2022/01/17 のログ
ご案内:「風紀委員会本庁 『封鎖武器庫』」に追影切人さんが現れました。
■追影切人 > 風紀委員会本庁のとある一角。無数の鎖と鍵、そして何十ものセキュリティーで封鎖された両開きの扉の前。
「…来るのは二度目だが、相変わらず物々しいっつぅか…。」
そんな事をぼやきつつ、隻眼は扉の左右に控える風紀委員を一瞥する。
既に話は通っている筈――実際、学生証やら生体認証やら持ち物チェックやら。
面倒なそれらを済ませれば、漸く鍵や鎖が全て外されて。
風紀の面々に視線で『入れ』と促されれば、肩を竦めてそのまま封鎖された武器庫へと足を踏み入れる。
「――んで、何処ら辺にあるんだ”アレ”は…。」
男が探しているのは、とある真っ黒な一振りの刀である。
かつて、『無貌』と呼ばれた正体不明の殺し屋が振るい――とある生活委員会の少女が使っていた物。
その少女が去った後、残されたその刀はこちらに移送されたのは知っている。
何でも『使い手を選ぶ』だとか『不吉を呼ぶ』だとか、色々言われているが…。
(――ま、斬れれば別に文句はねぇんだが…あの『虚空』っつったか?アレに対抗出来りゃいい)
事前に聞いた話では、この武器庫の中の保管物は曰くありのブツばかりらしい。
ここ一箇所だけではないようだが、目的のその黒い刀があるのがここなのだ。
■追影切人 > その黒い刀の銘は『雷切』――名前の由来や製作者は勿論分かっていない。
また、常に刀身に紫電を帯びており――そして、鞘という物が存在しない。
まぁ、それはそれで好都合だ。抜刀術とか全然分からんし。むしろ鞘は邪魔だ。
「――っつーか、まともな剣術なんて生まれてこの方、習った事も振るった事もねーけどな。」
性に合わない、というよりいまいち『理解出来ない』。
別に剣術使いを貶している訳ではない…本当に、男自身が理解出来ないだけなのだ。
彼自身の考えとしては、技や術理は普通にすげーと思うし、彼なりに畏敬はある。
――が、それはそれ、これはこれ。理解出来ないから…ただ斬る意志を刃に込めるのみ。
「…んで…確かランク毎に分かれてんだっけ?……あー…と、Sランクね。」
この武器庫だけのランク付けらしいが、C級、B級、A級、S級、そして『等級不可』。
最後のそれは、いわゆるランク付け出来ない代物――と、いう訳だ。
まともにランク付けされているものでは、S級が最上位であり、『雷切』もそこに含まれる。
(…そもそも、監視対象に使わせていいモンか?それ。まぁ上からの命令だしな。)
責任はそっちが取るだろ、と無責任に思いながらS級の武器が保管されている一角へと歩を進めて。
■追影切人 > さて、Sランクのヤバい武器ばかりの一角に来たが――成程、変な寒気が漂う程度には異質だ。
流石に数は他の等級の武器と比べて少ない――ザッと視線を走らせた限り、数は20前後程。
剣、刀、槍、銃――包丁?みたいなものまである。多分やべー包丁なんだろう。
ただ、どれもこれもそれぞれ個別の封印措置やら保管措置が取られているが素人目でも分かる。
――と、目当てのブツが見付かった。台座に飾られてはいるが、明らかに独特の気配を持つ黒い刀。
そちらまで歩を進めれば、刀の前に立ってそれを眺める――見れば薄っすらとだが刀身表面に紫電が弾けている。
「――やっぱ聞いた通り鞘がねーな…前使っていた連中の時はあったって話だが。」
まぁ、無いなら無いで別に構わないスタイル。教えられた手順で封印措置を解除していく。
――で、問題はここからだ。この刀に使い手と認めさせなければならないのだが。
「――おい、テメェ意思があるんだってな?
