2021/01/09 のログ
ご案内:「委員会街 風紀委員会本部」に日下 葵さんが現れました。
ご案内:「委員会街 風紀委員会本部」にジーンさんが現れました。
日下 葵 > 風紀委員会本部。
委員会街に立ち並ぶ数多くの建物の中でも、一際目立つオフィスビル。
そのエントランスの待合スペースにその姿はあった。

「もうそろそろですかねえ」

端末の時計を見れば、午後を少し回ったところ。
約束の相手がもうすぐ来るはずだった。

「それにしても、年明け早々に荒れますねぇ」

待ち人を探すために視線をガラスの向こう、建物の外への向ける。
そこには一面の銀世界が広がり、慣れない足場に苦戦する人々の姿があった。
例年にない大雪に見舞われた年明け。
積雪といってもうっすらと化粧をする程度のこの島が、この街が、
一面雪に覆われてしまったのである。
おかげで都市機能の一部が止まったりと、
年明けから鉄道委員会や生活委員会が慌ただしい。

「ジーン、ちゃんと来れるでしょうか……」

そんな不安が、不意に口から洩れた>

ジーン > やはりインチネジは撲滅せねばならぬ。突然の大雪に合わせて改造したバイクを飛ばしながらジーンは改めて決意した。
改造を終えて余裕を持って到着する予定だったはずが、最後に外したミリネジをインチネジの箱に落としてしまったのだ。
ネジ箱の中から一本のネジを探す地獄の作業を終えて、今や時間ギリギリである。

後輪をキャタピラに換装したスノーバイク仕様のネイキッドバイクが、委員会街をエンジンの轟音と雪を撒き散らしながらひた走る。
雪かきで出来た山をジャンプ台に空中でインディアンエアーを決めながらガラスの向こうの恋人に軽く手を上げて挨拶。
着地してから本部の駐輪場にドリフトしながら停車してあるバイクの間に滑り込んで、鍵を抜きながら飛び降りる。

そしてまるで何もなかったかのように、突然のスタントマンの乱入に驚いている委員たちを尻目に優雅な足取りで本部の中へ。
いつもの薄い笑みを浮かべながら、ドアを開いた。
「やぁ、お待たせ、葵。もう少し早く来るつもりだったんだけどね、ヤード・ポンド法のせいで遅れてしまった。」

日下 葵 > 「……心配はいらなかった様ですねえ?」

流石にこの天気と路面なら徒歩だろう電車だろうなんて思っていたが、
例に漏れず彼女はバイクでやって来た。
バイクを運転しない身からすると信じられない光景だった、
というかバイクに載っている交通課の者も驚いているというか、若干引き気味。

後輪を雪道仕様に換装したバイクで登場したジーンには、
驚きと呆れの表情を浮かべる。

「どうせネジか何かを混ぜちゃったんでしょう。
 多少遅れるくらいなら一言連絡もらえれば全然問題ないですよ。
 むしろ焦って事故られても困ります」

これから大切な手続きだというのに、当人が事故の当事者だなんて笑えない。
いや、もっとややこしい輩は沢山いるが、面倒は避けたい。

「さて、早速ですが行きますか」

一度集まった周囲の視線が散ったくらいのタイミングで、声を掛けた。
もし準備ができているなら、このまま志願者受け付けの窓口への連れていこう>

ジーン > 「御名答、賞品は愛の言葉とかどうかな、二人っきりの時に。」
突如として現れ、化物と蔑まれ汚れ仕事を行う日下葵と親しい、というより明らかにそれを五歩は超えた会話をする異貌の人物はしばらく周囲の視線を集めるだろう。

「飛ばしてきたのは君とは一秒でも長く一緒に居たいのが9、改造でどれぐらい走れるか試したかったのが0.5と、事故るつもりなんてないのが0.5かな。」
普段は荷物をほとんど持ち歩かないが、今回は手続きにあたって必要書類を納めた革製の書類入れを肩から下げている。

「いやぁ、緊張するね。なんかコードネームとか考えておいたほうがいい?あと仮面のデザインとか、そういう世を忍ぶ感じのさ。」
移動するとなれば、緊張感を欠片も感じさせない声で、風紀委員を何かの秘密戦隊とでも考えているような冗談を飛ばしつつ、志願者受付窓口へ。

