2020/07/21 のログ
フィスティア > 「あの世界もいつかこの世界のようになればいいのですが...
いえ、もう私には関係ない世界ですから」

博物館にはまた行かせてもらいます、と付け足して。
ただ、自分はもうあの世界には一切関係ない、とでも言いたげに首を左右に振って。
あの世界の自分とこの世界の自分は違うと。
何の為に性を捨てたのか。

「...
神代先輩は、どうしてそんなに簡単に人を殺せるのですか?」

数秒の間を置いて、唯一言尋ねた。
この一言で十分だとでも言いたげに、ゆっくりと、一文字一文字をはっきりと噛みしめながら。

神代理央 > 博物館を訪れる、と告げる少女に小さく頷いて。
さて、と立ち上がりもう一本【魔界(以下略】でも飲もうかと思ったその時。
彼女から不意に投げかけられた言葉に、動きを止める。

「…そんな事が聞きたかったのか?それならそうと、早く言ってくれれば良かったものを」

小さく溜息を吐き出すと、ゆっくりと彼女へ向き直る。

「必要な事だからだ。最も犠牲が少なくて済むからだ。抵抗する違反生に、情けをかける必要が見当たらぬからだ」

朗々と、淡々と。
【人を殺す理由】を彼女に告げていく。

「……他にも色々あるが。取り敢えずはこんなものか。満足したかね?」

と、ゆるり首を傾げてみせるだろう。

フィスティア > 淡々と、さも当然で、何も間違っていないだろう?とでも言いたげに述べる神代に対して、恐怖が強まる。
この人は、死神か何かなのだろうか。

「自分の...先輩の縁の人が殺されたら....
先輩は、どう思いますか?」

自分でも気づかぬうちに胸を抑えていた拳をさらに強く握って、言葉の通じない、人なぞ簡単にひねりつぶす化物を見るような目で神代を見つめる少女。

「先輩には、恋人がいるのですよね?
例えば、その恋人が...突然殺されて....突然会えなくなったら、どう思いますか?」

神代理央 > 「良く聞かれる質問だな。復讐されたらだの、周囲の人間が殺されたらだの。…まあ、お前の質問は少し毛色が違う様だが…」

震える様に拳を握り締め、此方に問いかける少女。
その様子を醒めた様に眺めながら、小さく肩を竦めてみせる。

「そうならぬ様に動くのが我々風紀委員だが、まあ、それはお前の求めている答えでは無いのだろう」

「私の周囲の人間が殺されたら?――そうさな。その者達を全て殺す。皆殺す。ありとあらゆる手段を使って、殺す」

「――だから、私も同じ様に殺されるやも知れん。だが、私はそれを跳ね除けるだけの力を持つ。殺しに来るのは構わんさ。何時でも、何処でも。買い込んだ恨みを引き取ってくれるなら、精々向かってくると良い」

緩く唇を歪めた笑みは、果たして彼女にはどの様に映っているのだろうか。

フィスティア > 「先輩"ですら"そうするのに。よく、簡単に人を殺せますね...」

少女は、怒っていた。
静かに、傍目に見ればわからないだろうが、彼女を正面から見据える神代であれば、その様がわかるだろうか。
何故その辛さや悲しみがわかっていて。
復讐につながると分かっていて。
人を殺すのか。
深い悲しみと少女の存在から放たれる怒りが入り混ざった表情。

