2020/10/12 のログ
ご案内:「大時計塔」に日下 葵さんが現れました。
日下 葵 > 「気付いたらここもお気に入りの場所になってしまいましたね」

大時計塔。
形ばかりで何も効果を発揮していない立入禁止の札を無視して上りきると、
目の前には一面の夜景が広がっていた。

もともとは警邏で来るだけだったこの場所。
上るのも面倒だと思うばかりで、特に思い入れはなかったはずだが、
最近はここで景色を見るのが一つの楽しみになってしまっていた。

「景色なんて、今まで興味なかったんですけどねえ」

そう呟くと、ポケットから煙草箱を取り出すと一本咥える。
ライターで火をつけて煙を吐き出すと、視線を街へ。
空気の流れで揺らめく街灯、頬に吹き付ける冷たい空気。
もうすっかり秋らしい空気感に、なんだか感傷的な気持ちになる>

ご案内:「大時計塔」に雨見風菜さんが現れました。
雨見風菜 > 最近は気温が下がってきている。
夏の間は跳んでいっていた風菜も、寒さには勝てず。
階段を使……わず、階段室を『糸』で登って上がりきってみれば。

「あら、先客……葵さん?」

先日、寮の風呂で一緒になった女子が、煙草を吹かしている。
風紀委員は誰しも心労が募っているのだろうか。
朧車の件でも駆り出されていたことを考えれば無理もないな、と風菜は自分の中で結論づけた。

日下 葵 > 「前に来た時よりも厚着はしてきたんですが、やっぱり寒いですねえ」

風切り音と共に抜けていく風が、服を抜けて体温を奪っていく。

「っと、おやおや。風菜さんでしたっけ?
 こんなところで会うとは奇遇ですねえ?」

背後の階段から声が聞こえた。
何者だろうと振り向くと、
そこにはいつか女子寮のお風呂で雑談をした彼女。
軽く手を振って挨拶をすると、
煙草の先端にぶら下がっていた灰が風にあおられて落ちた>

雨見風菜 > 「ええ、奇遇ですね」

そういえば風紀委員ということはここに入ったことを注意されるのだろうかと。
いや、こう言われた以上今から注意されることはないんじゃないかなと希望的観測で。

「朧車の対処も増えて、大変そうですね、風紀委員の皆さん」

煙草の灰が風に煽られ落ちるのを見つつ、そう仕事が増えたことを労う。
直接対処はしなくとも、出動した人たちの分の仕事が回って来ていたりするんだろうなと考えて。

日下 葵 > 「そうですねえ。
 風菜さんは景色でも楽しみに来たんですか?」

本当にこの場所にはいろいろな人が来る。
あの立入禁止の札、機能してるのだろうか。

「ああ、朧車。私は討伐任務には当たってないんですよ。
 風菜さんがどこまで知ってるかわかりませんけど、
 私向きの怪異じゃないので」

ああいうのはもっと大火力の委員に任せています。
なんて言えば、再び煙を吐いた。
いや、実は不幸な事故で朧車の討伐に巻き込まれたことはあるが、
それは任務として赴いたわけではない。
だから自分は関わっていないとだけ答えた>

雨見風菜 > 「ええ、そうなんですよ」

言って、葵の横までやってくる。
本当にここからの眺めは良い。
夜になれば建物の明かりで照らされ、ロマンティックな風景になる。

「討伐任務に当たって無くても、その分お仕事増えてるんじゃないかなとは思いましたが。
 風紀委員の方々がみんな戦えるとも、戦えたとしてどんな相手とでも戦えるとも思ってませんよ」

風菜の場合、そもそも戦闘力がほぼ無い、異能が使えるだけの一般人だ。
とは言いつつ『糸』を括りつけた石を振り回したりするくらいはするが。
だがそれしか出来ない以上、討伐できるわけもない。

「なにせ列車の怪異ですもんね。
 固そう早そう大きそうですし、生半では太刀打ちできないでしょうし」

日下 葵 > 「そうですか。私も似たようなものです」

隣にやって来た彼女の返答を聞いて、また煙を吹かした。
眼前に広がる夜景はいわゆる絶景と呼ぶにふさわしいものだったが、
なぜだかそれに感動することはなかった。

「んー、私の方では特にそういう印象はないですね。
 風紀委員の予備人員は多いですから」

私がわざわざ働かなくても、代わりの人員はいくらでもいる。
何よりも私は刑事部の所属。
警邏部の仕事を手伝うことはあっても、
根本的な人手不足解消のために駆り出されることはそうそうない。

「そうですね、討伐するには私では分が悪すぎます。
 私の専門は人間ですから」

そう、朧車を討伐しようとすれば、
ありったけの爆薬を抱えて列車と心中するしかない。
そんなことをするくらいなら、もっと適した人間に仕事をさせる方がいい>

雨見風菜 > 「さすが、常世島の治安維持組織。
 盤石ですね」

どうやら要らぬ心配だったようだ。
考えてみれば夏休みだって、風紀委員も学生である以上休みは取っていたわけだし。

「人と列車は大違いですもんね。
 私も、絶対倒せないと思います」

知人から聞いた話では、そもそも生身の人間が外から討伐しようとするほうが難しいのではないかと。
そういう知人も生身の人間ではないので突撃を止めてパワーで粉砕、なんて言う豪快な討伐方法が取れるけども。
あれを人間が真似するには突撃を止めるとか攻撃を耐えるとか言った異能が必要なんじゃないだろうか。

日下 葵 > 「盤石かどうか正直分かりませんが、
 人が一人二人使えなくなったところで
 機能不全になるような組織ではないですねえ」

言い方はあれだが”代わりはいくらでもいる”というやつだ。
組織としてはある意味望ましい。

「ま、この島じゃただの人間の方が少ない気がしますけど」

異能を持たない人間は少数派だろう。
戦えるかどうかは別として。

「そうですねえ。列車相手に戦う気は正直しません。
 勝てるんでしょうけど、効率がわるい」

だから火力のある委員に任せているし、それでいいのだ。
今回の朧車は私の出る幕ではなかった。

「知り合いに討伐に選任された人でもいるんです?」

何となく、気になってそんなことを聞いてみよう>

雨見風菜 > 「一人二人休んで機能不全になるの、駄目な組織ですよねぇ……」

今のバイト先はまあ店長が倒れると機能不全に陥るだろうけども。
ウェイトレスである私達の一人が倒れてもなんとかなるだろう。
二人だと半壊なのでどうしようもないだろうが。

「そうですね。
 異能や魔術が使える時点で『ただの人間』じゃないですもんね」

まあ、異能を持っていなかったり使わなくても戦える人も居るし。
魔術もまた然り。

「勝てるだけでもすごいと思いますけど、効率が悪いなら別の手を使うほうが無難ですよね」

その勝ち方を知らないから言えることでは有る。
『物体収納』していたホットココア缶を出してひと口。

「ええ、雇われた、だそうです。
 何処に雇われたかは教えてもらえませんでしたが」