2021/11/19 のログ
ご案内:「大時計塔」に黛 薫さんが現れました。
黛 薫 >  
大時計塔、天辺の展望台。
景色を楽しむでもなく座り込む不良学生が1名。

落第街の戦火から逃げ延びて2週間近くが経った。
これほど長く落第街に戻らないまま活動するのは
在学時以来になるだろうか。

いっそこのまま落第街との縁が切れたら良いのに。
表の街で普通の学生みたいに生きられたら良いのに。

(それが出来たら、苦労してねーんだわ)

鉄柵にもたれかかり、震える手で煙草に火を付ける。
人のいる場所では煙草なんて吸えないし、そもそも
落第街の外では買うことも出来ない。今開けた箱が
手持ちの最後の煙草だ。

黛 薫 >  
実際のところ酒も煙草も美味しいと感じた経験は
ないし、絶ってみても別に欲しくはならなかった。
むしろこのまま辞めれば健全な学生に戻る一歩に
なるのではと期待が持てたくらい。

それなのに、結局こうしてまた手を出している。

きっかけは些細なことだった。異能、及び体質の
制限のために通院して病院のロビーで女子生徒が
落とした保険証を拾い上げた。たったそれだけ。

ありがとうと呟いた女子生徒の視線は傷だらけの
自分の手に向いていた。汚いモノを見るような、
気持ち悪いのを我慢するような視線が手に刺さり、
拾ったばかりの保険証を取り落としてしまった。
拾い直すより早く女子生徒は自分で保険証を取り、
頭を下げて逃げるように去っていった。

怪我人など珍しくない病院でもそう見られるなら、
自分は街ですれ違う人々にどれだけ不快な想いを
させているのだろう。そう思うと急に怖くなった。

酒や煙草で気分が満たされた記憶はない。

しかし『嫌なことを忘れられる』と教えられて
手を出したから、きっと効果はあるはずだと。
そう信じて常習的に口にし続けていた。

結果、嫌なことがあると酒や煙草に逃げる習慣が
ついてしまっていた。何も満たされやしないのに
染み付いた習慣は抜けてくれなかった。

黛 薫 >  
(習慣じゃなくて、依存っつーのかな。こーゆーの)

空に昇っていく煙を見ながら沈んだ気分で考える。
煙が夜空に溶けて見えなくなる前に視界が滲んで、
泣き出してしまったのだと自覚する。

ずっと涙の匂いが交じっている、そう評されたのは
つい先日のこと。涙を噛み殺すのには慣れていた
つもりだったのに、最近はどんどん堪えられなく
なりつつある。

「ぅ、っく、げほ、っ……けほ、こほ」

嗚咽で喉を詰まらせながら煙草に口をつけると
煙が変なところに入って咳が止まらなくなった。

残り少ないから火を消してしまうのも勿体なくて、
まともに吸えもしない煙草が燃え尽きていくのを
無意味に見つめている。

ご案内:「大時計塔」に霧島 孝介さんが現れました。
霧島 孝介 > カツカツと時計塔の階段を登っていく男が1人。
鼻歌を歌いながら、手すりに手を掛け、1段飛ばしで上っていく。

今日の分の勉強とトレーニングは終了し
気分転換のために時計塔へとやってきた彼。
時々、考え事をするために時計塔の展望台へとやってくるのだった。

少し錆びついた扉をギィィという音を鳴らしながら開けると

「あっ…」

兎のような耳付きのパーカーとその中から覗く
青いインナーカラーが特徴的な少女が先客としてそこに居た。
顔つきはよく見えないが、体格からしたら自分より年下だろうか?

しかし、そんな女性がタバコを吸って咽ている様子を見れば
(不良だっ…!)という思考に陥って、顔を青くする

「失礼しました~…」

カツアゲはごめんだ。
こんな少女でもどんなパワーを持ってるかわからない
空けた扉をゆっくりと閉めようとして

黛 薫 >  
一応名目上は立ち入り禁止の展望台。
破ったところでお咎めはなく、立ち入り制限の
措置すら取られていないが、違反学生にとって
大切なのは『禁止されている』事実そのもの。

