2020/06/27 のログ
神代理央 > 「……どうした?そこまで挙動不審になる様な事でも無いと思うが」

何かおかしなことを聞いたかな、と先程の己の言葉を反芻。しかし、思い当たる節は無い。
寧ろ、聞くべきことを聞いていないからこその誤解なのだが。其処には未だ気付かずに。変な奴だな、と言わんばかりの視線が向けられるのだろう。

「…ん、それなら宜しい。素直な事は良い事だぞ」

妹を褒める兄の様に。小さく笑みを浮かべてうんうんと頷いて見せる。気のない返事も、小言に気を落としているからかと気遣う始末。
彼女の。いや、彼女も含め、穏やかな場所に集う者達に、己の昏さ等必要は無い。第一、そう大した事でも無いのだ。両親が健在であるだけでも恵まれている筈なのだから。

「となれば、小金井の選択は英断だったのだろうな。思っていたほど金を使った訳でも無かった様だし。此れからのんびりと、少しずつ手を加えていけば良いだけの事」

のんびり、とは己に似合わぬ言葉だなと苦笑いを浮かべつつ。
満足している様子の彼女に、此方も小さく穏やかな吐息を一つ。

「な……何だと言うのだ、一体。というか、此処でそういうのは――」

公衆の面前で少女に顔を掴まれるなんで風紀委員の威厳は紐無しバンジージャンプである。というか唯の飛び降りだ。
と、困惑していたのも束の間。彼女から発せられた言葉が耳を打てば、うぐ、と黙り込んでしまう。
暫しの沈黙。何を言うべきか。そもそも本心を伝えるべきなのか。彼女の手を振りほどくべきなのか。
様々な葛藤の末、ゆっくりと。恐る恐ると云う様に唇を開く。

「……お前達と過ごす時間は、楽しかった。きっと、此れからも楽しいのだろう。穏やかなのだろう。だから怖い。
お前達の場所を、私は汚してしまうんじゃないかと。あの場所が危険な目に晒されるんじゃないかと。私には、相応しくない場所なんじゃないかと、思うと、怖い。近寄りたく、ない」

怖い。それは未知への恐怖にも似た感情なのかも知れない。
あの場所で過ごしたい。皆で甘いスイーツを食べながら過ごしたい。けれどそれは、己に許される安寧なのか。
そんな不安と恐怖を、小さな声で、幼子の様に零す。まだ出会って数度の少女に。何故話してしまったのか自分でも分からない。

雪城涼子 > 「……あの、ねえ」

静かに、静かに……じっと目を見つめる。

「あのねえ、理央くん。ふさわしいとか、ふさわしくないとか……
 そんなこと、誰が決めたの? 君?」

顔を掴む手は、少女らしくさほど強くはない。
その気になれば、振り払うこともできるだろう。

「いま、君は言ったじゃない。
 『此れからのんびりと、少しずつ手を加えていけば良いだけの事』って。
 あなたと、私たちの関係だって。
 あなたが、気になることがあったとしても。
 少しずつでも、手を加えていけば、いいじゃない」

視線を外さない。
もし、外そうとされても、外されてやるものか。
そんな気迫が感じられるかもしれない。

神代理央 > 「……それ、は…」

誰が決めたのか。そう問われれば、答えるべき言葉は見つからない。
己は自分で選択し、決定する事に重きをおいてきた。ならば、今彼女に告げた言葉は、全て自分で決めた事の筈なのだ。
そんな事を望んでいなくても、それを決めたのは自分なのだ。そうでなければならない。そうでなければ――

だから、彼女に答えようとした。決めたのは自分だと。そして、弱腰な言葉はらしくなかったと話を打ち切るつもりだった。
しかし、彼女はそれを許さない。視線は外せず、手を振り解けず、否定と誤魔化しの言葉は喉の奥から出てこない。

そして、そして。彼女の言葉を茫然とした様な。迷子の子供の様な顔で聞いていた少年は。
彼女の碧い瞳を見つめた儘、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「……きっと。逃げる場所が、欲しいだけなんだ。私が、私で無くても良い場所を、お前達に求めているだけなんだ。自己中心的で、みっともない理由で……僕は、陽だまりの様な場所に、逃げ込んでしまったんだ。それでも、それでも良いのか、分からないんだ」

偽りでは無く、演技でも無く。
自分から彼等との交流を求めておきながら、それに怯えてしまう理由も。逃げ込む場所として利用してしまう己の弱さも。
そんなものを抱えていて、彼等と触れ合っても良いのか分からないと、途切れ途切れに少女に紡ぐ。

