2020/08/17 のログ
ご案内:「大時計塔」に黒髪の少年さんが現れました。
黒髪の少年 > 大時計台の展望エリア。
いつの間にか、そこに独りの少年が立っていた。
何かしにきたでもなく、誰かを待つでもなく。ただ、まんじりともせず佇んでいる。
眼下に広がる夜の常世島を眺めつつ、その双眸は黄色い蛇のような瞳をしていた。

戻ってきたのか。
はたまた亡霊か。
"彼"と瓜二つの姿が、そこにあった。

黒髪の少年 > 「まったく損な役回りったら……」

眠らない街を眺めながら、ため息がちに独り言ちる。
その声も、"彼"のもの。
だが、その言い回しは……

「なーんたって俺ってば、あんなお願い聞いちまったかなー……」

誰かの、"お願い"。
その姿と、なんの関係があるのかは不明だが。

「しっかし。ここの眺めは確かに大したもんだなあ。
 自分の抱えてる悩みってーのが、こう……ちっぽけなもんだなぁ、って思える気はするねぇ。
 あんにゃろうが気に入るのも、分かる気はすらぁ。」

黒髪の少年 > 「ま、ここにいない奴さんとの約束だもんで?
 無下にしようってー思ってもそりゃ容易いもんだが。
 ……そりゃ、流石に義に欠けるっつーかなんつーか。」

かつん、かつん。
何をするわけでもなく、あたりをうろうろ。
誰も来ないのをいいことに、独り言が尽きないようだ。

『僕に対して言い残したことがある人がいたら、
 僕の姿で話を聞いてあげて欲しいんだ。』

「なぁんて言われちまったらなー………。」

ご案内:「大時計塔」に阿須賀 冬織さんが現れました。
阿須賀 冬織 > また、夜風にあたりたくなってここへとやってきた。
この前もそうだったのだから今日も人がいるなんて思ってもなく。

「……っ! ……レナード、なの…か……?」

先客がいたこと、そして何よりその姿が、あまりにも見知った奴の姿に似ていて。
目を見開いて思わずそう呟く。……ここにはいないはずだってわかっているのに。

黒髪の少年 > 『レナードは、もういない。』

背後から、誰かを呼ぶ声が聞こえる。
それに返すのもまた、その誰かと同じ声。

『その焦燥っぷり、既にレナードはここにいないってことを君は知っている。』

もう、事情は知っている。
彼のその反応から、ここにいない誰かにとってどういう相手だったかを。

『ならば、僕は何者か?
 君が呼び寄せた、亡霊か、生霊か、それとも他人の空似か。
 …それは、きっとどうでもいいことだし。』

そう言いながら、彼の方へと振り向いた。

『だから………
 ここにいない誰かに、君が言いたくても言えなかったことを、僕が聞こう。』

阿須賀 冬織 > 「……ああ、そうだよ。……俺は知ってる。あいつがもうここにはいない、会えないんだって。」

返ってきたその声に瞳が揺れる。
そうだよ、アイツはもうここに居ない。会えないんだ。じゃあ……

お前は誰なんだ……?

心の声が漏れていたのだろうか。コイツはそのまま疑問に思っていたことを語りだした。
思わず、最後の口調に反応してしまう。一瞬、もしかしてと思ってしまう。
振り向いたその姿も彼と酷似していて……。

ああ、……だけど。

       違 う
その目を見て知らない誰かなのだと理解する。

黄色に輝くその目は、確かに似合っていて。
でも、俺の知っているアイツじゃない。

「……はぁ。結局アンタに言っても何も変わらねぇ。
アイツに言いたかったことは、この前にすべて吐き出しちまった。
確かによく似たアンタにぶつけたら気は楽になるんだろうが……。」

言いたいこと言えなかったこと、そんなもの沢山ある。虚空に向かって吐き出して気が済むわけもない。
だけど、このよく似た誰かにそれを吐き出すのが正しいことなのだろうか?
答えが出ずにそこで詰まる。

