2021/03/12 のログ
黛 薫 >  
「待っ、あ、いぁ、ダメってコトじゃなぃすけど!
そんっ、膝とか付いたら、折角綺麗な服着てるのに、
あー、だ、大丈夫!あーし落ち着ぃてますから!」

相手が気を使ってくれたのは理解したものの、
『自分なんか』にそこまでしてくれる優しさに
驚いてしまい、余計に挙動不審気味。

しかしその所為で自分が『落ち着いていない』と
嫌でも理解してしまい……数秒の混乱の後、素直に
貴方の言葉に従って呼吸を整えた。

「えぁー……なんか、ごめんなさぃ。
いぁ、違うな……えっと、ありがとぅございます。
あーし……緊張してたのかな……なんて、今更か。
自覚あったようななかったような?あー、ぅー。
うん、ちょっと、落ち着く時間だけ貰ぃます……」

深呼吸はしてみたが、仄かに香る薔薇の匂いで
どぎまぎして、余計に落ち着かなくなるような。
多分、野良犬が豪華なお部屋で飼われることに
なったらこんな気持ちなんだろう、と想像する。

セレネ > 「服?あぁ、汚れても洗えば綺麗になりますから大丈夫ですよ。」

落ち着いている、という言葉と慌てて己の気遣いに対する困惑するような言葉に緩く首を傾げて。
己の行動によって余計に緊張させてしまったのだろうか。
罪悪感に駆られながらも表面にはおくびにも出さず。
数秒後、呼吸を整えて落ち着いてくれた相手に己もホッと安堵して。

「いいえ、お気になさらず。
お互い緊張してるとお話も楽しくなくなってしまいますから…。
ゆっくりで大丈夫ですからね。」

謝る言葉も、礼の言葉も、きちんと言えるだけで充分だ。
己から香るローズの香りは、香水の類ではないのだけど。

「寒くはないですか?暖かくなってきたとはいえ、まだ体調も崩しやすい季節ですからね…。」

彼女に蒼を向け、問いかける。
他者へのの気遣いは最早癖のようなものだ。

黛 薫 >  
「いや洗えばイィとかそういう問題じゃなくて、
折角綺麗なのにもったいな……あ、服の話っす!
いぁ、あーたが綺麗じゃないってコトじゃなく、
いや何だ?あーし余計なコト言ってますね?」

落ち着くにはやや時間を要してしまった。
本当に落ち着けているかどうかは……微妙だが。

話に付き合うと言いつつこの体たらく、相手は
退屈そうにしていないだろうか、と様子を伺う。
罪悪感を覚えているのはお互い様だが、相手も
同じことを考えているとは思わないのだろう。

「あー、そぅなんすよね。この季節ってあったかく
なってきたかと思ったら、急に寒くなったりして。
あーしもそれで油断しちゃって毛布被らずに寝たら
次の日寒いのなんのって。

お陰でカゼ気味っすよ、疲れたからって横着せずに
翌日の天気とか、ちゃんと調べとかないとダメすね」

きまり悪そうに頬をかきながら愚痴を溢す。

セレネ > 「えぇ、大丈夫です伝わっておりますよ。
黛さんは優しい人なのですねぇ。」

彼女が慌てながらも必死に言葉を紡いでいるのは失礼ではあろうが微笑ましくも見える。
退屈だなんて微塵も思っておらず、彼女がどうすれば落ち着くかななんてそんな事を考えていたりするのだけれど。

「暖かかったり寒かったりして、少しずつ春の陽気になってきたりする時期ですしね。
四字熟語だと…三寒四温、と言うのでしたっけ?
日本語はあまり得意ではないので合っているか不安ですけど。
まぁ、風邪気味とは。熱はありませんか?
もしくは体の倦怠感…あー、怠いとか、関節が痛いとか、悪寒がするとか…。
そういった症状はあったりします?」

風邪気味だと零す彼女に蒼を細める。
詳しく聞こうとするのは、医者としてのスイッチが入ってしまっている為。

黛 薫 >  
「優しっ……いぁ、あーしは、うーん……。
何だろ、しょーじきイィ子じゃないんすけど。
だからって、悪いコトしたいわけじゃないし、
あーしが気になるから口にするだけだから……。

あーたのためとかじゃなかったし、優しくはなぃと
思ぅんすけど……いぁ、でも褒め言葉?なら否定は
逆に失礼?なんすかね……?」

パーカーの紐を指先で弄りながら、少し早口で
もごもごと呟く。褒められ慣れていないのだと
すぐに分かる動揺っぷり。

今度は自分で落ち着けていないことに気付いて、
深呼吸を挟んで改めて貴方の言葉に耳を傾ける。

「そう、三寒四温。……って、あーしも勉強は
あんま得意じゃなぃんで、絶対合ってるかとか?
そんな自信はなぃすけど、伝わりゃイィっすよ。

って、うゎ。何か医者の問診?みたいな……
そっち系の勉強とかしてる感じ?なんすかね。
待っ、一気に言われても覚えられな、あー……。

熱?は測ってないんすけど、多分あるかな。
だるぃのと、関節が痛ぃのも気になってます。
悪寒は……いぁ、ぶっちゃけ分かんないっすね。
昨日今日と寒ぃから、気温のせいなのか体調の
所為なのか、って感じすかね……?」

