2020/06/25 のログ
■フィスティア > 「お褒めいただき光栄です。
私は風紀委員会ですので。それくらいは...」
頭を撫でていただきました。褒めていただけると嬉しいです。
それに、あかね先輩の手は暖かくてどこか気持ちいいです。
ちなみに、この真っ白の少女はその類のことに関する知識も真っ白である。
先輩の間で行われている戦いなど気付いておらずー
「喧嘩をしていた二人から話を聞いたのですが、お友達同士でちょっと揉めてたみたいです
そんな危ない喧嘩でもなさそうでしたし...二種にするべきでしょうか」
そんな道具を使ったり、殺意のある喧嘩だったり、大怪我を負ったりしてる様子でもなかった。
掴み合ってお互いに悪口を言い合っていたので少し声をかけて風紀だって言ったら止まってくれました。
そこまで問題でもないでしょうし二種で良さそうです。
幌川先輩が渡してくれた報告書を「ありがとうございます」と言って受け取ります。常時持っているのでしょうか?さすが大先輩です。
「助言ありがとうございます。わかりやすいように書けばいいんですね」
報告書を胸に抱え、頭を下げる。
「ところで...幌川先輩も報告書を書いているようですが...何かあったのですか?
それとも巡回の報告でしょうか」
純粋な疑問が大先輩の伏せていた部分を突いた。
■日ノ岡 あかね > 「あらぁ? 頼ってくれるのは嬉しいけど、異邦人街は私もあまり詳しくないわよ? ヨキせんせとかに聞いたほうがいいんじゃないかしら?」
先輩に倣うようにこの場に居ない誰かに手番を回し、あかねはくすくす笑う。
関わる人間を無暗に増やそうとするあかねは、大明槓を全く躊躇わない女だった。
「大した事じゃないなら、勿論二種でいいと私も思うわ。それに、一種の報告書になっちゃった場合……多分追加の報告書も必要になっちゃうしね? 公安にも提出しなきゃだろうから」
そうなると、その時にまた面倒を食うのは恐らくこの報告書の『手伝い』をした最中ということになるだろう。
あかねは非正規人員なので、恐らく呼ばれない。
今回多分二種でケリはつくだろうが……そうならなかった場合の未来のツケは、男一人の双肩に託された。
そして、フィスティアがそう『面白そう』な疑問を口にすると……弧月のように口をニヤけさせ。
「私も気になるわねぇ? ねぇ、モナカ先輩? これは何の報告書なの?」
図々しく身を乗り出して、小首を傾げながら尋ねた。
■幌川 最中 > 風紀委員会ですので。それくらいは。……そうだよな。風紀委員会、だもんな。
その一言が先輩を傷つけた。スイマセン。風紀委員会の看板の面汚しで。本当に。
少しだけ心苦しくなったような気もしたが、気のせいだったことにした。
そう。バランス取ってるっていえば、多分通る気がする。通るかな。通らないかも。
「そうか~~~友達同士の喧嘩か~~~~~~~。俺三種にしちゃうなァ~~~~。
……まああかねちゃんの言う通りかもしらんな。二種。友達同士なら取っ組み合いくらいはなァ。
二種。なんか言われたら幌川さんが二種でって言ってたっていやあ言い訳くらいはするから、二種で」
幌川最中は、風紀委員会の中でもとびきり三種事例の報告書の数の多い男だ。
ある程度のこういった割り振りは委員に任されているとはいえ、その数は頭一つ抜けている。
が、実際にそれに遭遇しているのが幌川本人1人であるため、嫌な顔を多少される程度だが。
あかねの言うように、級が上がるごとに要注意とみなされる可能性は上がっていく。
幌川は、あまり「そういうこと」が好きではなかった。その結果がこれだ。多数決によって敗北。
「え? ああ、ああ~? そんなものあったっけなあ?」
すっとぼけるが、どうせすぐにあかねが攫っていくのがわかっているので、
諦めながら「落第街方面の報告書だよ」と本当のことを口にした。
「……落第街の違反部活の活動状況の調査報告書。
そのうちあとで公安のほうにも出頭せにゃならん。わかったか?
あかねちゃんもフィスティアちゃんも、わざわざ公安まで出ていかにゃならんのが嫌なら、
落第街には近づくんじゃあねえぞ。報告書の数が増えるからな。見ないのが一番だからな、あっこは」
■フィスティア > 「幌川先輩、日ノ岡先輩。
ありがとうございます。
二種にしておきます」
本当に助かりました。
報告内容が微妙だったので、自分で判断していれば数倍の時間は要していたかもしれません。
最悪全種類の報告書を書いて提出しようかと思っていたので、とても助かりました。
それに、提出後も多少はサポートしてくれるというのはとても助かります。
大先輩に手間をかけさせてしまうのは心苦しいです。早く自力でどうにかできるようにならないと。
二人に向けて丁寧に深々と頭を下げて感謝の言葉を述べて。
幌川に向けてはさらにもう一度頭を下げた。
「落第街...ですか?
この前指令があったので巡回に行きました」
落第街といえば...巡回に行った時のことを思い出します。
キッドさんとハルシャッハさんに出会ったことを思い出します。
せっかくいろいろ教えていただいたのにあの後生かせていません。
守ろうとしてくれたキッドさんに失礼な態度をとってしまったのも謝りたいのですが...
「先輩がそういうのでしたら...?
気をつけるようにします」
報告書を出すのが面倒だから近づかない...というのは違うと思いますが。
まだ慣れていない私があまり近づかないほうがいいかもしれません。
あの時はキッドさんが報告書を出してくれたので助かりましたが、また後でありがとうと言わないと...
