2020/09/19 のログ
ご案内:「大時計塔」に水無月 沙羅さんが現れました。
■水無月 沙羅 >
「……いつまで寝てるつもりなんだかね。」
暦の上ではそろそろ秋に差し掛かろうとする頃、少女は時計塔の屋上に足を運んでいた。
夜空を見上げて映るのは、まだまだ夏の星座の見える星空だ。
しかい、既に秋の四辺形も見え始めている。
もうしばらくすれば星空も一変することだろう。
「星か……。」
何を言うわけでもなく、唯星を見上げている。
思いを馳せるでもなく、願いを託すのでもなく。
ただそこに在るモノとして、景色自体を楽しんでいる。
こうして星を見上げるのも随分と久しぶりに感じる。
そういえば、彼とは星空をいっしょに見る約束をしていたけれど、それもご破算になりそうだ。
少なくとも、今の少女には星を語る気なんてなかったし、秋になれば天気も崩れやすくなる。
夏の終わりがタイムリミットだ。
彼は、あの約束をちゃんと覚えているのだろうか。
夜空を見上げていた黄金の瞳は、少女がため息をつくのと同時に伏せられた。
何も期待はしていない、しないほうが良い。
そうしていた方が幾分かは気分も楽というものだ。
「アンニュイね。」
小さく、小さく呟いた。
ご案内:「大時計塔」に織機 雪兎さんが現れました。
■織機 雪兎 >
「あ゛あ゛あ゛」
階段を一番てっぺんまでやってきた。
扉に掴まりゼーゼーと荒い息を吐く。
まったくなんでこんなところまで見回りに来ないといけないんだ。
しばらく深呼吸を繰り返し、息を整えて扉を開ける。
「――ん、立ち入り禁止ですよー、っと」
そこに見えた人影。
暗いから良く見えないが、多分人だ。
人だろ?
人であってくれ。
■水無月 沙羅 >
「……。」
声に振り向いた。
その瞳はいつもの紅い瞳に戻っている。
優し気な眼差しで先輩であるところの少女に答えた。
「ゆっき―先輩こそ、此処は立ち入り禁止ですよ?
それに、このくらいの階段で息を切らしてるなら、もう少しトレーニングしたほうが良いかもしれませんね?」
苦言を呈しながらくすくすと笑っている。
おそらくは見回りなのだろう。
風紀の腕章を魅せる様に掴んで、やれやれと首を振った。
もちろん少しのため息を交えて。
「私の後ろ姿も忘れてるなんて、冷たい先輩ですねぇ。」
もちろん本気の一言ではない、
冗談というやつだ。
■織機 雪兎 >
「ん、あれ、さらちー?」
声に首を傾げる。
後輩の声だ。
こちらを向く彼女の顔は暗くてよく見えないけれど。
「こんなとこで何してんの、立ち入り禁止だよ」
知り合いだった。
胸をなでおろして近付いていく。
お化けじゃないなら怖くない。
ただしムカデテメーはダメだ。
「りおりんのお見舞い行った? 彼女に会えなくて寂しがってるんじゃない??」
■水無月 沙羅 >
「はい、沙羅ですよ-。 水無月沙羅です。
いったいなんだと思ったんですか?
あぁ、夜だからお化けとか?」
暗い夜空のこの場所は、慣れていなければ視界が悪い。
私は月明りや星の光だけで十分に目視で確認できるが、夜に余り出歩かない人ならそれは普通の事だ。
びくびく話しかけて、風紀としては如何なのかとゆっくりと近づいて、肩をすくめて見せた。
「星を見ていたんです。
見ていただけですけど。
ここに入っちゃだめ何て、守ってる人は何人いるんでしょうね。」
今更、こんな場所にやってきて時計塔には上がるな、なんていう風紀もそうはいないだろう。
実際、沙羅もあまり注意はしていない。
余程、夜おそくに年端もいかない少女が居れば送り返すこともあるだろうが、基本的にはほとんどの人が見て見ぬふりをするのがこの場所の半ばルールの様なものになっている。
「行きましたよ。 一番最初のお見舞いだったと自負してます。
寂しがってるといいんですけれどね。」
寂しくはない、去り際にそう言ったのを聞き逃してはいない。
もちろん本心から言った言葉ではなく照れ隠しだろうが、そういう時は嘘でも寂しいというものだろうに。
少し呆れたように言葉を吐く。
■織機 雪兎 >
「おおおおおばけなんてこわくないし」
激しく動揺。
あ? こわくねーが???