雪城涼子 > 「……はぁ」

かるく、ため息。
手を顔から離す。
もう、こんな拘束は必要ない。
でも、思わずため息を付いてしまうのは……彼の、心に。

「あのね、理央くん。そもそも、前提からして間違ってる。
 『私が、私で無くても良い場所』? 違うよ。
 何処にいても、君は君のはずだよ。」

じっと、目を見据え続ける。
その目は、先程までの静かな怒りではなく優しさがある。

「風紀として、心を律しようとするのも君。みっともなく逃げようとするのも君。
 それを認めようとしないのも、君。
 理央くん。人間なんてさ、矛盾の塊だよ。それに、失敗だってたくさんする。」

目の前の少年だけではない。
自分だってそうだ。

「正しいことをしようとして、間違えてしまう人だっている。
 間違った結果、正しいことをしてしまう場合だって、あるかもしれない。
 大事なのは――そんな自分と向き合うこと、じゃないかな?」

自分の内面など、そう変わるものではない。
やったことも、覆りはしない。
そうであれば――それを、背負うしか無いのだ。

「もちろん、自分と向き合うのは辛いこと。
 今の理央くんみたいに苦しくて、苦しくて……仕方のないこともあると思う。
 そのときのために、みんながいるんだから。今みたいに、ね?」

すこし、微笑む。
今の彼は、ただの子供だ。ひょっとしたら、彼の本質、なのかもしれない。
それをどう捉えるかは、最後は彼自身の仕事ではあるけれど。

「ね、理央くん。少なくとも、私は――
 ううん。きっと、陽くんたちも。君を仲間だと思ってる。
 居てほしいって思ってる。それは、忘れないで」

あやすように、優しく声をかける。

神代理央 > 「……矛盾の、塊、か。此のごちゃごちゃした良く分からない感情も、全部、全部。それは、全て僕自身でしかない、か」

己の矜持は、選択を誤らない事。ならば、先程彼女に吐き出した脆弱な言葉は、今迄の己の行動そのものにエラーを招きかねない矛盾。
それすらも、彼女は全て自分自身のものなのだと告げる。その言葉に、茫然と彼女を見つめていた己の瞳に理性の光がじんわりと戻り始める。

「……己と向き合う、か。此れでも結構、そう言う事には自信があるつもりだったんだけど…。まだまだみたいだな。少なくとも、こうして揺さぶられるくらいには、まだまだ自分を見つめ直す時間が足りてなかったみたいだ」

彼女から与えられた一つの答え。或いは指針。それを取り込む事で、漸く不安定に揺れていた己の瞳と感情も落ち着きを取り戻す。
こうして、彼女の言葉に理性的に返事を返せるくらいには。

「……皆がいるから、か。そんなこと、言われた事も無かったよ。僕は、全部踏み付けて捻じ伏せて従えて、そこにプライドを持っていたつもりだったんだけど。……何というか、案外、良い言葉、だね」

そうして、微笑む彼女に返すのはまだ少し弱弱しい。しかし、己の確固たる意志を取り戻したかの様な笑みと言葉。

「……ああ。忘れない。そんなに嬉しく思える言葉を、忘れる訳がない。仲間だなんて、利害関係以外で言われた事、無かったからな」

それでも、彼女の優しさに甘える様に。やっぱり己の口調は何処か力の無いもの。それは悪い意味では無く、素直な子供の様な。風紀委員としての堅苦しい雰囲気の抜けた力の無さだったのだろうか。

雪城涼子 > 「張り詰めた糸は切れやすい……なんて、たとえ話は昔からよくある話よ?
 だから、緩んでる瞬間もとても大事なこと。」

瞳に力が戻ってきた様子を少し満足げに見る。
そして、その目を見ながら蛇足かもしれないけれど、と思いつつも

「……正直ね。前に、口論……というか、うん。ちょっと言い合い、というか、になったじゃない?
 できれば、少しでもゆるくなって欲しいなって……いまも思うことは思うの。」

あえて、自分の過去の思いに踏み込む。
ただ、話していて変わったこともあり

「いま話を聞いていてね。やっぱり、君の中でも多分、何かが食い違ってるんだ、と……思うの。
 でも、これ以上は言わないわ。君が、君自身で答えを出さないと意味がないことだと思うし。
 だから……自分と、よく向き合ってみてね。
 うっかり、取り返しのつかないことをしないように。」

私みたいにね、と……聞こえるか聞こえないかの声で最後に付け足す。

「そう? 案外、利害以外で言っている人はいたかもしれないわよ?
 君が、よく聞いてなかっただけかもしれない。
 それは、今後は気をつけたほうが良いかもね?」

ちょっと心配な少年に対する、おまけのアドバイス。
少しは良くなったような気もするけれど、まだまだ手のかかる子よね。

神代理央 > 「……緩んで良いのか、ともう聞く事はしないさ。それもまた、僕自身が抱える思いの一つなんだろう?」

先程の彼女の言葉を少し借りて。
クスリ、と小さく微笑んでみせる。

「…む、それは…まあ、あの時は僕も悪かったというか、意地になっていた…かもしれないし…。
とはいっても、緩く、というのはどうすれば良いのやら。多少力が籠り過ぎた生き方をしているとは思っているが……」