なんて、報告書云々で行かないほうがいい、というのは何とも言えないため悩んでいるような表情で小首を傾げていて。
■日ノ岡 あかね > 「いいのよ、私は軽く口出しただけだからね、ふふ」
そう、調子よくヒラヒラと手を振っていたが……最中の言葉に対して素直に頷くフィスティアとは裏腹に、あかねはむしろ、うっすらとした微笑みを口端に湛え。
「そんな『楽しそう』な事してたなら……誘ってくれればよかったのに、ふふふふ……今の私は風紀の皆さん待望の『いくら使い捨ててもいいコマ』よ?」
黒い首輪のようなチョーカーを指さす。異能制御用のリミッター。
それがついていて、それでも風紀委員。
元違反部活生。前科あり。
今のあかねの所属は言ってしまえば……体の良い鉄砲玉。
危ない仕事はむしろ『専門』だ。
「別に公安は私、気になってる男の子がいるから行くこと自体は全然苦じゃないし、『見て見ぬ振り』もするつもりないから、落第街関係の仕事はむしろ大歓迎ね」
公安所属の不景気面で薬漬けで、ついでにハンバーグも食べきれない誰かさんを思い出しながら。
「遠慮しないでいいのよ? 私と先輩の仲なんだから」
あかねは、嬉しそうに笑う。
■幌川 最中 > 「フィスティアちゃん『は』素直で大変よろしい。
グッド風紀委員。グッド風紀。これからも守っていこうな~」
うんうん、と育ちのいい後輩を見て穏やかに笑った。
笑えないほうの育ちが悪いほうの後輩は軽く資料を丸めて頭を叩いた。
「偶然だよグーゼン。グーゼン通りかかったら違反部活がやってたの。
だからとりあえずいやあ困ったことしてないかな、と思って覗いただけです。
そういう『危ない』ことは必要ないの。おわかり? アンダスタン?
理央ちゃんといい、若いコたちがみんな腕白盛りでおじさん困っちゃうよ」
元違反部活生威力運用試験部隊。
言い方は悪いが、事実としてはあかねの言う通り。
「正規の学生」の代わりに運用される部隊の活用法など考えればすぐわかる。
幌川は、あまり「そういうの」には肯定的な考えを持ち合わせていない。
「そうかい。……なんで落第街があるのか、よく考えるように。
ほら、フィスティアちゃんも言ってやってよ。危ないことすんなって。
……じゃあ出頭はあかねちゃんに代わってもらうかね。
俺はちゃんと隊服着ていかないと、公安の受付のコが怒るから嫌なんだよ」
■フィスティア > 「大丈夫なのでしょうか?使い捨てのコマだなんて...
私も...心配ですし」
日ノ岡先輩は、自分のことを使い捨て、なんて言いますが...私はそういう考えは好きではありません。
ロボットなどならまだいいのですが...人間の貴重な命を使い捨てにするというのは...嫌なことを思い出します。
「何より、そんな死んでもいい、みたいなのは私は良くないと思います」
人間の命は統計にしてはいけません。一つ一つに価値があるんだと思います。
自分のことを使い捨てと言ったあかねに、それは良くない、と自分の考えをはっきりとした言葉、揺るがない表情で伝えて...
「幌川先輩は隊服をちゃんと着たほうがいいと、私は思います」
そのついでに真面目なノリで正論をぶつけられるだろうか。
■日ノ岡 あかね > 「ふふ、別に私だって死ぬつもりは全然ないわよ。自分の仕事を弁えているだけ……心配してくれてありがとね、フィスティアちゃん」
また遠慮なくフィスティアの頭を撫でて、あかねは笑う。
実際、あかねの所属する部隊について、白眼視している風紀委員は多いと聞く。
人道主義に反するのは勿論……単純に危険だ。
一度は牙を剥いた狼を首輪付きとはいえ……また野に放すも同然の行いなのだから。
だが、あかねはそんな前評判すら気にすることもなく、普通に最中に笑い掛け。
「代わりに出頭ねぇ……私一人でそれが許されるなら勿論二つ返事だけど……多分ダメでしょ? 二人でデートが関の山じゃないかしら? それなら私も大歓迎よ。公安委員会庁舎には私も行きたいし……ねぇ、いいでしょ? モナカ先輩」
まるでテーマパークに連れていくことをせがむ少女のように、『素直』にあかねは笑う。
出頭そのものは本当に全く嫌ではないらしい。
むしろ……行きたがっている節すらある。
それくらいに、興味のある場所らしい。
「まぁでも、そんな事より……つれない事いうのは無しよ、モナカ先輩。『危ない事』は必要だし、落第街はもう『見て見ぬ振り』を続けられない。それが出来ない人が増え過ぎた。それが出来たら……私は最初から此処に居ない筈だし、ここまで落第街の話が人々の口端に上る事もないはず……もう、無視はできない場所になっちゃったのよ。本当はそうするべきだったとしても……ね?」
くすくすと、あかねは。
「それに……これは風の噂で聞いた話でしかないんだけど」
日ノ岡あかねは。
「……私の風紀入りを『推薦』してくれた『誰か』がいるのは間違いないんでしょ……?」
心底……楽しそうに笑って。
「私の扱いがきっと『こうなる』と分かった上でね……違うかしら?」
どこまでも……楽しそうに笑って。
「ねぇ、モナカ先輩……それについては、どう思うかしら?」
……幌川最中の目を、覗き込んだ。
■幌川 最中 > 報告書の中身。
落第街で活動する違反部活のうちの一つが、地下競売を執り行っていたこと。
そこで売り捌かれていた『商品』のほぼ全てを逐一網羅したリストや、
そこで目にすることになった風紀の「一級監視対象」が何を購入したかという旨。
善意の協力者についての言及は一つも残らない。風紀の監視の仕事の一環という「設定」にした。
《門》の影響の強い、《外》由来の物品。
生きたまま捕縛された怪異、狩られたモノ、そして人型の「何らかの」素材。
縄張り争いに負けた「なにか」の死体に、誰かによって狩られたもの。
その全てに『価値』をつけて、その全てを金銭というひどく平等なものさしで測る。
そういう『裏競売』の概要が事細かく――『報告書が苦手』にしては、几帳面な資料。
