2020/06/13 のログ
ご案内:「常世博物館」に劉 月玲(リウ・ユェリン)さんが現れました。
■劉 月玲(リウ・ユェリン) > 博物館が開館してから数分。
ぴょこっと博物館を歩いている小動物。
桃色の髪を揺らしながらぴょこぴょこと歩いており。
しかし、その歩みは目的をもって、とある場所を目指していた。
「えーっとぉ……あ、ここ」
■劉 月玲(リウ・ユェリン) > 異世界の吸血鬼に関して。
様々なモノ、文献が置いてある。
きっと本人か、それを研究していた誰かが残したのだろう。
やけに専門的なことが書いている。
(……。
…………む、むずかしい)
11歳――いいわけではあるが――には、少し難しい言葉の羅列が多い。
■劉 月玲(リウ・ユェリン) > 今日、ここにきたのはこれを見るため。
自分が吸血鬼ではなく吸血種とされている所以を見に来た。
まぁ、異世界のものだが。
■劉 月玲(リウ・ユェリン) > そもそもなぜ吸血種になってしまったのか。
11歳になる前――つまりは10歳のころまでは普通の人間だった。
それが突然血を吸いたくなり、調べれば異能と判断され、今に至る。
治したいとは思わなくもないが、それよりも理由が知りたい。
なぜそうなってしまったのか。
(おじいちゃんとかが吸血鬼っていうのは聞いてないけどぉ……)
そこにある文献やモノをじっと見つつそう考え。
■劉 月玲(リウ・ユェリン) > 血を吸い、不老不死。
羽の生えた人。
どう発生したか、という記録はない。
ただ、人間と同じようにいつからかいて、人を害することもあれば助けることもある。
人間と変わらないが、人間を餌とする種族。
(うっ……)
背中が途端に熱くなる。
むろん、そこに何かあるわけではない。
手を回して背中を触っても何もない。
が、何かがあるような気がして。
■劉 月玲(リウ・ユェリン) > 錯覚とわかっていても、背中が熱い。
何かおかしい感覚に、少し恐怖を覚え。
早々にその場を去ることにした。
ご案内:「常世博物館」から劉 月玲(リウ・ユェリン)さんが去りました。
ご案内:「常世博物館」にディカル・Grdさんが現れました。
■ディカル・Grd > 夕暮れの閉館間際に時間にディカル・グラッドピードはこの博物館に辿り着いた。
別に今日訪れる予定はなかったが、たまたま目についた巨大建造物――この大博物館に引き寄せられるようにやって来た。
ここにあるのは、《大変容》による地球だけの変化に留まらない。《異世界》からのその物品、記録が残されている。
恐らくそれも、全てではないのだろうが。
しかして、今の現代をその当時に現れた「異物の複製品(レプリカ)」を解説付きで見て知ることが出来るのは貴重だ。
受付で収蔵物の一覧、この場所の解説を目にした彼は感動を覚えた。
「歴史の記録、先の見えない《大変容》に対したそれぞれの歩み。素晴らしきかな、これは喝采ものだ。喝采を送るしかない」
そう独り言ちながら、閉館時間まで少し歩くかと考える。
■ディカル・Grd > 【東館】そこにあるのは《異能》《魔術》――《大変容》後の現代に関するテーマだ。
《異世界》の展示がある【西館】は、未知への好奇心が擽られるものであるが、こちらは学園の授業でも習っている事の教科書だけではなく歴史的な「実物」を含めた解説になる。
この「地球」で生まれ学習する機会を得たのなら触れておくべき内容かと考えてこちらを選択した。
「Miracle(秘匿されていた奇跡)は、陽の前再び現れたか……」
考えさせられる内容だ。
「Reborn(復活)、Re birth(再誕)……ここでは『復活』と言われているのか」
お陰で自分も上手く構築できる時は魔術がちょっとだけ使えるようになったりした。
■ディカル・Grd > 記録を見ていて一つの疑問が浮かぶ。
自分が思いつくのだから既に多くの碩学も至っている内容だとは思うが、その疑問を明確にすべく言葉にする
「……like(あれだ)、that like(あれのよう)……そう、これはアジアであった言葉の『卵が先か』ってやつだ。《魔術》や《異能》は《大変容》を経て世界に広まったが、その前はどうして《魔術》はともかく《異能》は一般的でなかったのか。今こそ異邦人でなくとも《異能》持ちはかなりの数がいる……」
ヒトとは環境に適用し変化する生物だとする話がある。
その理論で言えば《大変容》を経た人類は変化する必要がある環境に《大変容》で『なった』のだと考えられる。
――確かに、世界を襲ったその災害を思えば当然と言える。
しかして、世界をそのように変質させた『何か』は元々世界にあったものなのか。
それとも《異世界》からもたらされたものなのだろうか。
「Professor(教授)でもない我が身では、答えはないな」
難しいことは偉いヒトに任せよう、そうぼやいて顔を振って思考を一度リセットしようと思った。
この手の謎についてでは覚えてれば後日、書物でも読み漁ってみよう、と。
■ディカル・Grd > 難しい事は止めにして、ここからどうするかを考えたが館内を走らずに西館に行くには時間が不足している。
だからといって暇つぶしのように訪れたこの場で他に何か真剣に見ようという気はない。
となれば、思考は最近の事になる。
ちょっと先にある学園の考査試験のことだったり、日本の神に謝罪する時はどうすればいいのかだったりだ。
何か宗教の敬虔なる信徒と言う訳ではないが、神性がこの世にある今は目に見えていなくとも隣人のように扱え、である。
あーだこーだ考えているうちに日は沈み、閉館の時間になる。
真剣に今の時代について考える彼の後ろ姿、アロハシャツは知的に見え―――ない。
