2020/06/20 のログ
水無月 斬鬼丸 > 日差しはうららか、風も穏やか、授業ももう無い。
路面電車から降りた少年の学生通りをゆく。
道行く他の生徒も今日の天気の良さは心地よいようで
どこか楽しげに見えたりして。
まぁ、そういう人はだいたい友達とかいるんですが。

「はぁぁぁぁぁぁ……なんで、俺は…」

ボッチ陰キャかつ据え膳も食えなかった男子の風上にもおけない少年は
ひとりで歩いていた。
少しばかり買い物がてら、ちょっと買い食いでもしようとかなんとか。

先日のことを思い出し、後悔に打ちひしがれながら歩く少年は気が付かなかった。
ケーキ屋の前の風紀委員に。
立ち止まっていたり、歩みが遅くなってしまっていたらぶつかってしまうだろう。

フィスティア > 「あ、危ないですよ。気をつけてください」

歩いている少年...がぶつかってくる直前に、声をかけながらボーッとしてる少年を軽く支える。

「あんまりボーッとしてると危ないですよ。ちゃんと前を見て歩かないと。誰かとぶつかったら危険です」

私は風紀委員会ですから。足取りが危うい生徒に注意するのも仕事だと思います。
両手で肩を支えながら、真面目な表情...のつもりでそう注意する。

「なんなら少し私が聞いててあげますよ」

なんて、優しく声をかけるだろう。

水無月 斬鬼丸 > 「むえっ…と…と…?」

声がかけられ顔を上げると…白い少女の姿が目に入る。
肩を両手で支えられ、歩みを止めるように立ちふさがる。
突然道を塞がれるのは正直嫌いだが
今回は前を見ていなかった自分に非がある。

「あ、はぁ…すんません…ちょっと考え事を…」

線の細い少女は…風紀の腕章となんか物々しい服装。
まぁ、つまりは風紀委員なんだろう。
少し後ろに下がって頭も下げる。
そんなに心配をかけるような顔をしてたのか…話を聞くとまでいってくれるあたり
真面目でヤサシイ風紀の人なんだろうなぁ…とは思うのだが…

「あ、いや、いえいえ…大したことじゃないんで!!」

言えるか!!ましてや女子相手に!

フィスティア > 「考え事しながら歩いてるとこうやってぶつかったりしますよ。
私じゃない人だったらぶつかってしまって怪我させてしまうかもしれません。そういう時どうするんですか」

実際、一応軍人であった私だから事前に察知して受け止めることが出来たって部分もあるかもしれない...ケーキを見るのに集中してたら気づかなかった気もしますけど。
それに、このままフラフラと歩かれて誰かにぶつかるかもしれないのを放置するのも些か問題ではないでしょうか。

「いえいえ、そう言わずに。
私が奢るのでケーキでも食べながら」

ここで悩みを聞いてあげるべきでしょう。
それに...そう、話を聞く時の一品としてケーキを食べればいいんです。
決してケーキが食べたいからではありません。

少し下がった少年の右手をしっかりと掴み、ケーキ屋の中へと引きずっていくだろう。

水無月 斬鬼丸 > 「あ、はぁ…すんません、気をつけます…」

なんか、ふつーにダメ出し…いや、叱られてる。
猫背気味の身体、頭を何度か下げて素直に謝る。
当然だ。さすがに言ってることはあっちが10割正しいのだから。

が、おかしい。
流れが変だ。

「え?いや、ちょっと…いえませんて…
あの?」

ここは、『じゃー、気をつけて真っすぐ歩いて帰ってくださいね』なんていわれながら解放されるところではないのか?
なんで右手を掴まれた?なんで引っ張られてる?
なんでケーキ屋?
え???この子…見た目によらず強引?

フィスティア > 「私は本格抹茶ショートケーキをお願いします。
えっとあなたは...何にしますか?」

少年が何か言っていましたが、無視します。
ケーキ屋の店員に案内されて着いた席に座って先ほど眺めていた食品レプリカの一つにもあった抹茶ケーキを注文しましょう。
抹茶というものは私のいた世界にはありませんでしたし、とても興味があります。
...そう言えば少年の名前を聞いていませんでした。

