2020/09/25 のログ
ご案内:「風紀委員会本庁 とある委員の執務室」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
日が落ちる時間も随分と早くなり、煌々と灯りが灯る時間が長くなってきた。
夜更け、とは言わずとも夜間というには遅すぎる時間。
白く輝く照明の下で、静かに事務処理に励む少年の姿があった。

入院期間に溜め込んでいた事務書類の整理。
新部隊設立の為の事前会議。
学園祭などのイベントに向けた警備計画の打ち合わせ。
イベントに伴う風紀委員会への勧誘案の精査。
新入委員の訓練計画。
装備調達の為の『島外』の企業との打ち合わせ。

鉄火場に立つだけが風紀委員の仕事ではない。
かの小太りからずいずいと押し付けられた書類や会議のスケジュールは、それなりに『多忙』と言うに相応しいものであった。

「………事務仕事はまあまだしも。打ち合わせや会議のスケジュールが些かタイトかもしれんな。
回せるものは日中に回してしまって、警邏の時間を作らねばならんか……しかし、余り日中に回すと講義との兼ね合いもあるし…」

浮かび上がるモニターを眺めながら溜息を一つ。
こういう時、もう一つ身体があればいいのにと切に思うばかり。

神代理央 >  
極端な話、書類仕事だのなんだのと言った仕事は、自分より出来るものに任せてしまっても構わない。
最後に精査して、問題なければ承認して上に回す。
己の仕事とは、そういうものなのだから。

問題は、面会だの打ち合わせだの会議だの。
己が直接参加しなければならない『顔合わせ』の仕事だ。
此ればかりは、早々代理を頼む訳にもいかない。
委員会内部ならまだしも、他の委員会との会議ともなれば、彼方の参加者の役職に見合った者が必要になる。

今はまだ、己も其処までの仕事が割り振られている訳では無いが――

「人を頼り、人を使え。という事何だろうか。
現場に出る事も大事だとは思うのだがな…」

思案顔で独り言を零しながら、座り心地の良い椅子に深く身を預ける。
私費で購入した物だが、小柄な己の体躯を受け止めるに相応しい貫禄の椅子で個人的にとても気に入っている。

そんな椅子に身を預け、ぼんやりと天井を見上げれば零れ落ちるのは少しはしたない欠伸。

「……くぁ…。
いかんな…少し、疲れが溜まっているだろうか…」

退院後すぐに勃発した落第街での戦闘。
その際の精神的なダメージは今のところ再発はしていないが――
急に事務仕事がやたらと回ってきたのは、その一件もあるのかもしれない。

ご案内:「風紀委員会本庁 とある委員の執務室」にレイチェルさんが現れました。
レイチェル >  
風紀委員本庁、執務室。
今はスケジュールカレンダーに作った『空き』の時間を過ごしている。
倒れてから、そして何より華霧と約束してからというもの、
『空き時間』と称して書類仕事から離れ、
多くの風紀委員達と接する時間を作っている。
この時間は、レイチェルにとって、とても楽しい時間だった。

そして、今日。
レイチェルは、この執務室に確かな目的を持って足を運んでいた。
執務室の扉を開ける彼女の左手にあるのは茶色の紙袋である。

「よ、すっかり元気になったみたいじゃねぇか。
 なんつーか、お前も結構タフだよな」

一人で書類仕事を進めている理央に向けて、
レイチェルは少しばかり眉を下げながらも笑みを見せて、
近くへと歩み寄っていく。

「でも疲れてんなら……ちょいと休憩しちゃどうだ?」

そう口にして、空いている椅子にとすん、と座って
右掌を広げ差し出すように前に出せば、
レイチェルは理央へ向けて小首を傾げて見せた。

神代理央 >  
基本的に訪れる者の少ない執務室である。
故に、開かれた扉の音には些か驚いた様な視線を入室者に向ける事になるだろうか。
何せ、完全に油断して欠伸まで漏らしていた最中。御世辞にも、行儀が良い場面とは言い難い。

「…レイチェル先輩、ですか。誰かと思いました。
まあ、現場に出るより体力を使う訳でも無し。とはいえ、頭を使うのはそれなりに疲れるものですが…」

タフだな、と投げかけられればそれに応えるのは苦笑い。
零した欠伸を仕舞いこみつつ、訪問者を出迎えようか。

「そうですね…丁度一息入れようかと思っていた所です。
と言っても、大したおもてなしは出来ませんが…」

彼女の言葉に大人しく頷くと、広げた儘の資料だのなんだのを片付けてスペースを作る。
雑然、という程でも無いがそれなりに資料の散逸していた机は、その大きさのおかげもあって取り敢えず来客を出迎えるスペースは確保できただろうか。

「紅茶と珈琲、何方が御好みですか?残念ながら、インスタントになりますけど」

椅子から立ち上がれば、棚に設置された機械へ足を運びつつ、彼女に視線を向けて首を傾げるだろう。

レイチェル >  
「ま、お前のことだから退院しても根を詰めて……
 机にかじりついてるんじゃねぇかと思ってさ。
 ちょいと邪魔しに来た」

ほんの少し前までは、レイチェルもそうだった。
毎日、風紀の書類仕事に埋もれていたものだ。
今も勿論書類仕事は続けているが、きちんと後輩と分担することで
随分と負担は減っている。だから、こうしてスケジュールに空き
を作ることだってできるのだ。

「おっと、悪ぃな――」

資料が散らばらないように、そっと横へどけるのを手伝う。
その最中、資料にさっと目を通しつつ、彼が行っていた仕事
を見て取る。

「――ああ、風紀の勧誘企画に、新入委員の訓練計画か。
 この辺は後で回しといてくれ。ま、さておきだ――」

さっと見て、少し声をかけるに留める。
あくまでも今は、『空き』時間だ。

「――紅茶で頼む。今日は、紅茶に合うこいつを持ってきたからさ」

そう口にすると、レイチェルは紙袋の中身を取り出す。
それは透明の袋に詰められたクッキーである。
星型の中に色とりどりの猫の顔の形を象った飴が輝く、
ステンドグラスクッキーがそこには詰め込まれている。