「あけましておめでとう、年明け早々労働に勤しむ風紀委員の皆さんにお年玉だよ。ぴちぴちの志願者だ。」
窓口の席に座って、書類入れから事前に葵から聞いていた必要書類を窓口に置く。

日下 葵 > 「……」

ジーンの言葉に、少し考え事をするような表情。
周囲の目を若干気にしたのか、
内緒話をするようにジーンの耳に顔を寄せて耳を手で覆った。

『この後なんですけど、時間があるならその、
 ちょっとうちに寄りませんか?』

その表情はなんだか硬い。
硬いというか、緊張しているというか、恥ずかしそうというか、
色々と含みのある表情だった。

そんなちょっとした内緒話をすれば、ジーンを窓口へと案内していく。

「コードネームだなんてそんな、
 相当特殊な任務を請け負ったりしない限りは必要ないですよ。
 私の仕事だってコードネームはないですし、
 ガスマスクだって私の欠点を補うためですし」

まるで戦隊モノのヒーローに憧れる子供のようなことを言うジーンに、
ちょっと困ったように笑いながら説明していく。
その表情は出会った当初の読めない笑みとは違って、随分自然に見えるはずだ。

「ちゃんと書類、持ってきたみたいですね」

窓口に書類を提出すると、受け付けの担当がざっと内容を確認していく。
そして確認を済ませると

『ちゃんとした確認をする間に口頭での説明をするのでこちらへ』

と言われて、別室に案内されるだろう>

ジーン > どうしたんだい?なんて聞くほど野暮ではない、据え膳、とは限らないが精一杯の彼女のお誘いを、声に出さず軽く頷いて了承の返事。

「そうなのかい、繁華街の外れの方は仮面を付けて偽名を使う連中がちらほら居るって聞くから、てっきりそうなのかと。
 なら私もガスマスクを着けようかな、君とお揃いでさ。それならバディだってわかりやすいだろうし。」
落第街の名は出さずに、建前上は落第街は存在していない、一般生徒が委員会の前であまり出すべき名前ではないだろう。
コードネームも仮面も要らないとなれば、愛しい相手とお揃いの装備へと話題が移る。

「身元保証には大分苦労したけどね、財団が私を入手した時のと、入学時の書類でなんとか代用できた。」
どこの誰なのか、それが書類にする上で一番苦労した。禁書に戸籍などあるはずもないし、ジーンを作った魔術結社は財団と接触していない。
地球出身なのが余計だ、異邦人ならそれまでの足取りがなくても問題ないが、そうではないために空白期間を埋めなければならない。
結果募集要項を隅から隅まで見直して、代用出来るものを引っ張り出して来たのだ。
特に問題なく受け取ってもらえれば、ほう、と小さく安堵の息を吐く。

別室に案内されるといやぁ悪いねえ、なんて言いながら立ち上がる。葵とはしばしお別れだろうか。

日下 葵 > ジーンが無言で頷くと、安心したように表情から緊張の色が抜ける。

「まぁ、装備は任務の内容によってある程度自由に選べますし、
 そろえるのは難しくないと思いますよ」

ガスマスクは支給品ですしね。
なんて言えば、別室に向かうジーンを見送る――が、私も呼ばれた。

『バディを組みたいって仰ってたので、説明は二人に聞いてもらいますよ』

とのことだった。
そんな間抜けなやり取りをしている間に、
机と椅子が置かれただけの簡素な部屋に通される>

担当 > 「『バディを組みたい』と言ってもですね、
 いきなり一緒に仕事ができるとは限りません。いくつか段階があります」

そう言って担当が説明用の資料を見せてくれる。

「まず第一にジーンさんに風紀委員として適性があるかどうか。
 テストする必要があります。
 適性試験後は第二段階として訓練、講習、実地指導を受けてもらいます。
 これで晴れて一般委員です。
 そして第三段階として配属先の希望をきいて配属となります。
 希望は取りますが、適正分野によっては希望通りにならない場合もあります。
 で、第四段階。ここでバディを組む申請をしてもらいます。
 ここまできてやっと、晴れてバディになれるわけです」