恐らく、「死んでもいい」何かが、材料として出回っていたのだろう。
「フィスティアちゃんは真面目だねえ。鏡見たときにかっこよくない自分が映ったら嫌だろ?」
そうして、冗談めかして言ってから。
冗談の少しも混じっていない声色で、冗談の少しも言っていなさそうな表情で。
自分が皮肉った通りに、『素直』にあれこれとものを言ってくる後輩には。
「あかねちゃんと一緒に行くくらいなら一人で行くさ」
そう、静かに言ってから。
僅かな間を置いて、へらへらと薄く笑い。首を少しだけ傾けてから。
「宝石の飾り方、俺、なんか間違えてたか?」
そう、真っ直ぐにあかねの双眸を捉えたまま、短くそう言って笑みさえ浮かべて見せて。
「こうするのが日ノ岡あかねを最も『高く』見積もれるだろう」、と。
一つ一つの、最中という仲介人から見た『最高額』を誰かに口添えたことを隠す気はない。
むしろ、当たり前のことをしただけだ、と言わんばかりの表情で。
オチ
「安い女じゃないんだろ? ――このくらいで、『落札』てくれると嬉しいんだがなあ。
俺は見ないふりは続けるけどな。見たいんなら見ればいい。
……ただ、見て被った不利益があることは言い続ける。目が潰れるかもしれない。
それでも、まだあんなところに興味があるっていうなら、俺はやめとけよって言うだけだからなあ。
俺は『見たくない』から、あかねちゃんみたいに『見たくてしょうがないやつ』がやるのは効率いいだろ」
風の噂を詳らかにして。
違反部活・トゥルーサイトの生き残りである日ノ岡あかねへと視線を向けて、穏やかに笑い。
「だから、制服をちゃあんと着たいやつが着て、着たくないやつは着なくていいのさ」
フィスティアにも、なんでもないことのように――それこそ、同じ価値の話だと言わんばかりに笑った。
■フィスティア > 「いえ...私のエゴですから...
それでも、自分のことは大事にしてください」
自分のこと、ではありません。私は私以外を大切にしたい、私以外の人が無事でいて欲しいだけなんです。
これは、私のエゴで、全員がそうあるべきなんて思ってはいません。
ただ、そうあって欲しい、と願っています。
私はそれを少しでも現実のものにしたい...そのために私はいるんです。
撫でられ、その暖かさと撫でられる心地よさに目を細めながらも、彼女の発言やその調子に不安げな表情を浮かべる。
その表情は、自分の考えがエゴであることを理解していて、そのエゴはやはり叶わないものであると再認識している悲しさからだろうか。
「私は鏡に少しでもカッコよく...」
写っていたい、と言おうとしましたが。違います。私はカッコよくなりたいわけではないんです
それをどう言えばいいのでしょうか...
言葉にできません
なんて、素直な後輩は小さく俯くだろう。
「そう、でしょうか...」
私には良くわからない話が先輩方の間で交わされていて...怖くなります。
ですが、少しでも理解しないと進めない気がします。
なんて、二人の話を聞いているが、やはり良くわからない。今までこの類の話を避け続けた代償だろう。
だが、二人の関係を少し見れた気はした。
■日ノ岡 あかね > 「エゴでもいいのよ……自分で『責任』を取れるならね。誰かのせいにしなければ、自分で自分の『末路』と『結末』に『責任』を取れるなら……フィスティアちゃんも好きにしていいのよ? とはいえ……風紀に居る以上は、看板借りてる立場なんだから、立場は弁えないといけないけどね……家賃を払わないのはいけないこと……『悪い事』でしょ?」
フィスティアの頭を撫でながら……滔々と語られた最中の言葉に。
幌川最中の言葉に。
日ノ岡あかねは。
「あははははははははは!!」
高らかに……笑った。
「ふふ、何も間違ってないわ。全部全部、最適解よ……モナカ先輩はちゃあんと高値で『買って』くれた……本当に感謝しかないわ。私、年上の男性のそういう細やかな気遣いって……大好きよ?」
実際、最中は繰り返し言っている。
《わざわざ公安まで出ていかにゃならんのが嫌なら、落第街には近づくんじゃあねえぞ》と。
《見たいんなら見ればいい》と。
建前として注意はする。先輩の立場として苦言は呈す。
だが、そこまでだ。
他者の価値を侵さない。
他者の理念を侵さない。
それが……自分に返らないなら尚の事。
正しく、理想的な……大人の対応。
この子供ばかりの常世学園に置いて、数少ない……大人の言動。
『自責でやるべき事』にまでは口を出す。
だが、『自責でやれている事』には……口を出さない。
故にこそ。だからこそ。
日ノ岡あかねは。
「ありがと、モナカ先輩」
改めて……満面の笑みで。恋に恋する乙女のような顔で。
自分を死地に放り込んだ男に……心からの御礼を言った。
「ちゃんと……『値段』通りの働きはするから、期待してね?」
■幌川 最中 > 「大丈夫大丈夫、半分くらいは冗談だからさ。
でも、フィスティアちゃんも覚悟しといたほうがいいぜ。
自分が相手を大事にしたいと思ってても、相手は自分のことを大事に思わないかもしらん。
そういう手合いには言っても無駄だ。勝手に大事にしてやるのが一番いいのさ。
風紀の後輩はそういうコが多いからなあ。そういうやつのために俺みたいな男がいんのさ」
やれやれ、と頭を掻きながら肩を竦める。
日ノ岡あかねもその一人だ。自分の価値を自分で定めて、その通りに振る舞おうとする。
であれば、誰が何を言ったって無駄だ。自分も同じだ。
「間違えないと覚えない」。「間違えるまで、間違ったことに気付けない」。
間違いたいと相手が言っているのであれば、それを正せるほど自分を高く見積もらない。
……というよりも、安っぽい男だ。自分に「できること」と「できないこと」の違いはわかる。
これが10年間のただ経験の積み重ねの結果で、留年生の先輩の言葉で。
「はいはい。あかねちゃんもよろしくやってていいけどさ。
……『次』はないよ。それだけわかってたら十分だけどね。
俺は偉くないからなあ。それに、『反省した』って言ってるコに厳しくする趣味もない」