「私は風紀委員会所属のフィスティアっていいます。あなたは?」

私も名乗っていなかったですね。腕章を見ればわかるでしょうが風紀委員会であることも添えておきましょう。

水無月 斬鬼丸 > 「えぇぇ…」

なんで席に座らされているのか。
なんでメニュー見ているのか。
なんで何にしますか?とか聞かれているのか。
ソコガワカラナイ。

「……ガトーショコラで…」

なんでそこで注文するのか。
そんな困惑はお構いなしに本格抹茶風紀委員は自己紹介を初めた。
もちろん風紀の腕章は目に止まっていたから知ってはいたのだが

「あー、えっと…水無月斬鬼丸です」

何にせよ、小さく頭を下げて名を名乗る。
いや、なんで引っ張り込まれたかとかはよくわからんが。

フィスティア > 「水無月ざんきまるさん、ですね。覚えました」

どのように書くかは知りませんが。あとで風紀の端末ででも調べておくことにします。
ガトーショコラ...私のいた世界ではチョコレートはそんなに気軽に食べられるようなものでもありませんでした。この世界はいい世界です。
私もまた食べに来ましょう。

「はい、それで水無月さん。
何をそんなに考えて歩いていたんですか?」

大した悩みでもないのでしょうか?それとも重大な悩みかも...
ですが、水無月さんが他の生徒にぶつからない為にも、話を聞いてあげましょう。
決してケーキが店員によって運ばれてくるまでの暇つぶしではありません...本当です。

水無月 斬鬼丸 > 覚えられた。
そんなに風紀委員に目をつけられるような顔していただろうか?
いかつい名前だから覚えやすいのだろうか?

対面にいるフィスティアという風紀委員の少女…
色白…いろじろ?
いや、それどころではない。
目すら白いとか初めて見る。異世界の人だろうか?

「…え」

などと考えていたら、掘り返してきやがった。
まじかよ。

「あ、いえ、他所様に話すようなことじゃないです、はい
けちな悩みなんで、ほんと、はい」

ケチと言うか、ほんとどうしようもないというか、バカみたいな悩みなのだ。
それでいて人に言うにははばかられるような悩みなのだ。
退いてくれ!

フィスティア > 「でしたら。なんであんなにふらふらしてたんですか?
私にぶつかりそうだったじゃないですか
それに、ケチなことなら話してしまった方がいいですよ」

重大なことで悩んでいるのかと思っていましたが、大したことでもないのでしたら、聞いてしまいましょう。
水無月さんの様子では誰かにぶつかってしまうでしょうし、すっきりしてもらいましょう。

そんなことを考えながら、真面目な表情で、少年の紫紺の瞳を白い瞳で見つめるだろう。
少年の願いは叶わない。

水無月 斬鬼丸 > 重大かそうでないか。
少年的には割と重大というか、男子としては重要なイベントを取り逃したと言うか。
おそらく目の前の少女にそれを言ったところで伝わるわけはないだろう。
座ったままに店の天井の隅っこに視線を飛ばす。
まっすぐ少女を見ていられない。

「あー…えーと、そうですねー……あはは…
まぁ、その…一生のうちにあるかないかのチャンスを逃したと言うか…」

間違ってはない。
だが、本質は全く語ってない。
オブラート300層くらいありそうな言葉選びだ。
だが、これで納得してくれるなら、それにこしたことはない。

フィスティア > 「目をそらさないでください。
ちゃんと人の目を見て話せないうちは問題は解決しませんよ」

両手をテーブルにつきながら水無月さんにテーブル半分ぐらいまで近づきます。
これで少しは目が合わせやすいかもしれません。

とか思いながら真面目な顔を近づけるが、むしろ逆効果だろう。しかし本人は気付いていない様子で。

「一生のうちにあるかないかのチャンス...ですか?」

どう言ったものでしょうか...それと、意外と大事じゃないですか?
聞いてしまっていいのか悩みますが...いえ、私が迷っている場合ではありません。

「それはどういうものなんですか?大事なことだったり...?」

わからない、といった風に。大事なことだったら聞き辛いな、なんて思いながら、そう首を傾げるだろう。

水無月 斬鬼丸 > ぐいぐいくるやん?

「ひっ!?」

思わず身体を引くも逃してくれない。
文字通り身を乗り出して、顔を寄せてくる少女。
すげぇみられてる。ガン見されている。
ってか、近い近い近いって!
この島距離感ガバガバな人多くない?美少女なんだから自覚しろよ!

「そう、そうです!だからその…ね?」

そういう案件だから、聞きづらいでしょ?という空気を醸し出すがお構いなしと聞いてくる。
まじかよ。

「えー、あー、はい、まぁ…個人的にはそうなんですがぁ…
一般的にはそうたいしたことでは…」

首を傾げたすきに目を背けようとする。

フィスティア > さて、本人は別に距離感バグってるなんて思ってないわけで。
乗り出したまま話を進めるだろう。

「ほらそうやってすぐに目を逸らさないで...」

気まずそうに顔を逸らす少年にジト目を向ける少女だが、何となく少年が内容について話したがらないことを察したようで。

「仕方がありません。内容は聞きませんが...」

体を引きながら小さくため息を。水無月さんは多分、内容について喋りたがらないので、内容まで聞くのは諦めましょう。

「でしたら、次そうならないようしましょう。同じチャンスには会わないかもしれませんが、次の何かのチャンスを逃さなければいいんです」

だったら、水無月さんの悩みを悩みじゃなくせばいいんです。
そう思い、尋ねて見ます。
...ケーキは中々来ませんね。

水無月 斬鬼丸 > 「あ、ははは…す、すみません…」

そんなこと言われても、こう詰められてはやましいことがなくても目をそらしてしまうわけで。
陰キャは近距離で美少女にみられるとキョドる。
これは次のテストに出るからおぼえて帰って欲しい。