つまり喫煙をはじめとする違反を目撃されても
『相手も規則を破っていた』と主張出来るのだ。
いや別にそれで罪が軽くなりはしないのだが。

それはそれとして、自分が違反をしているのは
事実で。それを見られたのも事実で。見た相手は
何事も無かったかのように立ち去ろうとしていて。

「いぁ待てや」

よろめきつつもギリギリ素早いと言えなくもない
身のこなしで距離を詰め、ドアに足を挟み込む。
逃がすまいという意思表示である。

霧島 孝介 > 立ち入り禁止の展望台にやってきたのは自分も同じで
彼女の事を報告する思考は持ち合わせていないこのヘタレ。
なんなら違反学生であるかどうかなんて頭の中にあるわけがない。

「ひゃ、ひゃい!!」

ガンッ!っという音と共に気付いたら彼女の足がそこに!
彼女の発言に情けない声で返答すればドアを開いて展望台に入る

(あぁ、これからきっと拷問されるんだ…
 爪を剥がされて、足を折られて、腎臓を売られちゃうんだ…)

不良に対してヤバイ偏見を持っているこの男。
大体は過激な不良漫画の受け売りだが、最後のは闇社会の漫画知識も入っている
いや、前二つもヤバいんだけども。

ビクビクしながら彼女に何を言われるのか、顔色を伺いながら待って

黛 薫 >  
常世島では見た目と危険度が必ずしも一致するとは
限らない。そういう意味では男子生徒の警戒/怯えは
正しいのだが……頭ひとつ分より小さな女子相手に
震えている絵面は情けなさが目立つ。

煙草を咥えた女子生徒は長い前髪と目深に被った
フードで顔の大半が隠れており、表情は読めない。
観察する余裕があれば頰に残る涙の跡が見えたかも
しれないが……。

数秒の沈黙。貴方の表情、視線を探るように
じぃっと顔を見上げていた少女はそっぽを向くと
煙混じりのため息を吐き出した。

「不良にビビるくらぃなら立ち入り禁止んトコに
 わざわざ立ち入ってんじゃねーーですよ、もぅ。
 マジで口封じとかするヤツがいたらどーする気
 だったんだっての、はぁ。ま、んなガチなのが
 ココまで登ってくるとも思わねーですが」

貴方の手に……ではなく、自分の手の甲に煙草の
火を押し付けて消す。じり、と肉の焼け焦げる
音がした。

黛薫的には『小心者なら危ないコトはするな』
『此処がお気に入りだったら来にくくするのも
申し訳ないからフォローだけは入れておこう』
『善良な学生っぽいから煙は別方向に吐いて、
煙草の火も消しておこう』と気を使ったつもり。
しかし何せ物言いが捻くれているからどこまで
伝わるやら。

霧島 孝介 > こう見えてもこの青年は鋭い。
数秒の沈黙。彼女が表情や視線を観察していたのと同じように
こちらも引きつった顔で彼女の事を観察する。
そうすれば、辛うじて涙の跡を見れば眉を顰めて

「あ、は…はい…すいません…」

彼女の言ってることは最もだ。
今度はドローンか何かで偵察してから来よう、と心に決める。
同時に、彼女の警告と気遣いの意図を少しは読み取れたようで
優しい人なんだなと緊張と肩の力が抜けていく。

「あの、それ、火傷してますよ?」

そういうと、ポケットに入れてあった絆創膏を彼女に差し出す。
わざと腕で消したのにそんなことをいう辺り、鋭いは鋭いが
変な所で抜けているのがこの青年であった。

黛 薫 >  
素直に謝る貴方を前に、またわざとらしく溜息。
考えが浅いと詰るのは容易いが『視線』からは
此方の様子を敏感に察知する聡い面が垣間見えた。
同じ過ちを繰り返しはしないだろう。

「あ?いぁ、別に慣れ……んん……」

絆創膏を差し出されれば、一旦断ろうとしつつも
余計な心配をかけまいと思い直して受け取る。
捻くれた口調、不機嫌そうな声音に反して行動は
比較的素直だ。

「つかあーたも何だってこんなトコに……いぁ、
 先客のあーしが言ぅのもヘンか。見晴らしは
 イィし、人もそんなに来ねーし?気分転換に
 来たっておかしかなぃもんな」

煙草の吸い殻はポイ捨てせずに携帯灰皿に収め、
貰った絆創膏はその場で貼る。手首に巻かれた
包帯、手の半分近い面積を覆う絆創膏とガーゼ。
『慣れている』というのは煙草を消すに止まらず
痛み全般に対する発言だったのだろうか。