セレネ > 「ふふ。まぁ、自分の為とはいえ他者を思いやる気持ちがあるのは悪い事ではないと思いますよ。
優しいと思うかそうでないかは、結局個人で変わりますからね。」

己だって、自身を優しいと思って接している訳ではない。
相手と同じように、己が嫌だからそうしているだけなのだ。
だから彼女の気持ちは分かる。

変わらず膝はついたまま、パーカーの紐を指先で弄りつつ答える相手に笑む。
きちんと深呼吸を挟んで落ち着いてから言葉を話すのも、好感触だ。

「そうですね、案外伝わればどうにかなりますよねぇ。有難う御座います。
えぇ、一応此方でも……いや、私医者になろうと思ってまして。
だからその、つい体調悪い人とか、放っておけなかったり…。

――ふむふむ。悪化する前に薬でも飲めれば良いのですが。
…そうだなぁ…。」

症状を聞いて何もしない、というのもなんだ。
彼女の身体に片手を翳し、勝手ながら回復魔術をかけてしまおうと。
相手が嫌がる素振りを見せないのなら、翳した手から淡い蒼に輝く魔法陣を展開。彼女の身体がほんのりと淡く光るだろう。10秒ほど経てばそっと手を下ろして。

終わった時には彼女が抱えていた症状もすっかり消えてしまっている筈だ。

黛 薫 >  
「……まあ、そぅすね。あーしからしたら話し方?
とか、目線合わせてくれるとことか……セレネの
方が優しぃな、って思ぃますけど……」

フード付きのパーカーに長い前髪。
表情が読みにくいのは相変わらずだが……
今は目線を合わせられるほどの距離にいる。
前髪の下で神経質そうに動く瞳が見えるだろう。

しかし、うろうろと動いていた目線は貴方が
魔法陣を展開すると同時、手に吸い寄せられる。
淡く輝く魔法陣と、その効果を凝視して。

「……回復魔法、っすか。ベースは光と神聖、
それと相性の良い浄化を転化、拡大して身体の
異常と看做した不調を正常、元の形に戻すって
感じの術式……」

魔法陣の基盤、構造を数秒で読み解いて呟く。
しかし、すぐにはっとした様子で手を振った。

「あー、いぁ、違う。先にすべきは感謝でした。
あの、ありがとうございます。あーし、今その、
持ち合わせあんまりなくて。その、支払いとか
しないとですけぉ、お金入るまでちょっとだけ、
待ってもらっていいすか、なんか担保とか……
使えそうなヤツ、探すんで」

セレネ > 「身長差がある人と話す際は、低い方も高い方も結構首が疲れたりしますから。
何というか、癖みたいなものです。」

己を育ててくれた養父が、身長がかなり高い人だったから。
目線を合わせる為膝をついたりしているのをよく見ていたのでその影響もあるかもしれず。
フードに長い前髪と、極力人と目を合わせないような彼女ではあるが。
いつか顔を見れる日が来るかな、なんて思ったりもしつつ。
神経質なのは己も同じなのでどこか似ているなとも感じた。
彼女の瞳に、優しく微笑む。

「…貴女随分と詳しいのですね?
私の術式を看破されたのは初めてですよ。」

蒼を瞬かせて驚いた。まさか数秒で読まれてしまうなんて。

「お金なんてそんな。免許もないのですし、これくらいなら魔力消費もそうないので大丈夫ですよ。
ですけど、お金の代わりに…貴女について少しお話してくれればなぁ、なんて?
魔術や魔法の知識はどこで覚えたのです?」

蒼はじっと、彼女の瞳を見つめて問いかけるだろう。

黛 薫 >  
「あー、あー……そっか、身長高ければ高いで
楽ってわけじゃなぃんすね。いぁ、そりゃそうか。
見上げるのがしんどぃなら、下見るのもしんどぃ。
当たり前なんすけど、自分がそうじゃなぃと案外
思い当たらなぃんだな……」

優しく微笑む青い瞳を見て、またすぐに目を逸らす。
目と目を合わせてお話、とはなかなかいかなそうだ。
最初の印象通り、対人能力には難があるのだろう。

「いぁ、多分……わざわざ読まねー人が大半なだけ
だと思います。読まれたら困る術式……攻撃とかは
陣自体に読みにくい細工があったり、隠蔽を重ねて
あったりしますけぉ。回復系、特に戦場じゃなくて
医療施設で使う系のヤツは、透明性のために術式が
整理されてたりするんで。教科書通りの……癖?
みたいなの覚えたら、読める人多ぃと思います」

