2021/06/01 のログ
ご案内:「大時計塔」にクロロさんが現れました。
クロロ >  
雨音が鉄を濡らす。
嫌なほどにそれは大きく聞こえる程の雨音だ。
全く以て、雨が止む気配は無い。
そう言う季節らしい。雨脚と共に憂鬱さが加速する。
特に、クロロにとってはこれは"最悪"だった。

「……ア"ー……」

錆び臭い時計塔の中で、気だるそうな声が響いた。
こんな大雨の中、炎をつけようと思う輩はいない。
いればそれは、よっぽどの馬鹿だ。燃える要素が何処にも無い。
それは、炎そのものと言えるクロロ自身にも言えた。
妙な倦怠感に、ジリジリと体を這いずる嫌悪感。
今外に出たら、きっとあの世に一直線だ。
螺旋階段に背を預け、雨除けに選んだ場所も嫌に湿度が高い。

「クソが……」

こんな事なら、"水除け"はもうちょっと無理矢理にでも学ぶべきだった。
魔術的相性もあるとはいえ、今日はもう"時間切れ"。
仕方なく身を休める此処も、雨漏れに気を使わないといけない。
気だるそうな金の双眸が、真っ暗な天井を睨みあげていた。

クロロ >  
魔術師には相性がある。
炎である自分が炎を操るのが得意なように、その逆は不得手だ。
水除けの魔術は勿論会得してはいるが、系統的には水に値するもの。
炎そのものと言える存在のクロロには、元々相性が悪い。
使えない訳では無いが、その分制限がある。
使えたところで、丸一日使える訳じゃない。
今日はもう時間切れだ。天井がある場所で切れただけ、運がいい方だろう。

「……コイツァ、繁華街までは結構かかりそうだなァ……」

根無し草には世知辛い季節だ。
恨めし気に、最上部へと続く階段の先を睨みつけた。
傘が在れば当然使っているが、如何にも"燃えない傘"には巡り合えていないのだ。

ご案内:「大時計塔」にセレネさんが現れました。
セレネ > 相手が睨み付けた先、最上部から下りてくる足音が一つ。
白いレインコートに身を包んだ、同じく雨宿りの最中であった少女が螺旋階段を下りる。

グズついてしとしとと雨が降っていた中此処に来たまでは良かったものの、
雨脚が強まりどうにも帰るのが億劫になっていた所だった。
飛んで帰るにしても、この雨量ではまともに飛べないし。

「――あら?」

視界に入ったのは二つの金色。
蒼を瞬かせ、声を上げる。

「お互い災難ですね、クロロさん。」

その髪色と金目は見間違う筈がない。
色々と世話になっている人物の一人と会うとは、と
苦笑気味に言葉を投げかけつつ相手の近くで立ち止まる。
己は最上階から来たので、彼を見下げる形となる。

いつもは己が見上げる側。ちょっと新鮮な気分。

クロロ >  
カツン。何かの足音が上からする。
誰かの気配、如何にも見知った気配だ。
雨音で鈍った感覚でもわかる位の気兼ねない人気。

「お前にさン付けされッと絶妙にキモいな……」

濡れた泥宜しく実に気だるげな声音で吐き捨てた。
何時になく気落ちも、苛立ちも覚えているのは間違いなく雨のせい。
何時もとは違う見上げる形。金色の双眸が見上げる少女を足元から見上げる姿勢。
ものがものなら見えるかもしれない位の位置だが、今は気分も雨模様。
何時もと違って、そんな事を気にしないほどに"鈍い"。

「何が災難だよ。しッかり防雨対策してンじゃねェか。
 ……まァ、帰り道がダリィッてのはわからなくはねェ」

時計塔を、島に打ち付けられる雨脚は未だ収まる気配は無い。
寧ろ、なんだか強くなっている気さえする。
外を歩く人間は、今頃濡れ鼠だ。
気だるそうに右手をひらひら、右へ左へ、そして溜息を一つ。

「雨宿りにしちゃァ、随分な所から入ッたな。
 なンとかとなンとかは高い所が好きッて奴か?」

伝わるようで伝わらない、その"何とか"はコイツだ。

セレネ > 「気持ち悪いもなにも、私は基本他者には敬称をつけますが。」

この口調で相手を呼び捨てにする訳にもいくまい。
キモいなんて今まで言われた事がなかったので、露骨に傷ついた表情。
とはいえ相手は今までとは違い大分参っている様子だし、大目に見てやろう。

「私は月が見えない事が災難なので。
雨については…まぁ貴方程ではないです。」

炎、という相手からすればこの時期はまさに地獄であろう。
降る雨は殊更強さを増しているようにも聞こえる。
厄日な事は間違いないかもしれない。

「私はお馬鹿さんでもありませんし煙にもなりませんよ。
地上はあまりに視えるものが多いので、高い所に来ただけです。」

湿った季節は特に増える。
だから、今の所制御が出来ない”視える”目を休ませたかったのだと語る。