2020/10/12 のログ
ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁刑事部」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
斜めに赤い光の差し込む部屋
シャッとブラインドを閉じればそれは遮られ
薄暗くなった部屋に代わりに照明を灯す

秋の夜長は釣瓶落とし、なんてよく言ったもので、
夕焼けなんて1時間もすれば深い闇に閉ざされる…

そう、今日は残業です

伊都波 凛霞 >  
「とりあえず落ち着いたらしい朧車の件の報告を纏めて…やー、すごい量…」

直接現地での仕事こそ回ってこなかったものの、
風紀委員だけでなく多くの生徒が事件に関わった
当然、と言わんばかりに、報告書のコピーを要請したところ机の上には山のように書類が並ぶこととなった

「大変だけど目を通して、ちゃんとファイリングしておかないとね」

デスクについて、一つずつ、上から順番に手にとってゆく
小規模でない怪異の発生はそう頻繁にあることでもない
次に起こった時に更に円滑な初期対応と、迅速な解決方法を模索するため、
これらのデータはきっちりと精査しておくべきだろう

伊都波 凛霞 >  
「面制圧力の高い理央くんが最前線にいたのは知ってたけど……」

その上でも、なかなかの件数
他の風紀委員との共闘もあったとはいえ…
事態も一応の収束を見たようだし、労いのメールでも送っておこう
あれから彼とは話していないけれど、彼にとってこの事件は一つの事件以上に大きなものになった筈…
同じ報告書に連名で表記された風紀委員…水無月沙羅の名前を見て、ふぅと溜息が漏れた

お互いがお互いの幸福を望んでるはずなのに、どうしてあんな

「──と、次」

よくない考えにハマりそうになり、強制的に次へと思考を移す

伊都波 凛霞 >  
それなりに面識のない風紀委員や、迷い込んだ一般生徒、公安委員の関わった報告も散見される

「朧車『ロ号』…風紀委員2名によって浄解……」

連なる名前は…確か元・公安委員の…鉄火の代行人
その名を冠する彼は、相応の戦力の持ち主に相違ない
それでも負傷者を出す程度には、今回発生した怪異は強力だったのか
報告内容を並べてみるとそれなりに個体差はあるようだったが

「…と、なると…一人で百鬼夜行を潰したこの芥子風くんは余程だねえ」

『鉄火の代行者』のように名の知れた風紀委員以外にも、
特化戦力と言える生徒がまだまだいるのだと思い知らされる

伊都波 凛霞 >  
単独で朧車を撃滅せしめた報告書は他にも在る
第一級監視対象まで持ち出すとまでは思っていなかったけど

「…と、これはこっち…」

その一つの報告書は、個別にファイリングする

追影切人によるG号の斬滅
彼の戦闘能力は十分に知っているし、適材適所…としたいのだろうけれど
風紀委員の都合で監視対象を出したり引っ込めたり…なんていうのは少々腑に落ちない
システムに文句をついてたところでどうにかなるものでもないのだけど

「…これで半分くらーい?」

うーん、っと背伸びをして、肩をトントン、と叩く
デスクワークは肩が凝ってよろしくない
制服姿だし、肩がこわばるのは仕方がないんだけど
他の理由?知りませんね…

伊都波 凛霞 >  
席を立ち、インスタントコーヒーをマイカップに淹れてデスクへと戻る
可愛くデフォルメされたおうまさんがプリントされた愛用のカップ、以前妹と一緒にペアで買ったもの

「ふー……」

珈琲を口に運びつつ、小休止
ブラックな苦味と酸味が口の中に広がり、香りもまたリラックスさせてくれる
子供の頃はわからなかったけど、仕事場で珈琲は能率が上がるのかもしれない

伊都波 凛霞 >  
「さて、続き…っと」

まだ半分はゆうに残っている
目を通しながら要項にマークし、
別途メモに写し書きなんかもしているせいでそれなりに時間がかかってしまう
けれどこれも後々、要点毎に精査するタイミングで必要になる作業だ

「…ん、不凋花さんも現場に行ってたんだ」

知った名前を見つけ、手が止まる
慰安旅行での記憶がまだ新しい
戦果をしっかり挙げているあたりは、流石といったところか──

伊都波 凛霞 >  
「…中規模発生とはいえ、個体によっては理央くんの制圧力でも手を焼くことがあったレベル、かぁ…」

おおよそまとめが終わりにさしかかり、今回の事件の規模とその発生した怪異の戦力を考察する
また次、似たような事件が起こらないとも限らない
発生条件の特定などができているなら、事前に抑制することが可能か否か…も含めて
今後の警戒と、さらなる初期対応の迅速化を測るためのあらゆる提案を考えてゆく