口元を隠す仕草。恥じらいというよりは気まずさか。

「……いぁ、でも……やっぱそのうちお礼はさせて
くださぃ。回復魔法にも向き不向きとか技術代は
ありますし。そんな厳しくはなぃはずですけど、
医者の仕事取るくらいに回復繰り返したりすると
注意とか、あり得るみたぃですし。

……っても……あーしはそんな特別な勉強とかは
してなくて。この学園で教えてもらえる魔術学の
内容と……それから、独学、くらいしか……」

僅かに声が小さくなる。垣間見えたのは断片だが、
少なくとも独学で片付けられる範囲の知識技能で
ないことは貴方にもすぐに分かる。

セレネ > 自分がそうではないと思い当たらない、との言葉には頷く。
人は自身がその立場にならないと気づけない事が多数ある。
相手の立場を考えて行動、発言する事が一番諍いも起こらないのだけれど、それを続けるのもしんどかったりする。

一瞬目が合ったがすぐに視線を逸らされた。
ふ、と小さく笑えば彼女に圧をかけないよう己も蒼を逸らすとして。

「成程、確かにわざわざ読もうと思う人なんてそうはいませんよね。
独学で魔術や魔法を覚えたりした人だと、結構癖が強かったりもしますけれど。
魔術戦も情報がカギになったりしますしねぇ。」

この術は何を示しているのか、相手が何を発動しようとしているのか。
それを読み取って行動を起こせば、怪我をするリスクも死ぬリスクもグッと減る筈だ。
後は属性の得意不得意もあるが。

「なら、また今度会った時にでも。
流石に同業者の仕事を取るくらいはしませんが…魔力量も限りがありますからね。
――相当勉学に励んだのでは?」

己は全くの独学であるが、彼女が如何に此処まで勉強したのかは想像できる。
明らかに学園で教えられる範囲を逸脱している。専門レベルとも言えるかもしれない。

「私も魔術の技量と知識には自信がありますが…貴女には負けてしまうかもしれませんね。」

なんて、肩を竦めて冗談交じり。

黛 薫 >  
「医療系みたいな、場合によっては確認が必要に
なる術式とか、あとは防衛結界みたいな継続的に
作用する系の術式なんかは、不具合があったとき
術式参照して確認しなぃとっすから……癖の強い
独学の術式は敬遠されがちって話も聞くっすね」

仮に自分が魔法を使えたら、セオリーから大幅に
外れた癖の強い術式になりそうだ、と想像して
重い息を吐く。どうせ『仮に』でしかないし。

「……まあ、根気のないあーしにしてはそこそこ
頑張って勉強した方だと思ぃますよ。それでも、
周りの方があーしより優秀だったんすけど、ね。
あーたも、あーしよりは上すよ、間違いなく」

早く走るための理論を誰よりも深く理解していても、
タイムを縮めるための練習法について誰より真剣に
考えていても、車椅子に座っていたらランナーには
なれない。魔法だって同じだ。

どれだけ知識を詰め込んでも、頭が痛くなるまで
勉強しても、禁忌に手を出しても、使えないなら
それまでだ。

初歩の初歩の簡単な魔法でも、爪先に火を灯せる
だけでも──使えない自分よりは、優れている。

セレネ > 「こういった所では特に、独学の術式はその人だけしか分からないので
勝手に弄れないというのもあるでしょうね。
異世界から来た人だとその世界固有の術式もあるでしょうから。」

新しい術式を覚えるのは、楽しいけれど難しい。
魔力も人それぞれ、世界それぞれで違ったりするから面白い。
本当に、興味が尽きない事だ。

「そこまで知識が深いのなら、誰かに教えるという道も選択できるかもしれませんね。」

そんなに知識があっても、自分を卑下する言葉を述べる相手に。
もしや彼女は…と一つの考えが浮かんだ。
魔術が使えない体質なら、そう考えるのも可笑しくはない。

「貴女が努力をした事は、決して無駄ではないと思います。
勤勉で努力家な人、私好きですよ?」

魔道具なら彼女にも扱えるだろうかなんて、思考を巡らせつつ。

黛 薫 >  
「場所が違えばセオリーってのも変わりますし?
こっちの『普通』と異世界の『普通』が一緒とは
限らねーですからね……。組み方が違うだけなら
イィですけぉ、例えば異世界にしかない供給源に
繋ぐような術式は、こっちじゃ発動しなかったり
不具合が起きたり、そーゆー事故もあるとか」

そういう『事故』が原因で常世学園に送られた
異世界出身の生徒もいる、と聞いたことがある。
もっとも、それが誰なのかを探るような真似は
しなかったし、真偽も定かではないが。

