2022/04/29 のログ
矢那瀬陽介 > 高所特有の強い風が、寒さで肌を粟立たせる。春となっても夜はまだ震える大気の中で夜遊びしたのは単なる気まぐれなるもの。
警備員どころか人の気配すらない時計塔に訪れた少年は高所からの夜景を眺めんと螺旋階段を軽快な足音響かせて登ってきた。
黒の眸は最上階の扉を開くなり風に弄ばれて眇めるもののすぐに欄干の側へと足を運んで身を乗り出す。
悪戯な風が髪を掠めてその流れを描く様に乱れる黒髪を手で直しながら暫く見物していたところ。
耳に届く声に人がいると気づいてそちらへと脚を運んでいった。

「やぁ、こんばんは。」

ハインケル >  
「うん?」

声の聞こえた方へと視線を向けて

「こんばんはー♪」

口から棒つきの飴を一度出して、挨拶すると共に屈託のない笑みを浮かべる

「こんな時間に、こんなところで、お散歩?」

少し間延びした口調
相手の顔を覗き込むように小さく腰を曲げて問いかける様は見た目よりもどこか幼さを感じさせる

矢那瀬陽介 > 見目、体格から年相応より幼気と判断した少年は気負いなく近づき。

「そう。お散歩。でもまだちょっと寒いね。風が冷たいや」

吹き抜ける風にわざとらしく肩を震わせて
暖を取るよう重ねた腕に顎を乗せてその体は手すりに身を預けて

「そういう君も散歩?夜景を見ながら舐める飴は美味しいかな?」

黒瞳だけつ、っと横に流して相手を見た。

ハインケル >  
「そうだね~、お日様が沈むとまだちょっと肌寒いかな?」

視線をそのままに身体の向きを変えて、手摺にその背を預ける
横を向く形となり、吹きつける風に帽子を片手で抑えながら

「そう、散歩~。ここからならお月様がよく見えるかなーって思ったけど」

はむ、と飴を再び咥え

「雲に隠れちゃってあんまり見えなかった。
 だからなんとなーく、街を眺めてたんだよー」

特に面白いものが見えるわけでもないけれど、と付け加えて

「君は此処の生徒?かな?だよね、あんまり生徒や先生じゃない人、ここにはこないだろうし」

矢那瀬陽介 > 「月見かぁ……」

顎を少しだけ持ち上げて月無き夜空を見つめ。

「そうだね。ここなら空に近いから良くお月様が見えそうだ。
 ……もう少ししたら見えるんじゃない?風も強いから。

 面白いものはなくても街は楽しいよ。
 ほら、家やビルの明かりがここからじゃネオンのように見える」

視線を上に下に。彷徨わせながら語り。
言葉を返すときに時々彼女の目に視線を絡める。

「そうだよ。俺も学園の生徒さ。でもここに来るのは禁止されてたから今日が初めて。
 君は違うの?」

ハインケル >  
「あはは、空が近い?
 上に何もないから~、とかじゃないんだ。キミ、ロマンチスト?」

少年の言い回しを聞いて、また少女は笑う
馬鹿にしたような様子は感じさせない愉しげな顔

「面白いものはなくても、かあ。
 色とりどり、言われてみれば~、だよねぇ。
 意識の仕方とか、見方が大事ってコトかな?」

難しいね~、と再び視線を街へと向けて、手摺に正面から凭れ掛かる

「へえ、禁止って知らずに来る子もいるのに、キミは知ってて来たんだ?悪い子~♪
 ん~、まぁ似たようなものかな?えへへ」

君は違うの、と聞かれて何か誤魔化すように笑って見せる
悪い子などといいつつ、禁止を知りながらも入り込んでいるのは同じということだろう

矢那瀬陽介 > 揶揄う言葉に茶目っけたっぷりに片目を閉じて。

「ロマンチストかな?
 なんとなく言葉に出ただけさ。
 体感でも空に近いと感じたら気分が良いから」

そして黒瞳はじっと相手を見定めた。

「うん。面白いものはなくても。
 意識と見方とかそんな大層なことじゃないさ。
 見慣れたものでも楽しく見えたらいいなって思っただけ」

やがて凭れ掛かる体制を翻し、背筋を欄干に寄りかからせてから薄く頭を下げた。

「悪い子だよ。だから告げ口は勘弁さ。
 ずっと学園と通学路と部活、ずっと同じ場所にいたら退屈で死にそうになるからね。
 新しい場所がほしいなって思っただけ」

意地悪な強い風が黒髪を乱すのに無造作に掌で前髪を掻き揚げ。

「もしかして学園の人じゃないのかな?なんとなく、そういう雰囲気が君からしない。」

ハインケル >  
「フツーの男子はあんまり言わないかな~」

クスクス、と小さく笑みを零す
当たり前や見慣れたものを楽しく感じ取ろう、なんて