安い男が安っぽい言葉を口にしてから、散らかした書類を片付けていく。
「安っぽい男」の報告書の価値はわかっている。だから、とりあえずこれではいけない。
……このままだと、この報告書に「価値」が出てしまう。
だから、嘘と本当を上手に切り取っては鍋に放り込み、ある程度煮込む。
そして、煮崩れしてもとの形がある程度曖昧になって、角がとれたらはいできあがり。
これが幌川最中の『書く』報告書で、そういう都合のいい『切り取られた』物語の一端だ。
「そんじゃ、わかんないことあったらいくらでも聞いてくれていいから。
ほら、他のコたちにね。理央ちゃんとかもなんだかんだ教えるの大好きだし、
よいっちゃんとかも後輩には優しいからねえ。ちゃんと先輩は選びなよ、二人とも」
そう言ってから、まとめ終えた書類を鞄に放り込んで立ち上がる。
雑に鞄を背負ってから、へらへらした表情を浮かべたまま。
「『悪い』先輩、見習ってもいいことねえからな」
一言、言い残して。
上機嫌に片手を軽く振ってから、そのまま公安委員会庁舎へと消えていった。
ご案内:「委員会街・風紀委員会棟」から幌川 最中さんが去りました。
■フィスティア > 「確かに...そう...ですね
私は風紀委員会ですから、エゴよりも先に風紀委員会の一員としての義務を果たさないといけませんよね。
...考え直してみます」
言われて気付きました。私はあくまでも風紀委員会の一員です。
風紀委員会刑事課所属。風紀委員会としての義務を果たすのが先でなければなりません。
ですが、私にそれができるかと言われれば...
私が今まで風紀委員会という立場に基づくのではなく立場を利用していたことを考えると、今すぐというのは難しいと思いますが、それでも考え直す必要はありそうです。
このようなフィスティアの甘い考えを含めて、あかねの言う通り常世島は子供ばかりなのだろう。
子供、と言うよりかは精神的に未発達な、定まらないような。
そんな中で定まった価値観や倫理観を持つ二人の会話に、フィスティアは置いていかれていた。
やはり、子供。
大人の話を理解するのには時間がかかるだろうがそれでも、あかねの笑みを見て、大先輩が彼女が望む対応をしつつ、他者に不必要以上に干渉せず、自分なりの意見を持っていると言った。
大人な対応をしていることだけは何となく理解しただろうか。
「ありがとうございました。
本当に、色々と」
先輩はポンコツなんかではありませんでした。
この人は、一番大切なところが完成した、風紀委員会としては参考にならないかもしれませんが、人間としては完成したような、そんな先輩だと、私はそう思います。
報告書、あかねとの会話、最後のアドバイス。
全てをひっくるめて、全て自分のためになるものだった。そう思ったからこそ、色々と。
今日この大先輩にことを尋ねてよかったと。
深々と頭を下げた。
「それでは、私もそろそろ報告書を書きに行って来ます。
ありがとうございました」
色々と、には彼女も含まれる、
あかねの方を向いて、また深く頭を下げれば、元々真面目に見える表情をさらに引き締めてその場を去っていった。
まあ、このあと色々考えすぎて中々報告書が書き上がらなかったのは報告書を書くのに時間をかけた、と言う意味では、二人の先輩に物事を聞いたことは失敗だっただろうか。
ーでも、報告書をやっとの思いで書き上げた本人がそう思っていないのであれば、やはり質問する相手は幌川最中で、正解だった。そしてその後の全ても無駄ではなかっただろう。
ご案内:「委員会街・風紀委員会棟」からフィスティアさんが去りました。
■日ノ岡 あかね > 「ふふ、どうかしらね? 『次』もやってみないとわからないわ」
去り行く最中の背中にそう投げかけて、あかねは笑う。
「『義理』と『責任』は果たさないとね、何処に居ても……それは必要最低限、誰でもやらないといけないことってだけよ。じゃあね、フィスティアちゃん。またどこかでね?」
続けて立ち去っていくフィスティアにもそう声をかけて、笑いながら手を振って見送る。
そして、その小さな背が見えなくなってから、あかねも皺を直しながら立ち上がって。
「案外、居心地がいいわよね。ここ……ふふ、これからもっと『楽しく』なりそうね」
そう、柔らかく笑いながら……何処へなりへと立ち去って行った。
猫のように、足音もさせず。
ご案内:「委員会街・風紀委員会棟」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
ご案内:「委員会街・資料室」に彩紀 心湊さんが現れました。
ご案内:「委員会街・資料室」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
■彩紀 心湊 > 此度、初めて委員会街にやってきた委員新参者の学生は資料室へとやってきていた。
軽い事件の記事、新聞の切り抜きや報告書。そういったものがファイルに閉じられていたりパソコンに保存されている。
「……さて……。」
調べたいのは怪異の事。
というのも、怪異という存在と対峙したことがないというのもあってどういったものかを確認したかったことに由来する。
特にあてもないのだが、早速ファイルを一つ手にとって閲覧していく…。
■紫陽花 剱菊 > 時を同じくしてやってきた男がいた。
奇しくも委員会、公安の新顔。
此の島の刃と成るべく、来てしまった事件、事象。
そして、存在していた違反組織等
此の島の過去を辿るのは必要な事だ。
男は勤勉で生真面目な男だ。
静かな足取りで、並ぶファイル一瞥する。
「…………。」
……そもそも、此れは如何なる本なのか。
そう、男のいた世界に"ファイル"などというものは存在しなかった。
字が読めるので何のファイルかはわかるのだが、果たして、此れは一体……。
とりあえず、めぼしいものを手に取った。
……手に取って、どうすべきか。本のように開けばいいのか?
