2020/09/21 のログ
■ツェツィーリヤ >
いっそそれに類するものがどこかに落ちててくれれば話は楽なんだが
まぁこれに関しては地道に探すしかないだろう。
まずは見つけなければ話にならない。
とりあえずは”灰”に汚染されていない空を眺めながら
美味しい空気を楽しんでから考えてもおこられねーだろ。うん。
『とりあえずは肉か。もしくは魚か。
うーん、確かこの前かったのは日本酒だっけか。
あれなら生系統が良いかね。』
刺身考えた奴天才じゃね?と思うとふと知り合いの事を思い出す。
……随分あっていないがあのけしからん胸で生徒に迫られていないか心配だ。
そう、ずいぶんあっていないな。今頃何処にいるのやら。
『はー……秋の夜にゃ独り身が染みるねぇ』
どこかにちょうどいい感じのフリーな子いないかしらんとか至極自分本位な事を考えながら屋根に寝転ぶ。
嗚呼、随分綺麗に晴れてきた。こんな星空も悪くないなと星に目を凝らす。
■ツェツィーリヤ >
『あっ駄目だ回ってる』
お酒大好き。けど体の方はお酒が大嫌いなんという悲しい現実。
一口飲んだだけなのに僅かに世界が回っている。色々な意味でやばい。
『あ”-……何だよこの片思い状態……
拗らせた彼女かよぉ。』
なんだか今まで振られた文言を思い出し少しナーバスに。
あれ?夜空が滲んでいるような気がする。
『落ちたら洒落にならねーけどもぉ……』
手すりがある階下ならともかく、ここは屋根の上。
足を滑らせれば地面までノンストップ。
流石に無事では済まないだろう。少なくとも凄く痛い。
『でも好きなんだよぉ畜生……』
思い出しているかつ絡み酒モードになっているだけなのだが
はたから見ると完全に振られて屋根の上でやけ酒かましているかわいそうな人になっている気がする。
いやまぁ今は誰もいないからいいだろと。
『醒めるまでのんびりするしかないかね……こりゃ……』
ご案内:「大時計塔」に九十八 幽さんが現れました。
■九十八 幽 > ふらり ふらり
一段一段踏みしめる様に 長い長い螺旋階段を登りきって
開けた場所に出たと思えば そこは時計塔の最上部
視界に広がる星と雲とを 眩しげに眼を眇めながらも見渡して
大きく腕を広げて胸いっぱいに空気を吸い込んだところで 先客の姿に目を瞠った
「おや こんなところにも誰か居るんだね
こんばんは 名も知らない人
貴女はどうしてこんなところに?
もしかして もしかするとお邪魔だったかな」
目元に掛かる前髪を 僅かに手で払い
穏やかな微笑みを 先客である女性へと向けた
■ツェツィーリヤ > 風の音に混ざり階段を上ってくる僅かな音が耳に届く。
随分と力ない足音だなぁと思いつつ鐘楼に繋がる扉へと目を向けて……
『…ん―?』
目を僅かに細めて首をかしげる。
随分と中性的で、骨格や肉付きから判断し辛い。
男か女かは見分けはつかないが……酔っているからだろうか。
帯刀しているところを見ると治安維持に関わるものかもしれないが……
まぁいいか。
「あー……あー……
邪魔ではないよ。
愛しいお酒と時間を過ごしていたところ。
君もいける口なら付き合うかい?」
頭の中をこの島の言語に切り替えつつ
咎められればその時の事よと上機嫌に
スキットルを片手でゆらゆらと揺らしてみせる。
■九十八 幽 > 「やあ それなら良かった
今上がって来たばかりなのに すぐまた下りなきゃならないのは骨だからね」
揺蕩う様に浮かべた微笑みのままに ゆるりと微かに首を傾けて
ふわり ふわり と足元を確かめる様に静かに先客の傍へと歩み寄る
傍に寄っても男であるのか女であるのか 判別に難い容姿は変わらない
「お酒と時間
嗚呼 それならやっぱり少しだけお邪魔してしまったのかも
ふふ、ごめんなさいね それでもご相伴に与れるのなら」
静かに自分の胸に手を添えて ゆるりと頷きを返した
「ところでだけれど その容れ物から飲めば良いんだろうか?
生憎とお猪口以外の物で お酒を飲んだことは殆んど無くて」
スキットルを不思議そうに見つめながら 疑問を静かに述べる
■ツェツィーリヤ > 「ここは共同?の場所でしょう?
