2020/06/27 のログ
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁/貸出会議室」に幌川 最中さんが現れました。
■幌川 最中 >
――違反部活、『トゥルーサイト』跡地。
元違反部活生威力運用試験部隊、
日ノ岡あかねが演説を行っていたのと同時刻。
委員会街、風紀委員会本庁。怪しげな音の響く貸し会議室にて――
■幌川 最中 >
ざわ……
ざわ……
ざわ……
ざわ…… ざわ……
ざわ……
■幌川 最中 >
貸し会議室の一つで、幌川は麻雀卓を囲んでいた。
手牌は良い。かなりいい。かつてないほど、いい。
字牌整理で字牌はまず、2周で全て捨てきった。
そして、残っている1・9牌の一つを切り捨てれば、断么九が見える。
サッサと上がることもできる状態。「まあ、この局は勝ちかな」が確実。
次に手番が回ってきたときに、筒子の9を切って、索子の2を引き込めば。
「…………」
無言で麻雀牌が川に置かれる。筒子の9。
■幌川 最中 >
……誰も、鳴かない。
「ッッッッッシャ!!!!!!!!」
立ち上がってガッツポーズをする。
「うるさいっすよ、幌川センパイ」だの「仕事もせずに麻雀してていいんすか?」だの。
後輩と麻雀卓を囲みながら、幌川最中は顎に触れてにやにやと笑う。
「オープンリーチ、索子の2」
「バーーーーカ!!!」だの「アホじゃねえの」と年下の後輩から暴言が飛ぶ。
もう手牌を全て詳らかにして、本当に索子の2をツモれば勝ちの状態を示す。
■幌川 最中 > 「幌川センパイ、マジで行かなくてよかったんスか?」
「バーーーカ!!!」と叫んだ後輩の一人(飯奢るから付き合ってくれた)が、
おもむろに口を開いて、そう問いかける。
麻雀牌が川に捨てられていく音が粛々と響いている。
「何の話してるかわかんないな~」
小声で索子の2索子の2索子の2索子の2、と繰り返しながら、幌川は答える。
男子生徒は、胸ポケットから折りたたまれたビラをひらひらと見せて。
「ほら、日ノ岡がビラ配ってたじゃないっすか。
……これ、本当に行かなくてよかったんスか? 止めなくて?」
へらへらと笑いながら、幌川はまた牌を見る。イーピン。
そのままツモ切り。
「ええ? いやあ、そんなの、俺聞いても見てもないからなあ。
……元違反部活生威力運用試験部隊? へえ~。こんなのあるんだ。
『俺は、知らなかった』な~。クソ~。イベントに乗り遅れた~」
「嘘マジで下手ですね」
■幌川 最中 >
点棒が一本、放り投げられる。
オープンリーチに対して、リーチ。
ふざけていた場が一瞬、しんと静かになる。
そうだ。麻雀というゲームは、一人が敵なのではない。
この場にいる全員が敵で、誰か一人が目立ったとしても、敵はいる。
昨日まで、笑顔で言葉を交わしていた同級生が。
点棒を、静かに放り投げて――余裕綽々、と言わんばかりの笑い。
「お前そういうことするやつだったっけ??????」
「幌川さんくらい面白くないぞ」
「……フフフ。恐ろしいか。恐ろしいだろう。これがコンビ打」
「打ってねーよ!! コンビ打ちなら振り込めよ索子の2!!!!!」
某所では真面目な話し合いが行われているというのに。
かわいい後輩と馴れ馴れしく接していた相手が、その場にいるというのに。
なにが起こるかわからない場だというのに。
「はやく先輩に忖度した麻雀しなさい!!!!!」
男は、笑っていた。
■幌川 最中 >
「少なくとも『あそこに行った』コたちはさ。
『正義』のために死んでくれると思っていいわけじゃない。
そうするのが正しい、と思ったら、委員会に言われなくても動くわけじゃない」
麻雀牌が川に置かれる。
捨て牌は増えていく。どんどん。
捨てても捨てても、本当にほしい索子の2はツモれない。
「そういうコたちがいるなら、自分のやりたいようにやればいいのさ」
もし、あの場が誰も彼もを殺すような魔術的儀式の場だったら?
もしくは、あの場に行った場合、名も知らぬ誰かに呪われるとしたら?
考えられる限りの「もし」を並べてから、幌川は笑う。
「大丈夫だって。ほら。幌川印の大丈夫。
……風紀委員会は強い組織って知らなかったか~?