俺の声が聞こえてんだろ。取り敢えずアレだ…んー…。
えぇい、面倒臭ぇ!斬りたいモンがあるから、それをぶった斬る為に力貸せやこの野郎!!」
最初こそ、彼にしては穏やかに語り掛けた――つもりだった。
が、直ぐに面倒臭くなったらしく、滅茶苦茶アバウト且つ無遠慮にそう捲し立てて。
無造作に右手をその台座にある黒い刀へと伸ばし―ー―そして…
「いってぇ!?おい、思ったより痺れんじゃねぇかよクソが!!」
まるで拒絶するように、柄の部分を握ろうとした右手が、迸る紫電に弾かれて。
つまり、使い手として『テメェは駄目だ』認定されたようなものなのだが…
「………へぇ……上等じゃねぇかこのクソ刀。」
■追影切人 > 昔の自分なら、ここで盛大に暴れていた所だがあの時とは違う…ちょっとは男も成長した。
こめかみはピキピキなってるし、隻眼が剣呑な光を帯びるが…まぁ、場所が場所だ。
ここでやらかしたら、ただでさえ窮屈な立場が更に面倒臭い事になりかねない。
なので、ゆっくりと息を吸ってー…吐いてー…吸ってー…吐いてー…。
おもむろに、また右手を伸ばして黒い刀の柄をガッシリと握り締める。
当然、また激しく紫電が迸るが――痺れながらも、今度は右手を柄からは離さない。
「…ッッ!…どうした、そんなモンか?この際、使い手だとかまどろっこしい――我慢比べと行こうや。
テメェが根負けするか、俺が耐え切れずにこの柄から手を離すか…。」
一瞬どころか、断続的に紫電が全身を駆け巡るが、お構い無しに柄は握り締めたまま。
挙句の果てに、ニヤリと嗤って――「どうした?その程度か?あ?」と、挑発する有様である。
「考えたら…っ…何で、いちいち…こっちがお伺い立てないと…っ…いけねーんだよ…。
テメェが選ぶんじゃ…っ…ねぇ…俺がっ…テメェを使うんだよ…っ!!」
――そのツケでこんな『使われてる』立場に成り下がっていたとしても。
――あぁ、飼い犬上等。今は斬るべき奴と斬るべき刀がある。それを斬る為に。
(――俺の意思を舐めてんじゃねぇぞ『雷切』さんよォ!!!)
■追影切人 > 紫電は何時の間にか盛大なものとなり、他の保管されている武具にまで”飛び火”しそうなくらいで。
それでも、柄を握る右手は離さない――死んでも?当たり前だ。
――『君はどうにも危なっかしいから…何時か【鞘】が見付かるといいね。切人。』
(――ねぇよ、そんなモン。それに俺にゃ必要ねーさ――…■■)
かつての恩人の言葉が一瞬脳裏を霞め――ふと、苦笑を浮かべて届かぬ声を返しながら。
「俺は抜き身の刃のままでいい。錆びようと朽ちようと関係ねぇ。だから――なぁ?『雷切』。
…斬りたい奴が居る。斬らないと気が済まない刀がある。例え、俺が逆に斬り殺されようと関係ねぇ――分かるか?
――俺は『刃』なんだよ。お上品に飾られる美術品じゃねーんだ…テメェもそうだろうよ…!!」
その言葉と共に、痺れて既に感覚も失せた右手をグッと力強く…その柄を握り締めて。
そして―――…気が付けば、紫電は鳴りを潜め…まだ放電をしながらも、確かにその黒い刀を男は手に取っていた。
■追影切人 > 「…ハッ!手間掛けさせやがって…ま、テメェの負けだ。
つっても俺に従えだとかそんな萎えるような事は言わねーよ。
…一緒にぶった斬ってやろうぜ。…つまりそういうこった。」
勝手に品定めされるのも選ばれるのも気に食わない。
あくまで己の意思で斬る為に、己の意思でその黒刃を掴み取った。
それが、後に悲劇となろうが喜劇となろうが知った事ではない。
惰性に生きるより、無残に死ぬより、刹那でも斬る道を――…収まる鞘が無き刃にはお似合いだ。
「…さーて、長居したらただでさ監視されてんのにどやされそうだ。
…つーか、テメェ常にバチバチ放電してんの何とかなんねーのかよ…。」
と、右手に握った黒い刀――『雷切』を一瞥して溜息交じりに零す。
かくして、都合3人目の使い手となった男は――出入り口で風紀委員に小言を言われつつも、適当に流してその場を後に。
■追影切人 > 「――さぁ、『再戦』だ。斬り合おうぜ斬奪怪盗。凶刃舐めんなよ?」
ご案内:「風紀委員会本庁 『封鎖武器庫』」から追影切人さんが去りました。