2021/10/11 のログ
ご案内:「委員会街」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 >
「……………」
普段から難しい顔をしている事の多い『鉄火の支配者』は
週末明けから特に、難しい顔をしている。
最初は、激烈怒髪冠を衝く、と言わんばかりであった。
すぐにでも落第街を区画ごと焼き払い、違反部活も住民も焼き払うと言わんばかりであった。
特務広報部の面々にも、出動に備えた待機命令が出された。
…のだが。
「………こうまで念を押されてはな…」
とある"先輩"から受け取った『手紙』
軽挙妄動を慎む様に…と認められたソレ。
今夜からでも――と上がりかけていた腰が、沈んだ。
確かに、今落第街を燃やし尽くすのは簡単ではあるが
それは敵の思うつぼ、かもしれない。
「……しかし…だからといって、どうすれば良いのか直ぐに策があるわけ、でもない」
こういう陰謀策謀は、神宮司や父様の方が得意だ。
自分は何だかんだ、未だ幼い。
戦って戦って、そして勝利する。それが、自分の在り方だ。
戦わずして…いや、武力を用いずに勝利する為にはどうすれば良いのか。
暗い執務室で一人、少年はモニターの前で思考を巡らせる。
■神代理央 >
伊都波凛霞、行方不明。
その居場所…と思しき場所も、大凡かつ大雑把ではあるが足取りは掴めている。
…掴めている、と思いたい。
落第街の最奥。未だ風紀委員会の手の及ばぬ場所。
そこにいる…かも、しれない。可能性がある。
という報告は、早い段階で既に受けていた。
「……攻め立てるのは容易い。兵数は兎も角、火力ならば此方が遥かに勝る…筈だ。しかし…」
落第街への大規模な攻撃が『ウケが悪い』事は察している。
穏健派だけではない。正義感を拗らせた様な連中も、良い顔をしない。
功績で黙らせる自信はあるが…今の自分は、多数の部下を抱える身。
迂闊に動くのは"先輩"の言う通り危険かもしれない。
「…情報が欲しい所ではある。いや、情報だけじゃないな。
使える駒も、もっと集めなければならない。
しかし……」
特務広報部以外に使える駒となると、直ぐに思い当たる者はいない。
伊都波凛霞救出の為に手をこまねいている時間は少ないが、焦って動き出す訳にもいかない。
「………やはり、一人の儘の方が気楽だったな。
贅沢を言っていられる立場では無いが…」
深々と椅子に身を預ける。
ぎしり、と不愉快に豪華な椅子が軋んだ。
ご案内:「委員会街」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
■紫陽花 剱菊 >
故に支配者は孤独をぼやいた。
其れを肯定するかのような静寂ばかりが孤独と心を苛んだ。
静まり返った空の水面、然れど僅かばかり波紋が広がる。
「…………何時に無く頭を抱えているな」
水面を揺らしたのは、静かな男の声音。
何時から其処に居たであろうか。
あたかも、背景の一部であったかのように、男は壁に背を預けていた。
抱えた悩みに圧し掛かられたかのような、陰る少年の背を見据えていた。
一度影に身を費やすので在れば、影から自在に出るのも必定。
神出鬼没もまた、お手の物。諸手を組み、背を見下ろす。
「……今宵は火を灯すよりも、机に首を垂れるのが性急と見える」
皮肉。男なりの、軽口。
「……して、其れは人には言えぬ悩みか?」
男は静かに、敢えて問答を切り出した。
■神代理央 >
投げかけられた声に、ゆっくりと視線を向ける。
モニターと執務机ばかり眺めていた瞳は、現れた訪問者の
姿に、僅かに細められるだろうか。
「……普通なら、言えぬ悩みというところだな。
厳密には、一般人には、と言い換えるべきだろうかもしれぬが」
投げかけられる皮肉や軽口にも、応える事はない。
それだけ、深い悩みを抱えている…と、言う事かも知れないが。
「とはいえ、お前にならば話す事が出来る。
これは、私個人の感情や友誼によるものではない。
風紀委員会と公安委員会だから、ということだ。
そこは、勘違いをしない様に」
などと勿体付けてはいるが。
結局は、何だかんだと理由をつけて聞いて欲しいのだ。
恐らく、己の知る限り。己の知人――いや、友人の中で。
尤も頼もしい『剣客』である、彼に。
「…既に情報は入っているかも知れないが」
「伊都波凛霞が、行方不明になった」
「恐らく、違反組織による誘拐…の可能性が高い」
■紫陽花 剱菊 >
皮肉に憤る事も無く、憂いを帯びる事も無い。
並大抵、如何に巨悪で在ろうと一夜にして焼け野原に還るのが必定。
その様に振る舞い、嘘偽りなく火をくべてきた。
其の行いは目に余りある故、今際の境界を軽々と超えずに頭を抱えている。
「……男子、三日会わざれば刮目して見よ。
……しかし、背は伸びんな……」
少しは火をくべる以外の事を考えているらしい。
未だ伸びぬ金の頂も今回ばかりは大きく見えよう。
……無論、言葉通り物理的ではなく、居住まいとして。
幾度も混じり合った赤と黒の視線。
男は静かに、理央の言葉に耳を傾けた。
其の間に微動だにしなければ、視線を逸らす事も無い。
「…………」
公安とは、影なるもの。
世間の影に身を落とし、壁に耳立て、障子に目を光らせ、無数の虚偽より真言を見抜く。
影の瓦版とも言うべき集まりだ。
其処に刃を収める以上、知らぬ訳もなかった。
「……如何にも。此方も耳には挟んでいる。
然るに、机を睨む程に己の力が通じぬ相手か?」
道理をねじ伏せる力など、当に手にしているだろう。
だが、今宵は座して頭を抱えている。
情に絆された、等と俗な事を自ら問いはしない。
問答により、敢えて其の口より言わせるからこそ、意味がある。
■神代理央 > 「背が伸びない、は余計だ。
まだ成長期が来ていないだけだ。全く」
…と、漸く彼の軽口に応える余裕が出て来たのか。
少しばかり疲れた様な表情で微笑みながら、小さく肩を竦めてみせる。
「で、あれば話が早い。
力が通じぬ相手……だと、分かっていれば良いのだ。
今回の件は、そもそも相手の事が『わからない』」
手元のキーボードを叩く。
椅子に腰掛ける少年の背後。男の視線の先の壁に映し出されるのは
様々な違反組織のデータ。
大きなものから小さなものまで。大小様々な組織のデータが詳細なものから大まかなものまで。
「これだけ『敵』はいるが、未だ犯行声明も出ていない。
伊都波凛霞、という風紀委員の存在感を考えればもう少し
違反組織として声高に主張しても良いか、とは思うのだが…」
と、言葉を続けつつ。
「砲火を振るうのは簡単だ。落第街を灰塵に帰することくらい
私にとっては容易な事。
しかし、まあ…軽挙妄動を慎め、という手紙も貰ってな。
敵の正体が分からない事もあって、こうやって悩んでいたというわけさ」