なんだあそのアイロンのかかってない隊服は! しゃきっとしろ!」
「アンタしわっしわにしてるじゃないすか」
「ま、よく思い出しなよ」
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁/貸出会議室」に山本 英治さんが現れました。
■幌川 最中 >
「ツモ」
「クソゲー!!!」「二度とやらねえ!!!」
「死ね幌川」「運だけで麻雀すんのマジやめてください」
――落第街が、この島に存在する理由を。
落第街なんて街が、どうしてこの島にあって、どうして二級学生がいるのか。
それは、この島の得意技が『見て見ぬ振り』だからだ。
「それによ~~。
お前らだって見えてる索子の2とか絶対捨てなかったろ?
そういうことだよ。『見えてるモン』にはちゃんとみんな警戒できる」
「…………」 「確かに……」 「そうかな……そうかも……」
沈黙。
「でもツモられるワハハハハハハハハハハ!!!!!!!」
「死ね」「死ね川」「二度と魚が泳げない川になれ」
男の大爆笑が、貸し会議室に響いている。
■山本 英治 >
「暑い………」
舌を出して貸出会議室に現れる。
着ぐるみなんか装備して行くから汗でぐっしょりだ。
「ってここ更衣室じゃなかった……」
「何をしておられるのでしょう、幌川先輩」
携帯デバイスを取り出して。
日ノ岡あかねの“話し合い”の音声データを確認する。
「まぁ………まぁまぁ……上々の首尾…………」
ぐったりした状態でニチャアと笑った。
■幌川 最中 >
「英治ちゃんそれめっちゃキモくね?」
ニチャア……。そして湿度の高いアフロ。携帯デバイスで録音を聴いている。
一瞬ざわめきが完全に収まりっていうか一瞬どころじゃなかった。
秒でざわめきが収まったしなんならもうみんな無言だよ。
居た堪れなくなった幌川が、一番最初に口を開いた。
「エッ、英治ちゃんそれマジでキモくね!?」
どうやら20代男子組という共通点があるらしく、やけに砕けているが。
それを差し置いても、あまりに指摘するにあまりあった。
「どうしたのさ、そんなグッチャグチャの旧時代の映画みたいな格好して。
それ装甲とか上がるタイプのきぐるみ? どこから借りてきたのさ」
■山本 英治 >
「ひッ! 日ノ岡あかねの例の場所に潜入したんですよウ!!」
「ってか戦闘用の着ぐるみじゃないんで装甲とかないす!!」
「ガアア。キモい男にキモいって言っていいと本当に思ってんすかァ!!」
抗弁してスポーツドリンクを飲む。
別に中は普通にツナギを着ているので着ぐるみを脱ぐ。
「麻雀すか、今からでいいなら混ぜてくださいよ」
アフロをタオルで拭っていた。
いつまでも。いつまでも。
アフロを優先して拭っていた。
■幌川 最中 >
「なになに。ほら座んなさいよ」
一番山本に近かった席の風紀委員が解放された。
涙を流しながら山本に抱きつこうとして、一瞬固まってやめた。
同じ風紀委員の人間が汗水垂らしていたとしても、
どうしても譲れるラインと譲れないラインがあった。背の高い眼鏡男子だった。
「バカ何言ってんだ! 女子に言われる前に言ってんだぞ!?
で~~? 潜入がなんだってえ~~?」
じゃらじゃらじゃら。牌が散らされて、適当に混ぜられる。
「そんじゃ、失礼します」と席を立った生徒が踵を返してから。
「異邦人の方にもあれこれ首突っ込んでるって聞いたけど、
英治ちゃんは仕事で潜入してたワケ~? 日ノ岡のほうね」
牌を積みながら、幌川は山本の顔を。
アフロではなく、その双眸をじーっと見つめた。男同士で。
■山本 英治 >
「ウス、失礼します」
「カタキは取りますよ……」
洗牌(シーパイ)の音が好きだ。ジャラジャラと騒々しい。
師父によれば、この音は魔除けになると信じられていたらしい。
「異邦人関係はまぁ、ぼちぼち。これからも生活委員会と歩幅を合わせて…ぼちぼち」
つい最近も怪物相手に単独行動をして始末書を書いたのだが。
ぼちぼちったらぼちぼちだ。
「仕事じゃなかったら7月も近いのに着ぐるみで外にでませんって」
「まずは結論から。日ノ岡あかねの言葉や行動に違法性はありませんでした」
砌牌かくして配牌。
手元を確認してほくそ笑む。
端牌のあまりない、脂っこい牌ばかりだが……展開次第でメンタンピンが狙えるか。
「もうイヴちゃんがまとめてるでしょうから後で書面で回しますね」