わからん。
「…………。」
さて、困った。
そう思った矢先、目についたのは少女の姿。
成る程、ああやって読むのか。
確かに本と同じのようだ。
事次いで、という事で一つ顔を覚えてもらう事にし
男は静かな足取りで少女へと歩み寄る。
「……どうも。其方も、調べものを?」
■彩紀 心湊 > 「……ん。」
声をかけられれば、軽く顔を上げて頭を下げる。
…正直、見た覚えのない顔だ。
それなりに記憶力には自信があるほうではあるが、見覚えがないとなれば本当に全く関係ない学年だとかはたまた転校生などか…。
それとも、ソレ以外の所属のものか。
「どうも、こんにちは…。
ええと…貴方は?」
ここにいるということは、何かしらの委員に所属するものには違いないだろうか小さくお辞儀をしながらも尋ねる。
■紫陽花 剱菊 > 「……うむ。」
ぺこり。小さな会釈。
「私は紫陽花 剱菊(あじばな こんぎく)如くも無き男ではあるが、天狼たる少女に導かれ、公安の鞘に納められた一本の刃。」
一つ、宜しくお願い致す。
と、付け加えて男は自己紹介。
不愛想な仏頂面だけならまだしも
全身から真面目な空気が醸し出されている。
「其方もまた、同じ傘の下成ればと、声を掛けさせて頂いた次第だ。……探し物の最中、邪魔をしたのであれば、謝ろう。済まない。」
■彩紀 心湊 > 「……天狼…?
ふむ…なんだか独特な語彙というか…。
と、彩紀 心湊(さいき みなと)よ。関係組織…ではあるけど、祭祀局の所属。」
この雰囲気、なんというか初めて見るタイプの人間だ。
真面目で堅物…というには独特というか。
「ああ、いえ…それは構わないわ。
貴方は何を探しに来たのかしら…?」
■紫陽花 剱菊 > 「異邦人街で出会った。当人は亜人の少女に過ぎないだろう……。」
「だが、私にとっては違う。私は意図せずして此の島に流れ着いた。
……所謂、不法入島者の身。元居た世界とは違う此の島に誘われた。」
「私のいた世界は、まさに乱世の世。私は其処で、戦に身を投じていた。
……此の島は、私にとって平和すぎる。身が錆びる一方だったが……。」
「少女の言葉で目が覚めた。そして、今の私が在る。」
「私にとっては天命、運命の起点。故に、天狼。」
当人が聞いたら間違いなく拒否しそうなほどにはベタ褒めだ。
自らの事を臆面なく開示するのも、その導きあってこその強さか。
不愛想な表情ではあるも、声音はいたって静かで、穏やかだ。
男の人物を表すには十分かもしれない。
「祭祀局……霊的機関、陰陽道に属する組織と聞いた。」
飽く迄聞いたのは触りだけだが
自分のいた世界にも似たような組織が多くあったため
ある意味尤も馴染み深い組織ではある。
ふむ、と少女の姿をまじまじと黒い双眸が見つめる。
「……其方は差し詰め其処の巫女か?ともすれば、其の居住まいも納得できる。綺麗な佇まいだ。」
男は静かに、頷いた。
「忝い。……嗚呼、私は公安故に、過去の事象と暗記……それと、個人的な調べものだ。」
自信の手に持ったファイルをトントン、と叩く。
「其方は何をお調べかな?」
■彩紀 心湊 > 「…ふむ、つまり…アナタは異邦人で、意図せずこの島に誘われた。
元いた世界が戦いがよく起こる場所だっただけにここは平和過ぎて…って感じだったけども、その女の子と出会って色々目標なりを貰った…って感じ…かしら。」
小説の主人公みたいね、という感想を抱く。
「しかし、天命に運命の起点…か……ゾッコンというかなんというか…大事な人、って感じかしら?」
しかしまあ、乱世の人間がこうして穏やかに語るのだからよほど良い出会いだったのだろうと小さく微笑む。
「ん……いえ、私は巫女というのはお飾りよ。
私の異能は霊的干渉は…まあ、出来なくはないかもしれないけど基本的に後方支援なりを任されてる立場だし。」
友人の誘いもあって入った組織ではあるが、自分に特別な能力はないと。
まじまじと見つめられれば困ったように苦笑した。
「ん…公安か…。
どっちかというと警察でもあるけど公務員みたいな仕事が多いところよね。」
となると、彼は結構な頭脳派なんだろうかとファイルを見て。
■紫陽花 剱菊 > 「然り。」
頷いた。
「然れど、いやしくも御伽噺には血生臭過ぎる。晴れ舞台は似合わない。
私は……そう、小夜時雨にしとどに濡れる紫陽花。其の程度で構わない。」
誰にも目立つことなく、雨の中でひっそりと咲き誇る日陰の花。
目立つことは望まない。見るものがいるなら其れでも良い。
ただ、そこで人々を見守れる存在に成れればいい、と男は説く。
「……括りとしては、私にとっては其方も、天狼の少女も特別だ。
私にとっては等しく、民草は守るべき大切なもの。」
誰か一人を特別などと、大それた考えは出来ない。
少女の微笑みに釣られるように、一文字の口元を緩め
「……其れに、幼けない少女だ。年下趣味では無い。」
なんて、冗談一つ。
「お飾り。…………。」
「卒爾乍ら、随分と卑下た物言いだな。何か、困り事でも?其れとも何か……別の事を?」
聞くに能力の問題とはとって見えるが
それなら尚の事気になった。
適材適所、という言葉があるように
言い方が悪いが、分不相応ならば、他に道はあるはず。
或いは、相応の理由があるはずだ。
何れにせよ、男は彼女の事を心配している。
それだけは、間違いないだろう。
「嗚呼……私の様な人間には居座りの良い場所だ。培った技術も。充分に活かせる。」
戦いの中でしか活かされない技術。
ある意味、あれほど嫌っていた戦場から遠ざかったのに
収まるべき場所に収まった皮肉な運命でもあった。
当人は満足しているようなので、問題はなさそうだが。
■彩紀 心湊 > 「…謙虚なのね。
確かに、仏頂面な類だとは思うけれど…その血生臭さは以前の世界に置いてきているのではなくて?」
多少くらい、欲を晒しても罰は受けないだろうにと。
詠といい…高潔すぎる生き様は、どうにも見ていて不安になる。
「……本当に、武人と呼ばれるタイプの人なのね。アナタ。
通りでただの生真面目な人にはない雰囲気を持っているわけだわ。」
しかしまあ…なるほど、と思った。