しかし抵抗のかいあって、ようやく引いてくれた。
安堵の息を漏らし、視線を彼女へと戻す。
これで安心してケーキを……

「へ?」

いまなんて?
それができりゃ苦労しないんだよ!次そうならないようにって…
まぁ、彼女の言うように次はないかもしれないけど?あったとして、そうならないように?
つまり?ヤッちゃうの?風紀としてどうなの?

「無理っすよ!?」

まぁ、当然。まぁ、順当。まぁ、こうなる。

フィスティア > 「人の目を見て話すのは大事です。これはテストに出ます」

少しジョークを言ってみました。実際にテストに出るかと言われれば出ないと思いますが。
にしても、やけに挙動不審ですね。
風紀委員会にこうして質問攻めにあって緊張しているのでしょうか...

「無理なんですか?」

そんなに難題なのでしょうか。私はてっきり、そこまで難しいことでもないけど出来無かった、程度のものだと思っていたのですが...
水無月さんのトラウマの克服か何かでしょうか。

なんて、何も知らない少女は考えるが、据え膳をいただかなかっただけ、なんて気づくわけもない。

「もしかしてトラウマ...とかでしょうか?」

なんて見当違いのあたりをつけ、尋ねるだろう。

水無月 斬鬼丸 > 「あっはい…すみません…」

対人テストなんてわざわざやらなくても赤点なのはしっている。
相手は風紀、他人に干渉することが生業なのだからこれくらいできて当然なのだろう。
そして挙動不審なのも許して欲しい。
距離感も自覚して欲しい。

「あ、はい…まぁなんというか…はい…近いもんです」

トラウマ…といえばそうだろう。
あそこまでの据え膳を食わなかった男だ。
この後悔は割とトラウマものである。
だが、そうしなかったことで人間としての格を下げなかったのではないかとか
自身の信念を貫いたのではないのかという気持ちはなくはない。

だが、もったいないものはもったいない。
しょぼくれたままケーキを待つ。
この風紀委員がまたとんでもないこと言い出さないうちに、はやく!

フィスティア > 「トラウマ...みたいなものなんですね」

近いもの、とは何でしょう。
勇気が足りないとか、そう言ったものでしょうか?
わかりませんが...

「でしたら、心の持ちようを変えてみ
『ご注文の品お持ちしましたー』
るとか...あ、ありがとうございます」

私の言葉を遮るように、店員がケーキを二人分運んできてくれました。
とても美味しそうです。

店員が二人の前にそれぞれが注文したものを置いて去って行く。
さて、この少女、目の前の少年の悩みを解決するための話し合いなんてどうでも良くなったのか、目の前のケーキが気になって仕方がない様子だ。
フォークを持って、その緑色の粉がかかったショートケーキに興味津々な目を向けて今にも食べたい、と言った風にしているだろう。

水無月 斬鬼丸 > 「あーっととととーとー、来ました、来ましたから!」

まさに天の助け、救いのケーキ。
店員の方に感謝の礼を心から送りつつケーキを受け取る。
ありがとうガトーショコラ、そしてありがとう本格抹茶ショートケーキ。

「ありがとうございます…」

迫真の感謝。
彼女もケーキが気になるようだ。そうだろう。

「俺の話とかいいんで、たべましょうか」

そう切り出せば、二の句を継がせぬようにと、早々にいただきますと宣言し
ガトーショコラをフォークで切って口へと運ぶ。
あまうまい。

フィスティア > 「そう...ですね。今はこのケーキを食べるべきですね」

水無月さんの悩みをどうにかするのも大事ですが、ケーキを食べるのも大事です。
本格抹茶ショートケーキ、とても美味しそうです。
水無月さんはわかっています。

「それでは、いただきます」

こちらの世界で学んだことの一つです。何かを食べる前にはこうやって手を合わせて『いただきます』と言う。
もう随分と当たり前になりました。

ケーキの皿の端っこに置かれたフォークを手にして、ゆっくりと緊張したような、焦るような表情の少女。
目の前の少年などもう視界にはない様子で、ケーキの尖った方から、先の方を少し掬って口にはこび。

