2020/07/22 のログ
227番 > 「自分の、ものがたり……」

一方で、あかねのことを、殆ど知らない。
何を目的としているのかも、なにを目指しているのかも。
はっきりと覚えているのは、久々に会ったあの日からのことだけ。
いつか知れるのかな。追いつくことはできるかな、なんて思ったりもする。
ただ、今はともだちである、ということだけで十分だとも思う。

頭を撫でられる。いつものように、体を揺する。

「……うん。難しいかも、だけど、頑張る……わたしが、選んだから」

目を細めたまま、しっかりと聞いて、答える。
メモを渡される。
数字の羅列だ。これが何なのかを知るところからだが……今は聞かない。
頼れる人の手がかり……奇しくも知り合いであるが、まだそれはわからない。

「先生……。わかった。困ったら、考えてみる」

知る限りで、"先生"は頼れる存在であるという認識はある。
それでも、困ったらそうする、とは言わない。
言われたからといって、鵜呑みにはしない。

立ち上がる姿を目で追って、倣うように立ち上がる。

「……うん。『またね』、あかね。」

いつものようにすぐに見えなくなる『ともだち』の背中を、
見えなくなるまで手を振って見送って。
それから自分も踵を返す。


たとえ永く会えなくとも、少女のゆく道は暗闇ではなく、
きっと茜色に照らされているだろう。

ご案内:「学生通り」から227番さんが去りました。