今どき、全ての人間を等しく扱い守るといった思考ができる人間はいないだろう。
そして、こんな風に彼は笑うのだなと…楽しげに見つめる。
「卑下っていうか……困り事、といえば…うーん。
私、まだ仕事らしい仕事をしたことがないのよ。
だからこそ、自信ありげなこともさほど言えないなーっていうか…。」
だからこそ、ここで知識だけでもつけに来たのだと付け加え。
実績がないのだから無根拠な自信を晒すわけにもいくまいと、なんと説明すればよいのだかとやはり苦笑する。
「なるほどねぇ……。
公安の仕事も字面でしか知らないけど、異邦人が自分に納得できる職につけるってあんまり聞かないし良かったわ。」
■紫陽花 剱菊 > 「赤心成れば、然るべき評価の心算だ。」
誇大も謙遜もしない。
ありのままの評価。
自分は"そう言う人間"だと説く。
男は静かに、首を横に振った。
「……血髄食処(けつずいじきしょ)。多くの血を浴び、飲み干した。
人に非ず、刃として生きてきた。此処では"人"として生きる事も夢見た一時も在るが……
夢想は在るべき場所に還った。私はやはり、刃としか生きられぬ。」
十六小地獄、血髄食処。
自らの血を飲み続ける責め苦。
転じて男は、命ある限りの血を浴び過ぎた。
己も、他人も。人として生きるには余りにも多くを斬りすぎた。
世が其れを許さなかったとはいえ、時既に遅し。
結局収まるべき場所も、血を流す他は無かった。
だからこそ、公安という鞘に収まるべくして収まった。
「……然れど、礼を言わせて頂く。そう言われるだけで、少しばかり気も晴れると言うもの。」
血生臭さを置いてこれる可能性。
もしかしたら、あのまま腐った方が良かったのかもしれない。
たらればの話だ。人としての話は、既に終わっている。
けど、悪い思い出じゃない。それを思い起こさせる一言だけで、充分だ。
薄く微笑んだ男の顔は、何とも言えない侘しさを持っている。
「先も述べたように、"武人"と呼ぶには、些か高潔さに欠ける。
真の武人に失礼だ。……其れより、成る程……本当に新参という訳か。」
些細な事でも実績はないともくれば、確かにお飾りと言うのも納得だ。
ふむ、と男は軽く思案を巡らす。
「其方の組織の事情は知らないが……何かしら、簡単な手伝いを自ら志願した事は?それこそ、雑務から始めるのが良いと思うが……。」
「嗚呼……そう言えば、其方は如何にして祭祀局に?
其方も、誰かによって導かれた身か?」
■彩紀 心湊 > 「…なるほど、とは言えないわね。ソレに関しては。
生きる世界が違いすぎる話だから。」
この世界、色々混乱や争いがありはしたものの、少なくとも今はただの女学生をしている分は血に塗れたりするような経験をすることはまずない。
だからこそ、知らないからこそ、無責任な理解の言葉を返すことはなかった。
「…お礼だなんて。想像で物を言っているだけな部分も多いもの。」
大したことは言っていないと手をひらつかせる。
読んでいたファイルを元の場所に戻しながら、改めてその男の横顔を見た。
「……そういうとこ、硬いわよね。
少なくとも、私達の世界では十分すぎるくらいなのだけどねぇ…。」
これで高潔さに欠けるというのだから、彼の世界で生きる者たちはどういった精神性の持ち主なのだかと思う。
昔に生きる武士たちも今からすれば大分ヤバい奴らと聞くものだが…。
「ああ、その雑務の一環…かしらねこれも。
とはいえまあ…友人の力になりたい…ってところかしら。
だからー…そのー…なんと言えば良いのかしらね?
ちゃんと自身持って出来ることは欲しい…ってところ、か?」
別に、即戦力になりたいなどという傲慢な考えはするつもりはないが、それでもやはり自信を持って出来る仕事があるだけ違うだろうと。
■紫陽花 剱菊 > 「否、語り草は私だ。寧ろ、些末な話を聞いて頂き感謝する。」
どちらが混沌とした世などと比べる気は毛頭ない。
だからこそ、ありありと彼女の気遣いと受け取った。
深々と頭を下げて一礼する辺り、本当に真面目な男のようだ。
「豊かな想像力だと感服致す。……ん、む……。
堅い……いや、済まなんだ。性分ではあるが……、……。」
「……言う程か?」
おずおずと尋ねる辺り、余程人に言われているらしい。
本人もそれなりに気にしているようだ。
「成る程、友人の為……立派な志だ。失礼でなければ、如何様な友人かお聞きしても?」
そう言いながら男は、自らのファイルを開いた。
とある違反組織の壊滅迄の資料だ。
「……千里の道も一歩から。近道は無し。地道こそ最短成れば、地力詰むより他は無し……。」
ある意味、手厳しい言葉が返ってきた。
■彩紀 心湊 > 「…いえ、って…そこまで…。
そこまで、丁寧じゃなくていいのよ…多分、私の方が年下だし…。」
わざわざ頭を下げられれば、流石に困った顔をする。
なんともまあ、律儀というかなんというか、ここまで丁寧であれば自分も合わせるべきなのだと思い始める。
「ん……如何様なと言われると…。
うーん、まず大分高嶺の花って雰囲気…。かなり美人だし、立ち振舞も綺麗だし。
でもまあ、実際のところは世話好きで、ピュアでとてもかわいらしい子ね。
祭祀局に所属しているだけあって、そういう仕事だとか勉強には本当に熱心な人でもあるわ…。」
あとは…と、考える。
語ろうと思えばもう少し語れそうなのだが、手厳しい言葉を聞けば一旦区切って。
「それを言われちゃ、そのとおりよね…。
さてはて、実際…そういう仕事をするにあたって実際に仕事が出来るかっていう不安もあるのだけど……これもやっぱり実際起こってみないとなんともなのよねぇ…。」
はあ…と深いため息をついた。
実際に、実戦となった時、思ったとおりに動けるのか。それはやはり未知であり、もっとも不安とするところであった。
■紫陽花 剱菊 > 「……敬うべき者に敬意を。其処に年端の差は必要に非ず。」
敬うべきと思ったからこそ、丁寧に接する。
彼の場合は、自分以外の全てがそうだ。
「……ふむ。」
ひとしきり少女の語りを聞けば男は……。
「即ち、愛か。」
口にした。
火の玉ストレート。
真顔で言うもんだから相応に言葉に重みが増える……!
