痛みと快感でぼやけた頭では考えられず、縋り付くようにその腕を掴む。

「いたいの、くれるの……? マモルが、私にいたいのくれるの……?」

流石に、死ぬほどの痛みを何度も叩き付けられては――自分でやったのだが――、意識が朦朧としているらしい。
ぼんやりした目で彼女を見つめ、彼女へ身体を寄せるように身体を起こす。

「ちょうだい……わるいこのフレイヤに、いたいの、ちょうだい……」

日下 葵 > ……思いがけず、良いおもちゃを見つけたかもしれない。
動転した気持ちが落ち着いてくると、そんな考えが浮かんできた。

「……いいだろう。いろんな種類の痛みがあることを教えてやる」

目の前にいる自分の幾分の一しか生きていない少女に対して抱く感情ではないことは、
重々承知していた。
しかしこんなに都合の良い存在を手放すのは、いささかためらわれた。
お互い死なない上に合意の上。手放せるわけがない。>

フレイヤ >  
「――あは……♡」

笑う。
年相応に無邪気に。
年不相応に妖艶に。
親猫に甘える子猫の様に彼女にすり寄り、抱き着いて。

「わるい、フレイヤのこと、たくさん、しかって……?」

この人なら、きっと自分を愛してくれる。
痛みと快楽でぐずぐずの頭で、そんなことを考えながら。


いつ、どうやって、どこへ帰ったのかはわからないが。
少なくとも日が落ちる頃には二人の姿はなかっただろう――。

ご案内:「大時計塔」から日下 葵さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」からフレイヤさんが去りました。