それにこんなにも良い夜だというのに独り身で晩酌は寂しくってね。
歓迎こそすれ追い払いはしないよ」
ああ良かった。
妙に”お堅い”相手だったら色々詰められていたかもしれない。
その場合は最悪飛び降りて楽しい追いかけっこのお時間だったが……
幸運にもそこまで煩い相手ではないらしい。助かる。
「おや、それは勿体ないね。
お上品なのは嫌いじゃないけれど
こういうところで乱暴なの味方をするのも悪くないと思うよ。
……ああ、普通に口をつけて煽ればいい。」
随分と物腰の柔らかい相手だし、こういう飲み方とは縁がないという。
もしかしたらいい所の子息かもしれない。
「ああ、それほどきつい物ではないと思うけど良い過ぎには注意してほしい」
一口で酔っている奴喉の口が言う案件だが大丈夫、一口で追っているなんて今この場で知っているのは自分だけだ。
■九十八 幽 > 「そうだね その通り
とても良い夜だから 少しでも空に近いところをと思って来たのだけど
追い返されなくて良かった ここは生徒はあまり入っちゃいけないことになっている様だったから」
うふふ、と笑いながら 静かにスキットルを受け取って
不思議そうに見つめながら その説明に聞き入って
「なるほど なるほどね
ここに口をつけて ペットボトルと同じだね
それじゃあ いただきます」
一度静かに目を閉じて それから静かに目を開き
静かにスキットルへと口をつけ くい、と呷る様に傾ける
月に照らされた白い咽喉が 僅かに上下してから口を離し
「ありがとう お返しするね
うん、お酒だ 久しぶりに飲んだ気がするよ
前に飲んだのは…… 思い出せないくらい前みたいだ」
スキットルを返しながら そっと腰の刀を外して
静かに屋根の 貴女の隣へ腰を下ろして
■ツェツィーリヤ > 「おや、ここは立ち入り禁止なのかい?
それは知らなかった。次からは気を付ける事にするよ」
肩を竦めるも目は笑っている。
元々学生ですらないのでこの場所に入り込んでいるのは割とアウトなのだけれど
そんなことをいちいち気にするほど道徳的でもない。
実際こういう場所は堂々としている方が疑問を持たれないし。
「おー、いける口だねぇ。
良い飲みっぷりじゃないか。」
スキットルである以上どうしても蒸留酒になるが構わず、
どこか扇情的ですらある飲みっぷりに目を細めてくすくすと笑う。
どうにもつかみがたいというか……不安定な印象すら受けるが
飲み友達にはそういう相手の方が都合がいい。
「酒を楽しめる年齢でしばらく飲んでいないというのはずいぶん勿体ないねぇ。
人生の半分ほど損している気がするよ。持論だけれどね」
横に座りながら帰ってきたスキットルを中間に置き、
再び空を見上げる。
空はすっかり晴れ、雨に濡れた服に夜風が冷たい。
「そうか、もうこんな季節なのか。
……早いなぁ」
■九十八 幽 > 「転落事故が起こるかもしれないそうだよ 確かに高くて危ないね
落ちる時は心地良いものじゃないから 十分に気を付けないと」
その事を知っていてなお こうして時計塔を訪れたのだから
人が居たところで 幽自身は咎める気など更々無い
とはいえ怒られる側に回れば 大人しく従っていただろうけれど
「ふふ、なんだかとても懐かしいね どうしてかは分からないのだけど
きっと昔もこうして お酒を飲んでいたのかも
最近は というより この島に来てから口にしていなかったけれど
そう考えると やっぱり損をしていたのかな いたのかも」
ゆるぅく笑みを浮かべたまま 静かに膝を抱え夜空を見上げる
星空を一望し うっとりを目を細めてから隣へと視線を戻して
「もうすっかり秋になってしまったね さっきも雨が通ったようだけど
夕立というには 少しばかり冷たかったように思う
少し濡れている様だけど 寒くはないかい?」
膝を抱えたまま 貴女を覗きこむ様にして訊ねる
■ツェツィーリヤ >
「あー、確かにねぇ。
訓練しているとか異能持ちとかでもない限り
この高さから落ちると無事では居られないね。
納得だ。こうして手すりの無い場所まで上がれてしまうしね」
しかもこの景色だ。
引かれるように飛び降りる気を起こす生徒もいないでもないだろう。
「それにこの風の強さだ。
……嗚呼、本当に秋だ。
私はこの島のこの四季って奴が好きだよ。
特にこの時期は食べ物もおいしいし酒だってうまい。
この島が良い場所にあった事には感謝だ。
折角良い場所に居るんだ。お酒位は楽しんだ方が良い人生だろう。きっと」
体を冷やす夜風は風邪をひいてもおかしくないほど冷たいもの。
こんなに濡れた体で当たるのは他の人にはお勧めしない。
けれど、酒で火照った体ではその冷たさすら心地よいような気すらする。
「ああ、別に濡れているのは構わないんだ。
雨もわかっていれば楽しいだろう?