「…………。」
男は歯に衣着せぬ正直者だ。
だが、組織に属する以上彼女の不安は大いに理解出来る。
だから、申し出る。
「……卒爾ではあるが、"武"の手助け成れば出来る。
人に教えれる程、私は崇高な人間ではないが……
導師が剣を使わぬ理は無し。……其れに……。」
「剣のみならず、多少なり陰陽道には精通する。
其方は異能は、如何様なものだ?」
彼女の力になりたい、と。
■彩紀 心湊 > 「……あ、アナタこそ中々自分のこと卑下してる節あるわよ…。」
この会話の中で自分に敬う要素などあっただろうかと素で首を傾げる。
タメ口ではあるが誠意を持って物を語るのは当然とする彼女にとって、そんな当たり前なことで頭を下げられては…といったところであろう。
しかしまあ、続く言葉を聞けば更に困ることになるのだが。
「っっげほっ!?」
むせ返った。
待て!とばかりに、左手を前に出して…全力で顔を反らす。
「………。ゆ、友愛ね。ええ。」
スゥ……と、深呼吸をした後に真顔で返した。多分。真顔のはず。
やらかしたことがやらかしただけに、その言葉はどうにも曇ってしまう。
それはそれとして。と露骨に話題をそらす。
「…手助け、と…。
ふむ…そういう事を頼むあてがないから非常に助かるけれど…。
陰陽道…であるなら、確かに怪異などには有効でしょうし…。
と、私の異能…?
ええと…所謂、念力…かしら。"サイコキネシス"とか"テレパシー"とかって知ってる?」
■紫陽花 剱菊 > 「是非も無く、自明の理だ。」
ある意味そこは譲れないらしい。
そも、男は自らを"人"として定義していない以上
その辺りがかみ合わないのは必然かもしれない。
少女の卑下している、という評価は間違いでない。
刃の評価など、如何様に命を断てるか。
ただ、それだけの事。
「…………。」
待て、されたので待った。
真顔で。
「……いじらしいな。」
実に思春期らしい反応だ。
男は腕を組んで満足げに頷いた。
腹立つなコイツ。
「友愛にしては、些か戸惑いがあるようだな。何、謙遜する事は無い。
愛情なら愛情で、正直いた方が良い。如何様な形で在れ、私は愛に間違いはないと思うよ。」
折角話題を逸らそうとしているのに、変に真面目だからこの有様。
やたら真剣に何事も真面目に返す男の癖が
今悪い形で顕現している……!
「……さいこきねしす。所謂、念動力。てれぱしい。所謂、思念会話。」
一応の理解はあるようだ。
イントネーションは置いておくとして。
「但し、私の陰陽道は此の世界の道と非なるもの。
だが、扱いやすさであれば、我等に理がある。
余計な力は必要なく、ただ一つ代償を払うのみ。」
男の手元に、いつの間にか小太刀が握られている。
抜き身の銀の刃が空を切り、手元で素早く回転する。
「だが、如何様なものであれ、力は力。一度持てば、修羅道への幕開け。」
「────其方に覚悟は在るか?」
ヒュン。銀の切っ先が、少女へと向けられる。
ありありと"力"というものを表したもの。
それが武器だ。今目の前に、それがある。
直線的に、命を奪えるもの。此の島の秩序は
"そう言った部分"もあると、暗喩しているに過ぎない。
脅しと言えば、脅しだ。自ら進んで、彼女に手を汚させたくはない。
だからこそ、男は心の奥では、此処で諦めさせる心算はあった。
故に、刃にて、問いかける。
■彩紀 心湊 > 「……アナタも難儀な人よね。」
やれやれと、諦めたように肩を落とした。
こればかりは個人の主義に踏み込むラインなのだろうと。
「は、ぁ…………?!?