「先輩がそうしたら、また先輩は人を殺さないといけないのに、それが"最善"なんですか?
犠牲、最小じゃないですか」

怒りに震える拳を静かに下ろす。
小刻みに震えるそれは、感情を必死に抑えている少女の様子を表しているようで。

「なんで、殺さない事を考えないんですか?
先輩のそれはもう...最初から殺す以外出来ないと言ってるみたいじゃないですか...!」

神代理央 > 「無益な殺しはせぬよ」

少女の溢れる様な感情に、淡々とした口調で短い答え。
それは言外に、少女の理想や想いを否定する様な言葉。

「私が殺すのは、人々に害を齎す者だけだ。違反生、違反部活、更生の余地の無い者。それらに、等しく死を振りまく。無論、投降や降伏の勧告は与えるがね?」

そして、感情の激発を堪える様な少女を眺めながら、小さく溜息を吐き出す。

「考えた上で殺すのだ。殺さねばならないから殺すのだ。そして――」

「――殺す力を持たぬ者の為に。誰かの復讐の為に。誰かの怒りと悲しみを終わらせる為に。私は殺すのさ」

少女の理想を、真っ向から否定した。
醒めた瞳で、薄く笑みを浮かべ、小さく肩を竦めて。

フィスティア > 「終わっていませんよ。」

食い気味に。神代の言葉を掻き消すように、間違っている、と言いた気に。
静かに、でも確かに。そう言った。

「先輩がさっき自分で言ったじゃ無いですか
あなたが殺してきた人を大事にしている誰かが怒って...悲しむじゃ無いですか...」

誰かの悲しみが、誰かの怒りが終わったところで。
それでは、また別の誰かが悲しみ、怒るだけだと。

「それに....それに、命は、一つしかないんですよ...?
先輩が勝手に最善だと思って、勝手に復讐を代行して、勝手に奪っていい物ではありません...」

全く同じ人間なぞ存在しない。
人間は機械とは違い、一人一人が、それぞれ異なった特性や個性を持っている。
それを、勝手に奪うだなんて。
許されない、と。言葉にならない声で...

神代理央 > 「その通りだよ。究極のところ、憎しみの連鎖は終わらぬ。永遠に、永劫に。誰かが誰かを憎む限り、人は人を殺め続ける」

人が人を憎まない世界など、全員頭の中が電子制御でもされているのではないか。
競争があり、順位があり、差別と区別がある限り。
どんな世界でも、人は人を憎む。

「ふむ。では、最初の目的に戻ろうか。武装し、異能を持ち、魔術を行使する違反部活。彼等は明確な敵対行動を取り、我々の投降勧告を無視し、既に委員達にも死者が出ているとする。
これでもお前は――殺さぬのだろうな。きっと、お前は。
それはそれで良い。お前の代わりに、私が殺してやろう。殺したくないのだろう?傷つけたくないのだろう?ならば私が。鉄火の支配者が。代わりに殺してやるとも。仲間の為に。学園の為に」

そして、許されないのだと。最早消え入る様な、言葉にならない声で己に告げようと懸命な少女を見据えると。

「どうしても止めたければ簡単な事では無いか。私を殺せばよい。そうすれば、私が殺す人々を救うことが出来る。私が殺す悪人を、犯罪者を、他者を害する者を救うことが出来る。
何時でも構わぬぞ?任務に同行したいというのなら、希望を出すと良い」

どうせ出来ないだろうが、と傲慢な声色で。
少女の慈愛と理想を、正面から切り捨てる。受け入れない。

フィスティア > 「"諦めた者"...」

神代が飲んでいた物よりも甘く甘いかもしれない理想を切り捨てられた少女は、絶望するでも、傲慢さに慄くでも、後ずさるでもなく。
決心した。

月夜見の言葉を思い出して、呟いて。
納得した。

ああ、あの人の言う通りだ、と。
目の前のこの人は、やっぱり諦めている、と。
自分が殺してやっている、殺すのが楽だから、最も手っ取り早いからと。
理由をつけて殺しを正当化する目の前の神代に。
間違った答えを正解のように周囲に吹聴する子供を見るのと同類の憐みの笑みを神代に向けて。

