2020/07/03 のログ
ご案内:「学生通り」に葉山翔一さんが現れました。
葉山翔一 > 学生通りの目立たない一角。
そこにある自動販売機の傍に腰を下ろして恒例の違法露店。
ただこの場で売るのが危険なものは一切なく真っ当な物ばかり。

「毎度あり、また御贔屓にね」

今も常連客に幸せの粉と期間限定のぬいぐるみを売っては笑顔で見送り。
この場所は風紀に見つかりやすいデメリットはあるが、それ以上に普通に稼げるメリットが多く。
ついつい長居をして露店を開いて。

ご案内:「学生通り」に日下部 理沙さんが現れました。
日下部 理沙 > その一角に、ぬっと顔を出したのは……眼鏡をかけた、茶髪の青年。
露店に突き出す不景気そうな顔と服装は何の変哲もない。
だが……背中についている真っ白な翼だけが、どうにもアンバランスだった。
翼を引っ込めながら、商品を一つ一つ目で追って、店主に声を掛ける。

「すいません、こちらの仕入れなどはどこで?」

青年の声色は、どこか硬かった。

「ああ、いや、もし……それ……『御話』も『商品』っていうなら買います。
 おいくらですか?」

葉山翔一 > 最後の客を見送り静かな時間。
図書館でパクった本でも読んで時間を潰すかと考えていれば新たな客。
初めて見る顔、そう言えるのは少なくとも今まで背中に翼の生えた客は来た事がなかったからで。

「いらっしゃい。何かお探しでって……」

いきなりに硬い声色とはいえ仕入れを聞かれれば眉間に皴がより。
もし面倒ごとになりそうなら逃げるか張り倒すかの選択を天秤にかけ。

「悪いけど仕入れについては言えないって。そう言うのは秘密ってものだろ?」

変にルートを話し風紀や公安にバレては面倒で済まない事。
流石に話せないと首を左右に振って。

日下部 理沙 > 「ああ、まぁ、それはそうですよね……」

分かりやすく翼を萎れさせて、青年は溜息を吐く。
ついでに眼鏡も一緒に少しずり落ちた。

「えと、じゃあ、その……最近、お客さんに異邦人の方って……きましたか?」

眼鏡を掛けなおしながら、青年は違う事を聞く。
言いながら指さす商品は、一部の異邦人が好むデザインの小物だった。
実際に異世界由来のモノであるかどうかまでは、この眼鏡の青年には判別がつかなかった。

「それとか、聞く話では……一部の異邦人の方が珍重すると聞きまして。
 あ、なんなら、それ買います。
 それで……すいません、少しでいいから、御話を聞かせてもらえないでしょうか?」

そう、なおも青年は食い下がり、頭を下げた。

葉山翔一 > 「そう言うネタを売るとな。俺の信用問題になるってわかるよな?」

目に見えて残念そうにため息を吐く青年。
それを見ると気の毒に思うが話せないものは話せず。

「それぐらいならまあ……来るよ。結構な頻度でね」

それぐらいなら良いかと異邦人の客は来ることを告げる。
今青年が差しているようなものは異邦人にはよく売れる一つ。
生産はこの世界であるがよく気に入られる不思議な品で。

