2019/04/05 のログ
セシル > 「………参ったな、そんなことまで噂になっていたのか。
特別優れた者として見られたいわけではないつもりだが…泥臭いから、少し気恥ずかしいな」

日々の鍛錬を褒められ、出てきたのは気恥ずかしそうな笑いと…作った強さのない、柔らかなアルト。
もっとも、それはその時だけで

「まあ、戦力として数えられなくなればそれこそ剣士としての沽券に関わるからな。
感覚は可能な限り維持するように心がけているし…弱さを補うための手段も、少しずつ鍛えているつもりではあるよ」

と語った時には作ったいつもの声に戻っているのだが。

「………私は、鍛錬が趣味を兼ねている部分がなくもないが………
いや、その………随分と砂糖を派手に消費するのだな、と思ってな。…そこまでいくと、どんな味がするのか見当もつかん。

…それでも、凝視してしまうのは不躾だったな。すまん」

不思議そうに見返されて、少しぎこちなく釈明し…最後に詫びる。
それから、気を落ち着かせるようにゆったりとブラックのコーヒーを口にして…ゆっくりと息を吐いた。

神代理央 > 「…まあ、良くも悪くも我々の年齢では他者の行動を特に噂にしがちです。御不快に思われたくは無いのですが、僕も最初聞いたのは先輩の"王子様"としての噂でしたし。
……だからこそ、努力と鍛錬を怠らないという評価が噂になる事自体が先輩の人柄を現わしていると思いますし、そこは胸を張って良いものだと思いますよ?」

穏やかに微笑んで、柔らかな声色の彼女に言葉を返す。
今時珍しいくらい清廉な人だな、と脳内でメモ書きを一つ書き加えつつ。

「……ああ、すみません。世間でいうところの甘党と言うには、些か過剰に糖分を接種している様でして。
自分では当然過ぎて気にしていませんでしたが、偶に言われますよ。お気になさらず」

此方が特に失言していた訳ではないと知れば、安心した様に吐息を零しながら笑って首を振るだろう。

「……そういえば、先輩の打ち合わせは入学式の警邏ですか?それとも、落第街やスラムの警備体制でしょうか。今の時期は、連中も大人しくしている様子ですが…」

セシル > 「”王子様”の方は良いんだ、いっそ慣れているからな。
………まあ、悪名ではない、と思って安心することにしておくよ」

そう言って、困ったように眉を寄せながらも笑った。
………「慣れている」と言い切ってしまうあたり、なんというか流石である。

「…私の方もあまり甘味に慣れない育ちなものでな…過剰に反応した部分はあると思う。
しかし…「偶に」なのか。そうか…」

何かしみじみと頷いている。…が、仕事の話を振られれば…

「…ああ、春休み中は落第街や歓楽街を回っていたのだがな。今日の打ち合わせは入学式の方だよ。
色々な勧誘もあって騒がしくなるし…私の能力としては、そちらの方が向いているから」

地味な分大型の事件には不向きだが、小回りは効くし事故のリスクも少ない。
適材適所というやつだろう。

神代理央 > 「宝塚もかくや、の人気ぶりですからね。写真集でも販売されては如何ですか?先輩ならば、良い売り上げが期待出来ると思いますけど」

クスリ、と笑みを浮かべて困った様に笑う彼女を見返す。
実際需要はあるだろうとは思うし、半分冗談半分本気の様な言葉でもあった。

「糖分は良いですよ。思考が良く回りますし、寝不足や疲労気味には尚良い効果を齎します。先輩も宜しければ是非素敵な糖分ライフを如何ですか?」

砂糖でどろどろになったココアを再度口に含みながら、悪戯っぽく笑みを浮かべる。
しかし、仕事の話に彼女が応えれば、表情を真面目なものに戻して。

「…成程。此方も似た様なものでしたが……僕は恐らく、落第街方面の警邏になるでしょう。それこそ、私の能力は華やかな入学式より落第街での戦闘向きですからね」

召喚系の異能を多用する己は必然的に戦闘の多い地区に回される事が多い。
まして、彼女が入学式の警邏を担当するというのなら、その分己を含めた範囲系の異能を持つ委員達は落第街に充てられる事が多くなるかもしれない。

