2020/08/30 のログ
ご案内:「委員会街/公安委員会本部」に東山 正治さんが現れました。
東山 正治 > 公安委員会本庁、某一室。
とある部署にて、机に向かいながらホログラフモニターと
紙束となった資料を交互に気だるそうな瞳が見つめている。
東山の主な仕事と言えば、こう言った書類仕事だ。
公安委員会は諜報機関。情報とは"鮮度"だ。
常に移り変わり、正しい情報へと、訂正を繰り返し
情報の出所の是非、マークを付けた人物・組織に対する人員の派遣。
東山で出来る範囲の裏方仕事は大よそこうやって片づける。
ただ……。

「ハァ~~~~~~~~~~~~~~~」

東山は、この作業が死ぬ程嫌いだった。
思い切り椅子にもたれて、室内に響くほどの溜息が漏れる。

天音 >  
「東山さん、仕事ちゃんとしてください」

隣のデスクでてきぱきと書類を整理する天音から苦言が飛んできた。
糸目のピンク髪の女性。東山の部下だ。

東山 正治 >  
「わかってるってぇ、そんなカリカリしないでよ天音ちゃん。
 ハァ~……ダル。風紀の連中はいいよなァ。アイツ等
 最悪"現場対処"で終わりだし、俺等も楽してェなァ~~~」

公安委員会は諜報機関である。
場合によってはその場による組織解散権を使い、取り締まる事はあれど
やる事と言えば風紀委員の様に表舞台に出るようなことはなく
舞台の裏側でせっせと動く、謂わば縁の下の力持ちである。
その結果この様に仕事が溜まる上に、人材の無駄な動きはさせれない。
教師である東山も、委員会の中では等しく諜報員の一人だ。
書類仕事が終われば、もれなくあくせく諜報活動。

「今日も2時間睡眠かなァ……」

天音 >  
「それ、『隣の芝生は青い』って言うんじゃないんですか?
 幾ら風紀委員でも、いきなり人の事取り締まれませんよ」

ため息交じりにツッコまれた。
東山は思わず、肩を竦めた。

東山 正治 >  
「おー、天音ちゃん怖……そんなんじゃ彼氏できないよ?」

天音 > 「もしもし、生徒会の人ですか?今ちょっと同じ教員からセクハラを……」
東山 正治 >  
「アーーー!!嘘嘘!とりあえず受話器下ろして!」

一体どこから取り出したんだ、あの黒電話。
慌てて宥めたらジト目で受話器を下ろしてくれた。
危なかった、危うく人生終わる所だった。
そもそもあれ、生徒会に直通してるの?嘘だろ。

「まぁ、冗談はともかくさ……今の所"ホシ"ってどれだけついてんの?」

天音 >  
天音がテキパキとホロキーボードを叩けば
東山の正面のモニターに資料と常世島の地図が出現する。

「今は落第街に一つ。違反部活に所属している二年の生徒、違反生徒ですね。籤山 魁人、風紀委員の一人が逃し屋、麻薬の売人ですね。
 一時期、島の外で流行った麻薬を落第街で売りさばいて、まだ表沙汰になっていませんけど、渋谷と歓楽街にもちらほら出回っているようですね。
 輸入ルートは既に此方で"確保"してますので、近々品の確認に現れるでしょう籤山 魁人が常世港に現れた所を"対処"出来ますよ」

東山 正治 > 「港でこっそり……だっけ?ハハ、チンケな商売してるねェ。
 部活動の方も芋釣るで行けるでしょ。風紀委員の方にさ
 三人位要請してさ、一人こっちで一応持ってこうか。適当に空いてる人送っといて。次」

天音 >  
「適当って、東山さんそこは指示してくださいよ。
 もう、本当に"適当"に選びますからね。えーっと……」

「アー、こっちはもう"終わってます"ね。渋谷の黒街、つい最近不法入島してきた島の外の犯罪者ですけど、剱菊さんが"確保"したみたいです。
 今頃、風紀委員の方で留置所いきじゃないでしょうか?」

東山 正治 > 「え、マジ?アイツ謹慎明けに早速何やってんの……引くわ……次」
天音 >  
「なんで自分の部下の戦績で引いてるんですか……どんだけ嫌いなんですか……もうっ」

「それで次は……そうですね、異邦人街の方に一人。
 異邦人の方みたいですね。つい最近、『門』から出てきた所を生活委員会で保護。
 今は異邦人街で暮らしてるみたいですけど、余り"よくない噂"が……此方は目星をつけただけで、未調査ですね。
 大きな事件にはならないと思いますけど……」