「星? おーホントだ、すごく綺麗」
柵から身を乗り出して見上げてみれば、確かに星がよく見える。
街の明かりから遠いこの場所は、なるほど絶好の天体観測場所だろう。
「どうだろうねぇ、みんなホイホイ入ってくるからね。でもほら、僕ら一応風紀委員だからさ」
一応言うことは言っておかないと、と。
「さっすがさらちー、良いお嫁さんになりそう。寂しがってると思うよ、りおりんあれはあれで結構寂しがりなとこあると思うし」
普段はあんな感じだが、結構メンタル弱いと思う。
むしろメンタル弱いからこそあんな感じなのかもしれない。
少なくとも一人でずっと病室に閉じこもっていて平気なタイプではないだろう。
■水無月 沙羅 >
「その割には声が震えていますよゆっき―先輩。」
少々驚かすように、瞳に魔力を流して魔力視を使用し、紅い瞳を真夜中に浮かび上がらせた。
「時々小さい女の子も入ってるようです。
そのたびに送り返していますからね。
半分此れも仕事の様なものですよ。」
そういって同じように夜空をも負う一度見上げた。
少女の願い一つも叶えてはくれない星を、少し憎らしいとも思う。
しあし、それを好きだと言ったのは沙羅なのだから、否定するわけにも行かない。
「お嫁さん……ですか。
お嫁に行って幸せになれるんですかね?
寂しがりではあるでしょうけど、人望はそれなりにありますから、お見舞いもひっきりなしみたいですし。
病室でも仕事をしているような人ですけど。」
メンタルが弱いのは十分に承知の上だ。
仮面という、彼のアイデンティティを守る壁はゆっくりとだが崩れつつあるのも影響して、彼は随分感情を表に出すようになった。
それも少しは影響しているのだろう。
人間らしくなったのと同じように、少し子供っぽくなったとも思う。
■織機 雪兎 >
「やややややめろよその目ぇ光らせるのマジでやめてごめんゆるして!!!」
ひいいと情けない悲鳴を上げながらその場にしゃがみ込む。
コワイ。
「まーでも本気で立ち入り禁止にするならもっとガチガチに施錠するだろうしさ。そう言うことだと思うよ」
黙認と言うかなんと言うか。
危ないので一応立ち入り禁止と言っているぐらいなものだろう。
人死にが出たらまた話は別だろうけど。
「それを言ったらお嫁さんにならなければ幸せってわけでも無いと思うよ。結婚してもそこから人生は続くわけだし、そこをゴールにしちゃうと幸せじゃなくなるんじゃないかな」
知らんけど。
ゴールイン、とは言うが個人的にはそこからがスタートだと思う。
知らんけど。
「ははーん、なるほど。さらちーは人気者のりおりんに嫉妬してるわけだ」
にんまりにししと笑う。
■水無月 沙羅 >
「しょうがない人ですねぇ。」
冗談交じりの悪戯を終わらせて、しゃがみ込む先輩にそっと手を差し出した。
ここで腰を抜かされても困ってしまう。
彼女の時計塔の認識についてはこくりと頷いて肯定した。
黙認ではあるが、節度程度は守ってもわないといけない。
「ゴール……ですか。
私は、地獄の入り口のようにも見えますけどね。
彼の家どう考えたって普通じゃないでしょう?
今だってずいぶん苦労させられているし。
……まぁ、今も十分地獄みたいなものですけど、」
主に心労という意味でだが。
あの男は一生こんな苦しみを背負わせるつもりなのだろうか。
それを選んだのも沙羅なのだが。
それにしたって、ひと夏に5回の入院はやりすぎだ。
「嫉妬……だったらよかったんですけどね。」
最後の言葉には、少し苦笑いを返した。
■織機 雪兎 >
「ままっままっまったくもー」
差し出された手を握って立ち上がる。
がっちり掴んで離さない。
あ? 負けんが???