それにこうして冷たいというのもう……ひゃぅ!?」
ひらひらと手を振り軽く身を起こした拍子に棺桶の上に溜まっていた雨水が背中に流れ込んできた。
思わずびくっと硬直する。しかも変な声が出た。これは恥ずかしいやつ。
■九十八 幽 > 「そういうことだね 飛べる翼があれば良いのだけれど
そういうものを持ってるのは ほんの僅かだろうから
だからきっと 立ち入りを禁じているのだろうね」
危険な物事場所に惹かれる そういう気持ちは分からなくもない
けれど大抵の危険は迷惑とセットになってやってくる 集団生活を送る学園であればなおさらだ
誰かが危険な目に遭えば 誰かが迷惑をこうむることになる
そういう風に 出来ているからして
「なるほど 四季が好きなんだね
うん、そうだね 美味しいものを美味しく食べられるのは素敵な事だから
ふふ、嗚呼 嗚呼そう思うととても楽しみだ
食べるのは好きだよ そうだね、お酒も飲む機会が増えれば良いのだけど」
学生として在籍している間は 難しいかもしれない
そんな事を想いつつ うっとりと夜空を眺めてみたり
頬は微かに赤らんだものの 酔いが回っているのかいないのか判然としない儘
「おやおや 大丈夫かい?
冷たいのが分かっていれば 楽しいかもしれないけれど
分からなければ 驚いてしまうのだね
うふふ、風邪ひかない様にね 気を付けて
それとも 今ここでだけは温めてあげようか?」
奇声をあげた貴女に 口元を手で隠して笑いつつも
すぐにその身を案じ 静かに両の腕を広げてみせて
■ツェツィーリヤ > 「人は皆翼を持っているなんて言うけれど悲しいかな、比喩に過ぎない物ね。
しかし勿体ないような気もするよ。
美しい物は多少やけどするものだろう?
ほら、綺麗な子なんてやけどしてでもお付き合いしたいものだし」
安全ばかりに守られているというのもおかしな話だ。
かといってこの島の現状の様に振り切ってしまっているのもなんだかおかしな話だが……
どうしてこんな形の秩序になっているのだろうと浮ついた頭のはしで泡の様に思考が沸いては消えていく。
「そうさ。だから君も出来る限り楽しんだ方が得だよ。
その調子だとそう弱くもないのだろうし。
羨ましい限りだよ。私はそう強くはないからね。」
強くはないというのも若干言い過ぎでむしろ弱すぎる程だ。
蒸留酒でなくとも一口で酔うのはよほどだし、本気で比喩ではないのだ。
……そういう酔いの似合う可愛らしい性格をしていれば可愛げがあったかもしれないと少しおかしいが……
「温めるのは好きだけれどそれはしかるべき場所でお願いするよ。
それともそれは口説いてくれているのかい?」
僅かに酔いが醒めたなぁと苦笑して再びボトルを傾ける。
頬が熱いような気もするがきっと酒のせいだろう。うん。
■九十八 幽 > 「精神的な翼はあるかもしれないけれど 物質的な翼は誰しもが持ってるものじゃあないね
そうかな そうかもしれないけれど
きっとその 美しい物を守るための決まりなのだろうね」
例えはよく分からなかったけれど 幽は僅かに頷いた
多少の危険を冒してでも 得たいと思うものはあるのかもしれない
意識したことは無いけれど きっと自分の中にもそれはあると思いながら
「そうだね 出来るだけ楽しんでみる事にするよ
お酒に強いのか弱いのか 自分でもよく分からないのだけどね
もしかしたら 凄く酔っているのかもしれない」
両の手の指を顔の前で合わせ にっこりと笑みを向ける
酒に酔っても酔わなくとも 曖昧模糊とした雰囲気は変わらないということなのだろう
「然るべき 場所?
ええと そんなつもりは無かったのだけど そう見えてしまったかな?
ごめんね ごめんなさい 口説くというのがどういう事か よく分からなくて」
広げた腕を静かに下ろし 困った様に眉尻を下げて
以前にナンパというものがあると知ったが 今回もそう取られたのかと怪訝そうに首を捻る
■ツェツィーリヤ >
「はは、だからこそこうして景色を楽しむ事が出来ると思うと凄く楽しいね。
うん。胸が躍るよ。ふふ、まぁ感覚の方は既に浮き気味なんだけれど。」
簡潔に言うと酔っているだけだが、この多少頭が回らなくなる感触も含めてお酒が好きなのだ。
つまみに美しい景色にミステリアスな飲み仲間。
これが楽しくない訳がない。
「それで酔っているのかい?