霧島 孝介 > ため息を吐かれたのに対し、『え、間違ったこと言った?』と困惑気味の男。
謝ってしまうのは癖みたいなもので、特に初対面には色濃く出てくる。
一々訂正しても彼女の方が疲れるだけだろう。

「…まぁ、絆創膏貼るだけじゃアレなんで帰ったらしっかり
 冷やして火傷用の絆創膏貼ってくださいね?」

『慣れている』。
彼女の口からそう出掛かった。
よく見れば、手首に包帯や手にも絆創膏とガーゼだらけ。
痛みに対してか。と納得しつつも、追及はせずに鈍感なフリをして。

「あ、はは…すいません。
 言う通り、気分転換に来ちゃいました…」

彼女の言葉には引きつった笑顔で返す。
遠回しに立ち入り禁止場所に入ったことを責められてる気がして
ちょっと居心地が悪くなるが、彼女の続く言葉にそんな意図はないと知り
安堵して、息を吐く

「あ、お、俺、霧島孝介って言います。2年生です。
 失礼ですが…お名前は?」

黛 薫 >  
善良だが気弱、聡いがコミュニケーション能力に
乏しい。会話の傍らで『視線』から探りを入れて
得られたパーソナリティを頭の中で整理する。

(気弱で口下手なのは、ヒトのコト言ぇねーか)

大きめサイズのパーカー、余り気味な袖を引き下げ
傷だらけの手を隠す。見られた後では意味はないが
せめて不快な想いはさせまいと。

「いちいち謝んなくてけっこーですんで。
 つーかあーた別に悪ぃコトしてな……あーいぁ、
 いちお立ち入り禁止って建前はあんのか……。

 ま、イィだろ。鍵かかってるワケでもねーし
 最悪見つかっても知らなかったで通んだろ。
 あーしは口添え出来ませんがね?不良学生が
 口挟んだら却って怪しぃかんな」

興味無さげな声音は無駄に罪悪感を与えないため、
道化た口調は雰囲気を暗くしないため。気分転換の
時間を邪魔してしまったのだから、埋め合わせも
兼ねて軽口を叩いてみせる。

「……黛薫(マユズミ カオル)。ちゃんと通ってりゃ
 あーたと同じ2年生だったか?いぁ、2年生から
 進級出来てねーんだから、もしかしたらあーしが
 センパイになれてたかも?なんつってな」

霧島 孝介 > 彼女のパーソナリティ診断は概ね正解である。
傷に関しては不快な想いはしておらず、むしろコンプレックスがあるのかと
思って、こちらも視線を彼女の顔やフードに集中させる。

「あ、はい…すいません…あっ、すいません!
 …ま、まぁ、此処って滅多に人来ませんですし、大丈夫ですよ、はい…」

謝罪をしなくていいと言われたら、こうなる。
これに関してもはや呪いだ。
というか不良なのにめちゃくちゃ気遣ってくれる。

この島の不良はみんな優しいのか?
かくいう自分の大切な人も不良だが、初対面時から優しかった。
オタクくんに優しい不良しか居ない島…いいな。

などと気持ち悪いことを考えていれば、飛んできた名前にハッとして

「……!黛、薫!
 黛 薫って言いましたか!?貴女が!?」

聞いたことのある名前に産毛が逆立ち、少し詰め寄ってそう問いかける。
落第街で知り合い、助けてくれたエルフさんが教えてくれた名前。
救ってほしい人、その人が目の前に…

「生きてて良かった…!」

つい、目頭が熱くなって、涙目になるが
すぐさま指で拭って誤魔化すだろうか。

黛 薫 >  
「あ、ぉ、ぇ、なんっ……?」

相手が自分の名前を知っていた点、何故か生存を
喜ばれている点。理解の及ばない状況に困惑する。
『視線』から嘘も打算もないと読めてしまうから
余計に理由が掴めなくて。