アロハシャツが知的に見えることはない。
ご案内:「常世博物館」からディカル・Grdさんが去りました。
ご案内:「常世博物館」にシュルヴェステルさんが現れました。
■シュルヴェステル > 夕暮れの博物館。《異世界》にまつわる展示のある西館。
そこに、キャップの上からフードを被った青年が足を踏み入れた。
しんと静まり返ったそこは、閉館間際だからか職員の足音ばかりが聞こえる。
「……特集展示、異世界」
大きく置かれたパネルの前で、異邦人の青年がそれを読み上げる。
白い前髪の下から、上目遣いのようなかたちで赤い瞳が覗く。
異国趣味をいくらか誇大したようなポップやポスターを順に見ていく。
足音は立てない。綿の上を歩くように、静かに青年が歩みを進める。
はた、と足を止め。
学生向けの簡単な概要を見上げながら、青年はほんの僅かに唇を噛む。
――曰く。様々な世界から異邦人たちが訪れるが、「門」は非常に不安定であり、
異邦人たちを送り出した後はすぐに消えてしまうことが多い。
また、異邦人たちも突如「門」の解放に巻き込まれ、
この世界に転移してくる者が殆どであり、その多くは元の世界に帰る手段を持たなかった。
「持たない、で、現在進行系だな」
展示に話しかけながら、少しだけ笑った。
■シュルヴェステル > わざわざ準備されたであろう橙色に近いライティング。
夕暮れとよく似た色。分厚い硝子の向こうには、見覚えのある物品が並ぶ。
自分は硝子のこちら側。あれらは硝子の向こう側。
恐らく、同じような場所から来たはずなのにこんなにも隔たれている。
(確かに、この色はよく似ている)
異世界の光のいろ。
白色が中心の「この世界」とは異なる色合いをした光。
自分が寝込んだ二週間前に説明された、白い光とは異なった色。
屈折がどうだ、ああだ、と言われたが、一つも理解できなかった。
ただ、そういうことでしかないんだなという納得をする以外に術を持たなかった。
硝子越しに、古びた分厚い本が照らされている。
それを訳す言葉が横に添えられているが、それを見て眉根を寄せる。
(……そんなに小難しい話ではないと思うが)
見覚えのある《異世界語》が、やけに尊大な言葉で訳されている。
首を傾げながら、ゆっくりと隔たれた向こう側を眺めていく。
■シュルヴェステル > 《門》が開いたのは、なにも地球だけではない。
こちらでいう《異世界》から《地球》に飛ばされるだけの一方通行ではなく。
《地球》から《異世界》へと入れ替え子のように飛ばされる者もいた。
青年のいた《異世界》にも、《異邦人》は確かに存在していた。
それが、ここからやってきた者だと知ったのは、自分が飛ばされてからだった。
「……これを持ち込んだのは、同郷の誰ぞであるやもしらんのか」
“やけに尊大な”言葉遣いでそう呟いてから、寂しそうに視線はそれに注がれ。
子供騙しの四角い小箱を見てから、小さく鼻を鳴らして笑う。
「誰にでも見られる場所」に異世界由来のものを展示するなど。
シュルヴェステルの故郷では、あるはずもなかった。
見る権利など、一般市民に与えられるはずもなかった。
《異世界人》は、託宣の占い師であるとしてすぐに権力者に囲い込まれる。
それに比べて、自分の自由さたるや。こうして五体満足に出歩けている。
なんなら牛めしを二杯食べる自由すら与えられている。首輪すら、つけられない。
■シュルヴェステル > 《異世界》に、異能などない。
ぐるりと翻った《異世界人》――すなわち、地球人は。
シュルヴェステルが、生まれてはじめて識った『異能者』は。
託宣の占い師であった。あらゆる可能性を見通す少女であった。
「こちらが正しい」と、常に「正解らしき」道を常に示し続ける。
結果、シュルヴェステルのいた《国》は、その世界を手に入れた。
ありとあらゆる紛争戦火の中で、唯一損害を出さずに世界の覇者となった。
ここではこんなにありふれた異能一つで、文字通り《世界》がひっくり返った。
それを見て、青年はおそろしいと思っていた。
異能というものが。超常の力というものが、既存の枠組みを破壊した。
誰も血を流すことはなかった。文字通り預言者の到来によって、争いばかりだった世界は救われた。
異邦人の手によって。
■シュルヴェステル > 分厚い硝子の向こう側に、丁寧に保存されているそれは。
展示されている「子供騙しの小箱」は、それにまつわるアイテムだ。
この中に、いくつかの「可能性」を閉じ込めて、一つを選ぶための小道具。
この世界でいう《御神籤》と変わらない。
死した託宣の占い師の代わりに、架空の山羊を祀り上げるようになった。
ただそれだけのためのアイテムで、ここにやってきた《異邦人》は、
きっとその占い師のことを知っていたのだろうと思う。が、真実は知らなかった。
占い師の真実は、たった一つ。
あらゆる可能性など見通してなどいなかった。ただ。
「魅了」という、ありふれた異能を振り回して世界を救っただけだ。
異世界の進歩の可能性を、冗談半分で踏み潰した、ただの異能者の女だ。
シュルヴェステルは知っていた。
自分の妃となることになっていた女の正体を。
自分が初めて手を汚した女のことを、シュルヴェステルはよく覚えている。
橙色の日差しに目を細める姿も。
緑色の果実に舌鼓を打つ姿も、よく覚えている。
忘れたことなど、一度もない。
「……馬鹿馬鹿しい」
鼻を鳴らしてから、自嘲するように笑う。
足音を鳴らして、見覚えのあるアイテムの並んだ一角を辞す。
並んだ展示を見ていけば、どうやら自分のいた《世界》が遅れた場所であったことは一目瞭然。
静かに目を伏せてから、薄く笑った。