東山 正治 >  
「"文化も人柄もわからないから一応調査"……でしょ?
 あーあー、また勝手に人様の土地にコイツ等入ってくるんだからさ
 やってらんないよねェ……本当に」

薄ら笑いを浮かべながら、言葉は吐き捨てられた。
東山は、異邦人や、怪異、畢竟地球人以外が嫌いだった。
何が学園を、この島を揺るがすかは分からない。
大事に至る小事をそのままつぶせるのであれば、それに越した事はない。
地味な活動だが、其の活躍あっての平和だ。
特に異邦人は、こちら側の常識は期待できない。
こう言うのは早急に対処する必要がある。

「後で生活委員会から、ソイツのデータ要求しといて。
 対処は俺の方でやっとくわ。あと一人つけておきたいんだけど、剱菊ちゃんは……いいかな。
 あー、そうそう。いたよね、丁度仕事一緒にしたいと思った奴がいてさァ、上長ちゃんの部下の、確か……」

嬉々として語っていたが、ふと思い出せば笑みに苦い色も混じった。

「……城戸ちゃん、辞めちゃったんだっけ?」

天音 > 「えっと、城戸 良式さん……ですよね?はい、辞表を"受理"したと聞いてますけど、残念ですね……」
東山 正治 >  
「"受理"、ねェ……」

よく言う。どうせ、"後から"受理したものだろう。
公安委員会の特に"足切り"の得意さと言ったら嫌という程知っている。
城戸が如何にして委員会脱退に至ったかは知りはしないが
少なくとも、城戸が動く前に籍はなかっただろう。
やだやだ、と東山は首を振って席を立つ。

「どうにも、気に入った奴は辞めちゃうねェ。俺、一緒に仕事も話もしたことねェけど、城戸ちゃんの事割と好きになれそうだったんだけどなァ……」

天音 > 「東山さんが言うと、ろくでもなさそうですね。
 そう言うの……どこが気に入ってたんですか?」

東山 正治 >  
「それ酷くない?俺の事なんだと思ってるのさ……」

一応部下を持つ身としては、それなりに身内に優しくしていたが
この言われよう。流石にちょっと傷ついた。
うえー、と表情を歪めれば懐から煙草を取り出した。

「まぁ、何処って言うと……んー、……雰囲気、かな?」

天音 > 「雰囲気……?」
東山 正治 >  
「そ、雰囲気。なんだかさ、何もかも『気に入らねェ』って感じ?
 もし、俺が感じたままの雰囲気なら、結構好きなタイプだったかなァ、って。
 まぁ、お互い喋った事もないからさ、実は雰囲気だけってのもあるけどね」

取り出した煙草を咥えれば、天音へと軽く手を振った。

「じゃ、とりあえず"出る"わ」

天音 > 「はぁ……よくわかりませんけど、お気をつけてくださいね」
東山 正治 >  
いぶかしげな天音をしり目に、東山は部署出ていく。
本庁の廊下を一人、静かに歩きながら煙草に火をつけた。
白い煙が静かに漂い、メンソール独自の匂いが僅かに漂う。

「……だってさァ、たまらねェよな。どいつもこいつも……
 『こんな世界』にいる奴等、気に入らないよなァ……」

土足で人様の土地を闊歩する異邦人や怪異共。
例えそれが本意で来た訳でも無く、或いは昔から根付いたものでも
地球人が気づいた歴史を、文化を大きく変化させた"劇薬"だ。
無論、当時は混乱しただろう。<大変容>とはまさにそうだ。
だが、当の地球人はそれを受け入れ始めている。
世界は安定期に入り、誰も彼もがそれを"疑問"に持たなくなっている。

「テメェの異能一つとっても、異物と思わないのかね……?
 俺はたまンねェよ。テメェの持ってるモンが気持ち悪くて仕方ねェ」

便利だからこそ使う。
だが、其の力には何時でも疑問を持っている。
これは、"人の手に余る"。
人が持つ才能とも、器官とも言おうとも、これは"不必要"なものとさえ、思っている。

「なァ、城戸ちゃんよォ……」

いるはずもない人物の名前を呼び、東山はくつくつと喉を鳴らして笑った。

東山 正治 >  
 
      ──────肌をなぞるような不快なせせら笑いも、やがて闇へと消えていった。
 
 

ご案内:「委員会街/公安委員会本部」から東山 正治さんが去りました。