「美味しいです」

顔を綻ばせて、とても幸せそうにそう呟いた。

水無月 斬鬼丸 > 先程まで詰め寄ってきていた風紀委員は
ケーキの魔力によって屈した。
凄いぞケーキ。おいしいぞケーキ。
ガトーショコラも濃厚で甘くておいしいぞ。

「あ、はい…そうっすね…」

へんな流れであるが、女の子とカフェでケーキ食ってる今だけ切り取ればデート感あるが…
こちらは気が気ではなかった。
さっさと食い終わって、そうそうに店を出て
おごっていただきあざっしたーで別れる!
これで完璧だ。

フィスティア > 「この苦味が抹茶なのでしょうか...とても生クリームとあってて美味しいです。」

悩みを聞くとはなんとやら。ケーキのレビューを少年に聞いてもらうような状況になっていることに気づかないこの抹茶風紀は随分と幸せそうに、大切そうにゆっくりと一口ずつ、抹茶ケーキを食べ進めて行く。
先ほどからどこか無表情な感じがした表情は幸せそうな笑顔となっているだろう。
そして、抹茶の魔力かは知らないが、もう少年の悩みを聞いていたことは正直なところ忘れているだろう。
そう、この少女はケーキ食いたさに店に入ったわけで...

傍目に見れば、デートしているようにも見えるかもしれないが、あくまでも風紀が足取りの危うい生徒の相談に乗る場であることを忘れてはいけない。ただし機能はしていない。

水無月 斬鬼丸 > 「あ、はい…たぶんそうっす」

食ってないケーキの味はわからない。
だが、抹茶といえば苦いもの彼女の言葉も間違ってない。はず。
笑顔でケーキを頬張る少女のすがた。
よし、もう安全だな。

もはや相談などケーキの彼方だろう。
忘れてしまっているだろう。俺も忘れるから貴女も忘れてください。

「あー…うまかったっすね。ごちそうさまでした」

たしか奢ってくれるって話だったはず。少女に向かって頭を下げる。

フィスティア > 「御馳走様でした」

美味しいひと時でした。抹茶ケーキがここまで美味しいなんて思いませんでした。
また、食べに来ましょう。

この抹茶風紀は抹茶ケーキにご満悦の様子だ。
顔に満足した、と書いてあるような表情で、幸せそうな少女だ。

「ケーキ食べるのに付き合ってもらってありがとうございました。会計は私が済ませておきますね」

建前がぶっ壊れて、正々堂々とケーキ食うために連れ込んだと。
別に一人で入るのが寂しいだとかそういった理由はないのだけれども。
悩みを聞いていた、と言う建前は頭から完全に抜け落ちたようだ。
席から立ち上がり、少年に対して小さくお礼をすれば、会計を済ませるべく、レジの方へと向かって行った。

水無月 斬鬼丸 > 「いえいえ、こっちこそ、あざっす」

ん?いまこいつなんて言った?
ケーキ食べるのにって言ったか?
いや、なんで?
連れ込まれたときはそんな話じゃなかったような?
もしかして暇つぶしに使われたのだろうか…なんて風紀委員だ…

風紀委員怖い。
そう思いつつも席を立ち、彼女の後を追うようにあるき出す。

「んじゃ、その…ありがとございました?」

ご案内:「学生通り」からフィスティアさんが去りました。
ご案内:「学生通り」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。
ご案内:「学生通り」に小金井 陽さんが現れました。
小金井 陽 > 「…思ったより大事になってきたなー。」
学生街の端っこ…大規模百貨店『扶桑』建設予定地に併設されるショッピングモールの端っこの、小さく古ぼけた製菓店。
調理室の椅子に腰掛けながら、他人ごとのようにぼやく銀髪男子が一人、待ち人を待っている。
あまりに展開が急すぎて、脳みそがついていってないのが伺える。

ご案内:「学生通り」に雪城涼子さんが現れました。
雪城涼子 > 「えーっと……そろそろ、だったよね……」
しばらく前に知りあった少年から指定された場所は、小さいながらも確かなお菓子を作っていた製菓店。
惜しむらくは、後継がいないまま職人のおじいさんが体を壊してしまって経営ができなくなってしまったこと。
知る人ぞ知る、ではあったけれど呼び出した少年もスイーツ好きだし、知っていてもおかしくはないけれど……

「でも、もう閉まっちゃってたわよねえ……あそこ……
 再開、なんて話も聞いた覚えはないんだけれど……」
首を傾げつつも歩みをすすめる。
気づけば記憶通りの辺りまでやってきて。そこには件の少年が居た。