黒髪の少年 > 『へー……?
 なんだ、もう自分の中でケリがついてるなんて。』

ちょっと、関心。
目の前の少年は、それ程までに誰かへの想いを抱いておきながら、
突然と言える離別に、努めて冷静で居られているのだから。

『別れは当然あるもの、だけども突然にやってくることもあるし。
 てっきり誰かに思いっきり怒鳴り散らしたりするのかなーなんて思ったんだけど……

 思ったより、仲良くしてたんだ?』

小さく笑って、首を傾げた。

阿須賀 冬織 > 「俺は人の心の内なんて読めねーから本当のところはわからない。
でも……でもアイツは俺のことを初めての友達って言ってくれたんだ。
……そんな。っ、そんな友達が旅に出るっつーんだったら。……友達の俺は、送り出してやるしかねーじゃん。
…だからそのことを、いつまでもグチグチ……ましてアイツによく似たヤツを身代わりにして言いたくなんかない。」

色んな感情は、アイツに向いているものもあるが、どちらかといえば自分自身。
もっと違うやり方があったのではないかと渦巻くそれを、他人にぶつけるなんてできない。
それに、送り出すと決めたのだから。そのことに嘘をつきたくはなかった。
なんて、涙ぐんで鼻をすすりながら言っても格好はつかないのだが。

黒髪の少年 > 『……にしては。』

かつん、かつん。
彼の傍まで、やってきた。

『目は口ほどにものを言う。
 ……違うわけ?』

今にも決壊しそうな防壁を、少しだけつつくように。
自分より少し背丈の高い彼の下から、覗き込むように見上げてみた。

『いいじゃん、泣いたって。
 大切な誰かが居なくなった悲しみを発露させるのは、悪いことじゃないし?
 …幸か不幸か、この姿に未練があるならば。
 どうか君の悲しみを、僕にぶつけても?』

そして、いざなう。
魔性の獣は、彼に笑った。

『ほら、おいでよ。』

少し彼から距離を置くと、その両腕を広げる。
まるで、向かい入れようとするように。

阿須賀 冬織 > そんなことを言っても、やはり悲しいものは悲しくて……。
覗き込めば、両目からポロポロと零れる涙が。

ああ、ヤメロ。その姿でそんなことをしないでくれ。
覗いてきた姿はやはり違うのだけど。
違うとわかっていても、わかっていても……。

突然アイツがいなくなって、悲しい、苦しい、つらい。
そんな感情がぐるぐると胸の中を回る。
そんな中で、広げられた両手へと吸い寄せられるように体が動く。

ああ、こんなにも思い悩むなら、いっそ知らないほうがよかったのだろうか……?

「……っ! ダメだ……。知ることになるし、知らなければならないこと……なんだよな。」

一歩、二歩と近づいていた足を止めて。
パチンと軽快な音が響く。彼の頬にはほんのり赤い手形が。

「……なあ、そこの名前も知らないアンタ。
なんでこんなことしてんのか知らねーけど、……やっぱ俺はいいや。
……ぶつけたら、きっと俺は後で後悔するから。」

黒髪の少年 > 『…………。』

葛藤する少年を見て、にま、と笑う。
きっと、"彼"はそういう笑い方をしなかった。

「そうかぃ。
 そんなら、無暗矢鱈につつくのはやめるかねえ。」

それは、"彼"と違う声。
少し訛りがあるような、少年の見てくれには合わない青年の声だ。

「わりーな。
 ついついそういう感情をつつくような真似しちまって。
 これ以上やったところで、草葉の陰の奴さんも喜ぶワケがねぇしさ。」

彼は死んでないが。そういうツッコミを期待しているのだろう。
ひらりと身を翻すと、とんとんと軽い足取りで見下ろせる位置まで進んでいった。

阿須賀 冬織 > 「……別に。なんだかんだ言って気持ちの整理つけられたのは確かだから……。
草葉の陰って……アイツを勝手に殺すなよ。」

アイツと違う笑い方、アイツと違う声。
アイツと似た姿でそれをすることに、ちょっとした不気味さというか気持ち悪さのようなものを感じる。
が、同時にやはり違うかったと安堵する自分も。