本当、羨ましい位に良い人生の積み方をしたのだねぇ。
酔い方というのは人生が現れる。
見ての通り私はあまり上品ではなくてね。羨ましいよ」
くつくつと肩を揺らし髪についた雫を払う。
之でも抑えている方だというのは秘密だ。
実際一人で飲んでいるときは今の数倍べろんべろんになっている。
が、ふと瞳に酒気以上に酔ったような彩が混ざると同時にゆっくりと身を乗り出して
「おや、それは勿体ない。
私が手ほどきしてあげようか。
いつか君が欲しいと思ったときに戸惑わないように練習は大事だよ。
それに君が相手なら私も吝かではないしね?」
私相手なら多少失敗しても心が痛まないだろう?と笑いながら首元へと手を伸ばして
■九十八 幽 > 「日頃地に足を着けて 生活しているのだから
たまには浮いてみるのも 悪くないんじゃないかな」
緩やかに首を傾げ 楽しそうな貴女に釣られて笑みを浮かべ
景色を楽しめる事に関しては 概ね同意だと頷いた
夜空から視線を少し下ろせば 昼間彷徨った常世島が見渡せた
「分からない 少し酔ってるかもしれないね
良い人生だったのかな それも分からないんだ
この島に来るまでの事は よく覚えていなくって
だから多分 そんなに羨ましがられる様なものじゃあないよ」
俄かに視線を彷徨わせ 一度静かに目を閉じる
ほぅ、と小さく息を吐いて 再び目を開いてゆるく微笑んで
それから僅かな貴女の変化に気付き 小さく首を傾げれば
「ええと 手ほどき?
お酒も貰って そのうえ更に何か貰うのは少し気が引けてしまうな
お金もないし 今宵の寝床も見つけていないから
これ以上貰っても 返せる物も自信もちょっとないのだけど──」
状況を理解出来ていないのか 僅かに戸惑いの色が瞳に浮かぶ
その態度とは裏腹に 月明かりの下で髪は黒く肌は白く 艶めくように輝いて
■ツェツィーリヤ >
「そう考えると高い所に向かうのは人の習性なのかな。
いやぁ、なかなかに罪深い話だ。嫌いじゃないけれど」
この夜空の下、気ままに飛び回る事が出来たらそれはそれは楽しいだろう。
多くのヒトは陽光の元飛び立つことを望むかもしれないが
そう、何も考えずに溶け込むというのはとても魅力的に聞こえて……
「分からないなら尚更良い人生だったということにしておこう。
なぁに。思い出すまでそれで困る事なんてないのだから。」
それは記憶だって同じかもしれない。
行き当たりばったりなんて言い方もするがそれは言わないのがご愛嬌。
そんなものがなくとも別に今を生きることは出来るし……
楽しくも嬉しくも、気持ちよくもなれるのだからそれ以外なんだっていい。
「火傷の仕方だって色々あるだろう?
眠る場所ならあるよ。それに 貸し借りなんてそんな堅苦しい考え方をしなくても良いんだ。
損得とかそんな難しいことばかりじゃない。
ただ道が交わっている間だけ寄り添うだけ。
旅の天気のようなものさ。身を任せて楽しむだけ。」
伸ばした指先はひんやりとしていて、ぶれた頬の温かさが心地よい。
まるでじんわりと溶けて伝わってくるよう。
嗚呼、この暖かさは好きだ。人のこの暖かさがとても好きだ。
……が、
「……とはいえこれ以上はルール違反かな。
無垢な子は好みだけれどそれに付け込むのは好みじゃない」
すとんと色をその目から消し、伸ばしていた腕をあっさり引く。
爛れたり溺れたりする関係性は大好物だがそれはあくまで同意があっての事。
伝わらないなら今はその時ではないのだということだと思うから。
■九十八 幽 > 「ふふ、そうかもしれない
いつか空の上を 見てみたいものだね」
うっとりと目を伏せて そしてゆったりと微笑む
いつか空を飛べれば良いと思っていたから 今日はここに来たのかもと呟いて
「そうだね そうしよう
それに昔の事を覚えていなくとも こうして今新たな出会いもあるのだからね」
過去よりは現在、そして未来 幽にとっての重要度はそんな感じ
これから起こる事の方が 食指が動きやすいように思えるのだ
「火傷の 仕方?
眠るところ 何処か知っているのかい?
