2020/09/04 のログ
ご案内:「大時計塔」に日下 葵さんが現れました。
■日下 葵 > 「久しぶりに来ましたねえ。
今日は珍しく誰もいないみたいですが」
時計塔。
最初に警邏に回された時は何とも辺鄙な場所に回されたと思ったが、
今となっては随分となじみの場所になってしまった。
今までは登れば大抵誰かいたものだが、今日は珍しく誰もいないようだった。
「報告書書かなくてもいいから楽ではあるんですが、
こう……誰もいないとひどく静かでさみしいものです」
そう言ってポケットから煙草を取り出しては、
口に咥えて火をつけた>
ご案内:「大時計塔」にニコラスさんが現れました。
■ニコラス >
タンタン、とリズムよく階段を上り、展望台に続く扉を開ける。
島を一望出来るここは割とお気に入りの場所で、きっとそう言う人は多いんじゃないだろうか。
そんなことを考えながら展望台を覗きこめば、やっぱり先客がいた。
「あ、どーも――うっ」
しかし彼女の腕に巻かれた腕章を見て動きが止まる。
風紀委員。
そりゃそうだ、ここは立ち入り禁止の場所なのだから、見回りぐらい来るだろう。
あー、とばつの悪そうな顔で頬をぽりぽり。
■日下 葵 > 煙草を半分ほど吸ったとき、階段から規則正しく駆けるような音が聞こえてくる。
「やっぱり結構人が来るんですねえ、この場所」
さわやかに挨拶をした後、こちらの腕章を見て動きが止まった彼を見て、
わかりやすいなぁと思って思わず笑ってしまう。
「こんなところにどうしましたか?
大方、景色を見に来たとか、そんなところだと思いますが」
ふぅ、と煙を吐いて問うた>
■ニコラス >
「いや、まぁ、うん。そんなところ、かな……」
思った反応ではなかった。
逆にそれが怖い。
とは言え逃げると色々面倒そうなので、展望台に入って扉を閉めて。
チラ、と彼女の様子を観察。
煙草を吸っている。
しかし成人には見えない。
風紀委員だよな?
■日下 葵 > 「なるほど、悪いことをしようとしているわけじゃないなら、まぁ」
厳しく取り締まることはしませんけど。
そう言ってまた煙草を吹かすと、ちりちりと葉が根元まで燃えて、
それをポケット灰皿に放り込む。
「一応私は注意はします。
ですのであまり長居をせずに帰ってもらえれば特にお咎めなしです」
だからあなたがここで景色を見ている間私は休憩します。
そう言って適当は場所に腰を下ろして景色を眺める。
今までちゃんと見ていなかったが、
確かにここから見る街の眺めはなかなかいいモノだった。
彼に限らず、ここに来る人の多くはこれを目当てに来るのか>
■ニコラス >
「はぁ」
あっこの人あんまりやる気ない感じだ。
それでいいのか風紀委員。
まぁこちらとしては助かるんだけど。
しかし、彼女を無視して景色を楽しむ、と言うわけにもいかず。
「――ええと、俺ニコラス。ニコラス・アルヴィン。あんたは?」
なのでとりあえず自己紹介。
彼女が噂を知っているのなら、鷹の目の異名の持ち主だとわかるだろう。
■日下 葵 > 「あ、その目は『こいつあまりやる気ないな』って目ですねえ。
まぁあまり真面目とは言えませんが。
時計塔に登ったくらいでいちいち報告書を書くのも面倒ですから」
彼の視線を汲んでそんなことを言えば、また煙草を一本咥えた。
最低限のことしかやらない、というか必要のないことはやらない主義なのだ。
「私は日下葵です。”アオイ”と書いて”マモル”です。
ニコラス・アルヴィンさんですか。
なーんかどこかで聞いたことがある気が……
鷹の目?でしたっけ。何かの資料で読んだような」
彼の名前を聞くと、果て、どこかで聞いたような。
普段あまり報告書をちゃんと読まないのではっきり思い出せない>
■ニコラス >
「アッハイ」
やっぱりそうだった。
「うっ。いやまぁ、そんな名前で呼ばれてるらしい、けど」
個人的にはあまり名前は知られたくないのだけれど。
熱心な風紀委員に勧誘されるし、名前ばっかり売れても不良に絡まれるし。
人助けをしているだけでそう言う風に呼ばれるようになるとは、流石学生の街と言った感じである。
■日下 葵 > 「いいじゃないですか、あなたに損がある訳じゃないんですし」
そう言って再び視線を彼から景色に戻す。
「ここからの眺め、今初めて見たんですけど、
なかなかいいモノですねえ。
ここに来る人が絶えないのも何となく納得です」
「あー、勝手にその名前で呼ばれてる感じなんですね。
どういう由縁でそう呼ばれるようになったんです?」
何か悪いことでもしたんですか?