「…食い違っている、か。果たしてその通りなのかどうか、私自身答えが出る訳では無い。雪城の言う通りやも知れぬし、そうではないかもしれない。唯、その…何だ。お前達と触れ合う事で、その答えも見つけていければ、と思う……のだが」

一人称も元に戻り、取り合えず何時もの己に戻れた様な。しかし、彼女の真摯な言葉に耳を傾ければ、結局のところ声のトーンは元通り。
何故だか、眼前の小柄な少女に歯が立たたない――気がする。
まるで、保護者に怒られている子供の気分だ。その理由も、何となく分かっているからこその、口調の弱さなのだろう。

「……む、そうなのか?とはいえ、それを見抜き、理解するには私は些か幼過ぎた。此れからは、気を付ける」

今後は気を付けた方が良い、と告げる彼女にコクリと素直に頷けば、穏やかな笑みを浮かべてみせる。

「……長話につき合わせてしまったな。すまない。
…さて、先ずは早く荷物を下ろしに行くとするか。何時までも此処で立っている衆人の目線を浴びるばかりだからな?」

自分達に向けられる好奇の視線から彼女を守る様に隣に立つと、新たな部室への移動を提案するのだろう。
もし彼女が受け入れてくれれば。幾分素直になった己は取り留めの無い会話を彼女と続けながら、目的地へと歩みを進めていくのだろう――

雪城涼子 > 「うん。あとは、しばらく君の宿題ね。」

わかってくれたのなら、後はもう多くは語るまい。
彼とて、大人にはなりきれてないとはいえ、それはそれでいい年の若者なのだ。
本人にある程度は任せたほうが良いだろう。
満足のうなずきをして――

「……ぁ」

指摘された一言。
そう。ここは、往来。
人が行き交う道のど真ん中で、女が説教する、男が泣く、女が慰める……

「……………………」

ひょっとしなくても、目立った上に、とんでもなく注目の的だったのでは……?

「そ、そうね! いきましょう!」

先程までの様子は何処へやら。
見た目相応か、ひょっとしたらそれ以下の子供のように大慌ての真っ赤っか。
やや足早に目的地へ向かおうとするだろう。

――もっとも、身長差故に少年は余裕でついていけたであろうが。

ご案内:「学生通り」から雪城涼子さんが去りました。
ご案内:「学生通り」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「学生通り」にケンプキン・G・ノノノフさんが現れました。
ケンプキン・G・ノノノフ > 長く荒野を散策してようやく街にたどり着いたのはこの世界に来て3日目の事であった。
それまで現地の魔獣との戦いや、現地の魔獣との戦い、現地の魔獣との戦い等を繰り返しながらも消耗することなく
天才であるノノノフは街にたどり着いたのだ。

「ふむ、やはり王都とは全然建築様式が異なる…。
 相当遠くに転移してしまったということだろうなあ。」

そんなことをぶつぶつと呟きながらパジャマ姿で辺りを見回す。
その様子は相当奇異に映るだろうがそこまで周囲の人々が気にした様子もない。
おそらく慣れてしまっているのだ。

ケンプキン・G・ノノノフ > 「気候から察するに王都よりも南の方であることは確かだろう。だが、あまりにも…」

あまりにも文明が進みすぎている。
ノノノフがいた場所ではノノノフ以外に知識を持つものがいなかった為
技術の発展はノノノフの気まぐれとともにあった。
その間に他の国は天才であるノノノフを差し置いてここまでの発展を???

「いや、天才であるこの私が出し抜かれるだなんてあり得ないな…」

…天才であるがゆえに。

ケンプキン・G・ノノノフ > …もう少し情報を集める必要があるだろうか。

天才アイを駆使すれば。
周囲には10代の人間の姿が多くみられる…亜人種の類も普通に街を歩いている。
この町では人類が亜人種の奴隷になったりということはどうやらしていないようだ…。

そして、天才イヤーに聞こえてくる周囲の人々の会話で多く言われていたのが
『試験』『バイト』『部活』『テスト』

「バイト…部活とはいったいなんだ…?」

天才であるノノノフが知らない事象は存在しない。前の場所では少なくともなかった。
故にそれらの言葉は恐らくこの国で使われている方言のようなものだろう…

ケンプキン・G・ノノノフ > 結局街にはたどり着いたが有益な情報は何も得られず…。
だが、『天才は焦らず、凡人は焦り、愚者は焦れない』
そんな言葉もあるように天才であるが故に焦らず…。

そうしてこの場所での4日目が過ぎていくのだった。

ご案内:「学生通り」からケンプキン・G・ノノノフさんが去りました。