「異邦人っていうかリピーターは結構多いな。
そいつは1000円の品だよ、買ってくれるなら毎度あり。
何でそんなに聞きたいんだ?」

ここまで食い下がられるとどうにも怪しく。
どうしてだと見上げて。

日下部 理沙 > 「ありがとうございます……ああ、その、人探しをしてまして」

そういって、代金を支払いながら、小物を受け取り……じっと視線を落とす。
眼鏡越しの青い瞳が、微かに揺れた。

「キャップとフードを被ったオーク種の異邦人を探してるんです。
 名前も知らない方ですが……色々と、話をしてみたくて」

オーク種。
フィクションでも有名な、武威に優れる種族。
かつては空想上の産物といわれたが、昨今は実在している種族。
そう……《門》の向こうから、渡来して。

「そう言った方を……見た覚えはないでしょうか?」

葉山翔一 > 「その人って言われてもな…何人か来てるから誰かわかんないぞ?」

小物を手渡し、人を探していると言われても誰かがさっぱり。
ただその相手を探す必死さはなんとなくわかって。

「オーク種?……一人心当たりがなくはないな……。」

思い出すのは歓楽街で会った客。
もしかしてそいつなのかと考えて。

「そいつを探してどうするんだ?その答え次第で教えてもいい」

日下部 理沙 > 「!? ほ、ほんとですか!?」

目を見開いて、翼を広げる。
そのせいで普通に往来の邪魔になり、通行人に文句を言われる。

「す、すいません!!」

前に後ろに頭を下げてから、青年はまたズレた眼鏡を掛けなおす。
そして、控え目に翼を畳み直して、やおらワケを語りだした。

「実は、俺……研究生でして。近代魔術と異邦文化学をやってます。
 今回の事は、研究に直接関係あるわけじゃないんですが……個人的に話を聞いておきたいんです」

深刻そうな顔で拳を握り締めて、青年は続ける。
眉間には、微かに皺が寄っていた。

「……以前に、知らずに話をしたことはあるのですが……それは途中で終わってしまいました。
 だから、今度はちゃんと話をしたいんです。
 相手がそれを望むかどうかはわかりません、だけど、『望むか望まないか』すら……話をしなければわかりません」

哀しいまでに、人は意志疎通の術を持たない。
コミュニケーションの手段はいつだって限られている。
言葉はその数少ない手段だが……同じ言葉でも通じないことはいくらでもある。
それでも。

「だから、確かめたいんです。
 あの時、途中で終わった話がまだ続けられるのかどうかを。
 ……俺のワガママでしか……ありませんけど」

青年は、言葉の可能性を確かめたかった。

葉山翔一 > 「少しおちついてくれって。風紀が来たら困るんだじ、こっちは」

目と共に翼を広げる青年の反応に勘弁をしてくれ吐息を吐き。
今は通行人に文句を言われる程度だが、風紀が来ては困るのは自分。

そして話され始める理由。
青年の行っている事には必要な事と判りはするが、自分にはさして興味はない事。
しかし深刻そうな顔で、話してみなければ、確かめたいという言葉は聞いていれば青年の我が儘に聞こえるのだが…。

「もし人違いでも文句は聞かないからな?
俺が会ったのはシュルヴェステルって奴で場所は歓楽街だ。
けどな、会ったのはその時だけで今もそこに居るかは判んないぞ?」

まあ、害をなそうとしてる訳じゃないからいいか。
そう考えれば一度だけ客としてきたオークの事をつげて。

日下部 理沙 > 「!! い、いえ、十分な情報です!! ありがとうございます!」

改めて、頭を下げる。声はいくらか控え目で。
今まで全く無かった情報が、一つ集まった。
人違いであるかもしれない、だが、それも実際に探してみればわかる話だ。
探すアテの名前が知れたのは大きい。

「歓楽街、そうか……異邦人街で探しても見つからないわけだ」

……そこにすら、『居れなかった』と言う事だろうか。
いや、想像するだけ詮無い事だ。
青年は微かに頭を振り、視線を歓楽街の方へと向けた。

「まずは行ってみます、本当に……ありがとうございました」

最後にまたしっかりと頭を下げてから、青年は去っていった。
日は既に傾いている。
今から行くには少しばかり危険な街だが……躊躇う事はなかった。

ご案内:「学生通り」から日下部 理沙さんが去りました。
葉山翔一 > 「そうか?役に立つならいいんだけど」

この程度の情報で喜ばれると少々の罪悪感。
本当にそこであったという程度の話なので。

「でもな、結構前だぞ?今も居るかは判んないからな?」

そこは念を押しておくことは忘れず。
今かったと文句を言われても困るとばかりに。

「いや、気にしなくていいって。会えることを祈ってるよ」

さっていく青年を見送れば出会えることをらしくもなく祈り。
先ほどの事で人目を引き出していると気が付くと風紀が来る前に荷物を纏めて撤退をする

ご案内:「学生通り」から葉山翔一さんが去りました。