うーん、普通の子?はなかなか思わない、きっと

「ふーん…退屈なんだね。
 学園の中だけでも、そうそう退屈しない気がするのに、此処。
 わざわざ怒られるようなところに来る程、飽きちゃったんだ」

なるほどねー、と相変わらずのんびりとした口調
告げ口なんて当然するつもりはないし、悪い子は自分も同じこと

「うん?あたしは夜間の授業に出てるってだけ~。
 おかしいなぁ、ちゃんとガクセーだよ?雰囲気しなーい?」

おっとと、と強い風に服の裾をぎゅっと抑えつつ

矢那瀬陽介 > 「そうかな……」
ふつーの男子とは違う言葉に顎に指先押して暫く黙り。

「おっ。」
――吹き抜ける風にワンピースの裾を必死で抑えるのを見て。

「パンツ見えた。風のグッジョブ。高いところも悪くないね」
わざとらしく自分なりに男子っぽく言ってみたつもり。

「そうなんだ。学生なんだ。
 なんとなくそういう規律とか無関係っぽく見えたんだよね
 あっ」

凭れかかった体を持ち上げて。

「自己紹介まだだったね。俺は矢那瀬陽介。君は?」
手を差し出し小首を傾げた。

ハインケル >  
「うそつきー、見えてないでしょ???」

パンツ見えた、との言葉に恥ずかしがる様子は余りなく、笑みを浮かべたまま
まったくもう、と視線を向け直して

「そうそう学生~、ちゃんとルールは守ってるよー?
 不思議だね、なんでそう見えたのかな~」

クスクスと、姿勢は崩さず
とぼけた様子も、元々どこかふわふわとした少女の受け答えからはは伝わりにくい

「あたしはハインケル!いちおー魔術が専攻なんだー。
 ヨースケ…陽介ね、覚えた!」

差し出される手に自分も片手を袖をぎゅっと引っ張って、差し出そう

矢那瀬陽介 > 「あはは、バレたか」

悪手求める反対の手で後頭部撫でながら照れくさく指を絡めてぎゅっと握りしめた。

「ハインケル。これからもよろしくね。
 学生に見えない人と普通の男子に見えないやつ、仲良くできそう。
 魔法が得意なら、記念に何か俺に見せ……」

話す途中で欠伸溢れてしまい。慌てて手で抑えた。

「ちょっと出歩きすぎて疲れたみたい。そろそろ帰るけれどハインケルはどうする?」

ハインケル >  
「そりゃあバレるよ~あたしはいてないもん」

にこにこ笑いながらシェイクハンド、ついでに爆弾発言
これからよろしくの挨拶はここ常世でもちゃんと通じる

「えー、学生に見えないことないと思うんだけどなー…やっぱり制服着ないとダメなのかな」

手を離すとウーンと考える
夜間だけだし特にということもないのだが
なにか学生に見えないということが気がかりであるように

それから話途中の欠伸にクスっと笑いを零して

「もう夜だしね。あたしもそろそろ帰ろうっかな~」

そう言うと少女は手摺から乗り出すようにして、宙へと踊り出る
まるでふわりと風に乗るように、うっすらと浮かんだ魔法陣の上に立っていた
ポピュラーな魔術、飛翔というよりも浮遊、であるが

「それじゃあね~陽介。今度あったらご飯でも食べに行こーね♡」

終始ゆるっとした、ふわふわした口調のまま、その印象通りにふわふわと時計塔からダイレクトに外へと降りてゆく少女
ぱたぱたと手を振るその姿は次第に夜の街へと消えてゆくのだった───

矢那瀬陽介 > 「あはは……は!? …いてない?」

朗らかな笑い声に声が跳ね上がり目元が真っ赤になる。
手を離した後もぽかん、と口を開けて。

「……ん、学生に見えないってことは見た目じゃなくて、雰囲気ってことさ。
 別にいいじゃん。そんなこと……それより、さっきの、ほんと?」

笑み絶えぬ相手に目元色濃くしながらまじまじと見つめていたが。

「むぅ、 …そうだね。俺も眠いのかなんだか変になっちゃってるし。
 おお!」

戸惑いも好奇心も、すべからく虚空に描く紋様に浮遊する姿に驚愕に変わる。

「すごい。空飛んでるよ。それなら何にも縛られずに何処にもいけるね。
 バイバイ、ハインケル。今度美味い店紹介するよ:

軽やかに手を振るのはその姿が宵闇に消えて行くまで……
微笑みを浮かべた少年はやがて噛み殺せぬ欠伸に目元を擦りながら時計塔の螺旋階段へと消えていくのだった。

ご案内:「大時計塔」から矢那瀬陽介さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」からハインケルさんが去りました。