2021/11/20 のログ
ご案内:「委員会街」に桃田舞子さんが現れました。
桃田舞子 >  
ワガハイはモブ子である。いや誰がモブ子だ。
ついでに言うと私は風紀委員交通部である。
でも、極端に危険なミッションに参加しないだけで
交通部以外の仕事も普通に回ってくることがある。

今日はそんなこんなで、住宅トラブルの第三者立会いの仕事に来ている。
周りには弁護士を志す生徒や、不動産会社を志す生徒なんかがいるわけで。

正直、とても緊張する。

「ええと、一之瀬カナさん。今回はどういうトラブルがあったかを…」
「書面上でしか知らないので口頭で少し説明いただけますか?」

ハハハー。こんな感じでいいのかなぁ。苦笑いしか出ない。

一之瀬カナ >  
「それが……異邦人街に引っ越したばかりなんですが」
「ストーカー紛いの迷惑行為が続いていてもう別の安全な場所に引っ越したいんです」

「でも、原状復帰が難しくて敷金が戻ってこないとか」
「……引っ越して一ヶ月でこれはちょっと、って…」

桃田舞子 >  
……そういうことですか。
学生が敷金礼金払ってご近所トラブルで即退去、
払ったお金は全額戻ってきませんはあまりに厳しい。

「それに対して、あのアパートの管理責任者の二村キョウタくんはどう思いますか?」
「その後、不動産会社の三ツ田ヨウヘイさんも意見をいただきたいなって」

資料を読む感じ、どうにも腑に落ちない。
一之瀬さんに同情してしまう。
でも………今は公平に見ないと。

二村キョウタ >  
太った少年は神経質そうに顎を撫でて。

「言うことはありません」
「彼女は原状復帰の要件をこなしていません」
「返す敷金はありません」

と言い切った。

三ツ田ヨウヘイ >  
黒いスーツを着た少年はキザったらしく前髪をいじり。

「だ、そうです。それにストーカーされるなんて」
「男女関係のもつれじゃないんですか?」

「我々は被害者ですよ、あとは彼女のケアを風紀委員さんがしてあげてください」

桃田舞子 >  
ぐわー!!
ダメだ、この二人生理的に受け付けない!!
言ってることも悪徳業者丸出し!!

すっかり意気消沈した一之瀬さんを心配そうに見る。
ち、違う違う。
私にできることは心配の視線を向けることじゃない。

風紀を………守ることでしょ。

コホン、と咳払いをして。

「ええと、原状復帰ができないってどういうことですか?」
「そこを詳しく聞きたいのですが」

三ツ田ヨウヘイ >  
「彼女は元々あったカーテンとカーペットを捨ててしまっていたので」
「元通りとはいかなかったようですね」

くっくっと喉を鳴らして嘲笑う。

桃田舞子 >  
こいつ嫌い!! めちゃくちゃ無礼だし死ぬほど失礼!!
生理的嫌悪感に顔を歪めそうになるのを懸命に堪えて。

「……一之瀬さんの意見を聞きます」

と、風紀委員の立場から聞いてみる。

一之瀬カナ >  
「……汚いカーペットと趣味の悪いカーテンだなって…」
「す、捨ててしまったのは、本当ですけど…」

「それに私、ストーカーされる覚えは本当にないんです!」

懸命に訴えかけて。

桃田舞子 >  
「なるほど、わかりました」
「それでは皆さんの意見を踏まえて……」

「私見を述べさせていただきたいと思います」

ニコニコと張り付いたような笑顔のまま、できるだけ穏当な口調で言う。

「……ストーカーの犯人は管理人────三ツ田ヨウヘイさんですよね」

資料を手の甲で叩いて、笑顔のまま言い放った。

三ツ田ヨウヘイ >  
「な………っ!」
「それは侮辱か!! 訴えてやる、風紀委員でいられなくしてやるぞ!!」

桃田舞子 >  
「若い女性が入居した途端にストーカー被害を受ける……」
「別に入居申込書を読めば無言電話はできますし」
「管理会社の人間なら怪しまれずに建物に近づいて嫌がらせもできますよね」

「最近は物騒な事件も多いので、一之瀬さんみたいな若い女性はすぐ引っ越したいと思うわけですね」

「汚いカーペットと趣味の悪いカーテンを見れば入居者は捨てたくもなります」
「それに対して……原状復帰ができないから敷金を返さないとはやり方が凶悪ですね」

あああああ。言った!!
言っちゃった!!
でも黙らないぞ!! 私は、風紀委員だ!!

二村キョウタ >  
「あ、当て推量の暴論だ!!」
「証拠を出せ、証拠を!!」

桃田舞子 >  
「そうですね、証拠を探すとします」
「指紋、ストーカーの電話番号、細かいことは全部調べます」
      ・・・・
「もし、私の当て推量が正しかったら」

「次はあなたたちが証拠を出す番になりますよ……?」
「自分たちの潔白を証明する、証拠をね」

「ストーカー罪の云々は置いて」
「国土交通省が出した“原状復帰のトラブルとガイドライン”はご存知ですか?」
「原状回復を『賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、
 賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、
 その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること』と定義してあります」

机に書類を置いて、真っ直ぐに悪徳業者二人組を見る。

「まぁ……簡単に言うと原状復帰に含まれないんですよ、小汚いカーペットは」

二村キョウタ >  
「お前………!!」

歯噛みをする。
木っ端風紀委員がこんなことをして許されると思っているのか。

桃田舞子 >  
「はい、お前ではありません」
「私は桃田舞子、風紀委員です」

「風紀委員は風紀を守るためにいるんですよ」

「さて……これから忙しくなるので三ツ田さんと二村さんはお引取りください」
「これから当て推量の証拠を探さなければならないので」

二村キョウタ >  
「覚えていろよ、後悔させてやる!!」

三ツ田ヨウヘイ >  
「訴えてやるからな!!」

二人揃って逃げるように部屋を出て。

桃田舞子 >  
「フッ……………」

肩を揺らして笑う。
あはは。捨て台詞だ。あはははは。

「ふふふふふふ…………」

そしてガクリと肩を落として。

「やっちゃったぁ…………」

胸先三寸の推理でヒトを犯人扱い。
これでハズレてたらいよいよもって除名ですね。

一之瀬カナ >  
「あのっ」

項垂れる桃田に声をかける。

「どうしてここまで……?」

桃田舞子 >  
「……それは、決まってるでしょ」

体を起こして、一之瀬さんに微笑む。

「風紀委員は善良な市民の味方だからです」

 
後日。
三ツ田ヨウヘイは告訴された。
その後の末路に私はあんまり興味はない。
常世産悪徳業者として世に出なかっただけで十分。

二村キョウタは。今も常世にいる。
私への恨みを根深くしていることだろう。

でもね……私は。
悪い人とは戦うよ。
それが……私の考える、風紀委員だから。

ご案内:「委員会街」から桃田舞子さんが去りました。