そんな説明をされると気付くだろうか。
単にバディを組むと言っても、とても道のりが長いということに>

ジーン > 「なるほどね?」
説明を聞いて、まぁ書類を出してすぐに風紀委員ですおめでとうとなれないだろうとわかっていた。

「まぁ第一、第二はやってみせるさ、でも問題は配属先だね。私ほら、かなり才色兼備だから、下手するとどこに行くかわからないな。
 葵の所属はどこなんだっけ?」
冗談とも本気ともつかない自己評価とともに、バディを組むにあたっての一番の懸念材料である所属先。
そもそも葵がどこに所属しているか知らなかった。それでは希望も何もあったものではない。
そんなことも知らないのか、と担当者の呆れ顔を物ともせず、葵の方を振り向いた。

日下 葵 > 「……適性試験は私がパスしたくらいだから問題ないと思いますよ。
 第二段階もジーンの戦闘能力なら訓練と実地指導は最短でいいはずですし、
 講習も現場での法律や規則の話ですし。
 ジーンが才色兼備なのは……事実でしょう。
 単独で戦闘能力が高いというのはそれだけで貴重な人員です」

担当の説明をより細かく、補足するように説明していく。

「私の所属は刑事部ですね。
 ただ任務内容が特殊なので普段は警邏部のヘルプですが。
 所属先についてなんですが、事情がある場合はすぐにバディを組めませんか」

担当を説得に掛かる。
今受けた説明はあくまで一般的な進路だ。
この島も、組織も、特例は腐るほどある。

「ジーンは私と同様、回復力と機動力、そして単独での戦闘力に分があります。
 おまけに痛みへの耐性も同程度にある。
 私が引き受けている特殊な任務を分担したいと私の方から申請します。
 それから、私自身人格にやや問題がある。
 ジーンなら私個人の意志からくる不安要素への抑止になる。
 この辺の事情は追って書類を提出しますが」

淡々と、しかしやや必死な様子で担当に話をしていく>

担当 > 「確かにいまの説明は一般的なもので、特例は過去にも数多くあります。
 ですので今の説明はあくまで一例として頭の中に入れておく程度でいいですよ。
 詳細は別途に書類をお渡ししますので」

ジーン > 「同意してくれるとは嬉しいね、君も美と才知を兼ね備えてるよ、葵。」
こちらに比べてどうにも彼女は自己評価が低い、惚気をかましながら褒めそやす。

「私としても風紀委員に入る目的の100%がこちらの日下葵とバディを組むためだ。つまり刑事部に配属して欲しい。それが叶わないなら即座に辞めるつもりだよ。
 彼女が言うに私は貴重な人材らしいから、それを考慮した上でお願いしたいね。」
ジーンからも説得の援護を、担当者は選ぶことになる。優秀な、日下葵と渡り合えるレベルの戦闘力を持つ人材を野に放つか、限定された用途とはいえ使うか。

「まーた書類か、封印される前は20年もしたらペーパーレス時代が来るって私賭けてたんだけどな。」
役所というのは紙切れと書類と手続きでできた要塞だ、とは誰の言葉だったか。
出すのも書類返ってくるのも書類、いつか紙の山に埋もれそうだ、といくらかうんざりした声色で。

日下 葵 > 「……いや、別に恋人だからとか、好き同士だからとか、
 そう言う私情でバディを組むわけじゃないですよ。
 ちゃんと仕事で必要だと判断したからバディの申請をしているんです」

ジーンがいつも通り歯が浮くようなことを口走ると、
机の下でジーンのつま先を踏みつけた。

”そういうのは人前ではやらないって言ったじゃないですか”

担当に悟られないように、視線と足元でジーンを牽制した。
たぶんバレてるけど。

「もともと紙の束だったのに何を言うんですか。
 書類なんて今更でしょう。
 それに仕事が始まれば報告書だ始末書だで毎日書類を見ることになりますよ」

新たな書類の提出に不満を漏らすジーンを諭すように説得する。
とはいえ、私自身も書類仕事は苦手だし嫌いだ。
報告書も最低限にしか目を通さないから、ジーンのいうこともわかる。

「何にせよ、詳しい事情は追って書類で提出しますし、提出させます」>

担当 > 「仲が良いんですね……?
 今の段階では私から配属先を決めることはできませんから、
 訓練と講習を終えてからでも遅くないと思いますよ」

露骨に惚気る志願者と、それを牽制する風紀委員。
今の話と立場が逆の様に見える、なんて思って担当が苦笑いをした。

「では詳細は後程ですね。
 こちらも書類の確認はできたので、今日の手続きは以上となります。
 今の段階でわからないことなどはありますか?」>

ジーン > 「わかってるよ。必要だから申請する。それだけのことさ。」
ジーンとしては当然のことを言っただけなの全く怒られる筋合いはないのだが、葵はそう思ってくれないらしい。
普通の人間なら表情を固くするなりして痛みを堪えるところだろうが、生憎ジーンは痛みに怯むように作られていない、平気な顔で話を聞いている。

踏まれていない足で踏んでいる葵の靴先と叩く。抗議の合図。
"ハニーって呼ばないだけ我慢してるんだけど?"