「わかりました」

と、一言。
そのまま受け取れば、少女が少年に屈服したように聞こえるだろうか。
ただ、少女が浮かべている表情が、そう思わせないだろうか。

ああ、月夜見先輩。やっぱり彼らは敵ではありません。間違っているだけです。

神代理央 > 「ほう、面白い事を言うものだな。だが、それは認めよう。我々の様な人種は、救うことを諦めていると」

彼女の言葉を聞いて。彼女の憐れむ様な笑みを視界に捉えて。
酷くあっさりと、当然の様に、頷いた。
自分達は、諦めたのだと。

「当然だ。諦めもする。諦観もする。溜息をつきたくもなる。楽な道を選びたくもなる。救うとは大変な事だからな」

彼女の言葉を。此方に向けた意思を。言葉を。
次々と肯定し、己を含めた者達が"彼女の思う通り"救うことを諦め、思想を誤った末に人を殺すという道に至っているのだと、至極真面目な顔で続けていく。

「だってそうだろう?本当に諦めるしかないじゃないか。だって――」


「お前達は、先に諦めたじゃないか」

フィスティア > 「そうですね。
今丁度諦めたところです」

少年があっさりと認めたのと同じく、少女もなんの抵抗もなく、同じ笑みのまま、認めた。
そうだ、今は諦めるしかないだろう。
実績も力もない少女一人では、今は目の前の少年をどう足掻いても説得出来ない。

「ですが、諦めていませんよ。私はまた先輩を説得しにきます」

そう、今は諦めた。
しかし、全てを諦めた訳では決してない。
これから、少年を、過激派を、諦めた者達を説得するだけの実績と力を得ればいいのだ。
それが出来ていない今は、諦めるしかない。
だけど、それを得る事を諦めた訳では無いのだ。

そして、少女は気づかない。
命を奪う行為を、命が奪われる事を忌避するが為に。
今血を流す仲間が、これまでに血を流した仲間が
死んでいった仲間達の行動を無碍にしていることに。
否定していることに。
気づいていない。

神代理央 > 「…それは別に構わぬが。私を説得するのは大いに骨が折れると思うがね。それに、説得したところで私が是迄流してきた血が無くなる訳でも無い」

と、呆れた様な声色で彼女に言葉を紡ぎ始めて――

「説得するなら。想いを伝えるなら。まだ殺した事の無い者にすべきだと思うがね。我々の様に既に手を汚した者は。仲間を喪った者には。恐らくお前の言葉は届くまいよ」

そして、一度自販機に身体を向けると手慣れた操作で飲料を"二本"購入し、取り出す。
その内一本を彼女に差し出す。それは、ただの水。ごく普通の天然水。

「……それと。誰にそそのかされたのかは知らんがな」

「お前の理想は、不殺の決意は決して否定しない。それはヒトが目指すべき理想だ。だが――」

「その理想を、誰かの言葉を借りなければ実現出来ないのなら。――諦めろ。お前には、無理だよ」

と、小さく肩を竦めて彼女の元から立ち去り、本庁の奥へと消えていくのだろう。
また、人を殺す為の段取りを取る為に。また、己が背負う憎悪を増やす為に。

フィスティア > 「助言と...水も、ありがとうございます」

差し出された水を受け取りつつ、少し複雑な表情で感謝を述べる。
先程までああも傲慢に、言葉の砲撃を続けていた少年が突然同意にちかい意を示せば、
のちに続く言葉にも、同じ類の感情を向ける。
分かっているのに、と。
何故諦めたのか。何故私が介入する前からずっと諦めてしまっているのか。
...理解出来ない。

「...私は、私の考えで。私の望むように、動きます。
借り物では終わりません。先輩」

誰かの言葉を借りなければ実現できない、なんて。
私は元から不殺を願って、今も不殺を願っている。
確かに、月夜見先輩から助言は受けました
ですがー

「これは私の理想です。必ず、私の言葉で、私の意思で。終わらせて見せますから」

その為にも、ここは少年の背を追うような時ではない。
今は、少年の背をおう理由を無くす為に行動しなければならない。
不殺を、最善に、次善にさせないで。
白衣の天使の、白い少女の決意は硬い。
覚悟の決まった、確固たる意思の元。少年の背を見送った。

ご案内:「風紀委員会本庁 玄関ホール」からフィスティアさんが去りました。