「んー、じゃあ別に家に入る必要もないんじゃない。結婚してさ、家の事なんて気にせず二人で暮らしちゃえばいいじゃん。りおりんひっぱたいてさ」
結婚は家同士の事とは言うが、二人がその気ならそうすることも出来るだろう。
彼がどう考えるかは知らないけれど。
部外者なので好き勝手に言う。言える。
「あれ、嫉妬じゃないの? 心配?」
そうは言うが当然の如く心配だろうと思う。
この短期間に頻繁に入退院を繰り返す恋人など胃に穴が空いてもおかしくはない。
自分なら自分の胃に穴が空く前に相手をひっぱたいて家に押し込めるだろうと思う。
■水無月 沙羅 >
「……子供みたい。」
ぼそっと呟いた。
以前からそういう人ではあったが、今日はいつにもましてというやつだ。
よっぽど幽霊にトラウマのあるのだろうか?
今度聴けるのなら効いてみよう。
「それができる人だと思います?」
沙羅も今はそんなつもりもないだろうし。
この二人はどうにもこうにも、自分から辛い道を選んでいきたがる。
その癖に二人して武器用なのだから救いようがない。
「うぅん、心配。 もあるけど、怒りも半分、かな?」
これは沙羅としても、自分としてもだ。
入退院を繰り返し、多くの人に心配子をかけ、最後に命すら落すところだったともなれば。
それは心配もするし怒りもする、現実から目を逸らしたくもなる。
すこしだけ、悲しそうにうつむいた。
■織機 雪兎 >
「こここここ子供じゃないが!?!?!?!?」
だって怖いじゃないかおばけ。
「ん???? りおりんは、うんまぁ、でもさらちーが言えば考えてはくれるんじゃない???」
なんだか他人事な返事が返ってきた。
悪友とも言える彼のことを言っているのだと考えたが、それでもちょっと違和感がある。
「あーまぁ怒りはするよねぇ。何回も怪我して何回も入院してさ。あいつ僕の事よく頭空っぽって言うけどりおりんも相当からっぽだよね。よしよし」
ここに居ないことをいいことに好き放題言っている。
いや目の前に居ても言うけど。
背伸びをして悲しそうな顔をする後輩の頭に手を伸ばし、よしよしと撫でる。
■水無月 沙羅 >
「……はいはい。」
ちょっと呆れて、先輩の手を引いて時計塔を降りるとしようか。
この人はさっさと帰らせないといけない。
途中で腰を抜かして帰れなくなりました、何て連絡がきても困るからだ。
「考えてはくれるけど、考えちゃうんですよね。
本当の愛ってものがどうかは分からないけど、使命感とかそういうのと天秤に諮られるの、複雑じゃないですか?
っていう話です。
考える間もなく、本当なら手を取って連れ出してほしい。
そう考えるのが女の子っぽいっていうか。
要領を得ませんね、この話。」
恋愛に疎い自分にとって、この手の話は苦手だ。
はっきりしすぎるのは良くないというか、我儘が過ぎるとは思う。
それでも、あんな事が起きた後ならそういってほしいのが女心なのかもしれない。
生憎自分には縁のない話だ。
「……そうですね。
もう少し、考えてあげても良い物なのに。」
小さくつぶやいて、振り返っては歩みを進めた。
■織機 雪兎 >
「べべべべつにこわくねーし」
彼女の手をしっかりと握る。
ぶるぶる震えているが怖くない。
こわくねーし。
「あー。あー……。まぁ、ね。やっぱり好きだって言うなら一番にして欲しいよねぇ。わかる、わかるよ。わかるって言うか普通そうだよね」
その気持ちはとてもよくわかる。
だって僕だって女の子だから。
女の子か????
