2020/11/16 のログ
ご案内:「風紀委員会本庁 大会議室」に神代理央さんが現れました。
おさげの風紀委員 >  
「えー、此れで常世祭に向けての大まかな打ち合わせを終わります。
後は、その他報告事項や検討事項があれば、質疑応答の時間を取りますのでっ」

常世祭。学園を上げての大きなイベントともなれば、警備体制もばっちり入念に強化しないといけません。
今日は、その打ち合わせ。といっても、本番に向けての簡単な業務打ちあわせといったところではありますが。

ところで、どうして一年生の私が司会進行なんでしょうか?
居並ぶ先輩方を前に色々発言するのは気が引けます…。
というか怖いです…。
おうちかえりたい…。

神代理央 >  
さて、打ち合わせも終わり各警備担当者と簡単な顔合わせも出来た。
といっても、特務広報部が警備を担当するかと言えば微妙なところ。
先ず、柄が悪い。次に、見た目がその…アレだ。

全身を真っ黒な装甲服で包み、素性を晒さぬ様にガスマスクを装備した隊員達。控え目にいってもいいところハロウィンだ。
時期外れだが。

恐らく、精々何かしらの出し物をするか、大きな問題が起こらなければ声がかかる事も無いだろう。
隊員達には休暇を与えようかな、なんて思考を巡らせながら資料を片付け始めようとしていた。

その矢先。

大剛 俊也 >  
 
 

「……一つ、良いでしょうか?」
 
 
 

大剛 俊也 >  
手を上げて、発言の許可を求める。
一年生の進行役の少女が、びくっ、と身を縮こませてどうぞ、と小さな声で発言を促した。
其処まで驚く事ないと思うんだが…まあ、良いか。

「常世祭、という大きなイベントの前に懸念事項を共有しておきたい。
最近、落第街…と呼称される区域での風紀委員会への反発が上昇傾向にある。
今はまだ大きな問題にはなっていないが、火種になった儘、というのは懸念材料だと思う」

「その原因の一つに…その、なんだ。
特務広報部の活動があると私は認識しているのだが…。
神代部長の意見を、聞いておきたいと思った次第だ」

俺の言葉に、ざわめく室内。
しかし、会議室の大勢を占めるのは、この発言に同調する様な空気。
落第街に対する過剰過ぎる迄の摘発。
いや、最早摘発という言葉すら生ぬるいかもしれない。

落第街の住民とて、風紀委員会で保護すべき常世島の住民なのだ。
それを、虫けらの様に扱って良い謂れなど無い。
まして、神代は先日の任務の際、石を投げた子供へ発砲したとの報告も上がっている。
倫理観の欠如、とすら言えなくもない。風紀委員会の評判を貶める様な事は、許して良い筈がない。

神代理央 >  
発言したのは、大剛という委員。
警邏部のベテラン委員、と記憶している。
柔道部も兼務しており、所謂"大和男児"という風貌の青年だ。

そんな彼だからこそ、アナログチックな正義感に燃えて此方を糾弾しようというのだろう。
…いや、別に彼でなくても。会議室の空気や向けられる視線を見れば、己に対して好意的な様子は見受けられない。
『やり過ぎだ』とでも言いたげな視線が、其処かしこから向けられている。

「……永吉さん。発言しても良いかな?」

司会を務める少女に視線を向けて、小さく首を傾げる。
向けられた"敵意"には、闘争を以て答えねばならないだろう。

永吉 灯 > 「ひう!どうぞどうぞ発言してください!」

やめて、私に聞かないで。
何だか怖い部隊を率いているとか何とかという神代先輩に声をかけられただけで怖い。
とくむこうほーぶ…だったかな。へるでんなんとかとかいうカタカナの呼び方もあるとか言ってた。興味無いけど。

とにかく、早くこの質疑を終わらせて帰りたい。
還る前にパフェ食べたいの。
だから早く終わらせてお願いします。

神代理央 >  
「…有難う。あと、もっと司会進行役はどーんと構えていて構わないから。別に、先輩後輩を気にする役割ではないんだし」

と、怯えた様な少女に少しだけ苦笑いを零しながら立ち上がる。



「……さて。大剛委員からの懸念事項について、否定する言葉は特にありません。
現在の旧歓楽街エリア……以後、落第街と呼称しますが。其処の情勢不安に、特務広報部の活動が及ぼす影響たるや大である事は認めるところです」