セシル > 「タカラヅカ…話には聞くが詳しくはないな。確か、近くの国にある女性歌劇団、なのだったか?
…写真集は遠慮しておくよ。後が怖い」

相手の冗談には、苦笑で返した。
少しずつ「王子様」をスケールダウンしている(つもりな)のだ。また面倒の種を自分から増やしたくはないのである。

「それは否定せんが………何というか、砂糖の味しかしなさそうな………」

どろどろになり、もはやセシルとしては「ココア」と呼ぶことすら憚られるそれに視線を向けながら、口元の笑みを引きつらせる。

「まあ、派手な力は「守るべきもの」の少ない場の方が遠慮なく振るえるというのはあるだろうな…面倒をかける」

それでも、仕事の話をする時には、彫りの深い中性的な顔立ちは端正に締まっているのだが。

神代理央 > 「僕も直接鑑賞したことは無いのですが、男装の麗人が華やかな演劇をするのだとか。先輩なら、きっとお似合いですよ。
……まあ、提案しておいてなんですが、購入希望者の整理で風紀が駆り出されそうですしね」

彼女が浮かべる苦笑いと同様に、此方も苦笑を浮かべて肩を竦める。
彼女の写真集ともなれば、割と本気で風紀委員の出動案件かもしれない。流石にそれは、彼女が居たたまれないだろう。

「…きちんと素材の味もしますよ?何なら、御飲みになってみます?」

と、冗談めかしてカップを傾けた後、クスリと微笑んでカップをテーブルに置く。

「…そういった点では、落第街での任務は楽なものです。彼方では、迷い込んだ一般生徒でも居ない限り、守るべき者も、庇護する者もいない。犯罪者とその他諸々、というのはシンプルで良い」

社交的な笑みの中に一瞬浮かべたのは、落第街の住民等歯牙にもかけないと言わんばかりの冷徹な笑み。
尤も、直ぐにその表情は掻き消えて"先輩を慕う年下の後輩"にその表情は戻るのだが。

「……と、長話にお付き合いさせてしまいました。僕は別件の用事がありますので、そろそろ御暇させて頂きますね。今日は御会い出来て光栄でした。また是非、お話させて頂ければ」

残ったココアを飲み干して、静かに椅子から立ち上がる。
そのまま伝票をひょいと取り上げると、にこりと笑みを浮かべて小さく一礼し、彼女に背を向けてラウンジから立ち去るのだろう。

「………賄賂では動かぬだろうな。出来れば、敵に回したくはないものだ」

そうして、ラウンジから退店した後、ぽつりと独り言を零し、期限良さそうに呼び止めたタクシーに乗って街を後にするのだった。

ご案内:「委員会ラウンジ」から神代理央さんが去りました。
セシル > 「演劇なぁ…声の出し方は多少心得があるが、他はさっぱりだからな。
………流石に、今はそこまでではないと…信じたいが」

苦笑いが少しひきつる。
一応、「王子様」はスケールダウン中のつもりなのである。これでも。
「ココア」「だったもの」を勧められる冗談には…

「………遠慮しておくよ。貴殿ならともかく、不慣れな私ではきっと素材の味は分からない」

と、穏やかな苦笑いとともに辞退した。

「………そうか。貴殿は、そう思うのか」

自分より若いはずの少年が、その表情に冷徹さを匂わせる様子に、セシルの顔から人の良さそうな笑みがしばし消える。
それでも、少年が人懐っこさを再び纏って立ち上がれば、

「…今は一介の風紀委員でしかないよ、大げさだ。
そんな私でよければ…時間が許せば付き合おう。またな」

そう言って、穏やかな微笑を顔に刻んで見送った。

セシル > 「………。」

少年の姿が見えなくなったところで、深く重めのため息をついて、残ったコーヒーを飲み干す。

(あの若さであの言葉、あの顔…。
組織が一枚岩ではないことなど、重々承知しているつもりだが…あれは、あまりにも)

コーヒーカップを離した口元は、苦く引き結ばれていた。

(………まだ、「間に合う」と信じたいのだがな)

何か、自分にできることはないものか。
漠然とそんなことを考えながら、セシルはラウンジを後にしたのだった。

ご案内:「委員会ラウンジ」からセシルさんが去りました。