「あ、陽くーん。お待たせー」
小さく手を振ってぱたぱたと歩み寄った。

小金井 陽 > 「っと、おいっす!涼子センパイ!暑い中ありがとうございまッス!!これ、アイス珈琲ッス!」
ぼんやり座っていた後輩は、涼子の姿が見えるや否や、びしっと立ち上がり挨拶。センパイ後輩関係には律儀である。
そして用意していたと思しきアイス珈琲のグラスを示して、足労に感謝するのだ。
…そして、本来であればその場の主であろう熟練の職人の姿は無い。

「えーと…どっから話したもんスかね…とりあえず座って話しましょうか。」
そういって、涼子が着座するまで自分は立ったままである。見た目の遊んでそうな気配から反して、職人気質なところがあるのだ。

雪城涼子 > 訓練された軍隊かのように、しっかりとした姿勢と態度を示す少年。
いい子なんだけど……これは、相変わらずなれないなあ……

「あ、あの、陽くん? 学年は陽くんの方が上なんだし、その、そんなにかしこまらなくていいんだよ。
 いつもいってるよね?」
そして、毎度の問答。多分変わらないんだろうなあ、と思いつつも言わずには居られない。

「え。なに、そんなに複雑なお話なの?」
「どこから話したものか」という辺り、なにか厄介なお話っぽそうな気配。
なにかしら。彼とはスイーツ同好会で一緒に只管にお菓子を作っているだけだけど……
もしかして、その関係でなにかお叱りとかあったのかしら。
それとも全然関係なくて、恋愛相談、とかだったり?

「……うん」
ちょっと思いを巡らせている間、彼が座る気配はなし。
うん、これ私が座るの待ってるわね。
本当に、真面目な子だわ。多分促してもダメだろうし、秒で諦めて先に座る。

小金井 陽 > 「確かに学年的には上なんッスけど…なんでしょうかね、なんか敬いたくなるんッスよ。」
…そして、にっかりと相好を崩す。先輩後輩の関係であっても、堅苦しいのは苦手なのは陽も同じで。でも、礼に値する行為や相手には礼を尽くしたくなるのであった。

「んー、シンプルっちゃシンプルで…複雑っちゃ複雑っスね…」
難しい顔が深まる…とても、とても深い難題を抱えているような、苦悶の顔だ…

「……実はッスね、涼子センパイ。    俺、ここで製菓店やることになりそうッス。」
涼子が座れば、続いて陽も着席して。
そして告げられたのは、『は???』と思わず口にしたくなるような、突拍子もない事実。
いや、しかし、目の前の男の子は、冗談は言ってもそんなタチの悪いジョークは飛ばさないということを、まだ短い付き合いながら知っているからこそ…本気だということがわかる。

雪城涼子 > 「そうなんだ……」
なんだか曖昧な理由だった。
うーん、野生の本能(?)みたいなもので実年齢を感じ取ってるのかな。
なんとなく、見た目動物っぽいし。

「……へー、そうなんだ。凄いね!
 それで、何を中心にするの? やっぱりケーキ?」
唐突に開示される、お店経営の話。
一瞬、脳に?マークが浮かんだけれどこれは大出世(?)のニュース。
素直に祝福してあげる。同好会が寂しくなってしまうけれど、そんなことで彼の将来を邪魔するわけにはいかない。
……そこで、ふとした疑問。

「あれ、でも。どうしてそんな困った顔なの?
 同好会の方は気にしなくてもいいわよ。元々、二人でやるなら同好会、みたいにするといいかもね、くらいのお話だったじゃない。 それとも、なに? お店買う時に、変なところが関わってきたとか……?
 風紀委員の人に相談してみる?」
お店を持つことは結構大変なものだし、ただでさえ閉鎖空間な常世では利権やらなにやらで妙な輩が関わってくる可能性だって否定できない。
知り合い、というほどじゃないけれど風紀委員に顔を知っている人だっている。なにか力になれないかしら……と、とても真面目に考える

小金井 陽 > 「………うん??」
なんかじっくり見られてるような気がして小首を傾げる。
見た目くりくりとよく動く猫目で、直感的にネコ科の動物を思わせる雰囲気なのは間違いないし、二人で活動してるときにもふとした直感に驚くこともあった。

「んんー、ケーキやクッキー…洋菓子ッスかね、やっぱり。幸い、ここのじっちゃんが指導つけてくれることにもなりましたし。って、センパイそんな驚いてないッスね。やっぱ大物だわ…」
あっさりと祝福できるセンパイに、苦笑しながら感嘆する。