なんてふざけて訊いてみる>
■ニコラス >
いやまぁその通りなのだが。
「あー、うん。夕方の景色とかスゲー綺麗だぜ」
見える景色がオレンジ色に染まるあの風景は言葉で言い表せないほどに。
夜景と星空もそうだし、朝昼の透明な感じも好きだ。
「えっと、俺弓使うんだけどさ。そんときに目に魔力通して視力を強化してて。何回か風紀の手伝いした時に高いところからゾンビ撃ち抜いてたら、こう……」
いつかのパンデミック騒動の時に。
ドローンや曲がる矢を利用して建物の裏にいるゾンビどもを片っ端から狙撃していたらいつの間にかそう呼ばれるようになった。
■日下 葵 > 「夕方ですか。それはまた大層美しいんでしょうね」
ここで出会った人たちは皆、
そういう風景を見るために来ていたのか。
最後に風景で感動したのはいつだったか。
「あら、風紀委員に協力していたんですか。
それはまた殊勝なことで……」
そんなことしてたら勧誘の一つや二つされるでしょう?
そう言って今一度彼を見た。
見た感じ彼は風紀委員や公安委員ではないようだが>
■ニコラス >
「あぁ、夕方が一番好きかな」
なんというか、違う世界――そう、元居た世界に繋がっているような、そんな感覚。
「そうなんだよ。なんか勧誘に熱心な先輩がいてさ。もー会うごとに勧誘されて」
こちらとしてはどこかの集団に属するつもりはないのに。
手すりに掴まり深いため息。
出来ることが増えるのは良いが、その分面倒も増える。
面倒が嫌い、という訳ではないが、余計なしがらみは出来るだけ避けたい。
■日下 葵 > 施設を出てからというもの、あまり視線を上に上げることがなかった。
目の前や足元ばかり見ていて、こんな風に遠くを見る機会なんてなかなかなかった。
「あー、やっぱり。
風紀委員は基本人手が足りてませんから。
その様子だと風紀に入るつもりはなさそうですが何か理由や信条でもあるんですか?」
深くため息を吐く彼。
相当な回数勧誘されたのであろう。
何となく苦労が見て取れて同情すらしてしまいそうだ。
しかしその反面、何か風紀に入りたくない理由でもあるのだろうかと、
興味がわいてきた>
■ニコラス >
「いやそんな大げさなことじゃないけど」
信条とか信念とか、そんな大層な理由ではない。
「なんていうか、そりゃ風紀に入れば出来ることも増えるんだろうけどさ。その分出来なくなることもあるだろ。それはなんか、俺のやりたいことじゃないなって、ただそれだけだよ」
手が足りないのなら手伝いくらいはする。
人を助けるためになら協力も惜しまない。
けれどそこに属するほどではない。
ただそれだけの話だ。
手すりに寄りかかって困った様な笑顔で。
■日下 葵 > 「なるほど?」
できなくなること。
そう言われるとちょっと拍子抜けしたような表情。
それは自分では理解できないものを目の当たりにしたときの表情だった。
風紀委員に入ってできなくなることって何だろう。
この島に移って、施設を出たときから風紀委員だった身としては、
なんだか新鮮な意見だった。
「そういう考えというか、そういう理由ですか。
なるほど、なるほど。
いや、この島に来た時から風紀委員だったもので。
割と自由にさせてもらってますし」
自由にさせてもらってる。
その例が今こうして吹かしている煙草だったりするのだが、
彼にもきっといろいろあるのだろう>
■ニコラス >
「来た時から風紀委員?」
つまり入学してすぐ風紀に入ったと言うことだろうか。
そう言う人もいるだろうが、何となく彼女の言葉からはそう言うのとは違う様な気がした。
「んー、まぁ俺の勝手な思い込みかもしれないけどさ。それでも多分、俺には窮屈に感じるような気がするんだ」
組織に属すれば責任とか色々減るだろうな、とは思う。
助けられない人を助けることも出来るだろうけれど、それはもう風紀委員としてやってる人がいるのだから。
■日下 葵 > 「そうそう、この島で生活を始めた瞬間から風紀でしたから。