「それは相手によっては逆鱗に触れるよ。私は高級羊皮紙を夜暗から作ったインクに漬けて、月光から抽出したインクで記述された手間暇かけた禁書なんだ、コピー用紙にカートリッジのインクを吹き付けた書類と一緒にされちゃあ傷つくなあ。」
紙の束なんて表現されれば禁書のプライドも傷つくというもの、わからないかなあ素人には、とでも言いたげに指を振りながら講釈する。

「バディを組むつもりで来たんだから仲が悪くっちゃ務まらないよ。
そして、わからないことかぁ、特に今はそちらに聞くことはないかな。」
日下葵の寿命を削らせるような仕事をさせたのはどこのどいつだ、とか、建前上居ないことになっているからといって大量虐殺を繰り返しているのはどういう了見だ、とか、聞きたいことは山ほどあるが、それを末端も末端であるだろうこの担当者に問い詰めるのは筋違いだろう。
それに知っているであろう人間がいたら質問の前に手が出る。

日下 葵 > ”あと1時間我慢してくださいよ。せめて家に帰るまで”

家に帰るまではおとなしくしてろ、なんて反論する様は、
言葉尻だけ見れば子供を連れた母親か何かの様だ。

「それだけ”すごい紙の束”なら、
 ”一枚当たり0.3円の紙の束”くらいどうってことないでしょう」

正直、本の状態のジーンを見たことがないのでそのすごさはわからないが、
それだけすごいなら高々十数枚のコピー用紙の束くらい往なして欲しい。

――これ、後で怒られるのだろうか。

「別に喧嘩してるわけじゃないですよ?
 割といつも通りのやり取りです」

やや不安そうな担当を安心させるために注釈を入れれば、
こちらからも質問が無いことを伝える。

ジーンに関しては聞きたいことはあるようだったが、
今ここで聞いても解決しないことを察したのか留まったようだった>

『ではこれで今日の説明は以上ですね。
 また追ってこちらからお二人には連絡を差し上げますので』

担当がそう言って立ち上がると、来た道を逆に案内されてエントランスへ。
こうして、新たな形で歩んでいく準備が整った。

「じゃあ……帰りますか」

そう言って、風紀委員会本部から外に出れば、
ジーンのバイクが止めてある駐輪場へ向かおうか>

ジーン > もう一度靴先で叩いて、足を離す。了解、程度の意味。
渋々といえど叱られれば引き下がるのは"良い子"だろうか。随分と図体は大きいが。

再び紙の束、と言われれば、薄笑いを浮かべたまましばらく硬直し。
「まぁ、いいさいいさ。それについては"後でじっくり"話し合おう。」
ことさらゆっくりとした口調で、不気味なほど静かな声で応じた。

不安そうな担当に葵が注釈すると、首肯して同意する。
白蝋のような白い肌に何を考えているかわからない薄笑い、目元を包帯で隠した怪人の同意がどれほど功を奏したかはわからないが。
説明が終われば、案内されるままにエントランスへ戻る。
風紀委員、自分が所属を志願することになるとは思わなかった。治安維持機関とは縁のないどころか、むしろそれから逃げ隠れする生活が続いていたからだ。
だがそれは変わった、隣を歩く日下葵との出会いによって。

「私にとっては向かう、だけどね。」
駐輪場のバイク、まずは自分がまたがって鍵を差し、スターターを蹴ってエンジンを動かす。重低音と振動が響く。
後ろに愛しい相手を乗せて、腰に手が回ったのを確認したら、その手を軽くなでて。
「それじゃ、行こうか。」
キャタピラが回り、駐輪場のコンクリートから雪上へ出る、そして女子寮へと向かって走り去っていった。

ご案内:「委員会街 風紀委員会本部」から日下 葵さんが去りました。
ご案内:「委員会街 風紀委員会本部」からジーンさんが去りました。