「あー、まぁ、変なトコが関わってきたのは間違いないッスね。厄介、ってわけじゃなく、喜ばしいアプローチなんスけど。
……………………その風紀委員が、同好会に入部申請してきて、出資を申し出てきたンすよ。
どうも、腹が減ってたらしいんでその場で作ってたスイーツを提供したら、いたく気に入ってくれてすっげぇ良い顔して食ってくれましてね。」
…そうして語る陽の顔は、自身のスイーツを心から旨く食ってくれた相手への喜びがあり、その時は普段から明るい陽の笑顔がとびっきり子供っぽく…一番輝いて見えるのだった。

「神代理央、ってンですけど。知ってますか?センパイ。童顔で気難しい顔してる…気難しい顔してなきゃ、女の子に見間違われてもおかしくないくらいイケメンの風紀委員ッス。
ちょいと暴走気味なところはありますけど、悪いヤツじゃないと思ったから、その申し出を受け入れたんスけどね…」

雪城涼子 > 「え、ほんと?! あのおじいさんが!? それ私も習いたい!
 ……こほん。 え、えーっと、うん。ほら、驚いたのは驚いたのよ、これでも。でも、驚きより、陽くんの出世っていう喜びのほうが上だったし」
製菓店の店主が指導をつけてくれる話に一瞬、子供のように目を輝かせる。
でも待って、私は大人。一回深呼吸して、冷静に気持ちを伝える。

「……え?」
そして、語られる真相。こちらは思わずビックリ&フリーズ。
今まさに話題にしたばかりの風紀委員で、自分が知っている人物の名前が此処で上がるとは。
そういえば、彼もスイーツ好きではあったけれど……

「うん、神代くんは、知ってはいるけれど……
 え、それ本当? 大丈夫? 別の人に騙されてない?
 ううん、確かに彼もスイーツ好きだったからあり得なくはないけれど……
 暴走気味、も確かに……そう、かもだし……」
思わず問い詰めつつも、自問自答に陥ってしまった。

小金井 陽 > 「お、そんじゃ涼子センパイも一緒にッスかね?俺、ここのじっちゃんにちょっと子供んときから世話になってて、その縁で店舗も貸してくれることになったんス。」
猫目を瞬かせ、がばっっと音がしそうなほどに食いついた涼子の反応に驚きながらも納得して。
指導を受けられるようになった経緯や、少なからぬ愛着があるだろう店を譲り渡すような許諾を得られた縁故について語る。

「え、知ってるだけじゃなくて知り合いだったんスか?そりゃ意外……でもねぇな、あいつなら…」
スイーツに対する暴走的なまでの情熱を思い返し、苦笑する。確かに涼子センパイならば、今回の自分のような事態に至ってもおかしくないだろうと納得して。

「んー、この店舗を借り上げる際の書類も『異能』で確認したッスから、違法な取引や詐欺は可能性ゼロッスね。となると可能性としてあるのは…ガチで、りおっちの好意だと思うッス。」
呆れた苦笑を深め…一番信じられないほどにシンプルな理由を推測する。

雪城涼子 > 「ああ、そうなんだ。長いお付き合いなんだね。
そっかぁ……おじいさん、いっつも『跡継いでくれる奴が居ねえんだよ』って寂しそうにしてたけれど、少しは救いになるのかなあ……?」
店舗を借りる経緯を聞いて、少し過去を思い出す。
自分と目の前の少年が、孤独な老人の寂しさを少しでも晴らせるだろうか……?
思わずしんみりとする。

「んー、まあ、なんというか、うん。知り合い、なんだけど……
 ちょっと、こう、微妙に気まずいと言うか……ううん、平気は平気なんだけど」
思わず視線をそらして頬を掻く。ほんのり頬も赤いだろうか。
二度ほどであっただけだけれど、その二回でお節介を焼くわ口論するわ……
結局スイーツの買い出しに二人で行くには行ったので険悪な仲ではない、とは思うのだけれど……

「陽くんが言うなら、本物なんだろうね。で、えーっと……
 じゃあ経緯がびっくりなのは良いとして。何か他に問題が?」
一回情報を整理しよう。
確かに彼の言う通り、シンプルと言えばシンプルだし、複雑といえば複雑な話ではある。

小金井 陽 > 「ここの菓子がガキの頃から好きでたまんなくって…俺の菓子好きの原点ッスね。小遣い溜まったら、すぐに買いに来てたッス。…今思えば、ろくに計算も出来ないガキの小遣いで足りないこともあったのに、うまい菓子を食わせてもらってたなぁ…
…だから、ちっとはその恩返しになるかもって思えば…うん、悪くないッスね。」
少ししんみりした気配を、笑って振り払って。