女の子だよ。
「さらちーをそんな不安にさせるなんてねぇ。りおりーいっぺんドツいた方が良いと思うよ????」
彼女を二の次にする男とかサイテーだ。
そんなことを考えながら彼女のあとに続いて歩いていこう。
がっちりと両手で彼女の手を握りしめながら。
■水無月 沙羅 >
「ふふ、そうですね。
まぁ、私がどついたら殺しちゃいそうなので止めておきます。」
いろんな意味で、きっと殺してしまうに違いない。
愛しさ余って憎さ百倍というか、あの子とためには死んだほうが良いんじゃないかとか。
そういう。
まぁ、そんなことしたら間違いなくあの子は死んでしまうから、絶対にやらないけど。
「ゆっきー先輩って、意外と先輩らしいところありますよねぇ。」
沙羅にこういう類の人種が傍に居てよかったと思う。
もう少し早く、沙羅にそう言ってくれていたらと思わなくもないが。
人間はいつだって傍に居るわけじゃない。
こうして自分が肩代わりするのはいったいいつまでになるのか。
雪兎に背中を向けたまま、階段を下りていく少女は、何処か悲壮に満ちていた。
■織機 雪兎 >
「じゃあ僕がどついとくよ。ほら、僕ひ弱だから、間違って殺しちゃうこともないだろうし」
最悪でも記憶が飛ぶ程度だろう。
それはそれで色々好都合かもしれないし。
「なにおう??? 僕ァ先輩だぞぉ??????」
意外もなにも立派に先輩である。
歳はともかく学年は上なのだ。
先輩らしいかと言うと、うん。
とにかく先輩だ。
「――なんかよくわかんないけど、元気だしてね」
なんだか寂しそうな背中。
階段を下りながら、そんな言葉を掛けて。
その後彼女と別れた後、暗闇に光る彼女の目を思い出して、詰所まで帰る道をいつもの三倍ほど時間をかけて帰ったら怒られた。
彼女には怒りのスタンプが連打されたことだろう。
ご案内:「大時計塔」から織機 雪兎さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にラピスさんが現れました。
■ラピス > 今日はのんびり見回り当番。ぽってぽってと大時計台の階段を登る。
引きこもりインドア運動不足気質なへっぽこには結構な重労働だ。
特に、中腹ぐらいまで登ってきた時は、戻るも地獄進むも地獄に思えてくる。
ともあれ、今日もまた足をだるぅくさせながら、ようやっと登りきった次第。
「むぇー、つーかーれーたー……」
空気は大分秋めいてきたが、階段をしっかり登れば体も火照る。
ぽへー、と溜息を吐くと、へっぽこ教師はそのまま夜景の側へ。
ひょいと懐から取り出した煙草を咥えると、のんびり眺めて休憩だ。
■ラピス > いつもわりかし生徒がいるはずの大時計塔だが、今日は人っ子一人居ない。
規則をちゃんと守ってる、ということだから良いことのはずだが、寂しく思えるのはなぜか。
とは言え、生徒に率先して規則を破る様にとは、流石に口が裂けても言えない。
だから、こうして迷い込んでくる相手が居たら、なんて具合のゆるっとしたなにかだ。
「まぁ、悪い子が居ないのは良いことですけれど」
煙草の切っ先に、赤い燐光を浮かべて火を灯す。紫煙がふわりと一筋立ち上る。
ぷかり、ぷかり。甘めの紅茶味が肺腑の奥までを満たす。それが甘くて、心地よい。
ご案内:「大時計塔」に芥芽あるさんが現れました。
■芥芽ある > 【「はい、皆さんおはようございます! 芥芽あるです!
今日の私は……見回りの先生です!」】(ここまで紹介)
■芥芽ある >
はてさて、最近人が忍び込むことが多いらしい?ということで、暇があったらついでに見ておいて、なんて。
そんな軽いノリで頼まれたけれど、これ、結構きつくないです?
そんなちょっとお使い頼むノリで頼んでいい場所じゃないですよね?
「むりー!!!」
そうはいったものの、登った途中で帰るのもなにか悔しいのでとにかく登る。
登る、登る……つらい、たすけて
というか、そもそも暇なのが悪い。なんで暇だったんですか、私?
はい、暇な時に遊ぶ相手も付き合う相手もいないからですね。
自問自答してて超虚しい……
「……はぁ……ここが頂上……?」
こつり、と登ってみれば……あれ、先客?
これは、ビンゴでワルイコが……?