自分達の活動によって、落第街が荒れている。
それは、素直に認めるし、認めた事への驚きは周囲からも感じられない。
当たり前だろう、と言う様な視線が大半だ。

「さて、其処で私は皆様に問いたい。
一体それの何が問題なのか、と。
そもそも、我々特務広報部が今回落第街での大規模な活動に至ったのは、神宮司委員襲撃事件が発端となっている事を、よもや忘れた訳ではあるまい?」

「風紀委員会上層部の委員が襲撃された。
しかも犯人は、護衛についていた後藤委員と互角に戦い、私の異形の攻撃すら怯まぬ実力者だ。
それだけの戦闘力を持つ者が野放しになっているということを、放置する訳にもいかないだろう」

「そもそもとして。
何故落第街に対して我々風紀委員会が配慮する必要があるのか疑問を呈したいところだ。
あそこは、貧民窟の様な扱いをされてはいるが、実質的には難民街だ。此の島で、学生生活を送るだけなら貧しさで困窮する事は無い。
貧困に困窮する学生、という者は、此の島には本来存在し得ぬのだから」

会議室を見渡し、朗々と言葉を吐き出す。
奇妙なまでに静まり返った室内に、フン、と尊大な吐息を零した。

ご案内:「風紀委員会本庁 大会議室」に四方 阿頼耶さんが現れました。
大剛 俊也 >  
「……だから何だ!難民街なら暴力を振るっても良いというのか!
あの場所に住んでいる人達にだって、生きる権利はある筈だ!」

あまりにあんまりな神代の言葉に、声を荒げる。
貧民街と難民街の違いがあるから何だというのか。
どちらにしたって、此の島で暮らす者には変わりないのではないのか。

「強制的な島外移送や、転移荒野への連行。
それに伴って、落第街の住民への暴力…いや、虐殺と言っても良い。
そんなことが、許される道理があるはずがないだろう!」

四方 阿頼耶 >  
ガチャリと扉を開けながら入ってくる人物が一人。
風紀委員の制服ではない、蒼いジャケットにサングラスの男性はそのまま静まり返った会議室に我が物顔で進んでくるだろう。

「どうもー。
 いやぁ、会議してるって聞いてついね。
 何か急に静かになったからいい感じに区切り入ったのかなって入らせてもらっちゃいました。

 公安員会の四方阿頼耶です。
 知ってる人もいると思うけど、一応まずは挨拶をね」

公安委員会。
活動が秘匿される事の多いその委員会は、誰が所属しているかも公表していない場合が多い。
そんな中で数少ない、表立って『公安委員会所属』と情報を開示している人物。
風紀委員にも、ちょくちょく顔を見せている。
既に名を知っている人物もそれなりに多い事だろう。

「何やら物々しい話してるけど、お邪魔だったかい?
 いやぁ、連行とか虐殺とか物騒な話してるじゃないの。

 風紀委員の会議ってもうちょっと穏やかなの想像してたんだけど、随分過激なご様子だ」

神代理央 >  
入室した闖入者の姿に、ざわめく室内。
そんな彼等が静まり返るのを待って、入室者と立ち尽くした儘の大剛に交互に視線を向けた後。

「…これはこれは。何時ぞやの懇親会で御会いして以来、でしょうか。四方さん。
ようこそ、風紀委員会へ。お茶を出せる様な場所ではありませんが、まあお寛ぎ下さい」

と、形式ばった挨拶を返した後。
大剛と四方の二人に応える様に、言葉を続ける。

「…さて、公安委員会の方にもお越しいただいた事ではあるが、先程と私の答えは変わらない。
連行、虐殺といった言葉を使われるのは心外ではあるが、そう取られても仕方のない活動内容だと認識はしている」