「何、ナニ?待って、あーしのコト知ってんの?
 大方ロクでもねー噂しか……って、雰囲気でも
 ねーのんな?いぁマジで何でだよ」

詰め寄られ、思わず一歩だけ足を退いたものの
それはそれで失礼な気がしてすぐに立ち止まる。
風に吹かれた前髪が乱れ、不安定に揺れる蒼い
瞳が貴方を見つめ返した。

霧島 孝介 > 「あ、や…すいません」

彼女に詰めよって、驚かせてしまったことに気付き
後ろに下がって落ち着く。
ずれた眼鏡を整えれば、困惑気味の彼女に事の経緯を説明する。

落第街で出会った刺青だらけの少女に助けてもらったこと。
その少女から風紀委員会との戦争の話と、救ってほしい人の名前を聞いたこと。
内、一人の名前が『黛 薫』だったこと。

それらを説明する。
自分が風紀委員と戦闘をした部分を伏せて。

「貴女が生きていてよかった。今の今まで助けに行けなくて、すいませんでした」

説明が終われば、改めて彼女にそう言って礼をする。
きっと、今まで辛い思いをしてきたのだろう。
早く出会えていれば…と少し後悔して

「あぁ、なんかしんみりしちゃいましたね!すいません!
 …その、今困ってることとかあります?」

落第街で育ってきたから自分の助けは必要ないだろうし
今更、となってしまうが、そのように申し出てみて。

黛 薫 >  
「……なるほどな?んじゃあーしの話をしたのは
 フィールか。しっかし『助けてもらった』と
 来たか。ホントに丸くなったもんだよな」

バツの悪そうな表情でがしがしと頭をかく。
ふわり、ぶら下げたアロマストラップから
無機質さの中に花弁が混じった匂いが漂った。

それから、じとっとした目付きで貴方を見上げて。

「別に助けに来なかったコトを詰りゃしねーです。
 つーかあーた、本来なら落第街に関わるよーな
 立場じゃねーでしょーよ、フツーの学生だろ。
 あんな危なぃトコは踏み込まねー方が正解で、
 しなかったからって責めるのはお門違ぃなワケ。
 つか実際その後落第街は戦場になりましたし?
 その状態で一学生に何が出来たって話っすよ。
 あーしのために無茶して死ななかったってのが
 じゅーぶん報酬になってますっての。

 で、も。それはそれとしてツッコミてートコ
 あるんすよねぇ今の話には。そもフィールに
 会ったのは落第街の中だって言ってたよな?
 あーーたの性格的に興味本位とかじゃなくて
 うっかり迷い込んだとか?どーーせそーゆー
 オチだと思ぃますけぉ?大時計塔とは違って
 ソコへの立ち入りはフォロー出来ねーんだわ。
 落ちたら危ねーとかそーゆーレベルの危険じゃ
 ねーんですよ。てか最近柔らかくなってたから
 良かったよーなもんで、あーたが会ったヤツも
 その気になりゃ危険人物になれんだからな」

想定外の事態に思考が詰まって、整理のために
言葉を切ったお陰で言いたいことも渋滞して。
口を開けばぎゃんぎゃんと吠える子犬のように
悪態じみた発言が飛び出てくる。まあ内容だけ
聞けば大半は貴方の身を案じるモノなのだが。

「……はぁ。そりゃ困ってるコトなら山のよーに
 ありますけぉ。イィ子の学生さんに頼めるよな
 お願ぃは、別に……ねーです、多分な。

 酒だの煙草だの買ってこぃとか?年上っぽぃ
 オトコをパシらせて楽しむ趣味もねーですし」

霧島 孝介 > 「…あの人の名前はフィールって言うんですね」

その言葉を聞いて、彼女のバツの悪そうな表情とは対照的に
安堵と満足感の混じった顔になって。
それは『視線』にも影響しているだろうか。

ふわっと漂ったアロマストラップの香りと
じとっとした目つきで見上げられたのに少しびっくりして

「あ、あはは…いやぁ、お互い生きててラッキーでしたね
 心配してくれてありがとうございます」

マシンガンのように浴びせられる言葉に笑顔を引きつらせる。
でもその内容は痛い所はあるものの、大半は優しい、気にかけてくれる言葉で
敢えてこちらは短く、能天気にそのように返してみた。