「っていっても、神隠し的に向こうに誘われるんじゃ、近寄らない以外ないのかなって感じもするけど…」

カップを傾けながら、残った報告書の最後の一枚を手にとる

伊都波 凛霞 >  
「ん…」

最後の報告書は少しだけ枚数が多かった
どうやら怪異の発生に巻き込まれた人数が比較的多い事案だったらしい

「要救助者、全四名を、当該裏常世渋谷調査・巡回中の風紀委員が保護。離脱可能な異能を用いて帰還…」

うち一名の軽傷者は医療施設にて簡易治療で問題なく回復
健康状態に問題はなく、検診の後下校──
なお、発見した風紀委員によると、「般若面の朧車」が車両の半分を喪失した状態で討伐されているのを確認──?

発見した…ということは対応した風紀委員は別人ということである
大体は、朧車を討伐した風紀委員が報告書をあげるモノだ
珍しいな…とこの時は、それくらいにしか思っていなかったが──

伊都波 凛霞 >  
「該当する朧車を討伐したのは、風紀委員の史乃上空真咬八──…」

"史乃上空真咬八"
"現在、帰還報告はなし"
"又、当該する裏常世渋谷からの離脱も未確認"
"数名の風紀委員が行方を捜索している"

"なお、一週間以内に発見及び保護の報告が無き場合"
"救助活動中における消息不明者(LOST)とする"

ガタン!!と大きな音が室内に響いた
…自分くらいしか残業していなくて、良かったのかもしれない

デスクの前に立ち尽くす凛霞
そしてその後ろでは、椅子が倒れからからとキャスターが空回りしていた

伊都波 凛霞 >  
「帰還報告なし…って、何で」

一瞬、呆然とした後
デスクに備え付けの端末を引っ手繰るようにして手にとった

「あの、刑事部の伊都波です!!
 朧車の件について至急確認したいことがあって──」

………

……



上の空だった、というつもりもないけれど
報告書以上の情報はない、と言われた時点で、頭の中は真っ白だったかもしれない

デスクの上には数枚の報告書のコピーと、端末が投げ出されて
凛霞本人は、起こした椅子の上で、ただ俯いていた

伊都波 凛霞 >  
「………」

既に彼の捜索は行われている
それでも期限が一週間?短すぎる
文面からだって、そんなに絶望的な話じゃない
──あの時とは違う

レイチェルさんに相談した上で、自分も捜索に加わる?
自分の異能…サイコメトリーがあれば、彼を見つけることが出来る可能性は…
…否、異空と化したエリアで記憶の残滓が正常に残る可能性なんてない
──それでも、人足は多いに越したことはないはず
…既に定められた捜索隊がいる以上、越権行為だろうか

伊都波 凛霞 >  
彼…史乃上空真咬八は自分と夷弦の共通の友人であり、幼馴染とも言える
自分のことを慕ってくれているし、自分も彼を頼りにしたことは幾度もあった
夷弦がまだ人に戻れず、鬼として在った頃に、その存在を匿ってくれていたのも彼である
返しきれない、恩がある

──それ以上に…

「…また、戻ってこないかもしれない誰かを、ずっと待つ…?」

「………やだ」

それは、絶対に拒否する

決めた
裏常世渋谷へ彼を探しに行く

ただし…それは腕章は外して、だ

伊都波 凛霞 >  
トラウマだとか
思い出すと辛いコトだとか

払拭しないでそのままにしておいてただ待ってるだけなんて

さすがに同じ結果を二度享受するほど、弱く在るわけにはいかない

報告書のコピーを手早くまとめ、ファイリングしバッグへと収める
冷めかけた珈琲をぐいっと一気に煽るようにして飲み干して…
ぱちん、と自分の両頬を張る
凛霞の気合を入直す時の癖みたいなものだ

姉は強くあらねばならない、妹に心配などされないように…
そう言い聞かせて生きてきた頃を思い出す
なんなら虚勢でも構わないのだ。それで前に足を進められるなら

伊都波 凛霞 >  
"一人で抱え込むなよ"

誰かの、聞き慣れた女性の声が聞こえた気がする

「…わかってますよ。仲間ですからね」
「──私一人でダメだったら、その時はお願いします」

自分以外誰もいない、刑事部の室内で
誰ともなしにそう言葉を残し、迷いを振り切るようにして部屋を後にするのだった

ご案内:「委員会街・風紀委員会本庁刑事部」から伊都波 凛霞さんが去りました。