……流石に死んではないだろう。いやまあそれを確認するすべはないのだが、そう思う。

「んで、結構詳しいみたいだけど。知り合い?」

そうやって、安堵すると当然気になるのは彼が一体何者かということで
一応一人だけ目星はついているにはいるのだが聞いていた特徴とは全く違う訳で

黒髪の少年 > 「……知り合いもなにも、お前さん。
 既に、知らされちゃあいねぇかい?」

ここまで彼と親しい相手なら、きっと自分のことを教えているだろう。
そういうメールを送っていたとも事前に聞いていたものだから。
…ただ、こういう姿であるかどうかは、聞いてはいなかったが。
中途半端に振り向きざまな恰好で、彼に問うが…

「………。

 ま、いいか。」

そこで、改めて向き直る。
その表情はどこか、余裕をしたためたものだ。
"彼"にはなかった自信というものが、僅かばかりに感じられるだろうか。

「遠からん者は音に聞け!
 近くば寄って目にも見よ!」

それは、まるで前口上。

「ある時はあまねく世界を旅するトラベラーにして!
 ある時は古い友の姿をも映す千変万化の幻術士!」

腕を広げたり、手を宙に伸ばしたり…仰々しい仕草を繰り広げていたが
唐突にその身体の内側から、黒い靄が滲みだす。

「しかしてその実態は――――」

深い深い闇を湛えたその靄は、あっという間に彼の身体全体を包み込み…
溢れて、増えて、別の形を為す―――

ご案内:「大時計塔」から黒髪の少年さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にアーテルさんが現れました。
アーテル > 「―――アーテル、と申し上げる。」

そこに現れたのは、赤髪の男。
目の前の彼より高い身長に、いなせな雰囲気の和装に身を包んだ、尖り耳の青年。

先ほどまでの笑みといい、声色といい、口調といい…
今の姿であるならば、それは違和感なく映るだろうか。

阿須賀 冬織 > 唐突に始まった自己紹介にポカンとする。口も少し開いているだろうか。
いやまあカッコいいけど、その姿でされるとなんていうか吹き出しそうになる。
そんな、わざとらしいとすら思えるしぐさを眺めていると、黒い霧が彼の体を覆った。

……現れたのは赤髪の男。名乗った名前はアーテル。
成程、彼から知らされた情報と同じだ。

「へぇ……。姿を変えられるのか。確かにまあそれなら聞いてたのと違ってアイツの姿取ってたのも納得だわ。
ああ。アイツから知らされてはいたけど、姿を変えられるまでは聞いてなかったから確信持てなくてな。」

異能か魔術か他の何かかは知らないが、それなら聞いてた情報と違うのも理解できる。
ったく、結構重要な情報抜けてんじゃねーか。

「自己紹介はわかったけど……アイツの最初の友達は譲んねーからな。
……俺は阿須賀冬織。アンタのことは何て呼べばいい?」

それはそうと、口上に少し引っ掛かり無駄な対抗心を出す。

アーテル > 「…あー。
 まあ、姿を変えられるってハナシをもししてたら、だ。
 …俺のこと、すぐに見抜いちまうだろ?」

だから"彼"は、自分が姿を変えられることについて、意図的に話してなかった。
本当に必要な誰かに、この状況が届くようにと。
指先で、自分の頭をかりかり。それについて説明しなきゃならないのか、と言わんばかりに。

「ま、俺が奴さんから頼まれたのは……
 あいつの姿に化けて、どうか自分に関する愚痴を聞いてやってほしい。
 だったけどな。」

委細は違う。だが、同じような内容には違いない。
…軽く扱うのは、目の前の彼に気を遣ってのことだ。
すると、何と呼べばいいか…と聴かれたものだから。

「ん?俺の名前かい?
 そりゃあもう、アーテルだの、アッ君だの、アー君だのテル君だの……
 お前さんの考えるように、好きなように呼べばそれでいい。
 それが俺だって分かる範囲でならな!にししし。」

快活に笑いながら、そう返した。

「ま、一つよろしくたのまぁな。阿須賀冬織クンよ!」