2022/02/08 のログ
ご案内:「大時計塔」に神樹椎苗さんが現れました。
神樹椎苗 >  
 表向き立ち入り禁止とされている、学園でも存在感のある大きな時計塔。
 その時計塔の中に入り、当たり前のように階段を上り、整備用の扉から外に出れば。
 広がるのはやけに広い視界。
 学園を、島の遠方すら一望できるこの場所は、以前から椎苗のお気に入りの場所だった。

「――ここに来るのも、なんだか久しぶりな気がしますね」

 ここ一年と少し。
 完全に一人でいる事がすっかり少なくなったのもあり、あまりこの場所に来ることもなくなっていた。

「さて、と。
 さすがに冬となると随分冷えますね」

 暖かな帽子に耳当て、妹分からもらったマフラーをしっかり巻いて、携帯式の暖房効果の魔術を込めた鉱石を詰めた小袋を膝に抱えるようにして腰を下ろす。
 肩から風除けの加護を乗せたブランケットを羽織って、膝にもしっかり、同様のひざ掛けを掛けていた。
 

神樹椎苗 >  
 この日、特にこの場所に来たのに理由はない。
 ただ、久しぶりに気が向いて、本のページでも捲ろうかと思ったのだ。

「――それにしても。
 しばらく静かだと思ってましたが、新年早々、なかなか騒がしーですね」

 そう言えば、去年も違反部活が騒ぎを起こしていたが。
 規模で言えば今回の方が厄介そうに思える。

「生物兵器の流出でバイオハザードですか。
 言われてみれば、これまで似たような事故が起きなかったのが不思議なもんです」

 これだけ、先進的な研究や実験が至る所で行われているのだ。
 それなのにその辺りのトラブルは、発生件数が少ない。
 もちろん、小規模なもの、始末書程度で済むモノはそれなりにあるが。
 

神樹椎苗 >  
「それと怪盗ダスクスレイ――佐藤四季人、と。
 しいとしては、こっちのほうがでけえ話ですが」

 なにせ、ダスクスレイとの決戦で使われたモノ――それは椎苗にとって無視できないモノなのだ。

「近いうちに話を聞かねーとですね。
 あとは――あの『陰気巫女』ですか」

 祭祀局所属の学園三年、藤白真夜。
 解離性同一症の、非常に不死に近い少女だ。

「礼もありますが――場合によっては『送らねーと』いけねえですか」

 生命の枠組みから外れた存在を、正しき循環に戻す。
 それもまた、椎苗が自分に課した使命の一つである。
 とはいえ、まずは捧げられた祈りに対して、礼を返さねばならないが。

「『単細胞』と『陰気巫女』――丁度都合よく揃ってますが――。
 まあ、なんとかは馬に蹴られちまいますからね。
 それに、今の人格には用がねーですし――」

 片手で器用に本を取り出し、膝の上に開く。
 風除けの加護は、勝手に頁を捲ろうとする、迷惑な風も防いでくれていた。
 

ご案内:「大時計塔」に清水千里さんが現れました。
清水千里 >  
 階段を上る金属音が聞こえた。
 右手には箸を無造作に突っ込んだインスタントのカップ麺、左手には白銀に輝くスキットルを持って、
 20代ぐらいの女性が扉を開けて現れる。
 赤焼け空、地上数十メートルに吹いた強い風が女性の頬を撫でてその艶やかに映えた黒髪を揺らし、
 カップ麺から立ち上る白い湯気をどこかに吹き飛ばした。

「おや、先客がいるなんて」

 剛柔入り混じった女性の声が少女の耳に聞こえるだろう。
 女性は気にせず、少女の隣に座った。

神樹椎苗 >  
 さて――ようやく本を読もうかと思っていた椎苗だったが。
 やってきたのは妙な装備の女。
 わざわざここで食べるために持ってきたのだろうか。

「どうも、先客ですよ。
 邪魔ならしいは帰りますから、ゆっくり食べていけばいいです」

 遠慮も躊躇もなく隣に座ってくる女に、怪訝そうな目を向けて、ずりずりと距離を離した。
 

清水千里 >  
「ふふ、ジャマではないがね、まあ好きにするといいさ」

 カップ麺をそばに置き、女性はスキットルに口をつける。
 中に入っているのは魔術的な製法で繊細に生成された黄金色の蜂蜜酒だ。
 対してカップ麺(うどん)には出汁の味をぶち壊すほどの大胆な量の七味が入れられていて、
 清水はそれを箸で思い切り啜った。

「熱い、寒い、辛い、美味い!」

 と、満足げに食べている。