あ、アナタね……。
そういうそっちはどうなのよ…さっきの少女について。」
流石に引きつった笑みを浮かべざるを得ない。
違うと言っても態度を改める気がしないものだし、追撃まで仕掛けてくる。
苦し紛れの仕返しとばかりに、それだけ尋ねて。
「……はい、そのとおり。
伝わったようで何よりだけど、も……ッ。」
いつの間にか握られた刃に思わず目を丸くする。
身構えるよりも先に、そちらの刃が翻れば…
「……、………レディに向けるには刺々しいわよ……。」
冷や汗が吹き出る。
多少、不良と殴り合いなどをしたことは正直無いわけではないのだがこれはわけが違う。
明確に、力量に差のある刃がこちらへと向けられている。
乾いた喉から声を出すのに…体感では数十ほどの時間が流れたように感じられた。
けれども――
「……あるに、決まってるでしょう。」
絞り出された言葉は、確かにそちらの目を向いて放たれた。
退いて、後悔に後悔を重ねるくらいならば…納得できる生き方をせねばならないと。
■紫陽花 剱菊 > 「……よく言われる。」
言うに事欠いてそれだ。
中々いい胆力をしている。
苦し紛れの仕返しだが、男の表情は一つとして変わらない。
寧ろ、静かに首を振られた。
「先程申した通り、愛情は無い。在るとすれば、其れ即ち"憧憬"。
……あの少女は、誰かの太陽と成るべく人だよ。」
臆面も無く言ってのけた。
あの眩いばかりの明るい笑顔。
日陰者の自分には、些か眩しく
"人"として生きていれば、或いはあったかもしれない。
だが、何処までも"刃"。
一度握れば、人を傷つける。
人を抱くことなど、出来ようものか。
男は、少女の発言を歯牙にもかけないが
如何したものか。その薄い笑顔は、寂しそうだ。
「──────……。」
流れる冷汗。
確かな恐怖を表情から感じる。
一つ、雷鳴と駆ければ、胴と首は泣き別れ。
殺意はないが、彼女はそれを多少で在れ理解しているようだ。
その上で、是と答えた。
静かに目を閉じた。
……残念ではあるが、其の覚悟に水は差せない。
男は目を開き、静かに少女の瞳を見据える。
「……しかと、聞き届けた。」
刃を翻し、鞘に納めた。
シンプルな紺色の、無地の鞘。
収めた小太刀を、少女へと差し出す。
「然すれば、我が力をご供述しよう。一つは小太刀術。
如何様な手弱女の腕でも一振りで命を断ち
長刀相手でも打ち合える剣技の一つ。」
「二つ。与えるは力。代償は血。己が血肉を分け与え
力を行使する我が世界の陰陽道。」
「……一度にとは言わん。先ずは先達ものとして、受け取られよ。」
此の小太刀を受け取れば、恐らく引き返す事は出来ない。
日常の終わり、とまではいかないが、きっと此の先
薄暗い日常の裏側を少女は見る羽目になる。
最期のターニングポイント。
この力の象徴たるものを受け取るか否かは
────貴女次第。
■彩紀 心湊 > 「………。
っ…はあ………。」
刃が納められるのを見れば、思わず深い溜息。
彼がその気になれば、自分の首が離れてゆくさまは容易に想像できたものだから。
男が、その小太刀をこちらに渡すのを見ればゆっくりと視線を落とす。
「……そう、安々と渡して良いものではないのだけどね…刃って。」
とはいえ、風紀にせよ、公安にせよ…こういった"力"を持たなければならない。
であるならば、正しき手ほどきがあるのならこの刃を受け取ることは罪に問われないのであろう。
しかし、彼の言うことは分かる。
この刃は、自分をファンタジーなどではない非日常へと引き込むものだ。
されど、かの友人は…既に、そこに立っていながら笑っている。
だとするならば。
「……ありがとう。…受け取るわ…。」
息を吸って、それを手に取る。
漠然とした覚悟を、確かにする良い機会だった。
これほどまで、決心付けるキッカケはそう存在しないのだから。
■紫陽花 剱菊 > 「……だが、誰もが持てる、分かりやすい力だ。
火縄にせよ、刃にせよ。百姓を武士に変える。」
ともすればこの世界の技術の進み方には感服せざるを得ない。
飽く迄、男の見解ではあるが
"この世界には、人を兵器に変えるものが多すぎる"。
良くぞ、世界の秩序が保てるものだ。
此の島一つですら、此処まで混沌としているのに
恐ろしいほど迄までに薄氷の均衡。
刃一つで、彼女が変わるか、実は些か疑問でもあった。
手に取る刃は如何様に感じるか。
貴女が力を軽視し、戦場軽んじるのであれば"軽い"。
だが、命を重んじ、日常を安寧と定める心があれば
如何に小太刀と言えどとても"重く"、しっかりと握られねばするりと手から零れ落ちるだろう。
「……時が在れば、此方から連絡する。鍛錬は、一日して成らず。暫し、私の為に時間を頂こう。」
男は静かに、一礼した。
意味としては、謝罪が強い。
彼女を引き摺り込んでしまったのは
どんな理由で在れ、己なのだから。
「……さて、大分話が逸れたが……雑務の資料は如何程かな?」
■彩紀 心湊 > 「……その例えは、本当に戦国時代って感じね。
…でも、間違ってはいないし…今や火縄銃や刃よりも凶悪なものが増えた世の中。
……何が正しくて、何を目的に力を振るうのか…ちゃんと見定めないといけないわ。」
現状の落第街やスラムといった治安の悪さに思うところがないわけではない。
実際、だからこそ風紀や公安の人手が必要とされているところがあるのは確かで。
「と…それじゃあ、連絡先でも教えたほうがいいかしら…。
……いいのよ。
選んだのは、私なんだから…。」
その礼の意味を察したのか、困ったような笑みを向けた。
アナタが謝ることではないと言わんばかりに。
結局の所、この刃が正しい場所に向けられるかはまだ定かではないのだ。
「ええ、こうして話している間に、ね。
アナタの方は大丈夫?」
ファイル、開けるの戸惑っていたように見えたけど。
と、今更ながらにそう笑った。
■紫陽花 剱菊 > 「……其方の時代が如何様に歴史を辿ったかは存ぜぬ。
しかし、戦国の世と言うのは間違いではない。
誰も彼も、武を競っていた。兆す理由も、人それぞれだ。」
まさにその想像は間違っては無い。
ただ一つあるとすれば、普通の戦国時代
此の常世世界の戦国時代よりも
些か時代が進み、所謂サイバーパンクとも言うべき世界だった事だ。
「……其れでも、差し伸べたの私だ。」
相変わらず、真面目な男だった。
仏頂面の無表情だが、何処は憂いを帯びていた。
「……此方は問題ない。必要な情報は手に入れた。」
とある違反組織の情報。
其の末路。あの少女がかつていた、違反組織の。
男は懐から携帯端末を取り出した。
公安に属するにあたって、承ったスマートな端末。
「…………。」
男は端末とにらめっこ。
「……心湊。」
す、と其方を向いて
「……如何様に登録すれば良い?」
────機械音痴だった────!