「…………ははぁーん???」
………猫目を細めて、とても微笑ましそうにニコニコしだす銀髪男子…深くは詮索しないが、憎からず思っていることを即座に察知して…!
「そうスかー、涼子センパイがまさか…なるほどなるほど。…そんじゃ、ますますやり甲斐があるな。」
一人得心して、にっかりと笑う。
余計なお世話かもしれないが、尊敬に値する女性と自分の背中を蹴ってくれた男の架け橋に、少しでもなれば面白いことだろうと、そう心に決めて。

「ん、俺の心情の問題ッスね。
突如湧いて降った、こんな冗談みたいにありがたい支援に甘んじていいのか…って話ッス。
まだ17のガキが、最新鋭の設備で店を構えられていいのか…って、りおっちのヤツには承諾の返事はしたッスけど、未だに悩んでるッス。」
生来、ふざけてそうでいて真っ直ぐなタチが今回は災いしているのだろう。未だ、踏ん切りがついていない様子だ。

雪城涼子 > 「原点。そっか。うん、わかるなあ。ここのお菓子って、ただ美味しいだけじゃなくて、なんだか暖かかったし……とてもいいお店だったもの。
ふふ、そう、そうね。折角だから盛り上げていければいいわよね。」
しんみりした気配を振り払う笑顔に、こちらも笑顔になる。
そうね。むしろ、こちらから笑顔にしていくくらいの気持ちでいなきゃ。

「ん? んん?
 え、と……陽くん? なにか誤解してない? 」
わかってますよ、な雰囲気を醸し出す少年に気がつく。
違うの、そうじゃないの。私には大事な旦那様がいるの!
思わず心のなかで叫ぶ。
そういえば、振り返ってみれば誤解を招く言い方だったかもしれない。
なんという不覚。ダァくんへの愛を疑わせるようなことはあってはいけない。絶対に。
困惑と決意がそこにあった。

「ん……そうね、わからないではないわ。
 そういうのはまだ早いっていう人もいるとは思う。でもね。
 大事なのは、陽くんがどうしたいか、だと思うの。
 そうね……一番引っかかっているのは何?
 年齢? それとも責任? 経験値? それとも、他のなにか?」
彼の真面目さはよくわかっている。降って湧いた幸運に戸惑うのもよく分かる。
であれば、その本当の気持ちを探って支えるのが大人の役目だろう。

小金井 陽 > 「そうッスね。だから、その志を少しでも継いでいけたらなって…まだまだ、未熟ッスけど、ね!」
未熟なりに、前を向き続けなければと心を新たにするスイーツ男子であった。良くも悪くも菓子バカである。

「あーあー、多くは言わなくていいッス!!!ね!!」

……完全に誤解してるーー!!!!
しかし、涼子センパイの困惑気味の決意とは裏腹に、陽クンは誤解を続けたままで…ファイトだ!涼子センパイ!

「年齢は、俺くらいの年でも天才って呼ばれるヤツがいるから大した問題じゃないッス。
責任は…感じるッスけど、さっきも言ったようにじっちゃんへの恩返しも考えれば、そこは納得したッスね。
経験値…うん、経験値ッスね、問題は。
正直、俺は暇さえありゃ菓子を作ってきた自信はあるッス。…けど、そりゃあこの学園に入ってきてからの話で、まだせいぜい二年ってトコっす。
…そんな俺が、そこまでの期待を寄せられてるってのが、嬉しいと同時に…分不相応じゃないかって感じがしてならないンスよ。」

指を組みながら、難しい顔をして涼子にぽつぽつと語る陽。
前に、少しだけ聞いたことがある。
詳しくは話さなかったが…陽は、家庭の事情からある時期を境に全くスイーツに触れる機会を与えられず、この老人の店に再び通えたのも、製菓を始められたのも常世学園に入ってからだということを。

雪城涼子 > 「じゃあ、そこは二人で頑張りましょうね!」
なんだかんだと、こちらもお菓子好きの主婦であった。

「ちょっと!? 違うから、違うから!
 私にはもう大事な人がいるから!? ほら、ほら!」
普段の割と落ち着いた雰囲気とは一転、かなり大慌てになる。
そして、とりだしたのは生徒証などが入ったパスケース。
その中に収められた一枚の写真。
見れば、ひょろりとした一見頼りない顔つきに眼鏡の中年男性が写っている。

「んー…… そうね。そういう意味では経験不足、はあるかもしれないわね。
 でも、買われたのは経験じゃなくて腕前でしょう?
 それに、期待っていうのは未来も見るのが期待っていうものよ。
 それなら、更に腕をあげて答えていくっていうのも考え方ではあるわ。」
事実は事実。そこは曲げられない。
であれば、それをどう解釈していくか、が大事である。
もちろん、これは自分の考え方。目の前の少年がどう考えるかはまた別だ。
穏やかに様子を見守る。

小金井 陽 > 「はいッス!!全力で!!」
ぐっぐっ!!握りこぶしを尽くしながら、気合を入れ直し。

「………え、涼子センパイ。それはさすがにまずいッスよ??年の差…」
…大慌てで涼子が取り出したパスケースに写る写真の中年男性を見て…思わず真顔になる銀髪男子。
そして、慌てて見せてから気づく…事情を知らない男子生徒がその写真を『大事な人』って言われて見せられたら、エンコーめいたものだと思われてしまうだろうという可能性に…ままならない…!!