嗚呼、なるほど そういうことなら分かるよ
これまで何度も 色んな人の部屋を借りたから
それでもその都度 相手の望む形で帳消しにして来たから
ギブアンドテイク そうしたいからそうしているだけなのだけど」
刹那己に触れた指が 延ばされた腕が静かに落ちる
その様を見て少しだけ 理解が及んだらしい
両の手を自分の頬に当て 静かに目を閉じ、ほぅと息を吐いて
そのままふらりと 貴女へと凭れる様に倒れ掛かる
「うん やっぱり少し酔っていたみたい
いつもならもっと 察しは良い方だと思うのだけど
もう夜も更けてしまったし どこか良い所、知っているかい?」
■ツェツィーリヤ >
「ああ、きっと綺麗だろうね。
灰の無い空は本当に美しい」
目を瞑りその景色を夢想して。
既に心は空の中を飛んでいて……
けれどふと引き戻される。
「宿なしか。浮雲みたいに生きていくのは大変だけれど楽しくもあるね。
この島なら尚更か。最もそれを残念がればいいのか喜べばいいのかは今はわからないな」
ストンと艶の落ちた表情で微笑む。
酷く気まぐれかもしれないがタイミングなんて言うものは本当に脆く、そして繊細なものだから仕方がない。
そう、私は我儘なのだ。
「ここで会ったのも何かの縁だろうしうちに泊まっておいき。
安心して欲しい。何も返さないで良いし借りでも何でもない。
あぁ、勘違いしないで。
ただただ私の我儘(エゴ)なんだ。
強いて言うなら何も返さないで欲しい。
……嫌なんだよ。貸し借りとか損得とか。
そういうのは仕事だけにしたいんだ。」
疲れたように手を振る。
気負うのも気負わせるのも重すぎる。
そんなのはお金でも貰わなければやってられない。
そのままゆっくりと立ち上がると傘を拾い上げ、階下に飛び降りると上を見上げて
「それで、どうする?他の宿を探すかい?」
■九十八 幽 > 「本当なら 寮なりアパートなり宛がって貰えるはずだったのだけど
ひとところに留まるのは どうにも落ち着かなくって」
編入が済んで晴れて生徒となった今でも ふらふらりとその日暮らしの根無し草
静かに一度目を閉じ ふぅと息を吐いてから微笑んで
「ありがとう お言葉に甘えさせて貰うよ
あんまり遅い時間になると さすがに良い顔しない人が増えるんだ
風紀委員の詰所も泊まった事があるけれど……」
あそこは酷く落ち着かないんだ と苦々しくも笑みを浮かべ
「分かった それが君の望みなら
案内してくれるかな ついていくから
──嗚呼 そういえばまだお互い名前を知らないね
九十八 幽というよ にたらず かすか」
階下に降りた貴女を追う様に立ち上がって 横に置いていた刀を腰に差す
それからふわりと飛び降りて 自分の胸に手を当て名乗るのだった
■ツェツィーリヤ >
「それはそう。
夜遊びは普段しないから楽しい物だろうに。
毎日はわっるいこの特権さね。
まぁ止まり木にでも避難所にでも好きに使っていい。
鍵が開いていたらだけれど。
風紀の詰め所とか”客間”よりはましだと思うから」
まぁその悪い子には頭も含まれるがね。と余計な一言を付け加える。
事実”いい子”もそれはそれで頑張らないといけない。
その結果風紀の皆様に”ご招待”された日には硬いベッドで数日を過ごす羽目になる。
「そう。良い名前だね。
名前は……まぁ適当でいい。
ジェーンドゥでも名無しでも好きに呼ぶといい。
今は只の行きずりの誰か、だからね」
人差し指を口に当て、にこりと微笑むと歩き出す。
……道中で思い出したように”私は料理できないからご飯買わなきゃ。”
と閉店間際のお店を少し焦って探していたとか。
■九十八 幽 > 「適当で良いのかい? むう、それは少し困ってしまうな
でも そう言うのなら仕方ないね
ジェーン、ジェーンと仮に 呼ばせて貰うよ
君とか あなたとかでも良いのかもしれないけれど
やっぱり名前で 呼びたいんだ」
少しだけしゅんとしたように きゅっ、と口を横に結んで
しかしすぐにいつも通りの ふんわりとした微笑みを口元に
大人しくジェーンの後に付いて 帰路を共にしたのだった
道中で料理出来るけど と口にし掛けて我慢したりもしつつ──
一晩宿を借りて 翌日の昼にはまたふらりふらりと去って行ったことだろう
ご案内:「大時計塔」からツェツィーリヤさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から九十八 幽さんが去りました。