「そうですか…住居とかは大丈夫ですか?金銭面…は、力になれないか
 こう、普通の傷の手当ぐらいなら俺でも出来るはずですけど…」

頼めるようなことは無い、と言われれば下唇に指を当てて
そのように一つ一つ、提案していく。
酒とタバコに関しては「未成年なんで」と一応やんわり断っておこう。

黛 薫 >  
「べっつに、心配して言ったワケじゃねーですし」

無理がある。

安堵と満足感の滲む『視線』に毒気を抜かれて
語気も多少軟化した。住居に金銭、傷の手当て。
前者2つが実現可能かはさておき、挙げられた
協力の例について思案する。

「住む場所は特に問題ねーです。不良学生なんで
 フツーなら困ってたのかもだけぉ、ちょぃとな。
 ワケアリで堅磐寮の部屋を貸してもらぇてんの。
 あ、今なら同じ部屋にフィールも住んでっから
 お礼言いたけりゃ言ぇるんじゃねーかな?

 カネは、まあ流石に一般学生にたかるのもな。
 貯蓄はあるし……立場的にちょぃ厳しぃけぉ、
 バイトでも見つけられりゃ何とかなるだろ。
 フィールも稼ぐ準備してるみたぃだから。

 傷に関しても、こんだけ作ってりゃ慣れるし。
 あーたが気にするこたねーの。あーしの所為で
 無謀なコトやった怪我人死人が出なかったのが
 十分な報酬ってさっき言ったろ」

今のところ協力が無くても問題ないと話すが、
さっき『困っていること』を聞かれて僅かに
言い淀んだあたり、悩みがなくはないはず。
自分から言い出さないあたり、頼めないか
頼む気がないかのどちらかだろうけれど。

「……ま、そゆワケですんで。あーたが気にする
 必要はねーんですよ。最悪あーしが困ってても
 そりゃ不良学生の自業自得ですし?」

自虐するように己を不良と称し、未成年なのに
喫煙をしていたのも事実だが……黛薫の言動は
端々に良心が滲んでいる。初対面の相手にすら
心を砕くその性格では違反行為に良心の呵責を
覚えないはずがないのに。

「気分転換の邪魔しちまって悪かったすね。
 んでも、立ち入り禁止って建前があんだから
 危なぃヒトがいてもおかしくねーってのも
 ウソじゃねーから。来るなとは言わねーけぉ
 ドア開ける前に確認くらぃはしとけよな」

話を打ち切ったのは『困っていること』を
掘り下げられないため……というのは深読みが
過ぎるだろうか?

ともあれ、黛薫はそう言ってこの場を去るだろう。
粗悪な煙草の残り香とそれに混じる香水の匂いを
残して──。

ご案内:「大時計塔」から黛 薫さんが去りました。
霧島 孝介 > 「そ、そうですか。はい」

これは心配して言っているな。
彼女の異能については知らないが、この青年の『視線』からは敵意も悪意も下心もないのは事実。
落第街だの不良学生だのというのも、色んな人と出会った経験から偏見もなくて
今は彼女の不器用な優しさに少しにこっと笑ってみる

「あっ、そうなんですか!?フィールさんも生きてたんですね!
 よかったぁ……ん、堅磐寮?」

彼女の言葉にパアっと顔色が明るくなり、今度行こうかと考える
しかし、堅磐寮と聞くと、自分の恋人も住んでいる寮で、助けたエルフの女性に
移り住んでもらおうとしている場所であって。

あれ?堅磐寮に知り合い多くね…?ってなってる。

その他二つの事についても、やんわり断られればしょぼんとした表情になる。
先ほどの発言から、悩みは沢山あるっぽいが、流石に初対面じゃ話しにくいかと
結論付けて、「わかりました」と言って引き下がる。

「いやいや、気にしますよ
 ともかく、俺でも解決できそうな問題あったら教えてくださいね!」

彼女が不良だとか、違犯行為をしているなど関係ない。
人を助けるのに論理的理由は必要ない。
随分とお人好しだと自分でも思っているが、これでいい。
『これがいい』。

「いや!むしろ話せていい気分転換になりましたよ!
 …それは仰る通りなので、次からは確認します」

そういって、彼女が去るのなら手を振って見送るだろう。
自分はしばらくここに残って、街の様子を眺める。
彼女のタバコと香水の匂いに、鼻をスンスンとさせるが

「いや、キモイな俺」

そんな独り言をつぶやいて、意識しないようにしたという―――

ご案内:「大時計塔」から霧島 孝介さんが去りました。