「寧ろ、今迄落第街に対して其処まで強硬策を取る委員や組織が無かった事が、今日の状況を生み出していると言っても過言では無いと思うがね。
旧世紀において、難民対策に失敗した欧州国家が辿った苦難の道程を、履修していないのなら理解が及ばなくても当然ではあるが」

小さく肩を竦めると、ゆっくりと息を吸い込んで——


「同僚が襲撃されて尚、庇護対象ですらない者に配慮し、具体的な対策を取らないのであれば、それは『風紀』を守る事を放棄しているだけだ。
その様な軟弱が、許されるものか!」

大剛 俊也 >  
神代の言葉に、何か言い返そうとして――言葉は続かず、力無く椅子に座り込む。
後は、突然訪れた公安の者に任せた、と言わんばかりに。
大和男児は、項垂れた儘発言をする事は無いのだろう。

四方 阿頼耶 >  
「いやいや、そもそも軟弱も何もさ、道理が通ってないじゃない」

何言ってるの?という顔をして、その言葉に返した。

神代理央 >  
「…ほう?道理を説かれますか」

大剛は、どうやら此れ以上反論する事は無い様子。
さて、となれば。後は特務広報部に異を唱えるのは、訪れた公安の男、くらいだろうか。

「道理とは、また可笑しな事を。
そもそも、あの地区に対して道理を通す意義も感じられませんが。
今回の活動任務の発端は、神宮司委員の襲撃。
まあ、その捜査そのものは我々特務広報部が主として行うものではありませんので割愛しますが」

はて、と首を傾げつつ。

「風紀委員会に。ひいては、『表』の生徒達に害を為す違反部活生の温床となり得る落第街。
其処に対して、武力を伴う摘発を行う事が道理ではない、と?
博愛主義を説かれるなら、風紀委員会以外の場所をお勧めしますが」

落第街の住民に肩入れしている、という訳では無いのだろう。
公安の仕事を増やした事へのクレームの様なものでも言いに来たのだろうか。
兎も角、投げかけられた言葉に返すのは、彼に対して――というよりも、他の風紀委員を威圧するかのような言葉だろうか。

四方 阿頼耶 >  
「神代君の言いたい事はわかるよ?
 風紀委員の上役が襲われて何もしない訳にはいかないだろうし。
 落第街の人間による襲撃だってんならそりゃこういうやり方を取るって選択肢もある。
 それにしたってやりすぎだっていうのは僕も賛成だけど、それはまぁ置いといて」

それはそれ、これはこれ。
気持ちの話なんて今はする必要もないからね、と軽い口調で言いながら続ける。

「でも落第街の住人だって根拠は何処にあるんだい?
 歓楽街の裏路地にも犯罪は発生するし、裏常世渋谷、黄泉の穴、転移荒野、異邦人街、研究施設区域、その他大勢。
 ディープブルーの時は港で戦闘あったんだっけ?
 キナ臭い場所は他にもじゃないの。
 それこそもっと先に、こんな大がかりな事する前に穏便に調べる事の出来る場所はいくらでもある。

 それほっぽって落第街を真っ先に調べにいった理由は?
 ”まるでそこに居るって分かってる”みたいに。
 もしくは”そこに居ないのを分かっててやってる”みたいにさ。
 落第街の住人だって情報入ってたの?違うよね?

 そもそも神代君が報告したんじゃないの?
 『犯人についての見当はついてない』って」

そういう話じゃなかったっけ?と、たずねるように聞く。
神宮司の襲撃に関しては表沙汰にはなっていないとはいえ、風紀、公安の二委員会ならば情報を仕入れる事もそう難しい事ではない。
むしろ知っていなければ、仕事をしていないのではないかと疑われるような事件だ。

神代理央 >  
彼の言葉に、ふむ、と思案する様な素振り。
此の意見が公安から出て来るとは、と思わなくも無いが、寧ろ情報を司る公安だからこそ、といったところだろうか。

「状況証拠からして、落第街を真っ先に疑うのは風紀委員会として当然では無いでしょうか。
私ならまだしも、神宮司委員は今挙げられた落第街以外の場所に対して大きなアクションを起こした事はありません。
落第街以外の場所の住民から、恨まれる筋合いが無い、と言ったところでしょうか。
まあ、落第街を疑った、というよりも。襲撃犯の潜伏先として先ず疑うべきが落第街だった、と言うべきでしょうね」