「あなた、どうしてこんなところにいるの!」
ろくに相手も見ずに勢いで声をかける。
相手をまじまじ見る元気もないから、とりあえずね
■ラピス > ぷかぷか、咥えタバコと共に眺める夜景は、なんとも胸が空く気持ちだ。
あのちらほらと見える様々な明かりの元に、いくつもの営みがあるのだろう。
それらを俯瞰的に見ることが出来るのは、どことなく優越感に似た何かを抱かせる。
まぁ、高い所って気持ちいいですからね、なんて。まぁ、そういうものなのだろう。
ともあれ、休憩がてらの暇潰しで一服を楽しんでいたへっぽこ少女の元にやってくる誰か。
その気配に気づいたのは、鋭い声がかかってからのこと。ちらり、と声の方に振り返ると。
「うや、どうもですー。どうしてかと問われれば、見回りって感じですねー」
とりあえず、ぺこんと一つ頭を下げておく。秋風にふわりと、白衣の裾がひらめいた。
■芥芽ある >
「見回りって……」
どうみても、ちっちゃい……って、此処だとサイズとか見た目とかあんまり関係ないよね。
っていうか、んんんんん?
なにかこのゆるふわな感じの子、どこかで見覚え……見覚え……あ
「えーっと……あの、えっと……ラピス先生、です……?」
多分そんな気がする。きっとそんな気がする。
え、これ本当なら見回りかちあい?というか、もしかして私、此処まで登らなくても良かった?
え、なにそれつらい
そんな色々を頭にぐっちゃんぐっちゃんぶん回しながらじっと見つめる。
■ラピス > 「うい、見回りですよん。今日も一生懸命せっせと登ってきたのです」
どうみてもちっちゃい教師は、彼女の前でえっへんと胸を張ってみせる。
ふにゃんと笑顔を浮かべつつ、咥えタバコをプカプカ。そこだけは大人な雰囲気だ。
へっぽこ教師もまた、じぃ、と彼女を見て、んー、と思い出すような素振りをして。
「えぇと、確か、芥芽先生でしたっけ?こんばんはー、です」
えぇ、そうです、ラピス先生です。そんな雰囲気のにっこり笑顔。
之はもしかして見回りのブッキングな気配だが、へっぽこ教師は気づいてない。
まぁ、被ったら被ったで、たまにはあるよね、とかそんなお気楽思考である。
何れにせよ、どうやら相手はお疲れな様子。それならば、と手招きしつつ。
「折角登ってきたなら、休憩がてらお茶でもどうでしょう?
水筒にお紅茶淹れてきてるので、ちょっと落ち着くまで、なんて」
ひょい、とどこからか取り出した、小さめの水筒を彼女に見せる。
量にして、小さいコップ二杯分。彼女と分け合うのにも、ちょうど良いだろう。
■芥芽ある > 「あーはー、なーるーほーどー……」
うわあああああ、正解でしたあああああ!!
はい、これは酷いダブルブッキング。というか、多分私に気軽に話をふった誰かさんのせいですね。
そしてそれに、そうかーってのってしまった私のノリも悪かったわけですね。
虚しい笑いが溢れた。
「はい、こんばんはですー…」
せっかく挨拶してもらったのに返せる挨拶がすっごい力抜けてた。
ああ、ダメダメ。ラピス先生はミリも悪くない。
というか、むしろ正しい。
「え、お茶? え、あー……あの、いいんです……?」
なんて優しい提案……ああ、癒やし、癒やしだわ……
今日の癒やし確定。はい、もうこれで一日の大損はすべて吹き飛びましたー
■ラピス > 「ん、大丈夫です?体調が優れない様なら、診ますけれどもー?」
階段を登るというのも結構な運動量。何かあったら大変だ。
虚しい笑顔でへろりと疲れている彼女に、念の為の声かけである。
「まぁ、ともあれ、芥芽先生とここで会ったのも何かの縁ですからね。
この島の学生さんを導く立場の同胞として、仲良くして頂けると嬉しいです」
仲良しは生徒でも先生でも、多いほうが人生は楽しい。
そんな信条の教師は、いつもどおりのポワポワ雰囲気だ。
お茶の誘いに頷いてくれるならば、へっぽこ教師は喜色を深めて。
「それじゃ、早速……んしょ、どうぞどうぞー」
カップ状になっている水筒の蓋を取ると、そのままひっくり返して中に紅茶を注ぐ。
こぽぽぽ、と注ぐ音。それから、ほんのり冷たくて甘い紅茶がカップに満ちる。
運動で熱を持った体に合わせた、さっぱり目のレモンティー。それをそっと彼女に差し出した。
■芥芽ある > 「ぉ。おお……」
ああ……なんて気遣い…… 優しさが身にしみる……
幸せだわ……
「だ、だいじょうぶ、元気元気!です!
