2020/09/25 のログ
ニーナ > 「あってた」

知らない言葉だったが、そのへんは推測した。

「……いつか、言う、つもり。」

言ってないが、場所は筒抜けである。
スマートフォンを経由してGPSで座標を測られ、公安に送られているのだ。
突然此処に現れた、という時はその限りではないのだが。

「……?うん。まだ、準備中。名前も、仮、だったし」

手続きの問題だ。学生証も発行されていない。

「……タイミング?を、考えてる、だけ」

別に何かあったわけではない。
彼も公安であるため、仕事などの関係で機を伺っているだけであった。

紫陽花 剱菊 >  
「……暮れなずむ程に、事を忘れぬように」

其のつもりであれば此れ以上言うつもりはない。
とは言え、時間とは思う以上に早く過ぎ去りしもの。
何時か、何時かとならねば良いが。
些か気を掛け過ぎか。如何にも心配だ。
一応釘だけは、刺しておいた。

「左様か……其れならば良いが……舅殿にも、今一度言うべきで在ろう」

如何やら杞憂であったらしい。
其れなら其れで安心だ。
何時もの不愛想な仏頂面も、幾何か安堵に緩んでいるように見える。

「時に、其方は相違無いか?ななも、そうだが……"パウラ"の方も……」

極星、夜空に縛られた星の少女。
無論彼女も気がかりだが、もう一人の彼女もそうだ。
其れを彼女に聞くかは、些か迷ったのだろう。
些か、歯切れの悪い物言いだ。

ニーナ > 「うん」

勿論分かっている。
学生になれば、星を見たい、と先生に頼んだりもできるんじゃないか、
昼でも星を見る方法があるんじゃないか、など色々思うところがある。
それが出来ない今だけは……。

「どっちも、そのつもり」

具体的に言うと、仕事が落ち着いた頃合いを考えている。
何時来るかはわからないが。

「……私は、特に、なにも。
 一人じゃ、出来ないこと、多いな、とは、思った」

続く名前が、自分を指していないこともわかる。

「……そっちは、わからない。あの日から、起きてない」

紫陽花 剱菊 >  
「……嗚呼……済まなんだ、余計な口出しをしたとは思っている」

我ながら随分と余計な口出しをしたものだ。
裏を返せば、其れほど余裕が出来ていたのかもしれない。
嵐の前の静けさか。何であれ、戦場ではなく
未だ火は上がらぬ。一時の平穏に身を預けるのも悪くはない。
静かに、吐息を吐き出し、ニーナへと視線を向けた。

「歯痒いのは重々承知。秩序には相応の"決まり"が其処に在る。
 ……特に子どもでは、出来ぬ事も多かろう。あだ情けでは無い」

「……今の自分が、もどかしいと思えるか?」

彼女は聡明な子だ。故に、思う所も多いのやも知れない。
特に、彼女の出自を考えれば急ぎになるのも無理はない。
先ずは落ち着け、と言わんばかりに其の肩に手を添えた。

「……左様か。否、何分、後ろ髪を引かれる別れ方をした故に、少しな……」

彼女はきっと、此処から出られない。
無理に連れ出そうとしたあれは、自分でも思う所がある。
あれが原因ではないだろうか、と思うと、ついつい目を伏せてしまう。

ニーナ > 「大丈夫、へいき」

少女は"立場"の概念も理解しつつある。
彼は"見逃してくれている"のだ。だから、少し言われた程度は気にしない。

「……まぁ、少しだけ。でも、待っているだけじゃ、だめ」

街もかなりの範囲を踏破した。学生街だけではあるが。
然れども、取り戻せたのは名前だけ。それも歩き回っているのとは、関係ない部分で。
それでも、少女はやめないだろう。制止しても、縛り付けても、ニーナは歩こうとする。

「……多分、関係ない。私が、起こしてない、だけ。……会いたい?」

条件は分かっている。終わった後に此処に居るのも分かっている。
軽率に呼び起こすには、不都合な要素が多すぎるのだ。

紫陽花 剱菊 >  
「……忝い」

実に聡い。言うべき立場の己がそう言われると
少しばかり、気も楽になると言うもの。
軽く頭を下げ、礼をした。

「…………」

会いたいかどうか。
言われれば当然会いたい。
彼女の事も、確かめねば成らない。
然れど、"彼女の事"を省みれば、答えは一つ。

「……否、良い。其方に負担を掛ける事を、パウラも望むまい」

一つの器に二人の生。
過ぎたるは及ばざるが如し。
彼女は、パウラもきっとそう望むはずだ。
静かに首を振り、合わせて黒糸が細かに揺れる。

さて、やはり少女にとって歯痒きもの。
尚も歩みを止めぬ姿勢。"そうだな"、と終わらせるべきではあるかもしれない。
だが、此の島は広い。彼女も何時か、此の島の姿を、或いは知るべきかもしれない。
故に、己に出来る事は────……。