風紀委員以外の生活がちょっと想像つかなくて」
『お前が頑張れば将来救われる人が出てくるから』
そう私に言い聞かせていた風紀委員は今どうしているだろう。
何となく、風紀に入って生活するレールを無意識に受け入れていた身としては、
彼の感じる窮屈さがわからなかった。
「まぁ、どこに価値を見出すかは人に依るんでしょうけど。
最も、融資を募って組織されている委員会ですし、
無理してやるような仕事ではないですから」
だから、何度も勧誘されているという彼にはどちらかと言えば同情する>
■ニコラス >
「それもそれでなんというか極端だな」
風紀ではない生活を想像したことはないのだろうか、と少し思う。
「風紀も人足りてないらしいからなぁ。気持ちはわかるし、風紀に命かけてる、みたいな先輩だからさ」
へら、と笑って。
まぁそれを理解しているからこそ、手伝いぐらいはしているのだけれど。
■日下 葵 > 極端、と言われればなんだかそんな気もしてきた。
ある意味風紀に入ったのも刷り込みに近かったのだ。
「極端というか、それ以外の選択肢がなかったというか」
まぁいろいろあるんですよ。
なんて。
今思えばあの痛みに対する訓練がなければ今頃どんな生活をしていたのか。
想像すらできない。
「風紀に命かけてる、ですか」
大半の風紀委員は仕事への熱をそういう基準で推し量る。
命がけ。
その言葉の重みは今となってはいまいち理解できない。
でも、一度失えば二度と戻らないものを賭すのだ。
並大抵の決意ではないのだろう。
彼を執拗に勧誘する先輩とやらの話を聞いて、
物思いにふけったような表情を浮かべて>
■ニコラス >
「ふうん」
まぁ、いろいろあるのだろう。
その辺は深く聞くのも失礼だろうと流しておいて。
「いやまぁモノの例えだけどさ。なんていうか、熱血!って感じの」
そう言えばその先輩も今年卒業になるのか。
卒業したらどうするのだろうか。
教員なら顧問として風紀に残ることは出来るだろうけれど。
ちょっと気になるところである。
■日下 葵 > 「まぁなんです。
そんなに真面目ではないものの籍を置いている期間だけはそれなりなので」
私も何か信条がある訳ではない。
ただ他の道が視界や選択肢になかっただけなのだ。
楽な道を歩いてきたようなものである。
「熱血ですか。いやぁ、私とは対極の風紀委員ですね。
ひとくくりに風紀委員と言ってもいろいろな人がいますから」
いろいろな人がいる。
そういう意味で自分も変わり種ではあるのだけれど。
そんな雑談に花を咲かせていると、端末のアラームが鳴った。
「おっと、私はそろそろ警邏に戻らないとですね。
ニコラスさん、でしたっけ。
あなたもあまり長居しないでここから降りてくださいね」
それこそ、日が暮れる前に。
そう言って煙草の火を消すと、時計塔からちょっと駆け足で降りていくのであった>
ご案内:「大時計塔」から日下 葵さんが去りました。
■ニコラス >
「まぁ、人それぞれだからな」
風紀委員に限らず、人はそれぞれ色々な考えがある。
みんながみんな同じだったら、それはきっと不気味な世界なんだろうな、なんて考えて。
「ん、ちょっと景色見たら降りるよ。見逃してくれてサンキューな」
別に彼女からしたら見逃したわけではないのだろうけれど。
そうして一人になった展望台で景色を眺めていたら、
「――ん、あー……タイミングの悪い……」
眼下の街中で何かトラブルが起きていた。
視力を強化して注視すれば、どうやらひったくりらしい。
彼女が残っていれば応援を呼べたのに。
とは言えいないものは仕方がない。
落下速度減少のエンチャントを施したマントを腰のポーチから取り出して装備。
躊躇なく手すりを乗り越え、同じくポーチから取り出した鉄ブロックを錬成して鍵縄を作り、展望台の手すりに引っ掛けて飛び降りる。
マントと鍵縄を駆使して地上へ降りてからのひったくり犯追跡はまた別の話――。
ご案内:「大時計塔」からニコラスさんが去りました。