「……あーしには無理っす、教えるとか。
知識だけあっても、感覚は教えられねーですし。
それに、口ばっかでやらねー人への『視線』って
甘くないっつか……手心がなぃんすよね」

何か言葉を続けようとして、声を詰まらせる。
自分の側の事情──『魔術が使えない』ことを
相手は察しているのだ、と気付いた。

今の言葉はそれを裏付けるようなものだった、と
思い返しても、もう遅い。

息を吸って、吐く。

幸か不幸か、今日は動揺してばかりだったから
『落ち着き方』を既に何度も実践していた。

深呼吸を繰り返す。

ひきつけを起こしたような細い呼吸音がする。
何度か喉を詰まらせながらも、感情の制御は
出来ている──出来ている、はずだ。

「……いぁ、ごめんなさい。
折角なら、楽しくお話とか……イィ感じに……
あーし、できたら、良かっ、は、ぁ……っ、く、
うん、大丈夫、大丈夫……ちょっと、下手で……
明るい感じの、話とか、慣れ、できて、な、
ふ、っ……ぁ゛ー……あーし、ダメっすね……」

すんでのところでどろどろした感情を飲み込んで、
荒い息を吐き、喉を掴みながら身を起こす。

セレネ > 相手の言葉に確かにそうだと頷く。
己の扱う魔法や魔術も、この世界では殆ど同じように発動出来たが他の術式はまだ試していない。
…そもそも学園側には自身の情報はほぼ伝えておらず、秘匿しているから騒動は起こせないが。

「そうですか…それは残念です。
あぁ、口先だけの人って時々居ますよね。
私もそういった人は苦手で。」

同意するように頷いて居れば、彼女の異変に気が付いた。

「いいえ、気にしないで下さい。大丈夫です、魔術の話をしているだけで充分、楽しいですよ。
だから、落ち着いて。ゆっくり、息を吸って、吐いて下さい。」

過呼吸か、彼女の呼吸が乱れた。
なるべく刺激しないように穏やかな口調でゆっくり呼吸をするように促そう。

「大丈夫ですか?」

事情も知らないから下手に踏み込めない。
こうやって言葉を掛けるしか出来ないのは、歯痒い気持ちだ。

黛 薫 >  
酷く、汗をかいていた。飲み込んで押し込めても、
感情そのものが無くなってくれるわけではなかった。
優しい声に、涙が滲みそうになる。

「っ、あー……いぁ、ごめんなさい、大丈夫っす。
その、何てーか?あーし、不安定?なトコあって、
考えすぎると、こう、ダメになる……みたいな……。
今回は、あーたのお陰?で、ちょっとは、マシに
収まった……と、思います。ぇと、ありがとです」

例えば、自分が目の前にいる彼女のように。
穏やかに優しく、楽しく話題を提供できたなら。
無理だと分かっていても、そう望んでしまう。

相手に嫌な思いをさせることなくお話できたらと、
歯痒さの混じった『視線』を感じながら悔いる。
折角の邂逅にそんな悔悟を残すのは失礼に思えて、
だから自分が嫌いになる。

深呼吸を、繰り返す。両の手で己の頬を張る。

「あー……いぁ、でも、ダメっすね、コレは。
多分このままだと、あーしはセレネに酷いコト
言います、だから、今日はここまで。

後日改めて、治療のお礼も兼ねて会ぃに来ます。
その……今日は、ありがとうござぃました」

背筋を伸ばし、貴方に向けて深々と頭を下げる。
せめて多少でも、優しくしてくれた貴方の心に
悪いモノを残さずにいられますように、と。
祈りながら顔を上げて、その場を去っていく。

ご案内:「大時計塔」から黛 薫さんが去りました。
セレネ > 「安定している人でも、精神的に不安定になったりする事もありますし、あまり気負い過ぎないで下さいね。
…力になれたなら良かったです。」

未だ不安ではあれど、彼女が大丈夫だと言うならそれ以上は踏み込まない。
彼女の異能が何か把握できれば、もう少し負担をかけないやり取りも出来たかもしれないけれど。
両の頬を張る相手に、蒼を瞬かせ驚いて。

「…分かりました。ではまた今度色々お話しましょうね。
楽しみにしています。」

深く頭を下げる相手を見ながら、微笑んでそう告げる。
去っていく後ろ姿を見送るとゆっくり立ち上がってスカートを軽く払い。

「私も帰らなくちゃ…。」

彼女の事は気になるが、また次に会った時に元気な姿を見られれば。

背に消していた淡い蒼の翼を生やせば、数度はためかせて寮のある場所まで飛び去る。
居た場所には月の色を帯びた羽根が一枚――。

ご案内:「大時計塔」からセレネさんが去りました。