「……然り。知るべきものは、前に在り。なな、其方は何処へ行きたい?」

「私は導には成れぬ。然れど、護り刀として不足はあるまい。
 私と共に、で在れば……何処に行くにも不足は無いと見るが、如何かな?」

ニーナ > 「……わかった。また、なにか、分かったら、伝えてもらう、かも」

視線を空に戻す。
転落防止の柵に手を乗せる。
彼女が名前を求めたということは、他のことも知りたいはず。
収穫があれば、伝えてあげたい……と思う。

「何処……」

"待ってちゃダメ"。
茜色の光は、進むために道を探すことは促してくれても、道は教えてくれない。
助力はありがたいのだが、まだ行く先がわからない。

「今、探してるのは、それ」

だから、それを知れる道──出会いを求めて、ただ黙々と未知を歩いているのだ。
だから、まだその時ではないのかもしれない。

「なにか、見つかったら、頼む、かも」

紫陽花 剱菊 >  
「委細承知……」

元より断るつもりも無い。
せめて、星々の懸け橋に成れれば幸いだ。
然るに、其の先は如何様に成り得るか。
……余り、後ろ向きな事ばかりは考えたくは無い。

其れは、茜色の光が示したものとは知らない。
柵に手を乗せ、夜空を眺める少女を見ていた。
白色が宵闇に溶け込み、秋風撫でる残暑の夜。

「……で、在れば……」

静かな足取りで、歩み寄る。
隣で風に、黒糸が柳のように揺れていく。

「共に探すとしよう」

元より、一人で行くべき道でもあるまい。
道が分からぬので在れば、共に探すのもまた助力の形。
共に策の前へと並び、横目で少女を見やると、口元は僅かに緩んだ。

「何、舅殿には私から説明しよう。如何せん、力ばかりは在る。
 たまには夜空を、"此の街以外"で見上げるのも赴きがあるやも知れない」

そう言う使い方が出来るのが護り刀の在るべき形。
違う景色に、新たな道は在るやも知れない。
此の島は狭いようで広い。彼女の助力に成り得るものは、街の外にあるやもしれない。

「……其れともやはり、舅殿に申し訳が立たぬか?」

ニーナ > 「一緒に……でも、こんぎくも、学校とか、仕事とか……」

少女が街を歩いているのは、昼間である。
どのみち部屋にひとりだからと街を歩いているのだ。
まぁ、それでいて基本的に店には入らないので出会いがないのも当然なのだが、それは置いておいて。

「街以外で星……それは、あり、かも」

遠出に話を通してもらうのは助かるかも知れない。
ただ、落第街は保護者と一緒に行く約束もしているから、言う通りな所も少しある。

「落第街は、ゆーりと、約束してるから、
 ……あっちの、暗いとこ、とかも、行ける?」

指差すは転移荒野がある方角。
人の営みの明かりがなく、真っ黒である。

紫陽花 剱菊 >  
「心配御無用。相応に備えは在る」

特に例のトゥルーバイツの功績や、普段の行いを差し引いても
単位は十分に揃っている。こう見えて、公安の職務には勤勉だ。
然るに、多少の"寄り道"程度されようと、問題在るまい。
後であの男が煩いかも知れないが、彼女の為なら苦でもない。

「ん……」

落第街と共に、あの場所に行くというのは些か
気がかりな所も在るが、其れは親と子の問題。
己が口を出すべきではない。少女が指差す先は
未開拓地区と呼ばれる、無貌の地平。

「無論。然れど、危険が伴う場所だ。落第街よりもある意味では……其れでも行くか?」

生徒の"腕試し"に使われる事もあるらしいが
元より危険区域にしていされている。
だが、出入りは禁止されていない。後は、彼女の気兼ね次第。

ニーナ > 「……わかった」

心配無用と即答されれば、少し悩んで頷いた。
学校の仕組みとか、公安の事情とかはわからないが、
それで彼に不都合があった場合は、自分が気に病むのもきっと見越してるはずだ。

「こんぎく、居るなら、多分、大丈夫。
 それに……私も、戦える」

前とは違う。
この爪を振るうことが出来る。
恐れ程度では少女は立ち止まらない。

紫陽花 剱菊 >  
「……期待には必ず応える。
 然れど、其方が振るう爪は自衛のみに心得よ」

幾ら跳梁跋扈の未開拓地区と言えど
教えた術をただ振るわせるのは罷り成らぬ。
戦場は基本己に任せてもらわねばならない。
無論、其の力は前に進むために使わせるが
彼女に"余計な事"は覚えさせたくはない。
尤も、聡く、優しい彼女であれば杞憂で終わるとは思うが
念には念を入れておく。

「……そろそろ暇にするか。なな、其方はどうする?」

ニーナ > 「うん、わかってる」

当然だ。そこは違えない。
自分を、大切な人を守るために教えてもらったのだから。
真剣な面持ちで見上げる。

「ん……そろそろ、帰る」

それから暇と言われれば、自分もそうすると答える。
手を差し出されるならば、そっと取るだろう。

紫陽花 剱菊 >  
「成れば良し」

わかっているのであれば、言う事は無い。
何時ものように差し伸べた手を取られれば、小さく頷いた。

「では、共に参ろう。少しばかり、寄り道を……」

柔く、鉄の如き冷たい手が少女の手を包んだ。
何時もの如く、彼女と共に帰路についた。
其の際に甘味処に寄ったのだが、目当てのものは結局食べれずじまいだったとか……。

ご案内:「大時計塔」からニーナさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から紫陽花 剱菊さんが去りました。