もちろん、仲良くさせてください!大歓迎です!」
仲良く!ああ、いい言葉。もう、とっても嬉しい。最近良いことあんまりなかったし……
というわけで、はい!大復活!もう何でもこいです!
……あ、いや、やっぱりなんでもないです。なんかすごいフラグ臭する……
「……ん、どうもです」
受け取ったカップが温かい……心も暖かい……
ああ、幸せ……
「ん……いい香りですね……」
ほわん、としちゃう。ほわん、と。
■ラピス > 大丈夫、という言葉には、踏むと首を傾げて、ちょいと見上げて。
じぃー、と少しばかり見つめて、大丈夫そうなのを確信してから視線を切って。
「ふふ、どうやら本当みたいですし、信じましょう。
これでまた仲良しさんが増えましたね、良いことです!」
ルンルン気分のへっぽこ少女は、ニコニコ笑顔の上機嫌。
之はぜひともおもてなしせねば、とお紅茶を差し出したら白衣をゴソゴソ。
そして、ポケットの中から袋でラッピングしたクッキーを取り出すと――。
「お紅茶にはお茶請けですよね!というわけで、よければクッキーもどうぞです。
バター多めのサクサクしっとりな感じなので、あまり食べすぎると大変ですけれど。
とは言え、この階段を往復するなら、数枚つまんだところで問題ないかと!」
という訳でいかがです?と彼女に袋ごと差し出してみる。
へっぽこ教師はタバコ休憩中。吸い終わるまでは手を付けないつもりらしい。
■芥芽ある > 「えへへ、ちょっとばかり思うところがあったんですがラピス先生のおかげですっかり元気なんです。そこは信じていただけたなら、幸せですね! はいはい、もー、仲良しさんですよー!!」
こちらもニコニコげんきげんきの幸せオーラ発散中。
あったかい紅茶もうれしいし、もうこのまま一生過ごしたい……
いや、それは言い過ぎか……
「お、おお……今度はクッキー……ッ!! こっちも……あぁ、美味しそうな匂い……」
バターと小麦と砂糖のいい匂い……これ絶対美味しいやつ……
なんて、なんて罪深い食べ物をお持ちなんでしょう……ッ!!
「たべるー!!たべるー!!」
なんだかちょっと精神年齢がラピス先生の外見っぽくなっている気がしないでもない。
まあいいか、生徒もいないし今この瞬間くらい気を抜いてもいいよね?
というわけで、一枚かじろう。さく……ッと。
「お……おいしぃぃいぃ……っっっ」
思わず声が漏れる
■ラピス > 「おや、そうだったのですか?それは良かったですねぇ。
やっぱり心身共に元気が一番ですから。――ん、ふふ、仲良しー」
どうやら彼女の憂いも晴れた様子。その一助になれたならば嬉しい限りだ。
紅茶にクッキー。これだけあれば、簡単なお茶会として成立するはず。
どちらかと言えばラングドシャ方面の、味のためにカロリーを打ち込んだ一品。
歯を通せば、さっくりほろりと崩れて、バターの香りが鼻腔を擽る。
それと紅茶を合わせれば――少なくともへっぽこ教師はそれだけで幸せになる。
だから、彼女にもそんな気分を味わって欲しくて差し出したわけだが――。
「さぁさぁ、遠慮せずに食べちゃってくださいな。味には自信がありますとも。
趣味で作った先生のお手製ですから、また食べたくなったら保健室までどうぞです」
――感想として、美味しいの一言をもらえたならば、内心はグッとガッツポーズ。
やっぱり美味しいものは素敵ですよね、と心の中で彼女に同意を示しておく。