「………うん、そうッスね。
事実ね、嬉しいんスよ。こんだけの資金をポンっと出してくれるような…旨いモンを食ってきただろうりおっちが、俺の菓子を評価してくれたことを。

未来に期待してくれてるってんなら…やっぱ、やるしかないッスよねぇ。自分で選んだ道とはいえ、不退転だったわ。」
今更ながらの事実に気づいて、前向きな諦めを苦笑とともに帯びてセンパイの目を見る。
「ありがとうッス、涼子センパイ。やってみるッスよ。…ってわけで、これからもよろしくお願いするッス。」
そうして、手を差し伸べて握手を求めてくる年下の男の子。ネコ科めいた瞳を糸のように細くして笑い、にっかり笑う口元からは八重歯が覗いている。

雪城涼子 > 「え? 年の差?」
どうやら理解してくれたかな、からの変な反応にキョトンとする。
自分の外見情報には時として無自覚になることが多い。

「ふふ、もちろん私も協力するからそこは心配なく、ね?
 責任についても私も受け持つから安心して。
 それにしても……ここまで大事になるなら、もう同好会じゃ不味いかもしれないわね」
握手を求める手を握り返しつつ、しかし、うーん、とちょっとだけの悩み顔。
責任、という話で言えばこの規模になってしまえば色々と話を通すべきところがたくさん出てくることだろう。
そこはまあ、神代くんの方である程度なんとかしてくれるのかもしれないけれど頼りっぱなしでもよくない。

小金井 陽 > 「いや、だってセンパイとこの男性……いや、もう何も言うまいッス。惚れた事実には些細な問題ッスね。」
なぜか、色々達観した表情になって、温かい視線を向けている後輩…どうする涼子センパイ。完全にスイーツ後輩の脳内で、『二倍以上年の離れた中年男性と本気交際中』って情報が設定されちゃったぞ…!!

「おいッス!センパイは勿論、りおっちや群千鳥ちゃんにもガッツリ試食をお願いすることにするッスよ!」
なぜか聞き慣れない名前が一つ聞こえた気がした。…うまく食ってくれそうな相手には積極的に食べさせる陽の性質から、その縁でごちそうした相手なのかもしれない。

「うん、さすがに部としての活動に昇格した上で、以前よりも部活動での単位を融通してくれるって話ッス。
店舗経営しておいて『同好会』じゃ、何を寝言をって話になっちまいますからね。」
決まってしまえば真っ直ぐであり、ただこのスイーツ男子は真っ直ぐすぎて色々危ういところもあるからこそ、注意して見てあげなければいけないところも出てくるだろう。

雪城涼子 > 「うん、うん。そう、そうなの。もうね、ダァくんってばね、本当に素敵なの。
 この間もね、電話でね……」
一瞬の疑問もつかの間、惚れた事実、に引っかかってしまってついつい惚気け始めてしまう。
元々、あまり他人に話さない事柄なので久しぶりすぎてつい、タガが外れてしまう。
もちろん、言ってはいけないことは言わない。そこのTPOだけはちゃんと守る。
でも放っておけば何時間でも話しそうな勢いではあった。

「と、群千鳥ちゃん? 他に部員候補の子がいるのね。
 それなら部活に昇格させても平気そうかしら。
 流石にあんまり人が少なくてもよくないものね。
 そうなると……今度は顧問の先生かしら? 色々、声をかけてみる?」
しかし、一瞬冷静になって立て直す。そう、今は大事なことがある。
真っ直ぐなのは彼の良いところだ。そこは曲げてはいけないと思う。
であれば、横にいる私は危ういところをフォローしていけばそれでいい。
そんな事を思いながら、まずは当面の問題になりそうなところをピックアップしていく。
そして、それが終われば……

「そうそう、それでね、それでね。ダァくんが言ったの。
 『君の手作り弁当が食べたい』って。もうー、可愛いでしょ!
 ……」
急にもとに戻った。語る顔は今までと全く違い、恋する乙女のそれだ。
話は延々と続きそうだった。