2022/02/07 のログ
■真詠 響歌 >
「わぁ……まるで愛の告白……」
プロポーズでもするみたいな、真剣の表情。
さっきまでの笑みは無くって、真摯に私の事を思ってくれているんだって思える。
自由は好き。歌ってそういう物だって思うし。
誰かを傷つけるのは嫌い。傷つけた分だけ私も痛いから。
だから安穏と守られて、管理されて。自由気ままに歌えもしない不自由を受け入れている。
「実はね、私が歌ったりしたら投与される鎮静剤って即効性って言っても
意識が無くなったりするまでちょっと時間あるんだ」
これは殆ど独り言。答えですらないしもしかしたら清水さんは投与されてる薬の種類まで知ってるかもしれない。
「1分でも30秒でも、全部をかなぐり捨てでも本当に私が声を出したいって願う時にはちょっとだけ猶予があるんだ」
どんな場所でも歌える。それはとっても魅力的。
風紀委員に見守られて管理されたりしない本当に自由な生活、それも結構魅力的。
それでも――
「サビ1つ歌える時間があるんだよ?」
理不尽と戦う、その選択肢を私が取れない理由っていくつかあるんだ。清水さん。
■真詠 響歌 > 「サビ1つ歌えたら、私はきっとそれだけで戦争だって起こせてしまうから」
■真詠 響歌 >
この特設展示で清水先輩が教えてくれたことだ。
私の歌が、衝動がどれだけ危険な物か。
それを私は自分の為には使えない。
「私は、歌いたい時に歌うよ? 清水さん」
首輪が付いていたって、不自由だって、関係ないんだ。
誰かの為に歌う。EssEnceの意味は本質。
私の『EE』は共感、誰かを思う物だから。
■清水千里 > 彼女の言葉を、清水は黙って聞いている。
彼女がなにを考えているのか、断定することはできないだろう、きっと彼女自身も。
「それで――真詠さんは生きてゆけるんですか?
心と頭にそんな地獄を抱いて、そんなことができるものですか?
あなたが内に秘めようとしているその苦しみはどうなるんです?」
「ああ、どうか赦してください!」と、清水は叫喚した。
「あなたの道は、貴女しか決められない。だからせめてこれだけは覚えておいてほしいんです。
私はあなたと共に歩む、あなたのそばにいるという言葉を、私は一生をかけて言ったんです。文字通り、一生です。
貴方に何があっても、私はあなたのそばで、あなたと共に苦しみますから……」
■真詠 響歌 >
「……んーっとね」
清水さんの叫喚に、えっへへと誤魔化すように笑って。
「色々言ったけど、どっちかというと私が生きていたいから、かな」
凄く単純な理由。ここで私が自由に歌うよ、だから一緒に戦って?
なんて言ったらその瞬間にお終いなんだ。
監視対象って、そういうモノなんだ。頭がパーンってなるのか、監視役さんがすっ飛んできて刺しに来るのか、
それとも何か鎮静剤よりもっとヤバイのが投与されるのかは知らないけれど。
「1分でも30秒でも煌めくだけの猶予があるだけ、幸せだと思ってるんだ」
清水さんの慟哭は、その思いはとっても嬉しい。
一生、っていったら多分本当に一生だ。清水さんは最後まで付き合ってくれると思う。
――けど。
「その手を取ると、私の一生ここで終わっちゃうんだ」
たははー、と困ったように言う。
他には聞こえないように、清水さんにだけ聞こえるような囁きで。
「でも、一緒に苦しんでくれるっていうの。そういってくれるのは嬉しいや」
――監視役さんからメッセージ。
『正解です』シンプルな命拾いのお知らせだった。
■清水千里 > 「……あなたを救うことは、できないかもしれない。
学園を卒業するまでにも。真詠さんが生きている最中にも、
あるいは人類文明が滅びるまでにも、おそらく達成できないかもしれない。だけどやります。
真詠さんを――他の誰も、理不尽のために殺されることも、殺させることも、私はしない。
貴方を救う方法を、私は見つける。貴方と共に苦しむものとして」
と、清水はいう。
「私は知識の探究者。だから知識によってそれに報います」
そうして、大きく溜息を吐いた。強い意志を自分に引き戻すかのように。
「――解説の途中になってしまいましたね。まだ展示はたくさんあるんです。
ぜひ、残りも見ていってください。」
■真詠 響歌 >
「清水さんの言う事はスケールおっきいや……」
人類文明が滅びる……のはヤダな。歌って文明あってこその物だし。
「いつか、清水さんにも聞こえると思う。
島の端にいたって、海の果てにいたって」
本当に必要な時のその一瞬の為に、今はただ大人しいモデルのままで。
お人形さんのままでいなくっちゃ。
「……そう! まだ1つしか見てないんだもん。
色々案内してよ清水さん。"これ"だけじゃないんでしょう?」
■清水千里 >
「ええ、もちろん。なにせ人類の歴史と同じぐらい音楽の歴史は深いんです。
たっぷり楽しんでもらいますよ、この展示はあなたのために考えたんですから!」
いつか、真詠さんの歌が聞こえる日が来るだろうか。来る、などと無責任なことは口が裂けても言えない。
だが論理も事実も納得のいく理屈もなかった先人らが、そうした先の見えぬ暗黒のただなかへはいっていくとき、
それこそそこにはごくごくかぼそい希望の糸と、いまにもゆらぎそうな信仰心しかなかったにちがいない。
しかし、その先人たちが暗黒をまえにしてわずかな希望をつなぐことができたのなら、私にもまたおなじことができるはずだ。
清水は展示を次々と案内するだろう。そのどれもが驚異的で、筆舌しがたい美があるのだ。
真詠の方を見て、清水は微笑むだろう。ずっと……
ご案内:「常世博物館」から清水千里さんが去りました。
ご案内:「常世博物館」から真詠 響歌さんが去りました。