2020/10/11 のログ
霜月 水都 > 「うんまあ、わからねー、よなぁ……」

ぽりぽり、と頭を掻く。
極めて単純に、気配を無視できない、というだけの話。
つまりは、死というものを割と身近に見てきたからこその、そしてそれを見送ってきたからこその、独特の感性だ。
何言ってんのコイツ、という考えは、至極まっとうなものである。
――それでも、あの命を見送る感覚よりはマシという、それだけの話なのだが。
それを説明するには、どうしても、語彙も関係性も、足りない。

「いやまあ、気分転換でも出来たらなーって……ダメだな、これじゃセンスのねぇナンパじゃん……あー、えっと、だなー……」

うー、あー、と頭を掻きむしる。
どいた方が絶対話は楽だし、死ぬとも限らない。
そんなのは理屈ではわかってるし、それを超えた『直感』なんてものに説得力はない。
そんなことはわかっている。
わかっている、が。

「直感なんだよ。マジで、経験からくる直感でしかない。的外れの可能性もある。経験上、そういう『なんかすごく悩んでたり焦ってたりして心ここにあらず』ってやつはしょうもないミスして死にやすいっていうだけのものなんだけど、俺の中じゃ見過ごせないんだよ、これ。無視出来ねぇんだ、当たり過ぎて。
で、俺って未熟だから、そういうのを見送るしか出来ないことも多くてさ。やなんだよ、そういうの。イメージしてみてくれよ、あっコイツ死ぬなって確信出来る相手を、見送るしかできねーの。キツいんだよ。いやもう笑えよ。でもマジなんだよなぁ、これ……」

ガシガシガシガシ。
呻くように言葉を絞り出しながら、頭を掻きむしりつつその場にしゃがみ込む。
これに関しては、通さないという意思、というよりも、どう伝えたものか、どうすべきかと頭を抱えてしまったという方が近い。

雪城 氷架 >  
「ナンパのがいくらかマシ。
 "お前死にそう"とか、怪しい宗教かなんかだぞ…」

しかも逃げ道を塞ぐおまけつきである
ポケットに潜むピンクの蛇が出てきていないあたりは身の危険とは判断されていないのだろうが

「あのさ」
「別に見送ったって、私はお前のなんでもないじゃん」

まぁ、知ってる顔が死ぬっていうのがイヤなのは理解できなくもないけれど

「さ、退いた退いた。
 お前の直感がどれだけ当たるのか私は知らないし、
 私はそもそも死ぬつもりなんかも全然ないんだから」

ひらひらと片手を振り散らすようにして、退くように促す
流石に飛び降りるというのは冗談だったらしく、最早言及しないが

「私がお前に困らされてるのに、お前が困っててもどうもできないだろ…」

本当に変なやつ、と再び溜息を吐いた

霜月 水都 > 「だよなぁ、だよなぁ!!!」

ぐあー!と天を仰ぐ。
――お説ごもっとも、おっしゃる通り。
傍から見れば完全に自分が不審者だ。
説得力を用意できない。それをできるほど、自分は話術が達者じゃない。
だが、何でもない、という言葉にだけは。

「知り合いだろ。知り合いにはまあ、俺は笑って生きてて欲しいんだよ。
好きとか嫌いとかじゃねーぞ、その段階じゃないし。ただ、結構俺は、一期一会って大事にしてんの」

真面目な顔で反論する。
袖すり合うも多生の縁。
知り合えば、多少なりともかかわりが生まれる。
そういったものを束ねて、人のコミュニティというものは生まれていくのだし、人そのものも形成されていくのだ。
――まして、水都の生まれ育った環境では、その縁が唐突に途切れることもままある。
だからこそ、一つの縁を大事に大事に。
そのようなシビアな感性、一般家庭では育まれ辛いであろうけれど。

「だからまあ、正直心配でならねー。死にそうどうこうは置いといても、前会ったお前と違って『余裕なさすぎ』なんだよ。危うく、感じる。けど、その根拠は俺の中にしかなくて、クッソ、説明しきれねぇ」

これ以上の押し問答は、本当に単なる時間の無駄になりかねない。
ただ……ただ見送ることも、出来ない。

「だからもう、なんか道端で変な占い師につかまったとか、そんなんでいいからさ。扱い。だから、ちょっとこう、自分は注意散漫になってないかって自分を監視しながら帰ってくれ。いやもうマジ頼むよ、どくから、どくからさ」

みっともなさも隠さず、拝み倒す。
傍から見れば明らかに異様であるし、氷架からしても意味不明だろう。
だが……その姿には、妙な真剣み、重みがあることが、感じ取れるだろうか。

雪城 氷架 >  
「一度会っただけで知り合いだなんだ、ほっとけないとか言ってたらキリがないだろ」
「お前、詐欺師とかにあっさり騙されて身を滅ぼすタイプだな…」

腕を解いて、やや呆れ気味に肩を上げる
何度目の溜息だろう大きく息を吐いて

「──人間息てりゃ落ち込むこともあるし余裕なくなることもあるよ」
「たまたま今日がそういう日だっただけ、他人のそんなモンまで気にして生きてたら疲れるだけじゃね?」

今まで触れてきた人間全部にそうするつもりなのか?と

カツカツと階段を降りて、すれ違いつつそんな言葉を並べてゆく
まぁ、こんなよくわからないお節介人間を求めるくらい、本当に余裕のない人間もいるのかもしれないが
少なくとも今の自分は、誰でもいいから助けて欲しい…なんて事態には陥っていない

「まぁ…」

去り際、バッグを拾い上げて

「よくわかんないけどお前が真剣に言ってるってコトはわかったよ。
 余計な心配しなくていいからさ。たまにこーなるんだよ。いつものコト」

「じゃーな」

後ろ手にひらひらと手を振って、少女は下の階へと姿を消した

霜月 水都 > 「――そうしねーと、後悔すんだよ。マジで」

重く深い呟きは、届くかどうか。
ため息をつきつつも、少女が階下に降りていくのを見送ってから。


「――――――あーーーーくっそかんっぜんにやらかしたな畜生!!!マジで怪しい占い師でしかねぇよ!!!!!」

ガシガシガシガシ。
頭をまたしても掻き毟る。
しかし。

「まあ……うん、まあ、しゃーねー。一応聞いてくれただけ、マシだろ、うん」

とりあえず割り切る。
これ以上出来ることはない。その上で何かあったら……自分の手を超えていたとしか言いようがない。
首を横に振って、不安を外に追い出しながら。

「……とりあえず、休も」

ぐでぇ、と壁にもたれかかったのであった。

ご案内:「大時計塔」から雪城 氷架さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から霜月 水都さんが去りました。