2020/11/17 のログ
紫陽花 剱菊 >  
「──────茶番だ。」

月下の時計塔。男は思わず吐き捨てた。
蒼光朧に差し込む先は、夜風に揺れる黒糸也。
憂いを帯びた水底の双眸。暗がりの底より、塔の上から幽世見下ろす剣客が一人。
酷く険しい顔つきで見下ろしたるは、数多の命が眠りし夜の帳降りし街並み。
嘆いていた。影の刃ともすれば、此の着目すべき問題に。
稚拙なればこそ、茶番と言わずして、なんと言う。

「…………」

例え、茶番と誹られても、幕が上がれば演者が舞う。
果たして歌舞いて見せるか、或いは凋落か。
双方の行いに、"理"は無い。

紫陽花 剱菊 >  
一つ。綻びなりし加害者。
幽世を護りし者々の組織力たるや、強大の一言。
数多の輩が集うが故に、十人十色。秩序を成すが、輩が善を成すのは否。
一見の矛盾なれど、人が人で在るが故に、不足は在る。
故に、秩序は保たれる。不思議と其れは出来上がる。
成れど、相応しきなくば相応の咎は受けよう。

「…………」

眉間の皺が嫌に増えた。
此度の襲撃、双方の稚拙が余りに目立つ。
特に、風紀の上方を狙う意義。余程の狂人でなくば、"後のしっぺ返し"を想像出来ぬはずが無い。
愚行である。然れど、剱菊には一蹴出来ぬ理由が在る。
かつて、真実に食らいつこうとした者々と、其の首領を捕えて見せた。
一重に、"己の感情"のみで、だ。其れ以外は全て、"知るか、そんな事"と駆けた。
偶然にも理が、己に味方しただけに過ぎない。
狂人なくば、感情まかせだ。故に、何も言えまい。
言う資格を持ちえていない。

紫陽花 剱菊 >  
二つ。綻びに躍らされし被害者。我が友。
如何にして猟犬を束ねて見せたのか。
其の心中、余りにも潔しとせず、余りにも稚拙。
目星、血眼となって探すは理が通る。
然れど、"あの様"は調査とは言い難く、"火つけ"の他ならず。
焚きつければ燃え上がるのは必定。
一度燃え広がれば、如何に近くに煙が有ろうと、気づくまい。
或いは、燃え広がって消してしまえば、片側は誰にも気づかれずに灰となる。

「…………」

其れが分からぬ、あやつではない。
一重に信頼も在るが、愚か者ではあるまい。
舞台で踊る哀れな道化。
三つ目は、演者を指揮する者。

「……何れにせよ……。」

紫陽花 剱菊 >  
「──────咎は、受けて貰う。」

相応の報いが、其処に在る。
如何に悪逆通ろうと、最後に下るは天罰也。
悪が栄えた試し無し。
下るは首か、斜陽の凋落か。
三者三葉、全てに咎を。

紫陽花 剱菊 >  
加害者に如何なる"想い"が在ろうと
被害者に如何なる"苦渋"が在ろうと
指揮者に如何なる"悦楽"が在ろうと



──────既に賽は、投げられた。



動き出した組織は、止まりはしないだろう。
是より正すは公安委員会、影なる者。
誰一人、相応の報いを受けさせる。是まで、と。
一足に地を蹴り、奈落へと飛び降りる。
夜の帳に消えるように、此の刃が向かう先は、果たして──────。

紫陽花 剱菊 >  
 
          ────────刹那の喜劇、山場迄今暫しお待ちあれ。
 
 

ご案内:「大時計塔」から紫陽花 剱菊さんが去りました。