「とはいえ、特務広報部が捜査に当たったのは最初期の段階です。
現在の活動は既に捜査任務ではなく、落第街区域での摘発が主です。
その際、穏便な捜査を行えなかったのは…まあ、遺憾の意とでも言っておきましょうか?」

落第街の住民が犯人だと確信を持っていた訳では無く。
『犯人が分からない』から先ず落第街を当たったのだと述べる。
酷い茶番ではある。己も神宮司も、犯人を知ってはいるのだ。
知った上で、こんな説明をしなければならないのだから。

「神宮司委員本人が、自らの襲撃犯捜索よりも、今後そういった事件が無い様に違反部活への締め付けを強化すべき、との考えですから。
その意に沿った活動を、我々特務広報部が行う事に、何か問題が御有りでしょうか?」

風紀委員会の活動に、余り首を突っ込み過ぎるのはどうなのか、と。
にこやかな笑みと、涼やかな声で、彼に尋ねてみせるのだろうか。

四方 阿頼耶 >  
「いやいや、だから言ってるじゃないの。
 ”道理が通らない”って」

ははは、と笑う姿はどこまでも変わる事なく、返す言葉をひらひらと受け流すように。
返される言葉が、総て分かってるかのように。

言葉を続ける。

「そもそもさぁ」

四方 阿頼耶 >  
「茶番だってわかってるならやめなよ。
 
 ”落第街にいない”って分かってんでしょ?
 だって――――」

四方 阿頼耶 > プルルルルルルルル
言葉を、着信音が遮る。
おっと、と言うような表情をして、青年が携帯を取り出し確認する。

「あぁごめん、次の予定があったんだった。
 いやぁ、申し訳ないね邪魔しちゃって。
 ちょっと早いけど俺はこの辺で失礼するよ。

 それじゃ、皆さんお勤めご苦労様!
 また来るんでそのときはよろしくネ」

そうひとしきり言うと、軽く一礼をし。
一度だけ一人の少年……神代理央の方に行くと肩をぽん、と叩く。

「         」

そして何か囁いた後、そのまま会議室を出ていくだろう……

ご案内:「風紀委員会本庁 大会議室」から四方 阿頼耶さんが去りました。
神代理央 >  
囁かれた言葉に返したのは、きっと傲岸不遜な笑みと吐息。
彼を見送りながら、彼が告げた言葉と、囁かれた言葉に僅かに思案する。
といっても、釘を刺されたところで。
いや、既に公安に犯人の目星がついていたところで。

「……特務広報部についての異議申し立ては何時でも受け入れている。
用件があるものは、私の執務室迄来ると良い。
それでは、私も次の任務の打ち合わせがあるので、此れにて失礼する」

資料を手早く仕舞いこむと、茫然と此方を見送る委員達を横目に此方も会議室を立ち去る事になる。

神代理央 >  
会議室から己の執務室迄向かう長い廊下。
塵一つ落ちていない廊下を、革靴が踏み付ける硬質な音が響く。



「……沙羅に目星をつけたところで。
公安がそれを嗅ぎ付け、神宮司や沙羅。その辺りの連中に接触したとして」

「ならば、それを上回る災禍を振りまく迄。
ならば、そんな"些細な事"を気にする余裕を無くしてやるまで。
些事を押し流す闘争と戦争を。憎悪と厄災を」

廊下を歩く少年から、僅かに軋む様な、金属の音。
それに気付きながら――気付かないフリをした。

「…私に、暴力の術を与えた事。
組織を与えた事。
その理由を与えた事。
その全てが、彼等にとっての悪夢である様に。
その全てが、私にとっての最善の選択である様に」

「……さて、何時まで道化でいてやろうかな」



執務室の扉は、少年を迎え入れた後固く閉ざされた。
今宵も、多くの命を刈り取る為の術が、此の小さな部屋で、策謀し続ける。

ご案内:「風紀委員会本庁 大会議室」から神代理央さんが去りました。